競売にかけられた家はどうなる?売却・退去までの流れや対処法

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自宅が競売にかけられ、落札者が代金を納付すると明け渡さなければなりません(c)Getty Images
住宅ローンやその他の借金を返済できないまま、債権者(住宅ローンなどの貸し付けをしている金融機関等)からの督促や催告を無視し続けると、裁判所から「家を差し押さえて競売にかける」という内容の通知が届く可能性があります。 家が競売にかけられても、すぐに追い出されるわけではありません。しかし、何もせずに放置すると、最終的には家が第三者に売却されて住み続けられなくなるおそれがあります。 「できれば家を手放したくない」「競売で安く売られるのを避けたい」と考えるなら、手遅れになる前に行動することが大切です。 競売にかけられた家はどうなるのか、売却・退去までの流れ、競売を避ける方法や売却後に備えるための対処法について、弁護士がわかりやすく解説します。

目 次

1. 競売にかけられた家はどうなるのか

1-1. 競売中も家に住めるが売却や担保設定をしても競売は止められない

1-2. 買受人が代金を納付すると原則として家を明け渡す必要がある

1-3. 代金納付後も退去しないと引渡命令や強制執行へ進む

2. 滞納から競売による売却・退去までの流れ

2-1. 督促状や催告書が届く

2-2. 一括返済請求や代位弁済通知が届く

2-3. 競売開始が正式決定したら競売開始決定通知が届く

2-4. 執行官による現況調査が行われる

2-5. 日程が決まると入札期間や開札期日が通知される

2-6. 売却許可決定後に買受人が代金を納付し所有権が移転する

2-7. 家に住んでいる場合は退去の準備をする

2-8. 家がなくなっても残りの借金の返済を続ける

3. 通常売却と比べた競売のデメリット

3-1. 売却価格が安くなり借金が多く残る可能性がある

3-2. 売却代金を引っ越し代などに自由に使えない

3-3. 売却や退去の時期を自分の都合で調整しにくい

3-4. 周囲に競売の事実を知られる可能性がある

4. 家が競売にかけられた・かけられそうな場合の対処法

4-1. 家の所有権を残したい場合は早期相談・個人再生を検討する

4-2. 家を手放してもよい場合は通常売却・任意売却を検討する

4-3. 家を手放した後も住み続けたい場合は親族間売買・リースバックを検討する

5. 競売にかけられた家に関するよくある質問

6. まとめ|家が競売にかけられて返済も苦しいなら専門家へ早めに相談しよう
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1. 競売にかけられた家はどうなるのか

競売にかけられた家は、買受人(競売で家を落札した人)が代金を納付すると、その買受人に所有権が移ります。競売開始と同時に家から出ていく必要はないものの、手続きが進めば原則として退去することになります。

1-1. 競売中も家に住めるが売却や担保設定をしても競売は止められない


競売のために裁判所が自宅を差し押さえても、自分および家族の居住や電気・水道の利用といった日常生活は、原則としてこれまで通り続けられます(民事執行法第46条第2項)。雨漏りの修理や割れた窓の交換など、通常の維持・修繕の範囲での工事も一般的には可能だと考えられます。

一方、差し押さえ後に所有者の判断だけで家を売却したり、新たな担保を設定したりしても、すでに始まっている競売を止めることはできません。

例えば、家を売却して新しい買主の名義に切り替えても、後に競売の落札者が代金を払えば所有権は落札者に移り、新しい買主は家を追い出されてしまいます。また、新たな抵当権(融資の担保)を設定しても競売には勝てず、競売完了とともにその権利は消去されます。

こうした「買ったのに家を奪われる」「担保が無効になる」という致命的なリスクがあるため、差し押さえがついたままの家を買う人や、それを担保に融資する金融機関を見つけるのは現実的に困難です。

競売にかけられた家を競売以外の方法で売却するには、債権者と調整して競売の申立てを取り下げてもらい、必要に応じて抵当権や差し押さえを外す必要があります。

1-2. 買受人が代金を納付すると原則として家を明け渡す必要がある


売却許可決定が確定した後、買受人が代金を納付した時点で、登記手続きが完了していなくても買受人へ所有権が移ります(民事執行法第79条)。これにより、元所有者は所有権に基づいて家に住み続けたり売却・担保設定したりできる権利を失い、原則として家を明け渡さなければなりません。

買受人が代金を納付する前であれば、競売を止められる余地はまだ残っています。

ただし、開札(入札書を開封すること)後に債権者が競売を取り下げるには、買受人など法律上必要な人の同意が原則として必要です。手続きが進むほど競売を止める条件が厳しくなるため、競売による売却を避けたい場合は、できるだけ早い段階で対応する必要があります。

1-3. 代金納付後も退去しないと引渡命令や強制執行へ進む


買受人が代金を納付した後も元所有者が退去せず、家を引き渡さない場合、買受人は裁判所に不動産引渡命令を申し立てることができます。元所有者が占有を続けると買受人は建物を自由に利用できないため、退去について別段の合意がない限り、買受人が引渡命令を申し立てずに放置することは通常考えにくいでしょう。

事案によって前後するものの、書類や占有状況に問題がなければ、引渡命令の申立てから1週間前後で正本が届きます。正本が送達した日の翌日から起算して1週間以内に不服申立て(執行抗告)を行わなければ、命令が確定します。

命令が確定すれば、買受人は強制執行の申立てが可能です。強制執行が行われると、最終的には元所有者は退去させられ、家財が建物から搬出された上で、家が買受人へ強制的に引き渡されます。

【競売手続きにおける明渡猶予制度について】
明渡猶予制度とは、借りて住んでいる建物が競売で売却された場合に、その建物に住んでいて一定の要件を満たした賃借人に対し、原則として6カ月間、明渡しの猶予を与える制度です。

あくまで建物を借りて住んでいる賃借人を守るためのものであり、競売にかけられた自宅に住んでいた元の所有者やその家族には原則として適用されません。

2. 滞納から競売による売却・退去までの流れ

滞納による競売の流れについての図表。債権者からの督促後も返済されない場合、競売の申立てや現況調査、入札などを経て落札者が決まり、不動産が明け渡されます
滞納による競売の流れについての図表。債権者からの督促後も返済されない場合、競売の申立てや現況調査、入札などを経て落札者が決まり、不動産が明け渡されます

住宅ローンなどを滞納してから、競売手続きを経て家を明け渡すまでには、おおよそ1年から1年半かかると言われています。手続きの段階ごとに取れる対策が変わるため、自分がどの段階にいるのか、どのような対応が可能なのかを把握することが大切です。

なお、競売には抵当権などに基づく「担保不動産競売」と、判決などに基づく「強制競売」があります。競売を申し立てるまでの経緯は異なりますが、競売手続きの基本的な流れは同じです。

以下では、主に住宅ローンの滞納から担保不動産競売に進む流れを解説します。

2-1. 督促状や催告書が届く


住宅ローンなどの返済を滞納し、金融機関などの債権者から電話やメールで届く入金案内も放置していると、督促状や催告書が届きます。

督促状とは、滞納している金額や支払期限などを示して返済を求める書面です。一般的には、滞納から1カ月から2カ月で届くことが多いです。

滞納がさらに続き、指定された期限までに支払わなければ、一括返済を請求することや、法的手続きへ進む可能性があることを記載した催告書が送付される場合があります。債権者によって扱いは異なるものの、一般的に催告書は督促状よりも緊急度の高い書面です。

督促状・催告書が届いた段階なら、返済について債権者と話し合う余地や時間があります。競売手続きを避けたい場合は、この段階で債権者や弁護士などに相談するのがよいでしょう。

2-2. 一括返済請求や代位弁済通知が届く


滞納が3カ月から6カ月程度続いている場合は、債権者から、期限の利益(契約上の返済日までは、残りの借金をすぐにまとめて返さなくてもよい権利)をすでに喪失したこと、または今後喪失することを予告する通知が届きます。

所定の期日が到来して期限の利益を喪失すると、分割払いを続ける権利を失うため、借金の残額を一括で返済するよう求められるのが一般的です。

保証会社の保証が付いている住宅ローンなどでは、借主が一括返済できない場合、保証会社が借主に代わって債権者にローン残高を支払う代位弁済が行われます。代位弁済が行われると、代位弁済通知が届き、以後は保証会社から返済を求められます。

一括返済が難しく、債権者と家の売却などについても合意できない場合は、債権者から競売を申し立てられるのが通常です。この段階は、競売開始前に債権者と話し合える重要な時期です。

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2-3. 競売開始が正式決定したら競売開始決定通知が届く


債権者による申立てを裁判所が認めると、競売手続きを開始し、家を差し押さえる旨を伝える「競売開始決定通知(競売開始決定正本)」が、家の所有者や債権者などの当事者に届きます。

つまり、競売開始決定通知が届いた時点で、所有する家を対象とした競売手続きは正式に始まっている状態です。

競売が始まっても、債権者との交渉次第では競売とは別の方法による対応について合意し、競売を取り下げてもらえる可能性があります。一方、競売開始決定通知に何も対応せず放置していると、家の所有者の意思に関係なく、現況調査や入札に向けた準備が裁判所によって進められます。

手続きが進むほど交渉や準備に使える時間が少なくなり、取れる選択肢も限られるため、早急な行動が求められるでしょう。

2-4. 執行官による現況調査が行われる


競売開始決定後に行われるのが、裁判所の執行官による現地調査です。現地調査では、家の状態、住んでいる人、家に関する権利関係などが調査されます。

自宅が競売にかけられている場合、執行官が訪問し、同居人に対する聞き取りを行う可能性があります。そのため、同居する家族などに競売の事実を隠し通すことは難しいでしょう。

執行官の調査と並行して行われるのが、評価人(原則として不動産鑑定士)による不動産の評価です。建物自体の価値や周辺環境を調査し、競売における不動産の評価額を算出します。

裁判所は、この評価額に基づいて競売物件の売却基準価額を定めます。

なお、現況調査そのものを拒んだとしても、競売手続きを止めることはできません(民事執行法第57条)。

例えば、施錠して執行官の立ち入りを拒んでも、執行官は必要に応じて鍵を開けるなどして調査することが認められています。調査への立ち会いや質問への回答を拒んだ場合でも、登記記録や現地で確認した情報などを基に競売手続きは進められます。

2-5. 日程が決まると入札期間や開札期日が通知される


現況調査や不動産の評価が終われば、裁判所は開札期日や売却日程を決定します。家の所有者などには、これらの日程が記載された期間入札通知書が届けられます。

競売物件は、期間内に一番高い金額で入札した人が購入候補者となる「期間入札」によって売却されるのが一般的です。期間入札が始まる日の2週間前までに裁判所の掲示板などで公告が行われ、公告日以降に不動産競売物件情報サイトBITで家の情報が公開されます。

2-6. 売却許可決定後に買受人が代金を納付し所有権が移転する


入札期間が終わって開札が行われると、もっとも高い金額で入札した人が最高価買受申出人となります。問題がなければ裁判所が売却許可決定を出し、その決定が確定すると最高価買受申出人は正式に買受人となります。

特別な事情がなければ、指定される代金の納付期限は、売却許可決定が確定した日から1カ月以内です。

売却許可決定後に競売を止めることは、現実的に難しくなります。競売回避の見込みが低い場合は、買受人が代金を納付する前から転居先の確保や家財の整理、売却後も残る借金への対応を優先して進めましょう。

2-7. 家に住んでいる場合は退去の準備をする


買受人が代金を納付した後も元所有者が家に住んでいる場合、家を任意に明け渡すために、買受人と退去日などについて話し合うことがあります。

競売で家が売却されたとしても、裁判所から引っ越し費用が支給される制度などはありません。場合によっては買受人が任意に費用を負担する事例も存在するものの、法律上支払いが義務付けられているわけではないため、自分で準備することを前提に考えておいてください。

また、家を任意に明け渡すための話し合いでも、裁判所が買受人と元所有者の間に入って退去日や鍵の引渡しを調整することはありません。基本的には、当事者同士で話し合う必要があります。

買受人との話し合いでは、希望する明渡日、鍵を引き渡す日、家の中に残された物の処理方法などを確認し、合意した事項は書面に残しておくとトラブルを防ぎやすくなります。

2-8. 家がなくなっても残りの借金の返済を続ける


競売で家が売却されたとしても、その売却代金で借金を完済できない場合は、残った借金の返済を続けなければなりません。

残った借金を返済できる見込みがある場合は、債権者や保証会社と今後の返済方法について話し合います。

借金を返済できる見込みが乏しい場合や、家を失った後の生活が苦しい場合は、任意整理、個人再生、自己破産などの債務整理が必要となる可能性があります。競売後の生活費や家賃も考慮した上で、無理な返済を債権者と約束する前に必ず弁護士に相談してください。

弁護士に相談する際は、手元にある範囲で以下の情報や書類を用意しておくと、現在の状況を説明しやすくなります。

  • 競売開始決定正本や期間入札通知書など、裁判所から届いた書類

  • 返済状況がわかる書類

  • 金融機関や保証会社から届いた請求書・通知書

  • 住宅ローンや代位弁済後の債務残高が分かる資料

  • 借入先、残高、毎月の返済額をまとめた一覧

  • 給与明細、預金通帳、不動産以外の資産に関する資料

  • 連帯保証人や連帯債務者の有無が分かる契約書

相談の際に、上記のすべてをそろえる必要はありません。まずは弁護士に現在の状況を伝え、今後の返済計画や生活設計を見直していきます。

3. 通常売却と比べた競売のデメリット

家が競売にかけられている状態を放置すると、通常売却と比べて以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

3-1. 売却価格が安くなり借金が多く残る可能性がある


競売では、購入希望者が自由に内覧できないことや、引渡しに法的手続きが必要になる場合があることなどを考慮し、売却基準価額(入札の基準になる金額)が減額されるとBITで案内されています。

実際の売却価格は、不動産の状態や入札状況によって異なるものの、通常売却した場合の市場価格の5割から7割程度が目安です。売却価格が安いほど返済に充てられる金額が少なくなるため、売却後に残る借金が多くなる可能性があります。

3-2. 売却代金を引っ越し代などに自由に使えない


競売で得られた売却代金は、競売手続きにかかった費用を差し引いた後、法律上の優先順位に従って借金の返済に充てられます。

競売手続きの費用や借金の支払いを終えた後にお金が余れば、元所有者に渡されます。一方でお金が余らない場合は、売却代金の一部を引っ越し代や生活費として受けとることは原則としてできません。

3-3. 売却や退去の時期を自分の都合で調整しにくい


競売の入札期間や売却の日程は、すべて裁判所が決めています。そのため、「子どもが卒業するまで売却を待ってほしい」「引っ越し先がまだ見つかっていない」といった自分の都合だけで、日程を変更することはできません。

退去日などは、買受人と話し合って調整できる場合もありますが、買受人に元所有者の希望に応じる義務はありません。

3-4. 周囲に競売の事実を知られる可能性がある


競売が始まると、裁判所の執行官などが家を訪問して室内や敷地の状況を調査します。また、家の所在地や、外観・室内の写真はBITで公開されることがあり、物件情報を見て購入を検討する人が現地を訪れる可能性があります。

そのため、同居の家族だけでなく、近所の人や知人などに競売の事実を知られる可能性もゼロではありません。

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4. 家が競売にかけられた・かけられそうな場合の対処法

自分の家が競売にかけられた、またはかけられそうな場合は、現在の返済状況や今後も家に住み続けたいかどうかによって、取れる対処法が変わります。

家の所有権を残したいのか、所有権を手放しても住み続けたいのか、家を売って返済を優先したいのかなどを整理した上で、自分の状況に合う方法を検討しましょう。

4-1. 家の所有権を残したい場合は早期相談・個人再生を検討する


住宅ローンの返済を今後も続けられる見込みがある場合は、債権者に早めに相談しましょう。また、住宅ローン以外にも借金があり、その返済負担を軽減すれば住宅ローンを支払える場合は、借金の金額や返済状況に応じて任意整理や個人再生を検討するのも1つの手です。

【債権者に返済条件の変更を早めに相談する】
収入の減少が一時的だったり、今の収入でも返済額を調整すれば支払いを続けられたりする場合は、住宅ローンを利用している金融機関などの債権者に早めに相談しましょう。返済期間の延長、毎月の返済額の変更、ボーナス返済の見直しなどに応じてもらえる可能性があります。

ただし、滞納が長期化し、期限の利益を喪失したり代位弁済が行われたりして手続きが進むほど、返済条件を変更するための交渉は難しくなります。

返済の見込みが立たなくなってからではなく、返済が苦しくなる可能性を感じた時点で相談することが大切です。

【個人再生の住宅ローン特則を検討する】
個人再生は、法律上の基準に従って借金を減額し、原則として3年、事情がある場合は最長5年で分割返済する手続きです。

しかし、通常の個人再生を申し立てるだけでは、住宅ローンが残っている自宅を失う可能性があります。債権者は、個人再生手続きとは別に抵当権を行使して自宅を競売にかけ、その売却代金から住宅ローン債権を回収できるためです。

そこで、自宅を残しながら個人再生を進めるために設けられているのが、住宅ローン特則です。

住宅ローン特則を利用すると、住宅ローン以外の借金は減額した上で、住宅ローンは別枠として個人再生による減額の対象から外れます(民事再生法第10章)。住宅ローンの返済を原則としてこれまで通り続けることで、抵当権の実行を避けて自宅を残せる仕組みです。

ただし、住宅ローンの元本は原則として減額されないため、今後もローン返済を続けられるだけの収入が必要になります。すでに競売が始まっている場合は、個人再生を申し立てるだけでは競売を止めるのは難しいため、早急に弁護士に相談しましょう。

【住宅ローン以外の借金が負担なら任意整理を検討する】
住宅ローン以外にもカードローンやクレジットカードなどの借金があり、その返済負担を軽くすれば住宅ローンを支払い続けられる場合は、任意整理も選択肢になります。

任意整理とは、債権者と交渉し、将来発生する利息のカットや返済期間の見直しなどによって返済負担の軽減を目指す方法です。整理する借金を選べるため、住宅ローンを対象から外し、住宅ローン以外の借金だけを整理することで、自宅を残したまま家計を立て直すことも目指せます。

ただし、任意整理では借金の元本が大幅に減額されるケースは多くありません。そのため、住宅ローン以外の借金が多額で返済が難しい場合には、任意整理以外の方法を検討するべきです。

4-2. 家を手放してもよい場合は通常売却・任意売却を検討する


家に住み続けることよりも、競売を避けてできる限り多くの借金を返したい人は、家を通常売却または任意売却する方法を検討しましょう。これらを検討する場合は、不動産会社や買主との交渉、売却活動にかかる時間を考慮して、早めに動き出すことが大切です。

【売却代金で住宅ローンを完済できるなら通常売却が可能】
家の売却代金が残りの住宅ローンを上回るアンダーローンの場合や、売却代金に自己資金を加えることで住宅ローンと売却費用を支払える場合は、一般的な不動産売却で家を売れる可能性があります。

通常売却であれば、競売や任意売却よりも高値で売りやすく、家の引き渡し時期が調整しやすいのがメリットです。

通常売却を検討する場合は、複数の不動産会社へ家の査定を依頼し、売却代金や自己資金で住宅ローンを完済できる見込みがあるか確認しましょう。

【売却代金で完済が難しくても任意売却が可能】
家を売っても住宅ローンを完済できないオーバーローン状態でも、債権者と交渉して任意売却ができる可能性があります。任意売却とは、債権者から売却と抵当権の抹消について同意を得た上で、一般の不動産市場で家を売る方法です。

一般的には、通常売却価格の8割から9割程度が相場になるため、競売よりも高値での売却を期待できます。

競売手続き中に、売却条件や抵当権の抹消について債権者と話し合い、債権者が「競売よりもメリットが大きい」と判断すれば、競売を取り下げて任意売却に移行する事例もあります。

ただし、開札後に競売を取り下げるには、最高価買受申出人などの同意が原則として必要です。確実に競売を避けるには、原則として開札前に売却条件の合意や競売の取り下げを済ませる必要があります。

入札や開札が迫る前に、債権者や任意売却を扱う不動産会社へ相談しましょう。

4-3. 家を手放した後も住み続けたい場合は親族間売買・リースバックを検討する


借金が多く、家を売却して返済に充てる必要がある人でも、親族間売買やリースバックなら家を売却しつつ住み続けられる可能性があります。

ただし、いずれも利用条件が厳しく注意点も多いため、自分の状況に合う場合に検討する補助的な方法と考えておいてください。

【親族間売買】
親族間売買は、競売にかけられる前に親や兄弟などの親族に家を売却し、売却後も家賃を支払うなどして住み続ける方法です。

売却代金と自己資金で住宅ローンを完済できる場合は、通常売却の手続きで進められます。完済できない場合は、債権者の同意を得て抵当権を抹消してもらい、任意売却として進める必要があります。

ただし、この方法は家の購入資金を親族が準備できなければ実現できません。一方、市場価格より著しく安く売ると、時価と売買価格との差額について買主に贈与税が課されるなど、税務上の問題が生じる可能性があります。

さらに、債権者への返済を避ける目的で不当に安く売却すると、後から売買自体が問題になるおそれもあります。親族間売買は当事者だけで進めず、不動産会社や弁護士、税理士などに相談しましょう。

【リースバック】
リースバックとは、家を不動産会社などに売却した後、その買主と賃貸借契約を結び、家賃を支払いながら同じ家に住み続ける仕組みです。リースバックなら、家の売却代金を返済に充てつつ、生活拠点を移す必要がなくなります。

ただし、家の所有権は買主に移り、売却後は家賃を支払わなければなりません。契約期間が決められている場合や契約を更新できない場合もあるため、長期間住み続けられるとは限りません。

また、オーバーローンの場合は、任意売却を行うために債権者の同意を得る必要があります。

【親族に競売に参加してもらって落札してもらう】
すでに競売が始まっている場合は、親族が期間入札に参加し、家を落札することも法律上は可能です。なお、債務者本人は、自分の競売物件について買受けの申し出をすることができません(民事執行法第68条)。

ただし、親族だからといって優先的に購入できるわけではありません。不動産会社や投資家などの不動産のプロを相手に、他の購入希望者よりも高い金額で入札する必要があります。

また、親族が落札しても、その家に住み続けられるかどうかは、親族との取り決め次第です。

5. 競売にかけられた家に関するよくある質問

Q. 競売で家が売れ残るとどうなりますか?


先着順で購入希望者を募る特別売却や、再度の期間入札に進む場合があります。

それでも購入希望者が現れず、今後も売れる見込みがないと裁判所が判断した場合は、競売手続きが停止されることがあります。その後、債権者から売却を再開する申し出がなければ、競売手続きは取り消されることがあります。

買受人に所有権が移らないため、家は元の所有者の手元に残ります。ただし、借金や抵当権が消えるわけではありません。

Q. 競売手続き中に自己破産するとどうなりますか?


住宅ローンの担保として家が競売にかけられている場合、自己破産を申し立てても、原則として競売は止まりません。

一方、住宅ローンとは別の借金について、判決などに基づいて家が競売にかけられている場合は、裁判所が破産手続開始決定をすると、原則として競売は止まります。ただし、その後の自己破産手続きで家が別の方法により売却され、手元に残らない可能性があります。

Q. 競売で売却された家を買い戻すことは可能ですか?


買受人が同意すれば、家を買い戻したり、家賃を支払って住み続けたりすることは法律上可能です。

ただし、買受人には再売却や賃貸に応じる義務がありません。買受人の購入目的や希望する売却価格などによっては、交渉がまとまらないこともあり、実現は簡単ではないでしょう。

6. まとめ|家が競売にかけられて返済も苦しいなら専門家へ早めに相談しよう

競売にかけられた家をそのまま放置すると、最終的には買受人が代金を納付した時点で、所有権が買受人に移り、原則として家を明け渡さなければなりません。

競売には、通常売却よりも売却価格が低くなりやすいことや、売却・退去の時期を調整しにくいことなどのデメリットがあります。競売を避けたい場合は、手続きの進行段階や今後の希望に合った対処法を検討しましょう。

競売手続きが進み、滞納期間が長くなるほど、返済条件の変更や任意売却などを選べる余地が少なくなります。裁判所や債権者から通知が届いた場合は、内容と期限を確認し、できるだけ早く行動することが大切です。

まずは現在の滞納状況や競売手続きの進み具合を確認し、債権者へ連絡した上で、必要に応じて不動産会社や弁護士へ相談しましょう。競売後も住宅ローンなどの債務が残り、その返済が難しい場合は、弁護士に相談して債務整理を検討することも選択肢の1つです。

(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

佐々木 一夫(弁護士・税理士)

佐々木 一夫(弁護士・税理士)

弁護士法人アクロピース 代表弁護士・代表税理士
東京弁護士会(登録番号:48554)および東京税理士会(登録番号:155401)に所属する弁護士・税理士。相続や不動産分野を中心に、法律・税務の両面から多数の案件に携わる。書籍の出版や新聞・週刊誌での執筆・監修実績も豊富で、専門的な知見をもとに、読者にとって正確で信頼性の高い情報提供を行っている。
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