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1. 2回目の債務整理は可能?
結論からいうと、2回目の債務整理も可能です。法律上、債務整理の回数に上限はなく、任意整理・個人再生・自己破産のいずれも一定の条件を満たせば再び手続きを行うことができます。
ただし、2回目は債権者や裁判所の審査がより厳しくなるため、「なぜ再び返済できなくなったのか」を明確に説明する必要があります。実際、私のもとにも「前に任意整理をしたが、病気や勤務時間の減少で返済が難しくなった」という相談が多く寄せられます。中には、真面目に返済を続けていたものの、コロナ禍や物価高の影響で生活が苦しくなったケースもあります。そうした事情がある場合、再度の債務整理は現実的な選択肢となります。
注意すべきは、2回目の手続きでは債権者がより慎重な対応を取る点です。特に、同じ金融業者に再度任意整理を申し入れる場合、「また同じことを繰り返すのではないか」と見られやすい傾向があります。だからこそ、誠実な対応と客観的な裏付け資料の提出が重要です。
言い換えれば、2回目の債務整理は「再出発」ではなく、信頼を取り戻すための手続きだと考えた方がよいでしょう。
2. 【方法別】2回目の債務整理をする際の注意点
2回目の債務整理について手続きごとの注意点を解説します。
2-1. 任意整理の注意点
任意整理は、債権者と直接交渉して返済条件を見直す手続きです。法律上、何度でも行うことができ、債務整理の中でも柔軟性が高いことから最初に検討する人も多い方法です。
2回目の任意整理で最も問題となるのは、同じ債権者に対する交渉かどうかです。別の金融業者であれば、初回と同様の手続きで進むことが多い一方、1回目と同じ債権者に再び交渉する場合は、和解条件が厳しくなる傾向があります。たとえば、前回は5年分割を認めてもらえたのに、今回は3年以内しか認められなかったり、利息カットが難しくなったり、一括返済を求められたりするケースがあります。
実際に、私が受任した香川県内のある依頼者は、以前A社と任意整理を行い完済した後、数年後に再び借り入れをしてしまいました。再度任意整理を申し入れたところ、A社は当初「分割には応じられない」と和解を拒否しました。しかし、病気治療による一時的な収入減であることや、過去の返済実績が良好だったことを丁寧に説明した結果、短期分割での和解に至りました。
このように、事情の説明とそれを裏付ける証拠が、2回目の任意整理では重要なポイントになります。(こちらのケースでは同じ会社から2度借り入れ(2度目の任意整理)をしていますが、そのようなケースはまれです。)
2-2. 個人再生の注意点
個人再生は、裁判所を通じて借金の大幅な減額を目指す法的手続きです。手続きの種類には、給与所得者等再生(サラリーマン型)と小規模個人再生(自営業型)の2つがあります。
個人再生は再度の申立ても可能ですが、前回の手続きから7年以内に再び給与所得者等再生を申し立てることはできません(民事再生法229条)。また、再申立てによって前回の減額効果が失われることがあり、実務上はかなり複雑です。
たとえば、5年前に個人再生で借金を5分の1に減額し、3年間で完済した人が、再び債務を抱えて再生を申し立てた場合、1回目の再生計画の効果が消え、元の借金額を基準に審査されることがあります。言い換えれば、リセットではなく「巻き戻し」に近い状態です。
さらに、債権者の同意を得にくくなる点にも注意が必要です。「一度減額を受けたのに、またか」と見られやすいため、返済困難となった理由を具体的に説明し、やむを得ない事情を明らかにすることが大切です。
2-3. 自己破産の注意点
自己破産も2回目の申立ては可能ですが、免責には一定の制限があります。破産法252条により、前回の免責許可が確定してから7年以内は、原則として再び免責を受けることはできないとされています。
また、1回目と同じような理由で再び借金をした場合、免責が下りにくくなります。たとえば、1回目の破産がギャンブルによる多重債務で、再度の借金も同様の理由である場合は、裁量免責(裁判所の判断による特例的な免責)に頼るしかないものの、それが認められるのはかなり厳しいのが実情です。
一方で、1回目の破産後にまじめに働いていたにもかかわらず、病気・失業・事故など外的な要因によって再び返済が困難になった場合には、免責が認められる可能性があります。
3. 2回目の債務整理を成功させるためのポイントは?
上記で説明した通り、2度目の債務整理は債権者からの理解を得にくいなどの注意点があります。そのうえで、債務整理を成功させるためのポイントを説明します。
3-1. 経緯を誠実に説明する
2回目の債務整理では、なぜ再び支払えなくなったのかが最大の焦点になります。弁護士を通じて手続きを行う場合でも、債権者や裁判所には、経緯を具体的かつ正直に説明しなければなりません。
病気や勤務先の倒産、離婚などの外的要因がある場合は、証拠資料を添付することで説得力が高まります。たとえば、入院期間の診断書や、勤務シフトの減少を示す給与明細などが有効です。
一方、「なんとなく支払えなかった」では通用しません。再び債務整理に至った事情を丁寧に整理し、同じ過ちを繰り返さないという姿勢を示すことが重要です。
3-2. 現実的な返済計画を示す
2回目の債務整理では、返済計画の現実性がより厳しく問われます。前回のように「払えそうな額」で組むだけでは認められないケースもあります。
日雇いやスポットワーク中心の収入であれば、収入の波を見越して無理のない返済額を設定することが大切です。また、収入アップの見込みや支出削減の工夫を具体的に示すことで、「今後は安定した返済が可能」と判断されやすくなります。
実際、私が担当したケースでは、「Uber配達を週3日から週5日に増やす」「実家に戻って家賃を削減する」といった現実的な改善策を提示することで、債権者の理解を得られた例もあります。
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4. 2回目の債務整理では、1回目と同じ手続きを選択できないケースもある
2回目だからといって、前回と同じ手続きが必ず選べるわけではありません。たとえば、前回任意整理をした業者が2回目の和解に応じなかった場合は、個人再生や自己破産への切り替えを検討する必要が出てきます。さらに、1回目の再生計画を完遂できなかった場合には、再度の個人再生が認められないケースもあります。
実際に、以前任意整理で和解した依頼者が再び借金を抱え、同じ債権者と再交渉を試みたものの、「前回の履行状況を踏まえると再交渉には応じられない」と断られた例も見られます。このケースでは、個人再生に切り替えたことで裁判所で減額を認められています。
このように、2回目の債務整理では手続きの選択そのものが重要な判断ポイントになります。最初から任意整理に決めつけず、収入・支出・債務額・資産状況を整理したうえで、どの手続きが最も現実的かを専門家と一緒に検討することが大切です。
5. 2回目の債務整理は、早めに弁護士や司法書士へ相談を
一度債務整理に失敗している以上、個人で判断して動くのは危険です。債権者や裁判所の対応はより厳格になっており、書類の不備や交渉ミスが致命的になることもあります。早い段階で弁護士や司法書士に相談し、最適な方針を立てることが何より重要です。
特に、同じ債権者への再和解や個人再生の再申立ては、経験豊富な専門家でなければ対応が難しいことがあります。過去の経緯を整理しながら、どの方法が現実的かを一緒に検討してもらいましょう。
早期に相談すれば選択肢が広がります。任意整理で済む段階なのか、個人再生を視野に入れるべきか、破産を避ける余地があるのか。状況を見極めるには、早めの行動が欠かせません。
6. 2回目の債務整理に関するQ&A
Q. 2回目、3回目の債務整理は可能?
可能です。ただし、回数を重ねるごとに債権者の信頼を得にくくなります。誠実な説明と再発防止策を示せるかが成否を分けます。
Q. 2回目の債務整理では、1回目と違う専門家に依頼してもいい?
問題ありません。むしろ、1回目と同じ事務所に不満がある場合や、より経験豊富な弁護士を探したい場合は変更して構いません。過去の資料を引き継ぐことも可能です。
Q. 「債務整理渡り鳥」とは?
業界用語で、複数の法律事務所に依頼と辞任を繰り返す人を指します。債務整理の依頼をすると、弁護士や司法書士が債権者に受任通知を送ることで督促や取り立てが一時的に止まるため、その効果だけを狙って事務所を乗り換える人がいるのです。
しかし、こうした行為は返済をしないまま督促を逃れるための不誠実な対応と見なされ、結果的に信用を失うので、行うべきではありません。
Q. 債務整理(任意整理)後の支払い中に、2回目の滞納をしたらどうなる?
通常は和解が解除され、一括請求や訴訟提起のリスクがあります。遅れる前に弁護士へ相談すれば、再交渉や一部条件変更で済む場合もあります。放置するのが一番まずい対応です。
7. まとめ 2回目の債務整理は、専門家のアドバイスのもとで適切な判断と行動が大切
2回目の債務整理は、法律上問題なく行うことができますが、1回目よりも慎重な対応が求められます。同じ債権者との再交渉や再申立ては、信頼を取り戻すための丁寧な説明と、現実的な返済計画の提示が不可欠です。
手続きの選択を誤ると、時間や費用を無駄にするおそれもあります。2回目の債務整理を検討する際は、早めに弁護士や司法書士へ相談し、自分に最適な方法を見極めることが成功への近道です。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
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