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1. 闇金とのトラブルは警察に相談できる? 警察は何をしてくれる?
「闇金(ヤミ金)」は、貸金業の登録の有無にかかわらず、出資法に定める金利以上の利息で貸付けを行っている違法業者です。法外な高金利に加え、悪質で執拗な取り立てで借主を苦しめます。
警察は犯罪を捜査する機関です。ただし、民事不介入の原則の観点から、事件性のない個人間のお金の貸し借りのトラブルについては動いてくれません。たとえば「高い金利でお金を借りてしまった」「返済期日が過ぎているので督促を受けている」といった事情だけでは、事件性がないと判断されるため、警察は対応してくれません。
一方で、闇金が刑罰法規に違反するような暴力行為や脅迫行為などをしていれば、それらの行為が犯罪となるため、警察に対応してもらえます。
また、貸金業を営むためには、財務局または都道府県に貸金業の登録をする必要があるものの、闇金のほとんどは貸金業に関して無登録の業者であり、貸金業法違反という罪を犯しています(貸金業法3条1項、同11条1項、同47条2号)。
仮に貸金業の登録をしていても年20%という出資法違反の高金利で貸付けをしていれば、出資法違反(出資法5条2項)という罪を犯しています。この2点を主張するだけでも、警察は動いてくれます。従って、いついくら借りて、いついくら返済したかがわかる書類など、相手が闇金であるとわかる資料を用意することが大切です。
闇金の連絡先がわかれば、警察は闇金に対して「取り立てをやめなければ、法的措置をとる」といった警告の電話をかけてくれます。
ただし、実際に闇金を検挙するまでに至らないケースも少なくありません。闇金の多くは住所や営業所を明かしていないうえ、闇金が使用している預貯金口座や電話番号は他人名義である場合が多いので、身元を突き止める捜査が容易ではないからです。
2. 闇金とのトラブルを警察に相談できるケース
闇金とのトラブルについて警察に相談できるケースは、主に次の7つです。
無断で家の敷地に入られた
暴力を振るわれた
所有物を壊された
脅迫された
違法行為を強要された
家族や職場への嫌がらせがあった
相手が無登録で貸金業を営んでいる
2-1. 無断で家の敷地に入られた
正当な理由なく人の住居に侵入することは住居侵入罪(刑法130条)にあたるため、捜査の対象となります。
2-2. 暴力を振るわれた
闇金業者から殴られた場合などは暴行罪(刑法208条)に該当します。さらに、その暴力によってけがをした場合には傷害罪(刑法204条)にあたるため、いずれも警察の捜査対象になります。
2-3. 所有物を壊された
闇金が自宅の窓やドアを壊した場合などは、器物損壊罪(刑法261条)、場合によっては建造物損壊罪(刑法260条)として捜査対象になります。
2-4. 脅迫された
以前は「返せないなら、腎臓を売れ」「目ん玉を売れ」などといった、闇金からの脅しも多くありました。こうした恫喝は脅迫罪(刑法222条)、場合によっては恐喝罪(刑法249条)と判断され、捜査のメスが入れられます。
闇金の取立行為の多くは執拗かつ脅迫的であるため、その取り立て行為自体が脅迫罪あるいは恐喝罪にあたる場合が多いと言えます。録音などで可能な限り証拠を残しておくとよいでしょう。
2-5. 違法行為を強要された
違法行為の強制は強要罪(刑法223条)にあたり、捜査の対象となります。さらに、強要された行為自体が犯罪に該当する場合は、その犯罪の教唆犯、あるいは共同正犯として捜査されます。
たとえば、闇金から「借金を帳消しにするから預貯金口座を譲り渡せ」「携帯電話を譲り渡せ」と指図されたり、「仕事で返済しろ」と言われるケースがあります。闇金はパチンコの「サクラ」として働く「打ち子」を命じたり、「ほかの闇金の被害者から借金の取り立てができれば、借金を帳消しにしてやる」と言って、取り立てに行かせることもあります。
しかし、これらの指示に従うと闇金の被害者自身も犯罪者となってしまいます。そのため、闇金から上記のような行為を持ちかけられても、その言葉には絶対に従わず、早急に警察に相談してください。
2-6. 家族や職場への嫌がらせがあった
闇金は借主の家族に対する嫌がらせをすることさえあります。その内容によっては犯罪にあたり、捜査の対象となる場合があります。また、職場に対する嫌がらせについては、業務妨害罪(刑法233条、同法234条)に該当すれば捜査されることになります。
2-7. 相手が無登録で貸金業を営んでいる
貸金業を営むには、財務局あるいは都道府県への登録が必要です。無登録営業の場合は、貸金業法違反(貸金業法3条、同法11条1項、同法47条2号)にあたるので、捜査のメスが入ります。
貸金業登録の有無については、金融庁が運営している「登録貸金業者情報検索サービス」で検索できます。「登録貸金業者情報検索入力ページ」にある「登録番号」や「商号・名称」、あるいは「代表者名」や「電話番号」の欄に情報を入力することで、正規の業者か違法な業者かが判明します。
3. 闇金とのトラブルを警察に相談する際の流れ|被害の証拠集めが重要
警察に相談に行く前に、闇金であることを示す資料を準備しておきましょう。通帳の写し、振込明細の控え、メールやLINEのやりとり、メモ書きなど、借りた時期や金額、返済した時期や金額がわかる資料は少なくとも準備する必要があります。また、脅迫的な取り立てにあっている場合には、それがわかる動画や音声を準備しておくのが望ましいです。
そして、それらの資料を持参し、最寄りの警察署の生活安全課に相談してください。持参した資料で相手が闇金であることが確認でき、相手の連絡先がわかれば、警察は闇金に電話をかけ、取り立てを止めるように警告してくれます。場合によっては、これ以上取り立てを続けるならば法的措置をとる、と伝えてくれます。
4. 闇金とのトラブルに関する警察以外の相談先
闇金とのトラブルに関する警察以外の相談先は主に次のとおりです。
闇金対応の経験が豊富な弁護士や司法書士
貸金業相談・紛争解決センター
消費者ホットライン(188)
日本司法支援センター 法テラス
4-1. 闇金対応の経験が豊富な弁護士や司法書士
弁護士や司法書士は、闇金問題に対して最も専門的に法的な対応ができる相談先です。通常の債務整理では、弁護士や司法書士は銀行や消費者金融などの債権者に対して債務整理の依頼を受けたことを告げる受任通知を送って、まず債権者から債務者に対する直接の取り立てを止めるようにします。
闇金の場合も同様で、住所や営業所がわかれば、取り立てを止めるべく、弁護士や司法書士は受任通知を送ります。
しかし、闇金業者の多くは住所や営業所を明かしていません。そこで、弁護士や司法書士は、闇金業者に電話をかけ、取り立てを止めるように話し、債務者が今後借金の支払いは一切しない旨を毅然とした態度で伝えてくれます。弁護士や司法書士からの電話によって、ほとんどの闇金業者は引き下がり、悪質な取り立ては止まります。
また、弁護士や司法書士は闇金への返済に利用されている口座について、「振り込め詐欺救済法」にもとづき、銀行などに口座凍結の依頼をします。この法律は、闇金などの犯罪行為において金融機関の口座が利用された場合にも適用されるためです。
さらに、闇金による貸付けは、ほとんどの場合、年20%という出資法の利息を超える著しい高金利でなされており、これは反倫理的行為として、公序良俗に反し無効(民法90条)となります。そのため、闇金業者の住所がわかる場合には、弁護士や司法書士は闇金業者に対して支払ったお金の返還請求をし、闇金業者が返還しない際には、闇金の口座の仮差し押さえや返還訴訟を提起します。
4-2. 貸金業相談・紛争解決センター
「貸金業相談・紛争解決センター」は、貸金業務に関する借り入れや返済の相談、多重債務者救済の一環としての貸付自粛制度の受付のほか、貸金業者の業務に対する苦情やトラブル解決のための窓口として、日本貸金業協会が運営しています。「闇金への対処法を教えてほしい」などの相談も受け付けています。
4-3. 消費者ホットライン(188)
消費者庁が運営する「消費者ホットライン」は、188番に電話をかけると相談窓口につながります。多重債務問題を含む消費者トラブルの相談が可能で、闇金についても専門の相談員が助言を行います。ただし、解決策を示すことにとどまり、直接交渉は行ってくれません。
4-4. 日本司法支援センター 法テラス
「日本司法支援センター 法テラス」では経済的に困窮していて、収入や資産が一定額以下の場合を対象に弁護士や司法書士との無料の法律相談や費用の立て替えを行っています。法テラスでも闇金トラブルの相談に乗ってもらうことは可能で、弁護士や司法書士を紹介してもらえます。ただし、相談者の収入や資産の調査のため、紹介まで一定の時間がかかります。
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5. 弁護士に闇金被害の相談や対応を依頼したときの費用
弁護士に依頼すると、弁護士費用が発生します。闇金と交渉してもらうことになるため、弁護士費用は高額になるのではという心配もあるでしょう。
しかし、初回限定などで無料相談に応じている弁護士事務所も多くあります。実際に闇金業者の対応を依頼した際の費用は、弁護士事務所によって異なるものの、闇金業者1件あたり税別で2万円前後、2件までで税別合計5万円前後が一つの目安になります。さらに、弁護士費用については分割払いや後払いに対応している事務所も少なくありません。
6. 借金問題を解決できる「債務整理」とは
闇金以外からの借金の返済については、警察に相談しても解決しません。弁護士に依頼し、借金の負担を減らしたりなくしたりする債務整理を行う選択肢があります。主な債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」という手続きがあります。
6-1. 任意整理
任意整理は、個人再生や自己破産とは異なり、裁判所を利用しません。依頼を受けた弁護士が消費者金融やクレジットカード会社といった債権者と交渉したうえで、返済額と支払い方法について合意し、その合意にもとづいて支払っていく方法です。現在では元本の減額はなかなかできないものの、少なくとも合意後に発生する利息(将来利息)をカット、または減額してもらう方向で交渉します。
元本や将来利息の一部を返済しながら、借金などの債務を整理していく方法なので、支払い原資がない場合には向いていません。
6-2. 個人再生
個人再生は、借金などの債務の支払いをできないおそれがある人が裁判所に申立てをして、債務を減額し、減額された債務を3年から5年かけて分割で支払い、残りの支払いを免除してもらう手続きです。最大で借金総額の10分の1まで減額できる可能性があります。
将来、継続的に得る収入を原資として支払う手続きなので、基本的には財産を手放す必要はありません。住宅ローンの残っている自宅についても、住宅ローンを支払いながら、それを手放すことなく残せる「住宅資金貸付債権に関する特則」という規定があります。
将来、継続的に得る収入を原資として支払う手続きなので、安定した収入を得続ける見込みがない場合は、個人再生の利用は認められません。また、住宅ローンや罰金などを除いた債務の総額が5000万円を超える場合にも個人再生は利用できません。
6-3. 自己破産
自己破産は、債務の返済ができなくなった人が裁判所に申立てをして、債務の支払いを免除してもらう(免責)手続きです。原則、自宅を手放すことになるものの、家財道具、一定の金額までの現金、預金、保険、自動車などは手元に残すことができます。
なお、ギャンブルや浪費が借金の原因であれば、破産法が定める免責不許可事由(自己破産を申し立てたとしても、借金の支払いが免除されない理由)があることとみなされます。そのため、当然には免責とならないとされています。
しかし、浪費などの程度によっては、反省文を裁判所に提出したり、裁判所の選任する破産管財人のもとで家計の管理を行ったりして、浪費などが改善されていると裁判所が判断すれば、免責を受けることができます。ギャンブルや浪費による借金だからというだけで自己破産をためらうことなく、まずは弁護士とよく相談してください。
7. 闇金と警察に関してよくある質問
Q. 闇金の借金は、元本も含めて返さなくてよい?
闇金による貸付けは、ほとんどの場合は著しい高金利でなされており、これは、反倫理的行為として、公序良俗に反し無効(民法90条)となります。そのため、お金を返済する義務はありません。
また、「契約が無効ならば、自分たちから受け取ったお金は借主が不当に得たことになるから元本は返せ」という闇金からの主張も無効です。反倫理的行為によってなされた給付であるため、不法な原因による給付(民法708条)として元本も返還する必要はありません。
Q. 闇金(違法業者)かどうかを判断する方法は?
貸付けの金利を確認することで、闇金かどうかを判断できます。出資法で定める上限金利の年20%を超える高金利をとっている業者が闇金です。
また、貸金業を行うには、貸金業の登録をする必要があるため、まず登録業者かどうかを検索することをお勧めします。貸金業登録の有無は、金融庁が運営している「登録貸金業者情報検索サービス」で検索することが可能です。
Q. 闇金被害を警察に相談してから、動いてもらえるまでの期間はどれくらい?
相談者が持参した闇金に関する情報の多寡などによりケース・バイ・ケースとなるため、相談から警察が動いてくれるまでの期間については、一概に言えません。
8. まとめ 闇金以外からの借金の返済については、弁護士の手を借りて
闇金が暴力行為や脅迫行為など、刑罰法規に違反する行為をしていれば、それらの行為が犯罪となるため、警察に相談でき、警察に対応してもらえます。そもそも、闇金営業はそれ自体が、貸金業法違反や出資法違反を犯しているため、借りた時期や金額、返済した時期や金額などが記された書類などを持っていけば、警察は動いてくれます。
警察以外の相談窓口としては、弁護士や司法書士が挙げられます。弁護士や司法書士は、闇金業者に電話をかけ、取り立てを止めるよう、さらには債務者が今後借金の支払いは一切しないことを闇金業者にきっぱりと伝えてくれます。
闇金から借り入れた借金の返済については、弁護士の手を借りるのが望ましいでしょう。借金の負担を減らしたりなくしたりする債務整理を行う場合、任意整理、個人再生、自己破産のどの手続きが合っているかも含め、適切なアドバイスをもらえます。
(記事は2025年12月1日時点の情報にもとづいています)
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