目 次
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す
債務整理に強い
弁護士・司法書士を探す
1. 自己破産による年金への影響は?
自己破産とは、裁判所を通じて借金などの債務(お金を支払う義務)を免責してもらう手続きです。高価な財産などが処分される代わりに、残った借金などが原則としてゼロになります。
ただし自己破産をしても、すべての債務が免責されるわけではありません。国民年金や厚生年金の保険料は免責されず、自己破産をした場合でも支払う必要があります。
その一方で、自己破産をしたからといって、将来公的年金が受け取れない、ということはありません。保険料の納付実績に応じて、公的年金を受給できます。
なお、民間の年金保険については、自己破産の手続きにおいて公的年金とは異なる取り扱いがなされています。年金の種類に応じた取り扱いの違いを、正しく理解しておきましょう。
2. 【現役世代向け】自己破産をしたら、年金の支払いは免除される?
自己破産をした場合に、各種年金の保険料の支払いがどうなるのかについて解説します。
2-1. 国民年金・厚生年金の保険料は「非免責債権」|自己破産をしても免除されない
国民年金や厚生年金の保険料は、破産手続きにおいて「非免責債権」とされています。非免責債権とは、破産手続きによって免責されない債権(お金を請求する権利)です。
国民年金・厚生年金の保険料は非免責債権であるため、自己破産をしても一切免責されず、過去の未払い分も含めて支払う必要があります。
2-2. 国民年金保険料は、年金事務所への申請によって免除・猶予されることがある
国民年金保険料は、年金事務所に申請すれば免除や納付猶予が認められることがあります。自己破産後に国民年金保険料を支払うのが難しいときは、年金事務所に相談してみましょう。
2-3. 厚生年金保険料は、産休・育休中であれば免除を申請できる
厚生年金保険料は、勤務先から支払われる給与から天引きされるもので、本人の経済的な事情による免除や納付猶予は認められていません。
ただし、産前産後休業または育児休業等の期間中は、事業主を通じて日本年金機構に申し出ることで、厚生年金保険料の負担が免除されます。
参考:厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)|日本年金機構
2-4. iDeCoは申請によって掛金を減らせる
iDeCo(確定拠出年金)については、加入者の届け出によって掛金を減らすことができます。
iDeCoの掛金額の変更は、1月から12月までの間に1回だけ認められます。iDeCoの口座を開設している金融機関を通じて掛金の変更を届け出たあと、1カ月半~2カ月半程度が経過すると掛金が変更されます。
iDeCoの引き落とし額が多すぎて経済的に苦しくなっているなら、速やかに掛金の変更を行いましょう。
2-5. 民間の年金保険は自由に解約可能|保険料の支払いも免除される
民間の年金保険については、加入者の判断で自由に解約できます。解約すれば、年金保険料の支払いは免除されます。
ただし後述するように、民間の年金保険は、破産手続きの中で解約されるケースがあります。また、解約の時期によっては解約返戻金の額が少なくなり、掛金を下回る「元本割れ」が生じ得る点にご注意ください。
3. 【現役世代向け】借金があって年金が払えないときはどうしたらいい?
借金を抱えているために、国民年金や厚生年金の保険料を支払うのが大変だと感じているときは「債務整理」を行いましょう。
3-1. 債務整理とは
債務整理とは、借金などの債務の負担を軽減できる可能性がある手続きです。適切な方法で債務整理を行えば、借金問題を根本的に解決できます。
国民年金や厚生年金の保険料は、債務整理の対象になりません。しかし、借金などの負担が軽減されれば、毎月の収支が改善し、年金保険料を無理なく払えるようになります。
3-2. 債務整理の主な種類
債務整理の手続きには、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。
任意整理:銀行や消費者金融などの債権者と交渉して、債務負担の軽減を認めてもらう手続き
個人再生:裁判所を通じて債務を減額してもらう手続き
自己破産:裁判所を通じて財産を処分する代わりに、債務を免責してもらう手続き
前述した通り、借金を抱えている人は、債務整理で借金問題を改善することで、年金の支払いに集中しやすくなります。
3-3. 債務整理手続きを選択する際の判断基準
任意整理・個人再生・自己破産には、それぞれメリットとデメリットの両面があります。借金問題を根本的に解決するためには、状況に合った手続きを選択することが大切です。
債務整理手続きを選択する際の判断に当たって、目安となるポイントはおおむね下表のとおりです。判断に迷う場合は、弁護士にアドバイスを求めましょう。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
|---|---|---|---|
債務の減額幅 | △ (利息や遅延損害金のカットのみ) | ○ (元本も含めて減額、 ただし最低100万円の弁済が必要) | ◎ (一部の例外を除いて免責) |
無職や定職に 就いていない人でも 利用できるか | △ (債権者が応じないことが多い) | × (不可) | ◎ (可能) |
財産の処分を回避できるか | ◎ (財産は処分されない) | ○ (担保権が付いている 財産を除いて処分されず、 住宅ローンのある自宅も残せる) | △ (処分されるが、 生活に必要な財産は残せる) |
保証人に 迷惑をかけずに済むか | ◎ (保証人が付いている 債務を除外できる) | × (保証人に対する請求が行われる) | × (保証人に対する請求が行われる) |
費用を安く済ませられるか | ◎ (裁判所を通さないため、 費用は安く済む) | △ (数十万円程度を要することが多い) | △ (数十万円程度を要することが多い) |
4. 【現役世代向け】自己破産をしたら、将来の年金はどうなる?もらえる?
自己破産をしても、加入が義務付けられている公的年金(国民年金・厚生年金)や、公的年金の上乗せとして任意に加入する私的年金(iDeCoなど)は、将来的に受け取ることができます。他方で、民間の年金保険は破産手続きの中で解約されることがあるのでご注意ください。
4-1. 公的年金・私的年金は差押禁止|自己破産をしても受け取れる
以下の年金の受給権は、原則として差し押さえが禁止されています。
国民年金(老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金)
厚生年金(老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金)
確定給付企業年金
確定拠出年金(iDeCoなど)
厚生年金基金
国民年金基金
自己破産をしても、これらの年金の受給権は奪われないため、将来的に受け取ることができます。
ただし、税金などを滞納している場合は、例外的に上記の年金の受給権が差し押さえられることがあるのでご注意ください。
4-2. 民間の年金保険は解約されることがある
民間の保険会社との契約によって加入している年金保険は、自己破産を申し立てると、裁判所が選任する破産管財人によって解約されることがあります。年金保険の解約によって得られる解約返戻金を、事務処理の費用や債権者への配当に充てるためです。
多くの裁判所では、解約返戻金の額が一定水準を超える場合に、年金保険を解約する運用を行っています。たとえば東京地裁では、年金保険を含む積立型の保険の解約返戻金が合計20万円を超える場合に、該当する保険が解約されます。
民間の年金保険が解約された場合は、将来その年金を受け取ることができなくなります。解約返戻金も事務処理の費用や債権者への配当に充てられるため、破産者には返金されません。
弁護士・司法書士をお探しなら
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」
5. 【高齢者向け】年金受給者が自己破産したらどうなる?
年金受給者が自己破産をした場合に、すでに受け取った年金や、将来分の年金がどうなるのかについて解説します。
5-1. すでに支払われた年金は、回収されることがある
すでに支払われていて、現金や預貯金として持っている年金は、自己破産を申し立てる際に回収されてしまうことがあります。現金については、99万円までは手元に残せますが、それを超える部分は破産管財人に引き渡さなければなりません。
預貯金については、一定額を超える場合に限り回収する運用を行っている裁判所が多いです。
たとえば東京地裁では、預貯金の合計残高が20万円を超える場合に、その全額を回収する運用を行っています。超過部分だけでなく、預貯金全額が回収されます。また、残高が20万円を超える口座がなくても、すべての口座残高の合計額が20万円を超える場合は、その全額が回収の対象となります。
5-2. まだ支払われていない将来の年金は、引き続き受け取れる
破産手続きが開始した時点でまだ支払われていない年金は、破産手続きによって処分されません。したがって、自己破産前と変わらず受け取ることができます。
5-3. 税金などを滞納した場合は、年金受給権を差し押さえられるおそれがある
公的年金(国民年金・厚生年金)や私的年金(iDeCoなど)の受給権は、原則として差し押さえが禁止されているため、借金などを滞納しても差し押さえられることはありません。
ただし、税金や国民健康保険料などを滞納した場合には、公的年金や私的年金の受給権を差し押さえられることがあります。税金が支払えない場合は税務署や自治体の窓口、国民健康保険料が支払えない場合は保険者(市区町村など)の窓口へ早めに相談しましょう。
6. 自己破産と年金に関する注意点
自己破産を申し立てる際には、年金に関して特に以下のポイントに注意しましょう。
6-1. 年金担保貸付は、自己破産をしても免責されない
2022年3月までは、福祉医療機構が実施していた年金担保貸付に申し込むことができました。年金担保貸付とは、年金受給権を担保として少額の資金を貸し付ける制度です。
一時的に資金が足りなくなった年金受給者のために設けられたものですが、生活費に充てるべき年金が返済に充てられることによって困窮化を招くことが問題視され、現在では申込受付が終了しています。
新規に年金担保貸付を利用することはできませんが、過去に利用した年金担保貸付については、完済するまで返済を続ける必要があります。
年金担保貸付の返済の途中で自己破産をしても、年金からの天引きによる返済が続きます。自己破産による年金担保貸付の免責は認められない点に十分ご注意ください。
6-2. 年金受取口座が凍結されるケースがある|事前に口座変更を
年金受取口座を開設している金融機関に対して未払いの借金があると、自己破産の申立てによってその口座が凍結されてしまいます。出金だけが停止されるケースが多く、年金が振り込まれ続ける一方で、それを出金できないという事態が生じかねません。
このような事態を防ぐため、未払いの借金がある金融機関の口座で年金を受け取っている場合は、破産申立てを行う前に、年金受取口座を変更しておきましょう。
7. 自己破産による年金への影響が心配な場合に、弁護士へ相談するメリット
借金問題を自己破産で解決しようとする際、年金の保険料や将来の受給額にどのような影響が生じるのかについて不安があるときは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、破産手続きにおける年金の取り扱いについて正確な知識を得ることができます。自己破産に必要な準備についてアドバイスを受けられるとともに、正式に依頼すれば破産手続きの対応を全面的に代行してもらえるので安心です。
早期に弁護士へ相談することが、借金問題の根本的な解決に繋がります。借金の返済が苦しく自己破産を考えている人は、早い段階で弁護士へご相談ください。
8. 自己破産と年金に関するよくある質問
Q. 加入中の年金の種類を確認する方法は?
公的年金については、「ねんきんネット」を利用すれば年金の状況を確認できます。民間の年金保険については、郵便物や口座の引き落とし記録などから保険会社等を特定し、その窓口へご確認ください。
Q. 年金受給者が自己破産した場合、生活保護を受けられる?
年金だけでは最低限度の生活を維持できないほど困窮しているときは、自己破産後でも生活保護を受けることができます。
Q. 自己破産した場合も、健康保険は使える?
自己破産後も原則として健康保険の被保険者資格は失われないので、医療機関や薬局では健康保険を適用できます。ただし、国民健康保険料の滞納が続いていると、保険給付が停止されるおそれがあるので注意が必要です。
Q. 家族が自己破産した場合、自分は年金を受給できる?
家族が自己破産をしても、自分の年金の受給には影響しません。引き続き受給できます。また、自己破産をした家族自身も、年金を受給することができます。
Q. 受給した年金を借金返済に充ててもいい?
年金を借金返済に充てることはできますが、十分な収入がないのに借金を完済するのは難しいかもしれません。借金返済が苦しいなら、弁護士に相談して債務整理を行いましょう。
9. まとめ 自己破産をしても、国民年金や厚生年金には影響しない
自己破産をしても、国民年金や厚生年金、およびこれらに上乗せする私的年金(iDeCoなど)に影響は生じません。年金保険料は免責されず支払う必要がある一方で、将来的には年金を受給できます。
ただし、民間の年金保険に加入している場合は、自己破産をすると解約されてしまうことがあるので注意しましょう。
自己破産によって生活にどのような影響が生じるのか不安に感じているなら、弁護士へ相談することをおすすめします。メリット・デメリットの両面について説明してもらえるので、自己破産すべきかどうかを納得したうえで判断できるようになります。
借金の返済に苦しんでいて、自己破産を考えている人は、早い段階で弁護士へご相談ください。
(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す