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1. 住宅ローン中の家を売ることは可能
住宅ローン返済中の家であっても、条件を満たせば売却が可能です。
住宅ローンを利用して購入した家には、貸し手である金融機関が「抵当権(返済が滞った際に不動産を競売にかけて売却代金を優先的に得る権利)」を設定します。
抵当権が残る不動産には、「購入しても、ある日突然差し押さえられるかもしれない」というリスクが存在します。そのようなリスクがあるため、買い手に警戒されやすく、売却は実質的に不可能なのが実情です。
住宅ローン中の家を売るには、抵当権を抹消できるかが鍵になります。抵当権を抹消する方法は、主に次の通りです。
自己資金などで残りの住宅ローンを一括で完済する
家の売却代金を住宅ローン残債に充てる
任意売却ができないかを金融機関と交渉する
「住宅ローンの返済が難しい」「他の債務返済の原資がほしい」といった場合も、住宅ローン中の家を売却できれば解決につながる可能性があります。
2. 「売却価格」と「ローンの残債」の差額によって家の売却方法が変わる
住宅ローン中の家を売る場合、ローンの状態がアンダーローンかオーバーローンかで売却方法が変わります。
アンダーローンかオーバーローンかは、家の売却価格とローンの残債の差額を見て判断します。
2-1. アンダーローンの状態なら問題なく売却できる
アンダーローンとは、「不動産の売却金額が住宅ローン残債を上回っている状態」のことです。
たとえば、不動産の売却金額が2000万円、住宅ローン残債が1000万円なら、売却金額のほうが1000万円高いためアンダーローンと判断できます。
住宅ローン中の家でも、アンダーローンの状態なら問題なく売却が可能です。家を売ったお金で住宅ローンを完済できるため、貸し手である金融機関にとっても回収不能の心配がありません。
基本的にアンダーローンの状態で売却する場合、金融機関は住宅ローン中の家について抵当権の抹消を認めます。また、住宅ローンや諸経費を支払った後に残った分を、他の債務の返済や引越代などに充てられます。
2-2. オーバーローンの状態なら何らかの対処が必要になる
オーバーローンとは、「不動産の売却金額が住宅ローン残債を下回っている状態」のことです。
不動産の売却価格が1000万円、住宅ローン残債が2000万円なら、残債のほうが高いためオーバーローンと判断できます。たとえ売却価格が上回っていても、そこから仲介手数料や引っ越し代といった諸費用を差し引くと下回るケースがあるため、諸費用までを考慮した売却金額でプランを立てるのがよいでしょう。
一般的にローン中の家を売却する際、「売却価格の4%から7%」の諸費用がかかります。
その内訳は、譲渡所得税などの各税金や仲介を利用した場合の仲介手数料、引越費用などのよくある費用の他に、抵当権抹消登記に関する登録免許税と一括返済手数料です。
住宅ローン中の家がオーバーローンの場合、そのままの状態だと売却がほぼ不可能です。家を売却費用だけでは住宅ローンを完済できないため、金融機関は「全額返済がないまま担保を失う」と警戒し、抵当権の抹消を認めません。
オーバーローンの状態で家を売却するには、任意売却や自己資金での返済といった、何らかの対処が必要になります。詳しくは、次章で解説します。
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3. オーバーローン状態の家を売却する具体的な方法
オーバーローン状態の家は、自己資金による不足分の充当、住み替えローンや無担保ローンの利用、任意売却といった方法で売却できます。
3-1. 売却代金 + 自己資金でローン残債を上回る状態にする
家の売却代金だけでは足りなくても、他の財産を売ったお金や貯金などを合算して住宅ローン残債を上回れば、オーバーローン状態でも売却できる可能性があります。
例えば、売却価格が2000万円、住宅ローン残債が2500万円の場合、500万円以上を工面できれば売却代金 + 自己資金で住宅ローンを完済し抵当権を抹消できます。
この方法なら、任意売却の交渉や追加のローンの利用などは必要ありません。もっともシンプルに、オーバーローン状態の家を売却できます。
とはいえ、返済に必要な自己資金を用意しつつ、支払い後の生活費も十分に確保できるほどの資金力が必要です。足りない分を親族や知人に埋め合わせてもらう場合は、後々トラブルにならないよう返済計画や条件を詳細に話し合ってください。
「そもそも返済原資が用意できないから困っている」といった場合は、任意売却や住み替えローンの利用を検討しましょう。
3-2. 住み替えローンを利用する
住み替えローンとは、「家の売却代金や自己資金でも払いきれなかった住宅ローン残債」と「新しく購入する家の住宅ローン」を合算し、1本のローンとして新たに借り入れる方法です。
住み替えローンを利用するメリットは、次の通りです。
手元に現金がなくても住宅ローンの返済に対応できる
住宅ローン残債の返済を継続しながら、新しい家に住み替えられる
ローンを一本化できるため、二重ローンにならない
住宅ローン控除の対象になる
ただし、住み替えローンの金利は一般的な住宅ローンよりも高い傾向があるうえに、住宅ローン残債と新しい借入との合算額に適用されます。基本的に返済総額が高くなるため、「むしろ毎月の返済負担が重くなってしまった」といったトラブルも少なくありません。
また、新旧ローンの合算額が借入額になることから、ローン残債が多いほど金融機関の審査が厳しくなる傾向があります。「家の売却・抵当権抹消」と「新居の購入・抵当権設定」を同日に行う必要があるため、スケジュール面のタイトさにも注意が必要です。
住み替えローンを検討する場合は、現在の経済状況や今後のライフプランを精査し、リスクに見合うメリットがあるかを慎重に判断しましょう。
3-3. 無担保ローンを利用する
銀行のフリーローンや消費者金融のカードローンといった「無担保ローン」で借り入れ、そのお金で住宅ローンを返済した上で家を売却する方法があります。
ただし、一般的に無担保ローンは住み替えローンよりも金利がさらに高くなります。
借入先や審査結果によっては、法律上の上限金利(借入額100万円以上で15%)が適用されるケースも想定されます。これだけの金利になるとその金利の負担は重く、ほとんどの場合には避けた方がよいでしょう。
住宅ローンの返済が難しい経済状況なら、そもそも審査に通るハードルが高くなるかもしれません。また、総量規制(年収の3分の1までしか借り入れできないルール)に引っかかると、希望額の借入ができなくなります。
無担保ローンを利用する際には、住み替えローン以上に、返済計画の見直しやきわめて慎重な判断が求められます。「こういう方法もある」という程度の認識に留めておき、基本的には他の方法で売却するのがよいでしょう。
3-4. 金融機関と協議して任意売却する
「自己資金が準備できない」「新しくローンを組むのが難しい」といった場合は、住宅ローンの貸し手である金融機関と話し合い、任意売却によってオーバーローン状態の家を売却する方法があります。
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際に金融機関に相談し、合意を得て家を一般市場で売却する方法です。
住宅ローン残債があると、金融機関に抵当権抹消を断られます。しかし、任意売却は競売よりも市場価格に近い金額で売りやすいため、金融機関側としても「差し押さえるよりも任意売却のほうがお金を回収できる」と判断できます。
そのため、任意売却であればオーバーローン状態の家でも売却が可能です。交渉次第では、売却代金のうち引越代金分を残せたり、家の明渡日を実生活への影響が最小限になる日にしてもらえたりなど、さまざまな調整ができます。
ただし、任意売却を行う際には、以下の注意点があります。
原則として、滞納期間が3カ月から6カ月を経過し、金融機関からの「一括返済請求(期限の利益の喪失通知)」が出された後でなければ実施できない
住宅ローンの滞納によって、信用情報機関に異動情報が5年から7年残る(いわゆるブラックリストに登録される)
売却価格は通常売却の8割から9割程度になる
売却価格に対してローン残債が高すぎると金融機関が拒否する可能性が高くなる
連帯保証人がいる場合、連帯保証人の同意が必要になる
任意売却は、一般の売却よりも高度な専門知識や銀行との交渉力が求められます。検討する場合は、任意売却に詳しい不動産会社や弁護士などの専門家へ、早めに相談することを強く推奨します。
4. 住宅ローン中の家を売るまでの具体的な流れ
住宅ローン中の家を売るまでの流れは、次の通りです。
住宅ローン残債がいくらかを確認する
不動産会社に査定を依頼し売却価格を確認する
売却を依頼する不動産会社を選ぶ
売買契約締結・代金決済・残債返済・抵当権抹消登記などを行う
4-1. 住宅ローン残債がいくらかを確認する
最初に住宅ローン残債がいくらかを確認し、「返済原資はどれくらい必要か」「返済の見通しが立ちそうか」などを整理します。
一般的に、住宅ローン残債は以下の方法で調べられます。
毎年定期的に送られてくる返済予定表を確認する
毎年10・11月頃に送られてくる残高証明書を確認する
金融機関のインターネットサービスにアクセスし残債を照会する
金融機関の窓口や電話などで直接確認する
金額を確認する際には、元金の残高だけでなく、利息額や繰り上げ返済手数料(3万円から5万円程度、無料のケースも多い)なども確認しておくことを推奨します。オーバーローンかどうかの正確な判断には、元金以外の支払額も考慮する必要があるためです。
4-2. 不動産会社に査定を依頼し売却価格を確認する
住宅ローン残債を確認したら、次にアンダーローンかオーバーローンかを判断するために売却価格の目安を調べます。
売却価格の目安を調べるには、専門家である不動産会社の無料査定を受けるのがよいでしょう。不動産会社であれば、家の状態、周辺環境、類似取引、地域性などのさまざまな要素を考慮した適切な査定を期待できます。
ただし、査定価格は必ずしも売却価格と同じになるわけではありません。あくまで売主と買主が合意した金額が最終的な売却価格です。
また、不動産会社ごとに対応する地域や評価ポイントが異なるため、1社だけに査定を依頼すると、実際の相場とはかけ離れた価格を提示されるリスクがあります。
そのため、査定は複数の不動産会社に依頼し、査定価格や算出根拠を比較検討して大まかな相場を掴むようにしましょう。
なお、自分の力だけで調査したい場合は、不動産情報ライブラリやREINS market information、その他不動産ポータルサイト(不動産の賃貸・売買関係の情報が集められたサイト)にアクセスし、過去にあった類似不動産の取引情報を確認する方法があります。
とはいえ、あくまで参考金額にしかならないため、基本的には不動産会社の査定を利用することを推奨します。
4-3. 売却を依頼する不動産会社を選ぶ
住宅ローン中の家を売る場合も、通常の不動産と同様に、不動産会社に対応を依頼するのが一般的です。基本的には、査定を依頼した不動産会社の中から選ぶのがよいでしょう。
売却を依頼する不動産会社を選ぶ際に見るべきポイントは、次の通りです。
査定価格が適正か(高すぎると市場相場とかけ離れて売れない可能性がある)
査定の根拠に納得ができるか
報連相が迅速で、誠意ある対応を期待できるか
売却予定の家が所在する地域での取引実績が豊富か
任意売却の場合は、任意売却に関する専門知識や取引実績があるか
また、不動産会社には「仲介業者」と「買取業者」の2種類があります。
仲介業者:媒介契約に基づき、販売戦略立案、広告掲載、買主との条件交渉などをサポートする不動産会社
買取業者:自らが不動産を直接買い取る不動産会社
【仲介業者のメリット・デメリット】
仲介業者のメリットは、市場価格に近い金額で売却しやすい点です。手元に入る現金が買取業者への売却より多くなりやすく、任意売却後の残債の返済や生活の立て直しが進めやすくなります。
一方で、需要が低い不動産だといつまでも売却できないリスクがあります。また、売却まで平均3カ月から6カ月程度かかることから、すぐに現金を得るのが難しいという点もデメリットです。
【買取業者のメリット・デメリット】
買取業者のメリットは、現金化までのスピードです。査定が終わり次第すぐに売買契約を締結できるため、数日から1週間、遅くとも1カ月程度で現金が手に入ります。
また、「老朽化が進んでいる」「事故物件になった」といった、一般の個人からの需要が低い不動産でも、買取に対応する業者は少なくありません。
一方で、買取価格が、仲介での売却よりも6割から8割程度と安くなりやすいのがデメリットです。すでにオーバーローン状態の家を売却する際には、残債に対して売却価格が大きく下まわるリスクがあります。
4-4. 売買契約締結・代金決済・残債返済・抵当権抹消登記などを行う
交渉がまとまり次第、仲介の場合は仲介業者を通じてマッチングした買主、買取の場合は買取業者自身と売買契約を締結します。
売買契約を締結したら、当事者および金融機関などの関係者との予定が合う別日に、あらためて売却代金の決済、住宅ローン残債の返済、抵当権抹消登記、家の引き渡しを行います。
そのため、指定日には売主、買主、不動産会社の担当者、金融機関の担当者、登記手続きを行う司法書士が全員集まります。売主や買主本人の出席が難しい場合は、代理人を選任することが可能です。
まず決済を行い、買主が売主に売却代金を支払います。
決済と同時に、売却代金は住宅ローン残債の返済に充てられます。返済の不足分を自己資金で補う際には、この指定日までに住宅ローンを返済してる口座に入金を完了しておきましょう。
決済や返済手続きが終わったら、「住宅ローン中の家の抵当権抹消登記」と「売主から買主への所有権移転登記」を行います。登記は専門性の高い手続きになるため、司法書士に対応を依頼するのが一般的です。特に希望がなければ、司法書士への依頼は不動産業者が行います。
そして登記申請が完了したら、売主から買主に家の鍵や必要書類などを引き渡します。これで、住宅ローン中だった家の売却は完了です。
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5. 特殊な状況でローン中の家を売る方法
「親が住宅ローン返済中に亡くなった」など、少し特殊なケースにおける売却対応を解説します。
もし親が亡くなって住宅ローン中の家を相続することになった場合、親が「団体信用生命保険」に加入しているかを確認します。団体信用生命保険とは、住宅ローン契約者が死亡や高度障害になった際に、保険金によって住宅ローンを完済する制度です。
団体信用生命保険が適用されれば、住宅ローンが完済された状態で相続できます。
万が一親が団体信用生命保険に加入していなかった場合、住宅ローンの残債は原則として相続の対象です。「他の相続財産で相殺する」「相続放棄する」「他の相続人に引き継いでもらう」といった対応をしない限り、他の財産と一緒に住宅ローンの残債も相続する必要があります。
住宅ローンの残債を一緒に相続した家を売る手順は、これまで解説してきた内容と同様です。また、名義人が亡くなった人のままだと売却ができないため、売却を検討する場合は期限を待たず速やかに相続登記を行いましょう。
6. 住宅ローン中の家を高く売るためのコツ
住宅ローン中の家を少しでも高く売るには、早めの行動や依頼する不動産会社の選定が重要になります。
6-1. 一般売却できるなら任意売却や差し押さえになる前に動き出す
前提として、同じ不動産であれば、任意売却や差し押さえ後の競売よりも一般売却のほうが高く売れます。そのため、一般売却できるのであれば、任意売却や差し押さえになる前に動き出して売却したほうが得になりやすいでしょう。
例えば、自己資金を足せば一般売却が可能(アンダーローンにできる)になる状態であれば、一般売却を選ぶことを推奨します。
6-2. 任意売却を検討する際は実績がある不動産会社に相談する
任意売却は通常の不動産の売却と異なる部分が多く、独自の交渉術や販路、人脈がないと売ることすら困難になるリスクがあります。
そのため、任意売却を検討する際には、不動産会社の中でも任意売却の実績があるところに相談することが重要です。
任意売却の実績を持つ不動産会社を見極めるには、以下のポイントを意識しましょう。
任意売却の取引実績数
担当者の任意売却に関する専門知識
任意売却に強い弁護士や司法書士との提携
7. 住宅ローン中の家を売る際に注意したいポイント
住宅ローン中の家を売る際には、通常の不動産とは異なる注意点がいくつか存在します。
7-1. オーバーローンでの売却は債権者や連帯保証人としっかり交渉する
オーバーローン状態の家の売却を成功させるには、金融機関などの債権者や住宅ローンの連帯保証人との交渉をうまく進められるかが重要です。
前提として、金融機関の合意がなければ抵当権が抹消できず、売却そのものが進められません。債権者とオーバーローン状態の家の売却について話し合う際には、以下のポイントを意識しましょう。
不動産会社の査定結果など、根拠のある売却価格を提示し、妥当性を正確に評価してもらう
家を売却した後に残る支払いについて、具体的な返済計画を提案する
売却代金からの引越代金捻出の可否、引き渡し時期、その他の売却条件も確認する
住宅ローンに連帯保証人を設定している場合、家を売却するにはその連帯保証人の同意も必須です。連帯保証人にも売却価格や返済計画などを共有し、売却に納得してもらえるよう慎重に話し合ってください。
7-2. 売り先行と買い先行のうちメリットが大きいほうを選ぶ
住んでいる家を売却する場合、「売り先行」と「買い先行」という2つのパターンがあります。
売り先行:家を売却してから新居を購入すること
買い先行:新居を購入してから家を売却すること
【売り先行のメリット・デメリット】
売り先行のメリットは、買い先行よりも資金計画を立てやすくなる点です。売り先行なら、確定した売却代金に応じた新居を選んで購入できます。
一方で、すぐに新居が見つからない場合、仮住まいを探す必要があります。
新居が決まるまでの期間が長くなるほど、家賃などの負担が増えるので注意しましょう。また、引越費用が「現在の家から仮住まい」と「仮住まいから新居」の2回発生するのもデメリットです。
売り先行は、「新居の購入費用がすぐに準備できないケース」や、「売却を急ぐ必要がないケース」などに向いています。
なお、オーバーローン状態の家を売る場合は、売り先行になることが実務上多いです。買い先行は新旧ローンで二重になりやすく、審査のハードルが高くなることや返済負担が増えることが懸念されるためです。
【買い先行のメリット・デメリット】
買い先行のメリットは、仮住まいに関する費用がかからない点です。現在の家から新居に直接引っ越すため、仮住まい探しや仮住まい中の家賃、引越費用などを気にする必要がありません。
一方で、買い先行は「現在の家の住宅ローン」と「新居購入に必要な住宅ローン」という、二重ローン(ダブルローン)になる期間が発生します。二重ローンは同時に2つのローンを組むことによる高い返済負担率や、完済時年齢が70歳から80歳という制限などの影響で、審査基準が厳しくなる傾向があります。
また、住宅ローン中の家が売れない期間が長くなるほど、空き家にかかる固定資産税や維持管理費などの負担が大きくなるのもデメリットです。
買い先行は、「二重ローンでも支払える能力・財産があるケース」や、「売却先をじっくり選びたいケース」などに向いています。
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7-3. 売った後も家に住みたいならリースバックを検討する
「住宅ローンの支払いは苦しいものの、子どもが今の学校を卒業するまで転校は避けたい」など、家を売った後も住み続けたい場合はリースバックの利用を検討してみましょう。
リースバックとは、不動産会社に家を買い取ってもらった後、不動産会社と賃貸借契約を結んでその家に住み続ける仕組みです。
リースバックなら、住宅ローン中の家を売った後も、同じ場所で生活を続けられます。経済状況に余裕ができれば、同じ家を買い戻すことも可能です。
ただし、リースバックには以下の注意点があります。
売却価格は買取業者と同程度(仲介での売却価格の6割から8割)になる
オーバーローン状態のままだとリースバックが認められないケースが多い
月々の家賃のほうが住宅ローンの月々の返済額よりも重くなる可能性がある
買い戻し価格は売却価格の1.1倍から1.3倍と高めになる
リースバックを検討する際は、売却価格や家賃額などを確認し、長期的な収支シミュレーションを行った上で判断することを推奨します。
7-4. マイホームを売ったときの特例などの税制上の優遇措置が使えないか確認する
住宅ローン中の家を売却して譲渡所得が出た場合、通常の不動産と同様にさまざまな税制上の優遇措置の適用が可能です。
以前は適用できる可能性があった、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」や「特定のマイホームを買い換えたときの特例」は、執筆時点では適用期間が終了しており(いずれも2025年12月31日までの売却が対象)、現在は適用できません。
現時点では期間延長は決まっていません。ただし、例年どおりであれば今後の税制改正大綱で延長される可能性もあるため、ここでは併せて紹介します。
なお、確定申告時に申請しなければ、上記の特例はいずれも使えないので注意しましょう。
【マイホームを売ったときの特例】
マイホームを売ったときの特例とは、マイホームを売って発生した譲渡所得に対し、最大3000万円の特別控除を適用できる制度です。
住宅ローンを組む条件がそもそも「住宅の購入であること」であるため、住宅ローン中の家を売る場合は、ほとんどのケースでこの特例を適用できます。
とはいえ、「マイホームとして購入したものの、自分が住まなくなって3年以上経過した」「親子間・夫婦間など特別な関係がある人に売却した」といったケースでは、特例が適用対象外になる可能性があります。
なお、マイホームを売ったときの特例を使えば譲渡所得が0円になるとしても、制度を適用するには確定申告が必須です。
【10年超所有軽減税率の特例】
10年超所有軽減税率の特例とは、売却年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合に、長期譲渡所得の税率よりも低い税率を適用できる制度です。
譲渡所得が6000万円以下の部分を、税率14.21%で計算できます(6000万円超の部分は20.315%)。
【特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例】
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例とは、住宅ローン中の家を売った際、売却金額が住宅ローン残債を下回った場合に、その損失分を他の所得から差し引ける(損益通算できる)制度です。
例えば、不動産の売却価格が1000万円、住宅ローン残債が2000万円なら、損失が1000万円です。特例を用いることで、この1000万円を給与所得や事業所得から控除できます。
もし1度の確定申告で損失分をすべて使いきれなかった場合でも、残りの損失分を売却年の翌年以後3年までは繰り越せます(繰越控除と呼びます)。
仮に給与所得700万円で損失分が1000万円だった場合、700万円を控除し、残った300万円は翌年の所得から差し引くことが可能です。
適用するには、「売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている」「マイホーム売却における売買契約日の前日時点で、償還期間10年以上の住宅ローンがある」といった要件を満たす必要があります。
【特定のマイホームを買い換えたときの特例】
特定のマイホームを買い換えたときの特例とは、マイホームを売却し、代わりに他のマイホームに買い換えた際に、一定の要件を満たすことで譲渡益に対する課税を将来に繰延できる制度です。
例えば、マイホームの譲渡益が2000万円(3000万円で購入し5000万円で売却)だった場合、通常はその2000万円が課税対象になります。
ここで特例を用い、売却代金を超える価格で新居を購入すれば、この2000万円に対する課税を、その新居を将来売却するときまで持ち越せます。本来支払うはずだった税金相当額を、今回の買い替え費用に充てられるのがメリットです。
とはいえ、あくまで税金の支払いを先延ばしているだけであり、納税総額は原則として変わりません。適用要件も多いため、使いたい場合は不動産に強い税理士に相談し、特例が使えるのか、使うメリットがあるかなどを確認しておくのがよいでしょう。
また、マイホームを売ったときの特例や10年超所有軽減税率の特例と併用できない点も注意が必要です。
8. ローン中の家の売却に関するよくある質問
Q. 売却活動中の住宅ローン返済は一旦止まる?
売却活動中であっても、住宅ローンの返済は止まりません。買主と売買契約を締結したとしても、住宅ローンを完済するまではこれまで通り住宅ローンの返済義務を負います。
Q. 住宅ローンの返済が滞って差し押さえられたらどうなる?
金融機関が抵当権を行使し、管轄の地方裁判所に申し立てると、住宅ローン中の家が差し押さえられて強制的に競売に出されます。落札者が決まると、その売却代金が住宅ローンの返済に充当され、抵当権が抹消されます。
しかし競売での売却代金を充てても住宅ローンが支払いきれない場合は、引き続き返済義務が続きます。返済が難しい場合は、月々の返済金額や返済期間について金融機関と話し合いましょう。
どうしても支払えるめどが立たない場合は、債務整理に強い弁護士に相談し、自己破産や個人再生などの債務整理を検討することになります。
9. まとめ|住宅ローン中の家を売る場合は不動産会社などの専門家に相談しよう
住宅ローン中の家は簡単に売れないのではと不安に思う人は多いものの、正しい手順と知識があれば売却が可能です。
アンダーローンの状態なら、通常の不動産と同じように売却できます。一方でオーバーローンの状態なら、「売却代金 + 自己資金で住宅ローン残債を完済する」「住み替えローンなどを利用する」「任意売却する」などの対処が必要です。
とはいえ、住宅ローン中の家の売却は、債権者や連帯保証人との交渉、任意売却に関する専門的な手続きなど、さまざまな対応が求められます。
ローンの返済が厳しくなってしまったときは、売却について1人で悩み続けるよりも、まずは不動産会社や金融機関に相談し、不動産価値の確認や返済計画の見直しから始めましょう。プロの知見を借りることで、あなたの経済状況やライフプランに合った売却方法が見つかる可能性が高まります。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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