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1. 過払い金がおかしいと感じる理由
まずは、過払い金がおかしいと感じる理由をみていきましょう。
1-1. お金が戻ってくることが信じられないため
「借金をしていたのにお金が戻ってくるなんて、都合がよすぎる話では?」と思う人も多いでしょう。特に、借金を返し終わってから時間が経っていると、なおさら不自然に感じるかもしれません。
しかし、過払い金が発生するのは、かつて貸金業者が法律で定められた上限を超える利息を取っていたことが理由です。法律の根拠に基づいて請求するものであり、条件を満たしていれば、実際に返金されるケースもあります。
1-2. 過払い金について怪しい印象を与えるCMが多いため
テレビやラジオ、インターネットなどで頻繁に見かける「過払い金が戻ってきます」といったCMに違和感を抱く人も少なくありません。派手な演出や繰り返される宣伝が、「これは本当に大丈夫なのか?」という疑念を生むこともあります。
ただし、現在でも過払い金が発生しているケースは存在するため、注意喚起としてCMが流れているのは事実です。すべてのCMが怪しいというわけではありませんが、受け取り方によっては「怪しいビジネス」と感じる人がいても不思議ではありません。
1-3. 専門家の不祥事や報酬が高額な場合があるため
過払い金請求に関する弁護士や司法書士の不祥事も、制度そのものへの不信感につながっています。たとえば、大手の法律事務所が広告の内容で弁護士会から懲戒処分を受けたり、依頼者の預かり金を横領したりする事件が過去に報道されました。
また、報酬設定が過度に高額で問題になったケースもあります。とはいえ、これらの不祥事と「過払い金請求の仕組み」は別の問題です。仕組み自体は法律に基づいた正当なものであり、制度そのものが怪しいわけではありません。
1-4. 過払い金請求の詐欺が存在しているため
弁護士や司法書士を名乗って「過払い金が戻ってきます」と勧誘し、個人情報を盗もうとする詐欺も発生しています。たとえば、「未請求の過払い金があります」などと突然電話や郵便で案内が届くことがありますが、これは典型的な詐欺手口の一つです。
本来、過払い金の請求は依頼者が自ら相談するものであり、弁護士や司法書士の側から営業をかけてくることは基本的にありません。正式な手続きは、弁護士や認定司法書士のみに認められているため、それ以外の業者が持ちかけてくる場合には注意が必要です。
2. 過払い金請求がおかしくない理由
過払い金請求は法律や判例に基づいた正当な手続きであり、発生していれば返還を求める権利があります。ここでは、過払い金の仕組みと、今でも請求できるケースについて解説します。
2-1. 過払い金が発生する仕組み
過払い金が生まれる背景には、かつて法律によって定められていた上限金利の違いがあります。法改正以前では、利息の上限を定める法律は主に2つありました。
【利息制限法】
上限金利は15〜20%(元本に応じて異なる)
【出資法】
かつては上限29.2%(その後、段階的に引き下げ)
この2つの法律には矛盾があり、20%を超える「グレーゾーン金利」で貸し付ける業者も多数存在していました。
しかし、2006年(平成18年)1月13日、最高裁判所は「利息制限法を超える部分の利息は無効であり、過払いとして返還を求められる」という判断を示しました。この判決をきっかけに、払い過ぎた利息を「過払い金」として取り戻す動きが広がりました。その後、2010年の法改正で出資法の上限も20%まで引き下げられ、グレーゾーン金利は事実上廃止されました。
つまり、かつての契約内容によっては、法律上の根拠に基づいて過払い金を請求できるケースが今でも存在するということです。
2-2. 現在でも過払い金請求ができる可能性があるケース
過払い金の請求は、すべての人が対象になるわけではありません。請求できるかどうかは、以下の条件に当てはまるかで判断されます。
2010年(平成22年)6月17日より前に借り入れをしていた
貸金業者(消費者金融、クレジットカード会社など)からの借り入れである
当時の契約金利が利息制限法を超える「グレーゾーン金利」に該当している
最終取引日(完済日)から10年が経過していない(時効が成立していない)
貸金業者が現存し、請求先が確認できる(または借入先を引き継ぐ会社がある)
なお、完済から10年が過ぎている場合でも、「その時点で過払い金の存在を知らなかった」などの事情によっては、時効の起算点(時効期間のカウントが始まる時点)が変わることもあります。ただし、これは専門的な判断が必要なため、弁護士や司法書士などの専門家に確認するのが確実です。
3. 過払い金を受け取るとどうなる?本当に戻ってくる?
借金が残っているかどうかで、手元にお金が戻るケースと、借金の返済に充てられるケースに分かれます。ここでは、それぞれのパターンと注意点について解説します。
3-1. 借金を返済中の場合|利息の返済に充てられる
借金を返済中に過払い金請求をした場合、返還される過払い金はまず利息に充てられ、残りが元本の返済に回されるのが原則です。
たとえば、過払い金が20万円あり、借金残高が30万円ある場合、返還された20万円はまず利息の支払いに充てられ、残った分が元本の返済に回されます。その結果、元本のうち10万円が未払いとして残ることになります。
このように過払い金があっても借金が完全にゼロになるとは限らないため、残っている債務がある場合には任意整理などの債務整理手続きに進むことが一般的です。
日本弁護士連合会では、借金問題の根本的な解決を目的として、過払い金請求と債務整理は一体として扱うよう指針を定めています。
過払い金の返還だけを目的にし、債務整理を行わないまま放置してしまうと、借金問題が解決されないどころか、後々返済が困難になるおそれもあります。弁護士に依頼する際は、「過払い金だけ取り戻して終わり」といった対応ではなく、借金の総額や返済計画まで含めた提案があるかどうかも確認しておくと安心です。
3-2. 借金を完済済みの場合|過払い金が手元に戻る
すでに借金を完済している状態で過払い金請求を行った場合は、返還された過払い金がそのまま手元に戻る可能性が高いです。
請求が認められれば、返還金は一括で支払われるケースが多く、使い道も自由です。住宅ローンや教育資金に充てる方もいれば、生活費の補填に活用する方もいます。
ただし、請求から実際に返還されるまでには、交渉や手続きの状況によって数週間〜数カ月程度かかることもあるため、あらかじめスケジュールを把握しておくと安心です。
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4. 過払い金請求をすると後悔する?デメリットはある?
過払い金請求は、払いすぎた利息を取り戻すための正当な手続きです。しかし、手続きを進める前に知っておきたい注意点もあります。ここでは、過払い金請求の主なデメリットを紹介します。
4-1. 返還請求をした貸金業者は今後利用できない
過払い金の返還を求めた貸金業者は、その後の利用が制限されることがあります。これは、社内独自の基準により「再契約をしない」と判断される、いわゆる「社内ブラック」によるものです。
社内ブラックはその業者だけでの制限であり、信用情報に傷がつくわけではありません。ほかの貸金業者や銀行などに影響が及ぶことは通常ありません。ただし、その会社が発行しているクレジットカードも使えなくなる可能性はあります。
4-2. ブラックリスト入りすることがある
借金返済中に過払い金請求を行い、返還金を差し引いても債務が残る場合には、任意整理などの債務整理を行うことになります。このとき、信用情報機関に「事故情報」として登録されることがあります。これが、いわゆる「ブラックリスト入り」と呼ばれる状態です。
ブラックリストに載ると、5〜7年程度は新たな借り入れやローン契約、クレジットカードの発行が難しくなります。とはいえ、完済した過払い金請求であれば信用情報に登録されることはありません。
4-3. 手続きに弁護士・司法書士費用がかかる
過払い金請求は、弁護士や司法書士に依頼するケースが一般的です。そのため、一定の費用が発生します。
ただし、日本弁護士連合会(日弁連)や司法書士会では、報酬の上限が定められています。たとえば、弁護士の報酬は「訴訟をしない場合は回収額の20%以下」「訴訟をした場合は25%以下」とされており、多くの事務所がこの基準に従っています。
費用について不安がある場合は、契約前に内訳を確認したり、複数の事務所から見積もりを取ったりするのも一つの方法です。不明点は遠慮なく聞きましょう。
5. お金がかからないよう過払い金請求は自分でできる?
「費用を抑えたいから自分で過払い金請求したい」と考える人もいるかもしれません。しかし、実際に一人で行うのは簡単ではありません。
過払い金が発生しているかどうかを判断するには、利息の引き直し計算や時効の起算点の判断など、専門的な知識が必要です。計算ミスや解釈の違いがあると、請求そのものが通らなかったり、返還される金額が大幅に減ってしまうおそれがあります。
また、自分で貸金業者と交渉をする場合、返還時期を引き延ばされたり、不利な条件を提示されたりすることもあります。
そうしたトラブルを避けるためにも、過払い金請求は弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのが安心です。費用は発生しますが、その分スムーズかつ適正な対応が期待できます。
6. 過払い金を弁護士・司法書士に相談するメリット
過払い金が発生しているかどうかを正確に見極めるには、法律や判例に関する知識が欠かせません。弁護士や司法書士に相談すれば、過去の借入履歴をもとに、返還される可能性があるかどうかを判断してもらえます。
借金が残っている場合は、任意整理など他の手続きも含めて提案してくれるため、借金問題の根本的な解決にもつながります。すでに借金を完済している人が過払い金請求によって数十万円を取り戻せた事例も存在します。
過払い金は、時効や業者の倒産により請求できなくなることもあるため、思い当たる方は早めに相談するのが安心です。
7. 過払い金請求を弁護士・司法書士に依頼する際の注意点
過払い金の請求は、弁護士や司法書士にしか認められていません。ただし、専門家の中にも不適切な対応をする事務所が存在するのが現実です。安心して任せるためには、以下の点に注意して専門家を選ぶことが大切です。
7-1. 過払い金請求にかかる費用は必ず確認する
弁護士や司法書士に依頼する際は、費用の説明をしっかり受けましょう。報酬には上限があり、日弁連や司法書士会でルールが定められています。これを大きく超える金額を請求する専門家は、違法となるおそれがあります。
また、借金が残っている場合は任意整理となる可能性もあります。その場合の費用や月々の返済額についても、事前に確認しておくと安心です。
7-2. 事務員が対応する事務所には依頼しない
過払い金請求や債務整理の相談では、弁護士や司法書士との面談が義務づけられています。にもかかわらず、最初から最後まで事務員だけが対応する事務所も存在します。このような事務所は法律上のルールを守っていない可能性があり、適切な対応が期待できません。
きちんと専門家が直接話を聞いてくれるかどうか、契約前に確認しましょう。
7-3. 口コミやレビューは参考程度に考える
インターネット上には、多くの口コミやレビューがありますが、すべてが正確とは限りません。なかには広告目的で作られた情報もあり、実態とかけ離れている場合もあります。借金問題は特に広告宣伝が横行し、グレーな広告宣伝が混ざっていることも多い分野です。
ランキングサイトやSNSなどはあくまで参考としてとらえ、最終的な判断は実際の対応を見てからにしましょう。
7-4. 実際に面談をして信頼できる専門家を選ぶ
依頼する前には、できる限り実際に面談を受けることをおすすめします。複数の事務所を比較してみるのもよいでしょう。信頼できる専門家は、難しい用語をかみくだいて説明し、依頼者の不安にしっかり向き合ってくれます。
「費用の説明が明確である」「事務的な対応ではなく、親身に話を聞いてくれる」などが、信頼できる専門家の特徴です。納得のうえで依頼することが、トラブル回避にもつながります。
8. 過払い金はおかしいと感じる人からよくある質問
Q. 過払い金請求が無料の事務所はおかしい?
完全に無料の事務所は基本的に存在しません。ただし、着手金は無料で、返還された過払い金から報酬を得る形式の事務所はあります。「何が無料なのか」「成功報酬はいくらか」など、契約内容を必ず確認しましょう。
Q. どこの業者からの借り入れなら過払い金が発生している? 過払い金を請求すると業者に迷惑がかかる?
過払い金が発生する可能性があるのは、主に貸金業者(消費者金融・信販会社)からの借り入れです。個人間の貸し借りでは原則として発生しません。また、過払い金請求は法律に基づいた正当な手続きであり、業者に遠慮する必要はありません。
Q. 交渉の仕方によって過払い金の返還率が変わるのはおかしい?
過払い金の返還交渉は、貸金業者との任意のやり取りで行われるため、返還される金額や割合が交渉の内容によって変わることは不自然ではありません。必ずしも満額が戻ってくるとは限らず、業者の対応や交渉力によって結果が左右されるケースもあります。こうした点を踏まえ、少しでも有利な条件で返還を受けたい場合は、経験のある弁護士や司法書士に相談するのがおすすめです。
Q. 生活保護を受給していても過払い金請求はできる?
生活保護を受けていても、過払い金の請求は可能です。ただし、返還された過払い金は収入と見なされ、生活保護費が減額または一時的に停止される場合があります。事前に自治体の担当窓口に相談しておくとよいでしょう。
Q. 過払い金は家族に内緒で請求できる?
家族に知られずに手続きすることは可能ですが、完全に隠し通せるとは限りません。郵便物や裁判所からの通知などで知られる可能性があります。不安な場合は、事前に専門家に相談し、できるだけ配慮してもらいましょう。
9. まとめ 過払い金請求は法律で認められた行為|弁護士や司法書士に相談を
過払い金請求は、判例に基づき法律で認められた正当な権利です。「おかしい」「怪しい」と感じる人もいますが、条件を満たせば本当にお金が戻ってくる仕組みです。
過払い金が発生しているか、時効にかかっていないかなどの判断は難しいため、気になる場合は弁護士や司法書士に相談するのが安心です。納得できる形で手続きを進めるためにも、まずは信頼できる専門家に話を聞いてみましょう。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
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