目 次
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す
債務整理に強い
弁護士・司法書士を探す
1. 住宅ローンの返済がきつくなる主な原因
住宅ローンの返済がきつい場合、まず支払いが苦しくなっている原因を明確にします。原因を整理しておくことで、家計の見直しで対応できる段階なのか、金融機関や専門家に相談すべき段階なのかがはっきりするため、適切な行動が取りやすくなります。
単に「収入が減った」「支出が増えた」といった部分だけを見るのではなく、根本的な原因を探ることが大切です。以下では、住宅ローンの返済がきつくなる4つの原因を見ていきましょう。
1-1. 家計の余力に対して住宅ローンの負担が重すぎる
最初に確認したいのは、家計の余力に対して住宅ローンの負担が重すぎないかどうかです。
返済額の妥当性を判断する際の代表的な目安の一つが、返済負担率です。返済負担率とは、年収に対して年間の住宅ローンの返済額がどの程度を占めるかを示す割合のことを指します。
住宅金融支援機構の2025年度の調査によると、「返済負担率について重要度が増している」と回答した金融機関は77.4%ともっとも多く、審査上の重要項目であることがうかがえます。返済負担率は原則として、住宅ローン申込時に確認できる年収(原則として申込年度の前年分)を基に計算します。
ただし、審査に通る水準と、無理なく返済を続けられる水準は必ずしも一致しません。
例えば、フラット35で設定されている返済負担率の基準は、「額面年収400万円未満なら30%以下」「額面年収400万円以上なら35%以下」とされています。一方、民間では無理のない返済額の目安として、手取り収入の20〜25%程度が紹介されることもあります。
こうした違いを意識せずに返済額を決めてしまうと、教育費や生活費の増加、収入減少などが起きた際に、一気に家計が苦しくなるかもしれません。もし年収500万円で返済負担率を35%に設定すると、年間返済額は175万円です。
なお、審査上の返済負担率は額面年収ベースで計算されますが、実際の返済は手取り収入から行うため、家計上の負担はより重く感じられる点に注意が必要です。手取りを約400万円と仮定した場合、175万円 ÷ 400万円で返済負担率は40%を超えてしまいます。
その後に転職で収入が減ったり、教育費がかさんだりして年間の収支が減ってしまうと、手取りに対する住宅ローンの負担が非常に重くなります。子どもの人数、保険料、介護負担といった別の要因によっては、より苦しくなる世帯もあるでしょう。
このように、住宅ローン契約時に見通しを楽観し、年収に対して重すぎる返済額を設定してしまうと、後から住宅ローンの返済がきつくなるリスクが高くなります。
1-2. 金利上昇やボーナス減少といった変動に耐えられない資金計画を組んでいた
住宅ローンの返済がきつくなる背景には、当初の資金計画で毎月の給与や生活費以外の「変動しやすい収入や支出」の想定が甘かったケースが挙げられます。
例えば、住宅ローンで変動金利型を選ぶ場合、低金利が続いてきたことから、返済額も大きくは変わらないだろうと考えてしまうことがあります。
しかし実際には、日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策の解除を決定し、その後も2024年7月、2025年1月、2025年12月に政策金利を引き上げました。長く続いた超低金利局面から、金利上昇を意識すべき局面に移りつつあるといえます。
こういった金利上昇を十分に織り込まないまま資金計画を組んでいると、家計に余裕がない世帯ほど大きな影響を受けやすくなるでしょう。
また、住宅ローンの返済でボーナス払いに頼りすぎる計画も注意が必要です。ボーナスは基本給のような固定収入ではなく、会社の業績や人事評価などに大きく左右される可能性があります。就業規則や支給条件の定め方によっては、業績悪化を理由に賞与が支給されない場合もあります。
金利やボーナスなど、自分ではコントロールしにくい要素に依存しすぎた計画になっていないか、一度冷静に確認してみてください。
1-3. 住宅ローン以外の債務が家計を圧迫している
住宅ローンの返済を苦しくする根本の原因が、住宅ローン以外の債務でないかも確認してみましょう。
「クレジットカードのキャッシング、分割払い、リボ払い」や「消費者金融のカードローン」などは、住宅ローン以外の債務としてよく挙げられます。他には自動車ローン、教育ローン、その他フリーローンなども考えられます。
中でも、クレジットカードのリボ払いや消費者金融のカードローンは、気軽に申し込める上に、少額のつもりで使っていても返済が長引きやすい傾向にある債務です。「少し利用するだけ」という軽い気持ちが、気づかない間に債務をふくらませる結果になることがあります。
住宅ローンの支払いが苦しいと感じた場合、「住宅ローン以外にいくら支払っているのか」「他の債務の返済日や返済額を管理できているのか」を一覧化してみてください。
1-4. 返済開始時には想定していなかった「入居後のコスト」を見落としている
住宅ローンの返済計画を立てるとき、毎月のローン返済額ばかりに目が向き、住み始めた後にかかるコストを十分に織り込めていないことがあります。
入居後に継続的にかかるコストとして代表的なものは、以下のとおりです。
固定資産税
都市計画税
火災保険
地震保険
駐車場代
駐輪場代
マンションの場合は、管理費・修繕積立費などもかかります。
それだけではなく、老朽化や災害により、建物や設備の修繕費、メンテナンス費、リフォーム費用などが想定以上にかかることもあります。こうした費用は、物価高や資材価格の上昇などの影響を受けることもあり、当初の計画段階では見通しを立てにくい点にも注意が必要です。
入居後のコストを十分に見込んでいなかった場合は、今後発生しうる支出も含めて、返済計画を見直す必要があるでしょう。
2. 住宅ローンの返済がきついときにまず検討すべき対処法
住宅ローンの返済がきついと感じても、すぐに家を手放す前に、まずは他の選択肢が取れないか確認することが大切です。返済条件の変更や別のローンへの借り換えなどができないかどうかを検討し、家の売却や債務整理をせずに乗り越えられるかを確認してみてください。
2-1. 収支を詳細に見直し返済が継続できるかどうかを判断する
具体的な対処法に入る前に、まずは現在の家計を詳しく見直し、「節約や家計改善で立て直せる段階なのか」「金融機関や専門家に相談すべき段階なのか」を客観的に判断しましょう。
確認の際には、銀行口座の通帳、給与明細、クレジットカード明細、保険料の支払額といった、収入と支出をできるだけ漏れなくチェックします。家計全体の収支を正確に見なければ、なぜ返済が苦しくなっているのかを正しく把握できないためです。
リボ払いの手数料や分割払いの金利、クレジットカードの支払い、サブスクリプションなどは、自分が思っている以上の支出になっていることがあります。
必要に応じて、FPなど家計相談の専門家に支出構造を見てもらうのも一つの方法です。ただし、すでに返済遅延のおそれがある場合は、家計面だけでなく法律面も含めて相談できる窓口を選んだほうがよいでしょう。
2-2. 金融機関に返済条件の変更を相談する
家計を確認した結果、「毎月の返済額を少し下げれば立て直せそう」といった場合は、住宅ローンの借入先である金融機関に相談しましょう。月々の返済額や返済方法の変更、返済期間の延長、ボーナス払いの減額など、現在の状況に応じた返済条件に変更できる可能性があります。
「相談すると嫌な顔をされないか」と心配されるかもしれませんが、住宅ローンの返済条件の変更は珍しい相談ではありません。住宅金融支援機構の公式サイトでも、子どもの教育費や会社の業績悪化で困った際には、金融機関に相談するよう案内されています。
むしろ、相談が遅れるほど柔軟な対応が難しくなり、損害金の発生や競売につながるおそれがあります。金融機関側としても円滑な返済を続けてもらうほうがメリットが大きいため、返済継続の可能性がある場合は返済方法変更の提案を受けられる可能性があります。
住宅金融支援機構の2025年度の調査によると、利用した住宅ローンの返済負担率(年間返済額 ÷ 世帯年収で計算)は、「15%超20%以内」が24.3%でもっとも多く、「25%以内」を合計すると77.5%を占めています。一般に、利用者はこの程度の負担率帯に収まっているケースが多いため、条件変更を検討する際の目安として意識してみてください。
2-3. 借り換えが可能かを確認する
返済条件の見直しと並んで検討しておきたいのが、住宅ローンの借り換えです。住宅ローンの借り換えとは、新しい住宅ローンを組み直し、その借り入れで現在の住宅ローンを繰上返済してローンを切り替えることです。
現在より低い金利の住宅ローンや、自分の家計に合った返済条件に切り替えられれば、毎月の返済額や総返済額が軽くなる可能性があります。
ただし、住宅ローンの借り換えは誰でも簡単にできるわけではありません。なぜなら、新しいローンを利用するには、再度審査に通過する必要があるためです。
例えば、すでに住宅ローンを滞納していて今後も返済の見通しが厳しい状況では、借り換えのハードルは原則として高くなる傾向があります。審査に通過したとしても、借入残高の2.2%程度の借換手数料や、登記にかかる登録免許税・司法書士報酬、全額繰上返済手数料などの諸経費として、平均30万円から100万円程度かかります。
また、月々の返済額や金利が下がったとしても、返済期間が延びて総返済額が増えてしまうケースも想定されるでしょう。
住宅ローンの借り換えは、毎月の返済額だけではなく返済期間や総額まで確認し、「本当に借り換えが自分に有利になるのかどうか」を慎重に検討してください。金融機関の窓口や専門家に相談し、返済シミュレーションなどを見てから判断することを推奨します。
弁護士・司法書士をお探しなら
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」
2-4. 住宅ローン以外の債務を解決できないかを確認する
住宅ローン以外の債務の支払いがきつい場合は、まずは住宅ローンよりもそちらの問題を先に解決できないか検討してみましょう。
とくに、以下の債務は、住宅ローンより高い金利帯で利用しているケースも多く、家計を圧迫しやすい傾向が実務上よく見られます。
クレジットカードのリボ払い
キャッシング
消費者金融のカードローン
このような借金がある場合は、まず金利や毎月の返済額を確認し、返済負担を下げる方法がないかを考えることが大切です。たとえば、複数の借金がある場合は、おまとめローンなどで借金を一本化する方法があります。
借金の一本化とは、複数社からの借入を1社にまとめることで、返済日や返済先を整理し、毎月の返済管理をしやすくする方法です。現在よりも低い金利で一本化できれば、利息負担や毎月の返済額を抑えられるケースもあります。
また、クレジットカードのリボ払いやカードローンについては、カード会社や金融機関に相談することで、返済方法や支払い条件を見直せる場合もあります。家族から一時的な援助を受けられる状況であれば、高金利の借金を先に減らして住宅ローンの返済原資を確保するのも選択肢の一つです。
ただし、おまとめローンを利用するには審査があり、必ず借り換えできるとは限りません。また、すでに返済が滞っている場合や、多重債務の状態になっている場合は、借金の一本化だけでは解決が難しいこともあります。
「住宅ローン以外の返済もきつい」「借金の返済を続ける見通しが立たない」といった場合は、後述する任意整理や個人再生などの債務整理を検討するとよいでしょう。
2-5. 利用できる公的支援制度や保険の保障を確認する
住宅ローンの返済がきついとき、住宅ローンそのものを直接補助してくれる公的制度は多くありません。
一方で、失業、病気、休職、子育て、介護などが原因で家計が悪化した場合には、利用できる支援制度が見つかることがあります。
これらは住宅ローンの返済額を直接下げる制度ではありませんが、生活費や社会保険料などの負担を軽減し、その分を返済原資に回せる可能性があります。以下では、公的支援制度や保険の保障をいくつか見ていきましょう。
【雇用保険の基本手当】
離職後、求職活動を行っている間の生活を支えるために、年齢や賃金に応じた額が一定期間支給される制度です。
【傷病手当金】
会社員などが病気やケガで働けなくなった場合に、支給開始日から通算1年6カ月の範囲で給付を受けられる制度です。
【国民年金保険料の免除・納付猶予制度】
前年度の所得が一定額以下になったり、失業したりした場合に、国民年金保険料の納付について、免除(全額、4分の3、半額、4分の1のいずれか)または猶予を受けられる制度です。
【児童手当】
0歳から高校生年代までの児童を養育している場合に支給される手当で、3歳未満は月15,000円、3歳以上高校生年代までは月10,000円、第3子以降は月30,000円です。
【所得補償保険や就業不能保険】
病気やケガで働けなくなった場合の収入減少に備える民間保険です。保険金の支払条件や補償内容は商品ごとに異なるため、加入中の保険があれば内容を確認しておきましょう。
このほかにも、自治体独自の支援制度や勤務先の福利厚生制度、民間保険の保障が使える場合があります。
3. 住宅ローンの返済がきつくても自宅に住みながら対処する方法
返済条件や家計の見直しだけでは住宅ローンの返済がきつい場合でも、すぐに自宅を手放して出ていかなければならないとは限りません。団体信用生命保険の適用、任意整理、個人再生などの方法で、自宅に住みながら住宅ローンの返済に対処できる可能性があります。
3-1. 住宅ローン以外の借金を任意整理する
住宅ローン以外の借金を任意整理することで、住宅を手放さずに返済原資を確保できる可能性があります。
任意整理とは、クレジットカード会社や消費者金融などの債権者と直接交渉し、将来利息カットや返済方法の見直しなどを求める手続きです。
住宅ローンは不動産に抵当権が設定されているため、任意整理によって条件変更を行うことは一般的に難しいとされています。
一方で、他の債務の任意整理は住宅ローンの返済条件自体には影響しないため、住宅ローン以外の債務を任意整理したことだけで、直ちに住宅ローンの返済条件が変更されるわけではありません。
リボ払いやカードローンなどの高金利債務を整理することで、毎月の返済負担を軽くし、その分を住宅ローンの支払いに回すことが可能です。
ただし、任意整理をした場合は、その事実が信用情報機関に異動情報として登録され、新しいローンやクレジットカードの審査で不利になる可能性が高くなります。
また、任意整理は債権者側が交渉を断るケースも珍しくなく、応じたとしても元本そのものを大きく減らす手続きではない点には注意が必要です。
3-2. 個人再生の住宅ローン特則を利用する
個人再生手続きにおける住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用できれば、住宅ローン以外の債務を圧縮しつつ、自宅を維持できる可能性があります。
個人再生とは、将来にわたり継続的または反復して収入を得る見込みがある人が、住宅ローンを除く一定額以下の借金について、裁判所の関与のもとで再生計画を立て、原則3年から5年で返済していく手続きです。
住宅ローン特則が認められると、住宅ローンは原則として減額の対象外となり、従来の契約通りに返済を続けながらそれ以外の債務について圧縮を受けられます。
例えば、住宅ローンのほかにクレジットカードやカードローンなどの借金がある場合、住宅ローンは原則としてそのまま返済を続けつつ、住宅ローン以外の借金について圧縮を目指すことになります。
住宅を失わずに個人再生の恩恵を受けられるのは、住宅ローン特則の大きなメリットです。ただし、住宅ローンの滞納状況や収入見込みなどによっては適用できない可能性があります。
また、適用できたとしても、住宅ローンの返済総額そのものは何も変わりません。任意整理と同じく、信用情報機関に異動情報が登録される点にも注意が必要です。
「住宅ローン特則が使えるかどうか」「そもそも個人再生が有効な状況なのか」といった判断は、弁護士や司法書士などの専門家と相談しながら慎重に決めるのがよいでしょう。
3-3. リースバックが利用できないかを検討する
リースバックとは、不動産会社に自宅を売却したうえで、その不動産会社と賃貸借契約を結び、賃借人として同じ家に住み続けられる仕組みです。
リースバックなら、自宅の売却代金を住宅ローンの返済原資に充てたうえで、環境を変えずに生活を続けられるメリットがあります。また、資金が貯まった後に売却した自宅を買い戻すことも可能です。
一見便利なサービスに見えますが、リースバックはあくまで「自宅に住み続ける方法」であり「自宅を所有し続ける方法」ではありません。住宅ローン残債がある場合は、抵当権抹消や売却条件について金融機関との調整が必要になることがあります。
さらに、売却後の家賃が従前の返済額より高くなるケースや、売却代金でローンを完済できず残債が残るケースもあります。利用する場合は、一時的な住み替え対策なのか、将来的な買い戻しを視野に入れるのかまで含めて慎重に検討しましょう。
3-4. 団体信用生命保険の適用を確認する
「住宅ローン契約者の夫が亡くなってしまった」「仕事が原因で身体障害を負ってしまった」といった場合は、債務整理を考える前に、まず団信や加入している保険の保障対象に該当しないかを確認すべきです。
団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が死亡した場合や高度障害状態(スポーツや仕事中のケガなどで車椅子生活になったなど)に該当する場合に、住宅ローン残債の返済が全額不要になる生命保険です。
基本プランに加え、契約者の配偶者が対象になるペア連生団信や、3大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)も補償範囲になる新3大疾病付機構団信があります。
団体信用生命保険は、健康上の理由などがない限り、民間の住宅ローンでは加入が求められることが多いです。要するに、住宅ローンを組んでいる方は、所定の要件を満たせば補償を受けられる可能性があります。
4. 住宅ローンの返済が難しい場合に自宅を手放して生活を立て直す方法
住宅ローンの残債や返済状況によっては、自宅を手放して生活再建を図ったほうがよいケースもあります。住み慣れた自宅を失うという大きなデメリットはありますが、売却代金を返済に充てたり、法的整理によって債務の免責を受けたりできる可能性があるためです。
4-1. 自宅を任意売却する
任意売却とは、住宅ローンの完済が難しい場合に、金融機関の合意の下で抵当権を抹消して、自宅を売却する方法です。
任意売却であれば、競売よりも市場価格に近い条件(一般的には市場価格の8割から9割)で売却できる可能性が高くなります。また、競売よりも売却時期や引っ越し時期について調整がしやすい点もメリットです。
ただし、任意売却には金融機関の合意が必要であり、売却価格や利害関係者との調整状況によっては成立しないこともあります。
また、合意を得て売却活動を始めても必ず売れるわけではありません。任意売却の手続きを進める場合は、任意売却の実績が豊富な不動産会社や専門家に相談することが重要です。
なお、任意売却は売却代金で住宅ローンを完済できないオーバーローンの状態で行われることも多く、その場合は売却後も残った債務の返済義務が続きます。
4-2. 自己破産で住宅ローンを含めたすべての債務を免除してもらう
住宅ローンを含めて、すべての債務について返済の見通しが立たない場合は、自己破産の検討も視野に入ります。
自己破産とは、支払不能状態にある人が、裁判所を通じて債務の免責を求める手続きです。自己破産が認められれば、原則として多くの債務について支払義務の免除を受けられるため、生活再建の大きなきっかけになります。
ただし、自己破産には個人再生の住宅ローン特則のような制度がないため、原則として自宅は手放さなければなりません。
また、処分見込みが一定額以上の財産は処分対象となる可能性があり、信用情報機関に自己破産した旨が登録されるといった、さまざまなデメリットがあります。さらに、浪費やギャンブルなどは免責不許可事由になり得るほか、養育費や一部の損害賠償債務など、免責の対象にならない債務もあります。
このように、自己破産は生活再建の有力な手段である一方で、不利益も大きい手続きです。実際に申し立てるべきかどうかは、弁護士や司法書士と相談しながら慎重に判断するのがよいでしょう。
5. 住宅ローンの返済がきついからといってやってはいけない行動
住宅ローンの返済がきついからといって、問題の先送りや他の借金で返済原資を補うといった行動は避けましょう。根本的な解決にならないばかりか、現状よりもさらに問題が大きくなるリスクがあります。
5-1. 問題を先送りにして滞納を重ねる
もっとも避けたいのは、放置してもどうにかなるだろうと考えて、問題を先送りにして滞納を重ねることです。
結論から言えば、放置を続けると、最終的に法的措置や競売手続に進む可能性が高くなります。法的措置を取らなければ、債権を回収できず損失が大きくなる危険性があるためです。
滞納が1カ月程度続き、督促や法的措置の予告である催告も無視し続けると、まず「期限の利益の喪失」となって、分割払いができる権利を失います。つまり、金融機関は残りの住宅ローンの一括払いを請求できるようになります。
すでに滞納しているこの段階では一括返済が現実的に難しいケースが多いため、次に行われるのが住宅ローンの保証会社による代位弁済(保証会社が代わりに住宅ローンの残債を支払う)です。そして、代位弁済後は保証会社が裁判所に競売を申し立て、競売で自宅を売却し債権を回収します。
このように、住宅ローンの返済問題を先送りにしても何も解決しません。むしろ対応が遅れるほど、解決に必要な負担が大きくなってしまいます。
返済が厳しいと感じた時点で、金融機関や専門家へ早めに相談することが重要です。
5-2. カードローンなど他の借金で住宅ローンの返済や生活費の支払いを行う
住宅ローンの返済がきついからといって、住宅ローンの返済や生活費をカードローンなど他の借金で埋め合わせるのは危険です。
一時的にはその場をしのげるように見えても、多くの場合、「住宅ローンよりも高金利の借り入れが増えている」という状況になります。繰り返すほどに返済総額は膨らんでいき、より苦しい状況に陥ってしまうでしょう。
さらに、住宅ローン返済のための借金を返すために、別の借り入れをしてしまうと、「多重債務」になってしまいます。
弁護士実務でも、多重債務の相談は少なくありません。すでに相談者だけではどうしようもないところまで追い込まれているケースも少なくありません。
住宅ローンの返済が厳しいときは、新たな借り入れでつなぐのではなく、金融機関への相談や債務整理の検討を優先すべきでしょう。
5-3. 住宅を無断で賃貸に出して収益化する
住宅ローンが残っている自宅を、金融機関に無断で第三者へ賃貸して収益化するのは避けるべきです。居住用住宅ローンでは、融資を受けた本人や家族が居住することが前提とされていることが多く、無断賃貸は契約違反になるのが一般的です。
もし居住用以外の用途での借り入れを認めてしまうと、住宅ローンで投資用や事業用の建物を購入できてしまいます。住宅金融支援機構のフラット35も、住宅の建設や購入のための貸し付けであることが融資対象の基準となっています。
「住宅ローンの返済がきつい場合、金融機関は無断転貸を黙認する」といった噂が存在しますが、当然に黙認されるものではありません。
ただし、「転勤などで自宅に住めなくなった」「賃貸併用住宅を取得する」といったケースでは、事前の届け出や手続きを経て賃貸が認められる可能性があります。どうしても賃貸活用を検討したい事情があるなら、自己判断で進めず、必ず金融機関に事前に相談してください。
5-4. 甘い文言を掲げる怪しい業者・サービスは利用しない
住宅ローンの返済がきつくなると精神的に追い詰められてしまい、「金利ゼロでらくらく返済」「審査なしの即日融資でお金を借りられる」といった文言を掲げる業者やサービスに引き寄せられやすくなります。
しかし、甘い文言を掲げる業者やサービスは、違法・脱法的な貸し付けや、債務者側に不利な条件の契約であるケースも珍しくありません。金融庁でも、ヤミ金の手口の一つとして注意喚起が行われています。
返済に困って視野が狭まっているときほど、自己判断だけでは悪質な業者を見抜けず、不利な条件の契約を結ばされるリスクが高まります。返済が滞った場合は、甘い誘いには乗らずに必ず金融機関や弁護士などに相談するようにしましょう。
6. 住宅ローンの返済がきついときに弁護士などの専門家に相談するメリット
住宅ローンの返済がきつい場合は、債務整理に強い弁護士などの専門家に相談することを推奨します。債務整理の専門家であれば、状況に応じた解決策を整理してもらえるほか、手続きの進め方について助言を受けたり、必要に応じて代理や書類作成の支援を依頼したりできます。
6-1. 債務整理以外にも状況に応じた解決策を整理してもらえる
債務整理に強い弁護士などの専門家は、最初から債務整理ありきで解決策を提案するわけではありません。家計状況、滞納の有無、他の借金の有無、自宅へのこだわりの強さなどを総合的に踏まえて、どの選択肢が現実的かを整理してくれます。
例えば、債務整理に強い専門家であれば、「現実的な返済計画や対応方針の整理」「金融機関との交渉方針の整理や必要に応じた対応の支援」「利用できる公的支援の紹介」などに対応してくれます。
6-2. 債務整理を検討する際にどれを選ぶべきかを専門的に判断してくれる
債務整理を具体的に検討する際にも、弁護士などの専門家であれば、どの債務整理を選ぶべきかの判断や、債務整理手続きの代理・サポートといった相談に対応できます。
例えば、個人再生であれば、「住宅ローン特則適用の判断」「裁判所に提出する再生計画の提案・作成」「裁判所への申立て」などの依頼が可能です。任意整理であれば、交渉先の債権者の選定や、交渉の代理などを任せられます。
債務整理の判断や手続きには、債務実務や法律に関する専門的な知識が必要です。この判断を自分だけで行うのは難しく、専門家に見通しを示してもらう意味は大きいといえます。
7. 住宅ローンがきつい場合に関するよくある質問
Q. 住宅ローンは1カ月滞納しただけですぐに差し押さえになりますか?
住宅ローンを1カ月滞納しただけで、すぐに自宅が競売になるわけではありません。一般には、まず督促や催告が行われ、その後も滞納が続くと、期限の利益の喪失、一括請求、保証会社による代位弁済、競売申立てへ進む可能性があります。早めに金融機関へ相談することが大切です。
Q. まだ滞納はないですがそのタイミングでも弁護士に相談してもよいでしょうか?
むしろ、滞納前の早い段階で相談したほうがよいでしょう。返済条件の変更、住宅ローン以外の債務整理、借り換えの検討など、早いほど取り得る選択肢が広がりやすいためです。
弁護士への相談のハードルが高い場合は、まず金融機関や全国銀行協会の相談窓口、自治体の相談窓口に連絡してみる方法もあります。
Q. 弁護士に相談したいのですがお金がなければ難しいでしょうか?
一定の収入・資産基準などを満たせば、法テラスの無料法律相談を利用でき、同一問題について3回まで、1回30分の無料相談が可能です。
また、弁護士や司法書士に依頼する場合も、民事法律扶助による費用立替制度を利用できることがあります。ただし、立替制度には収入・資産などの要件があります。
8. まとめ|住宅ローンの返済がきついと感じたら滞納前の相談が重要
住宅ローンの返済がきついと感じても、すぐに自宅を手放さなければならないとは限りません。滞納前であれば、収支の見直し、返済条件の変更に関する相談、借り換え、住宅ローン以外の債務整理など、状況に応じて検討できる手段は複数あります。
すでに滞納が始まっている場合でも、個人再生の住宅ローン特則や任意売却など、自宅を残す方向も含めて検討できる対応があります。
一方で、問題を先送りにしたり、他の借金で住宅ローンの返済をつないだりすると、状況がかえって悪化するおそれがあります。対応が遅れるほど選択肢は狭まりやすいため、返済が厳しいと感じた時点で、金融機関や弁護士などの専門家に早めに相談することが大切です。
(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す