目 次


朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す
債務整理に強い
弁護士・司法書士を探す
1. 税金を滞納したらどうなる?
税金には所得税、贈与税、相続税、消費税、住民税、自動車税、固定資産税など、いろいろなものがあります。これらのうち、買い物をしたときの消費税、お酒を買ったときの酒税、ガソリンを入れたときのガソリン税などのように、払った代金に含まれていて直接納付しないものを「間接税」といいます。
一方で、納税者が国や地方公共団体に直接納めるものを「直接税」といいます。直接税には納期限(税金を納めるべき期日)が定められており、納期限を1日でも過ぎれば「滞納」となり、納期限の翌日から延滞税が課せられます。延滞税は、全額納付するまで加算されます。
税金を滞納すると、国税では納期限から50日以内、地方税では20日以内に必ず督促状が送られることになっています。そして、その督促状の送付から10日経っても放置していると、差し押さえられる可能性が高まります。差し押さえの対象は、預貯金、給料、不動産、保険、株式などさまざまです。
2. 税金の滞納による給料の差し押さえは解除できる?
給料を差し押さえられた場合、会社からは、差し押さえ分を引いた残額しか払ってもらえません。また、会社にも「税金の滞納により給料を差し押さえる」という通知が届いてしまい、非常に気まずい思いをしたり、社内での信用を落としてしまったりします。一度でも差し押さえを受けた場合、原則として滞納している税金を全額納付するまでは解除してもらえません。
国税局や市税事務所などの窓口で分納の相談をすれば、解除してもらえる可能性もあります。給料の差し押さえが「生活が成り立たなくなる心配があるとき」にあたるなら、税務署長などに実情を説明することで、差し押さえを停止してくれるかもしれません。
ただし、差し押さえられた側に停止を申し立てる権限はなく、あくまでも税務署長などの職権による処分なので、確実に停止されるとはいえません。
3. 税金の滞納による給料差押えの上限額は?
給料は、その月の生活費に充てられるべき大事な資金です。そのため、法律上、給料の全額を差し押さえることはできないことになっています。
消費者金融などへの返済が滞ったことによる差し押さえの場合、養育費などの扶養料を除き、手取り給与の4分の1まで差し押さえられます。手取り額44万円を超える場合は計算が変わってきますが、所得税や社会保険料などを控除した後の手取り額が40万円だった場合、差し押さえられる金額は10万円が限度です。
一方で、税金の滞納によって給料が差し押さえられる場合は、計算方法がまったく異なります。給料の総支給額から、以下の項目を控除した残額が差し押さえられます。
所得税
住民税
社会保険料など
本人の生活維持費(滞納者本人につき10万円)
扶養家族の生活維持費(1人につき4万5000円)
体面維持費(総支給額から1~5を差し引いた金額の20%)
したがって、給料の総支給額が10万円の場合は差し押さえられる金額はない、ということになります。
たとえば、配偶者と子ども2人を養っている給料50万円の人が、税金の滞納で給料を差し押さえられたとします。その場合の差し押さえ金額は、50万円から36万4800円を差し引いた13万5200円となります。
給料支給額 | 500,000円 | |
---|---|---|
所得税 | 約16,000円 | |
住民税 | 約20,000円 | |
健康保険、厚生年金、 | 約60,000円 | |
本人の生活維持費 | 100,000円 | |
配偶者と子の生活維持費 | 135,000円 | |
体面維持費 | 33,800円 | |
合計 | 500,000円 | 364,800円 |
4. 税金の滞納によって給料を差し押さえられた場合の対処法
税金の滞納は、銀行やクレジット会社、自動車ローン、個人の借り入れなどとは違う法律で扱われるので、滞納によるリスクは税金の方が高いと言えます。裁判を経ずにいきなり差し押さえられる場合がある点には注意が必要です。
また、自己破産をして裁判所に免責許可(もう払わなくてもよいと認めてくれること)をもらっても、税金だけは支払義務が残ります。
ここでは、税金を滞納してしまい、給料を差し押さえられた場合の対処法について、解説します。
4-1. 未払いの税金を最優先で完済する
もし他に借金があり、すべてを支払うことができない状況に陥っているなら、税金の支払いを優先してください。
すでに裁判で支払いを命じられたものがあるなど、税金の滞納以外についても差し押さえのリスクが高まっている場合は、どちらの支払いを優先すべきかは悩ましい問題です。
とはいえ、税金は自己破産によっても逃れることができない支払いなので、まずは税金を納付して、差し押さえを解除してもらうことを優先しましょう。
4-2. 役所に相談する
もちろん、支払うべき税金の全額を払えない場合もあるでしょう。そのような場合は、納付書や督促状に書かれている窓口に連絡をし、分納の相談をしてください。きちんとした支払計画が示せれば、差し押さえを解除してもらえる場合があります。
4-3. 借金などについて債務整理を行う
税金の滞納については、自己破産をしても支払義務が残ります。そのため、現状を変えるためには税金以外の借金を減らす、なくす、ということを考えるべきです。
消費者金融からの借金など、税金以外の借金については、弁護士から受任した旨の通知が届けば督促を止められます。借金の返済を止めている間に税金を納付することを考えましょう。


弁護士・司法書士をお探しなら
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」
5. 税金の滞納による給料の差し押さえはいつまで続く?
税金滞納による給料の差し押さえは、基本的に滞納していた税金が全額納付にいたるか、あるいは退職するまで続くことになります。
給料を差し押さえられただけで解雇されることはないと思いますが、職場に居づらくなって退職に追い込まれる可能性はないとは言えません。
もし、職を失って生活に困った場合は、まずは雇用保険の失業給付を受けましょう。失業給付が受けられない場合や、受け終わっても再就職できないような場合は、生活保護の申請も検討してください。生活保護の支給決定がなされれば、滞納していた税金の支払いについて猶予を受けられるのが通常です。
6. 税金の滞納について悩んだ場合に、弁護士や司法書士へ相談するメリット
税金を納められない人の中には、税金以外の債務も抱えているケースがよく見られます。税金は自己破産によっても免責されないので、生活が苦しい場合には税金以外の債務を整理することを検討してください。
債務整理の方法としては、主に自己破産、個人再生、任意整理などがあります。いずれの手続きにおいても、税金を対象とすることはできませんが、税金以外の債務を減らすことができれば、税金を支払う費用を捻出できます。
自己破産や個人再生のように裁判所の手続きをとる場合や、任意整理をすべき金額が大きい場合には、司法書士よりも弁護士に相談した方がよいでしょう。司法書士は、自己破産や個人再生についての書類作成を行うことができますが、代理人として手続きを代わりに進めることはできません。債権者が多く手続きの負担が大きいケースや、借金額の大きい場合における個人再生など、より高度な専門知識が求められるケースでは、代理権のある弁護士に相談するのがおすすめです。
7. 税金の滞納による給料差し押さえに関するQ&A
Q. 給料差し押さえの解除にかかる日数は?
給料の差し押さえの場合、滞納している税金を全額納付すれば、次の給料からは通常どおり全額支払われるようになります。しかし、解除の手続きに数日はかかるので、次の給料日の前日に納付しても、間に合わない場合があるかもしれません。
Q. 税金を滞納すると、ブラックリストに載る?
一般的に「ブラックリストに載る」という表現が使われますが、実際にブラックリストなるものが存在しているわけではありません。これは、信用調査会社などが持つ信用情報に、滞納したことや債務整理をしたことなどの「事故情報」が載ることを指しています。
事故情報は、信用調査会社に加盟している金融機関などからの情報に基づき掲載されるので、税金については滞納の情報が載ることはありません。
ただ、新たなローンを組むときなどには、税務署などで未納の税金がないことの証明を求められる場合があります。これに滞納情報が載っていると、いわゆるブラックリストと同じ効果をもたらし、ローンが組めないといった事態になると思われます。
Q. 延滞税(延滞金)は、差し押さえられた給料から差し引かれる?
延滞税は、滞納した税金を全額納付するまで発生し続けます。給料が差し押さえられた場合、まずは本税(元々の税金)が優先的に回収されます。この段階では、延滞税はまだ確定していないため、差し押さえた給料から直接差し引かれることはありません。
本税の納付が完了したあと、延滞税の額が確定し、別途納付書が届きます。その納付書に記載された期限までに延滞税を支払わなければ、再度督促が行われ、最悪の場合、延滞税についても差し押さえを受ける可能性があります。
したがって、給料差し押さえでは延滞税は回収されないものの、いずれにせよ支払いは必要になるため、早めの対応が重要です。
Q. 家族が滞納した税金も、自分が支払うべき?
本来、自分が支払うべきは自分の税金だけであり、家族が滞納した税金を支払う必要はないように思われるかもしれません。
しかし、以下のように相続税、贈与税、国民年金保険料などについては、連帯納付義務があるので注意が必要です。
・「父が亡くなって兄と自分が相続をした。自分は相続税を払ったが、兄は払っていなかった」という場合の兄の相続税
・「父が所得税を滞納したまま亡くなり、自分が父の遺産を相続した」という場合の父の所得税
・「世話になった姪に300万円を贈与した。本来はもらった人が払うべき贈与税を、姪が払っていない」という場合の贈与税
・「同居の長男はもう社会人なので、長男本人に任せていたところ、長男は国民年金保険料を納付していなかった」という場合の国民年金保険料
8. まとめ 税金滞納による給料の差し押さえを解除するためにはとにかく早めの行動を
税金を滞納している場合、国や地方公共団体からは裁判所を経由せずに給料の差し押さえができ、差し押さえをされると原則として全額納付するまで解除されません。
そのため、税金については、まずはできるだけ滞納しないことと、納期限までに払えないときは窓口に相談にいくという対応をとる必要があります。
また、税金滞納の背景に借金苦があるときは、借金の整理を早急に考えましょう。借金の整理で困った際は、弁護士や司法書士への相談をおすすめします。早めに動けば、差し押さえ前に対処でき、日常を守れます。後回しにせずに、早めの対応を心がけましょう。
(記事は2025年10月1日時点の情報に基づいています)


朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す