自由財産とは? 自己破産後に残せる財産 拡張方法も解説

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自己破産をしても、「自由財産」は手元に残すことができます(c)Getty Images
自己破産をすると、すべての財産を失うと思い込んでいる人は多いかもしれません。しかし、実際には99万円以下の現金や生活に必要な家財などは「自由財産」として、自己破産後も手元に残すことができます。 また、車など本来は処分対象となる財産でも「自由財産の拡張」が認められれば、財産を残したまま生活を再建できます。ただし、裁判所によって運用が異なるため、事前に自己破産に詳しい弁護士に相談することが重要です。「自己破産はすべてを失う」と思い込んでいる人も、諦めずに弁護士に相談してみましょう。 自由財産の概要や財産を手元に残す方法について弁護士が解説します。

目 次

1. 自由財産とは|自己破産しても残せる財産

2. 自由財産に含まれるもの

2-1. 99万円以下の手持ちの現金

2-2. 差し押さえが禁止された財産|生活に必要な衣服・日用品・家具・家電など

2-3. 差し押さえが禁止された債権|給料、退職金など

2-4. 自己破産後に得た新得財産

2-5. 破産財団から放棄された財産

3. 自由財産以外を手元に残す方法はある?

3-1. 自由財産の拡張とは

3-2. 自由財産の拡張の対象

3-3. 自由財産が拡張できる条件

4. 自由財産を拡張する方法と流れ

4-1. 自由財産の拡張を申し立てる

4-2. 破産管財人と話し合う

4-3. 裁判所が拡張の可否を決定する

5. 自由財産の拡張の成功事例

6. 自己破産で預貯金や車などの財産を隠すとどうなる?

6-1. 自己破産が認められない

6-2. 詐欺破産罪に問われる

7. 自己破産をしても、一定の財産を手元に残したい場合は弁護士への相談がおすすめ

8. 自由財産に関してよくある質問

9. まとめ 自由財産を残したい場合は弁護士に相談を
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1. 自由財産とは|自己破産しても残せる財産

自由財産とは、自己破産の手続きをしても処分されず、自己破産後も手元に残しておける財産のことです。具体的には、一部の現金や家具など生活に必要な財産が該当します。

自己破産では、所有している財産は換金され、銀行や消費者金融などの債権者(お金を貸した側)に分配(配当)されます。しかし、自己破産の本来の目的は、経済的に困窮している人の生活を立て直すことにあります。そのため、生活再建に必要な最低限の財産については、「自由財産」として手元に残すことが認められています。

一方で、自由財産に該当しない財産は「破産財団」とされ、裁判所が選任した破産管財人によって管理・換金・配当が行われます

2. 自由財産に含まれるもの

以下の財産は、自由財産に該当し、自己破産をしても手元に残すことができます。

自由財産に該当する現金や財産は、自己破産をしても手元に残せる
自由財産に該当する現金や財産は、自己破産をしても手元に残せる

それぞれについて解説します。

2-1. 99万円以下の手持ちの現金


自己破産ではすべてを失うと誤解している人が多いですが、99万円以下の手持ちの現金は自由財産として手元に残せます

民事執行法第131条では「2カ月生活するのに必要な金額」として、66万円以下の現金を差し押さえ禁止財産に定めています。これを踏まえ、破産法では「この金額に2分の3を乗じた金銭」として99万円以下を処分の対象にしないと定めています。ただし、99万円以下の現金は手持ちのものに限ります。銀行口座にある預貯金は扱いが異なるため注意が必要です。

2-2. 差し押さえが禁止された財産|生活に必要な衣服・日用品・家具・家電など


国税徴収法では、生活に必要な財産については、差し押さえの対象外とされています。税金を滞納したとしても、生活に必要な財産までは差し押さえられません。これらの財産は、自己破産においても同様に保護され、自由財産として扱われます。

たとえば、以下のようなものが該当します。

  • 衣類、寝具、家具、食器、電化製品(パソコンなどを含む)

  • 生活に必要な食糧や燃料

  • 農業者に必要な肥料や農具、漁業に必要な器具、エサなど仕事に必要なもの

  • 実印など仕事や生活に必要なもの

  • 仏像、位牌、礼拝など宗教的活動に必要なもの

  • 日記、商業帳簿、勲章、学習用具

  • 義足、義手など身体補助に必要なもの

  • 防災設備、消防機械・器具、その他備品

ただし、高価な家具や2台目以降のパソコンなどは、個別に判断が行われます。なお、さいたま地方裁判所では20万円以上の品は報告が必要とされています。

2-3. 差し押さえが禁止された債権|給料、退職金など


生活に欠かせない収入源もまた、差し押さえが禁止された債権(支払いを求める権利)として、自由財産になります。たとえば以下のようなものが該当します。

  • 給料、退職金、賞与の原則4分の3

  • 国民年金、厚生年金などの公的年金の受給権

  • 失業保険

  • 生活保護の受給権

これらを差し押さえてしまうと生活が困窮するおそれがあるため、法律により差し押さえが禁止されています。ただし、破産手続開始決定後に支払いが確定した給料や賞与などは、自己破産の手続きの中では処分対象になりません

また、自己破産手続きの開始前に、これらの支給を受け、「現金」や「預金」として手元に残しておくと、一定額を超える部分は自由財産と扱われない点に注意が必要です。たとえば、受け取った賞与を現金で持っておくと、99万円を超える部分は処分対象となります。

2-4. 自己破産後に得た新得財産


新得財産とは、破産手続きの開始決定後に取得した財産のことで、自由財産として扱われます。つまり、開始決定後に得た給料などの財産については、所有が認められます。

財産が破産財団に属するかどうかは「自己破産の開始決定のタイミング」で判断されるため、申立ての時期を見極めることが非常に重要です。たとえば、給料や年金などで手元の財産が増えた直後に申立てを行うと、財産が「破産財団」に組み込まれ処分される可能性があります。

そのため、申立てのスケジュールを慎重に調整することが大切です。実際に筆者が自己破産の申立てを依頼された際も、依頼者から収入の予定日を事前に確認し、適切なタイミングで申立てを行うようにしています。

2-5. 破産財団から放棄された財産


自己破産で処分対象となる「破産財団」の中には、買い手が見つからなかったり、現金化に手間や費用がかかったりするなどの理由で、処分できない財産もあります。このような財産については、裁判所の許可を得て、破産財団から「放棄」されることがあります。放棄された財産は、自己破産をする人に返還され、自由財産となります。

筆者が破産管財人として担当していた事案でも、現金化するのに費用がかかる財産について、裁判所と相談したうえで、放棄が決定された経験があります。具体的には、買い手がつかない田畑や、建物を解体しなければ売却できない土地などが放棄対象となることがあります。筆者の印象としても、買い手のつかない不動産が放棄の対象となることが多いです。

3. 自由財産以外を手元に残す方法はある?

裁判所の許可を得て「自由財産の拡張」が認められれば、通常は破産財団に含まれる財産も手元に残せる場合があります。ただし、拡張が認められるかどうかは各裁判所の運用基準により異なるため、事前に弁護士に相談することが重要です。

3-1. 自由財産の拡張とは


自由財産以外を手元に残す方法として、「自由財産の拡張」があります。自由財産の拡張とは、裁判所の許可を得て、一定の範囲の財産を自由財産としてもらう手続きです。

通常、破産手続きの開始決定時に所有している財産は、自由財産を除いて破産財団に属し、換金されて債権者に配当されます。しかし、自由財産だけでは最低限の生活を維持するのが難しいことも少なくありません。このような場合に、自由財産の拡張が認められれば、預貯金や保険、自動車などを手元に残せることがあります

3-2. 自由財産の拡張の対象


自由財産の拡張の対象となるかどうかは、裁判所の運用によって異なります。以下では、筆者が主に申立てや破産管財人として関与することの多い、さいたま地方裁判所の運用例を紹介します。

【99万円を超える現金】
生活に不可欠であると判断されれば拡張が認められます

【預貯金】
預貯金額が20万円を超えない場合は自由財産として認められます。これは複数の口座がある場合でも、合計20万円までです。20万円を超える場合は裁判所の許可が必要ですが、基本的に拡張が認められます。ただし、ギャンブルや投資目的の口座は認められないことがあります。

【保険の解約返戻金】
返戻金が20万円を超えない場合は拡張が認められます。20万円を超える場合は、預貯金と同様に裁判所の許可が必要ですが、基本的に認められます。

【自動車・バイクなど】
車両の査定額が20万円を超えない場合は拡張が認められます。これも20万円を超える場合は、裁判所の許可が必要ですが、基本的に認められます。ただし、生活で使用されない車両などは換金対象となります。

【ゴルフ会員権】
ゴルフ会員権は特定のゴルフ場を利用できる会員の権利です。会員権自体の売却や、入会時に支払った預託金の返還請求により、現金に換えられるため、金銭的な価値があります。しかし、ゴルフ会員権については、自由財産の拡張は認められません

【不動産】
不動産についても自由財産の拡張は認められません。売却額よりもローンが多いオーバーローンの状態であっても、金融機関が競売で物件を売却するため、拡張は認められません。ただし、築年数が古いなどで買い手がつかず、破産管財人が放棄した場合は、自由財産となります。

【敷金返還請求権】
賃貸契約時に大家や管理会社に支払った敷金の返還を求める敷金返還請求権については、原則として自由財産の拡張が認められます。拡張が認められれば、退去時に敷金の返還を請求できます。ただし、事業用の物件の敷金返還請求権の拡張は認められません。

3-3. 自由財産が拡張できる条件


自由財産の拡張ができる条件は、収入や生活状況、生活への必要性など総合的に判断されます。また、裁判所の運用基準によって細かく定められているため、どのような条件であれば拡張が認められるか一概にはいえません

弁護士はこうした運用を把握しており、それに基づいて手続きを進めます。自由財産を拡張したい場合は、自己破産に詳しい弁護士に相談するのが確実です。

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4. 自由財産を拡張する方法と流れ

4-1. 自由財産の拡張を申し立てる


自己破産をする人や依頼を受けた弁護士は、破産手続き開始決定の日から1カ月以内であれば、自由財産の拡張を申し立てることができます。さいたま地方裁判所の場合、「自由財産拡張用財産目録」という書類を作成して申立てを行います。「自由財産拡張用財産目録」には拡張を希望する財産について、破産手続き開始決定時の評価額や拡張希望の有無などを記載します。

4-2. 破産管財人と話し合う


破産管財人は裁判所から選任され、破産財団の管理や債権者への配当、免責について調査する役割の弁護士です。

自由財産の拡張に関しては、裁判所が破産管財人の意見を踏まえて判断を行います。東京地方裁判所の場合は、自由財産の拡張を申し立てる前に破産管財人との協議が必要とされているようですが、さいたま地方裁判所では書面のやり取りがほとんどです。このように、各裁判所によって運用が異なるため、弁護士に相談して手続きを進めましょう。

4-3. 裁判所が拡張の可否を決定する


自由財産の拡張の申立てについて、破産管財人の意見を聞いた裁判所が、最終的に拡張の可否を決定します。なお、さいたま地裁の場合は、破産手続きの債権者集会の段階で、裁判所が決定を出します。

5. 自由財産の拡張の成功事例

筆者が依頼を受けた事案では、身体の不自由な家族を施設に送迎するために改造を加えた車について生活に不可欠と判断され、自由財産の拡張が許可されたことがありました。

また、不動産は拡張の対象外ですが、やむなく自宅を売却した事例では、売却益を引っ越しや生活再建資金に充てる必要性を説明し、99万円を超える現金について拡張が認められたケースもあります。

「自己破産をすると、すべての財産を失ってしまうのでは……」と不安を抱えている人も多いかもしれません。確かに、債権者への配当のために財産を手放さなければならない場面もありますが、自由財産の拡張によって財産を手元に残せることもあります

また、破産管財人や裁判所への説明は、個人で対応するのは難しいでしょう。自己破産に詳しい弁護士に依頼すれば、各裁判所の運用を把握したうえで、個別の事情を汲み取った対応を行ってくれます

6. 自己破産で預貯金や車などの財産を隠すとどうなる?

自己破産において預貯金や車などの財産を隠す行為は、自己破産が認められない原因となるだけでなく、刑事罰の対象となるおそれもあります。絶対に行ってはいけません。

6-1. 自己破産が認められない


自己破産で財産の処分を避けたいがために預貯金や車などの財産を隠すと、自己破産が認められないおそれがあります。自己破産は公平かつ厳正な手続きであり、不正行為は認められません。このような行為をすると、自己破産が認められない事情である「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」に該当します。

たとえば、配当を減らすなど債権者を害する目的で財産を隠す行為は免責不許可事由に該当し、自己破産が認められない可能性があります。

6-2. 詐欺破産罪に問われる


債権者を害する目的で財産を隠した場合、「詐欺破産罪」に問われる可能性があります。詐欺破産罪が成立すると「1カ月以上10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金」が科されるおそれがあります。

このように、財産隠しは重大なリスクを伴うため、絶対に避けるべき行為です。正当な方法で財産を手元に残したい場合は、弁護士に相談し、自由財産の拡張を申し立てることが重要です。

7. 自己破産をしても、一定の財産を手元に残したい場合は弁護士への相談がおすすめ

自由財産の拡張は、裁判所ごとに運用が異なるため、どの財産が残せるのか、申立時に何に注意すべきかを把握するには、自己破産に詳しい弁護士のサポートが重要です。経験豊富な弁護士であれば、地域の裁判所の運用基準に基づいて的確なアドバイスができます。また、財産の処分を避けたい場合には、自己破産以外の債務整理を含めた提案を受けることも可能です。

弁護士に依頼することで、裁判所の運用基準を踏まえたうえで、個々の事情に即した柔軟な対応を行ってもらえます。自分が住んでいる地域を管轄する裁判所の運用に詳しい、地元の弁護士に相談するとよいでしょう。

8. 自由財産に関してよくある質問

Q. 自由財産として車を手元に残す方法はある?


さいたま地方裁判所のように、裁判所によっては、自分で使用する車両は原則として自由財産と認め、手元に残せる場合があります。申立てを行う裁判所の運用については弁護士に相談するとよいでしょう。

Q. 自由財産の拡張で財産を99万円以上残せる?


財産が必要な事情を説明し、生活に不可欠であると認められれば、99万円を超える現金でも拡張が認められることがあります。筆者が担当した事案でもそうした経験がありますので、地域で自己破産に詳しい弁護士に相談しましょう。

Q. 自己破産として預金を20万円以上残せる?


さいたま地方裁判所では、裁判所の許可を得れば、20万円を超える預金についても拡張が認められます。ただし、預金の総額が99万円を超える現金となる場合、99万円を超える部分については処分対象となることがあります。

Q. 不動産は自由財産になる?


さいたま地裁を含め、全国的に見ても不動産を自由財産として認める運用をしている裁判所はないと考えられます。不動産を手元に残したい場合は、自己破産以外の債務整理など、別の解決策がないか、弁護士に相談するとよいでしょう。

9. まとめ 自由財産を残したい場合は弁護士に相談を

自己破産をしても、すべての財産を失うわけではありません。生活再建のために必要な「自由財産」や、裁判所の許可を得た「自由財産の拡張」により、一定の財産は手元に残すことができます。

ただし、自由財産の拡張が認められるかは裁判所の運用に左右され、専門知識が必要です。弁護士に相談すれば、裁判所の運用基準を踏まえたうえで、個別の事情に応じた柔軟な対応をしてもらえます。財産を残したい場合は、自己破産や地域の裁判所の運用に詳しい弁護士に相談するのが望ましいです。

(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

三輪貴幸(弁護士)

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樟葉法律事務所 代表弁護士
樟葉法律事務所代表弁護士・さいたま市行政不服審査専門員、埼玉弁護士会所属。登録番号37974。こんなことを弁護士に相談してよいのか?というお悩みをお持ちの方、お気軽にご相談を。債務整理については、任意整理、民事再生・個人再生申立、破産申立、個人再生委員、破産管財人の全ての案件につき実績あり。他にも、離婚、相続という個人の方の案件から企業法務、知的財産権、M&Aといった事業者の方の案件まで幅広く対応。
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