自己破産すると車はどうなる? 手元に残せるケースや方法を解説

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自己破産をすると、所有している車も処分されてしまうのでしょうか(c)Getty Images
借金がかさんで返済するのが苦しい場合の選択肢の一つが自己破産です。自己破産をするとそれまでの借金などの支払いを免除してもらうことができます。一方で、手元にある財産のほとんどは処分されて換金され、借入先への支払いに充てられます。その際、所有している自動車も処分されてしまう可能性があります。 自動車を処分されてしまうとその後の生活や仕事に支障が出る場合など、自己破産後も自動車を残したい場合には、弁護士に相談して対応策を考えておくことをお勧めします。 自己破産後に自動車を手元に残すための方法や、残せなかった場合の対処法などについて、弁護士が詳しく解説します。

目 次

1. 自己破産をすると車はどうなる?

2. 自己破産をしても車を残せるケース

2-1. 査定額があまりにも低い|20万円以下

2-2. 車が処分されると、日常生活や仕事に大きな支障が生じる

2-3. 車が家族名義である

3. 自己破産による車の処分を回避する方法

3-1. 自由財産の拡張を申し立てる

3-2. 家族に第三者弁済をしてもらう

3-3. 家族に買い取ってもらう

4. 車を残したいとしても、自己破産前にやってはいけないこと

4-1. 無償または不当な低価格での譲渡

4-2. 自動車ローンの偏頗弁済

5. 自己破産したら二度と車の購入はできない? どうすればいい?

5-1. ローン購入は7年間はできない

5-2. 現金購入可

5-3. 生活福祉資金貸付を活用する

5-4. カーシェアリングを活用する

6. 任意整理や個人再生なら、車を残せることがある

7. 自己破産後に車を残したい場合、弁護士に相談するメリット

8. 自己破産と車に関してよくある質問

9. まとめ 自己破産後に車を手元に残せるか不安な場合は弁護士に相談を
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1. 自己破産をすると車はどうなる?

自己破産した場合、99万円までの現金など一部の財産を除き、破産者の財産は原則としてすべてお金に換えられて、銀行や消費者金融などの債権者(お金を貸している側)に配当(分配)されます。

自己破産をした場合でも手元に残すことができる財産は「自由財産」と言い、それ以外の破産者の財産は「破産財団」として原則お金に換えられ、配当に充てられます。

自由財産として手元に残せるのは、99万円までの現金、差押禁止財産(生活に必要な衣類、家具など)、給料など破産手続きの開始後に取得した財産、裁判所が自由財産の拡張を認めた財産です。自由財産の拡張とは、破産者の生活を保証するために、手元に残せる自由財産の範囲を広げることです。

このほかに、裁判所から選任されて破産手続きを進める破産管財人が破産財団から放棄した財産も、あとから破産者に戻ってくるケースがあります。

自動車ローンが残っている場合、車検証上の車の所有者はローン会社になっていることがほとんどです。この場合、自動車ローンの支払いをやめた時点、もしくは破産手続きが開始した時点で、ローン会社に自動車が引き上げられてしまいます

自動車ローンが残っていない場合も、自動車は原則として破産財団に含まれるため、破産管財人によってお金に換えられ、債権者への配当や破産手続きに必要な費用に充てられます

ただし、以下のように例外的に自動車を手元に残せる場合もあります。

2. 自己破産をしても車を残せるケース

2-1. 査定額があまりにも低い|20万円以下


かなり古い国産車である場合などには、査定額が低かったり、値段がつかなかったりすることがあります。

このような場合、破産管財人が売却して処分することが難しいため、破産財団から放棄され、使い続けることができる可能性があります。

自動車の価値が低いとされる一つの目安は査定額が20万円以下であることですが、目安の価格は地域や車種、そのほかの事情によっても異なります。そのため破産の申立てをする裁判所がある地域の弁護士に相談することをお勧めします。

2-2. 車が処分されると、日常生活や仕事に大きな支障が生じる


破産者が住んでいる地域や場所によっては、自動車がなければ通勤のほか日常の買い物や通院も難しくなり、生活に大きな支障が出る場合があります。そのような状況で自動車が処分されると、そもそも生活していくこと自体が難しくなってしまいます。

また、事業のために自動車を使用している場合など、破産後の経済的な立て直しのために自動車が必要なケースもあります。

このように自動車が処分されてしまうと仕事や日常生活などに支障が出る場合には、自由財産の拡張によって、自動車を引き続き所有することが認められる可能性があります。

ただし、拡張が必ず認められるとは限らず、仮に認められた場合であっても、自動車について自由財産の拡張を認める代わりに、一定の現金を破産財団に組み入れるように求められることもあります。

2-3. 車が家族名義である


破産者以外の財産は破産手続きで処分されることはないため、自動車が家族や友人など破産者以外の人の名義の場合、自動車を手元に残して使い続けることができます。

3. 自己破産による車の処分を回避する方法

自己破産をしても自動車の処分を避けるためには、以下のような方法があります。

3-1. 自由財産の拡張を申し立てる


自動車について自由財産の拡張を裁判所に申し立てる場合、自動車がなければ生活や仕事に支障が出ることを具体的に説明する必要があります。

たとえば、持病があり自家用車でなければ通院できない、勤務時間が深夜や早朝のため公共交通機関の利用が難しいなど、自動車を使うことができなければ健康上の問題や仕事への支障が生じることなどを具体的に説明しなければなりません。

また、自動車の価値が低い場合はそのことも併せて説明する必要があります。

3-2. 家族に第三者弁済をしてもらう


第三者弁済とは、ある債務(借金)について、債務者(お金を借りている人)本人以外の第三者に弁済してもらう、つまり借金を肩代わりしてもらうことです。

たとえば、自動車ローンを債務者の家族や親族など、本人以外が支払う場合などがこれにあたります。

自動車ローンを家族に支払ってもらえれば、ローン会社が自動車を引き上げることはなくなります

家族に破産者のローンを支払ってもらったとしても、破産者の財産が減少するわけではないので、免責不許可事由(自己破産が認められない事由)にはあたりません

第三者弁済の仕組みを図解。自動車ローンを家族に支払ってもらえば、債権者は自動車を引き上げることができない
第三者弁済の仕組みを図解。自動車ローンを家族に支払ってもらえば、債権者は自動車を引き上げることができない

しかし、同居の家族など破産者と家計を同一にしている人が支払うと、破産者のお金で支払ったのではないかと疑われる可能性は十分にあります。実質的に破産者のお金で支払ったみなされれば、特定の債権者にだけ優先的に借金を返済する偏頗弁済(へんぱべんさい)と認定され、自己破産が認められなくなってしまうおそれがあります。

そのため、第三者弁済を考えている場合は、自己破産を申し立てる際に弁護士に依頼し、偏頗弁済にあたらないかなど相談すべきです。

3-3. 家族に買い取ってもらう


仮に自動車ローンを第三者弁済してもらったとしても、自動車の価値が高い場合には、破産管財人により処分されてしまうことがあります。

そのような場合には、家族が破産管財人から車を買い取るという選択肢もあります。ただし、家族だからといって必ずしも売ってもらえるわけではないため、注意が必要です。

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4. 車を残したいとしても、自己破産前にやってはいけないこと

自動車を手元に残したいとしても、自己破産前に以下のような行動をしてはいけません。

4-1. 無償または不当な低価格での譲渡


自動車を手元に残したいからといって、自動車を無償あるいは非常に低価格で誰かに譲渡して、所有者の名義を変えてはいけません。家族や友人に車をあげる、あるいは低価格で売る、といったことが典型例です。

このような無償や不当な低価格での譲渡は、破産者の財産を不当に減少させる行為のため、破産管財人により否認権を行使される可能性があります。否認権が行使されると、破産管財人が車を譲り受けた人に自動車の返還を求めたり、訴えを起こしたりすることがあります。

4-2. 自動車ローンの偏頗弁済


自動車を引き上げられたくないからといって、破産の申立て前に自動車ローンだけを破産者のお金で返済してしまうと、一部の債権者だけに優先的に返済をする偏頗弁済にあたります。

このような偏頗弁済は一定の条件に該当すると破産管財人に否認され、破産管財人がローン会社に返済分の返還を求めることもあります。

また、偏頗弁済を行ったことは免責不許可事由にあたるため、自己破産をしても免責が認められない、つまり借金返済の免除が認められず、借金が残ってしまう可能性もあります。

5. 自己破産したら二度と車の購入はできない? どうすればいい?

自己破産後に自動車を購入したい場合は、以下のような注意点や方法があります。

5-1. ローン購入は7年間はできない


自己破産をした場合、一定の期間は個人信用情報機関にその情報が登録されるため、多くのローン会社やカード会社の審査に通りにくくなります。どの程度の期間が経過すればローンの利用が可能になるか、正確に決まっているわけではありませんが、おおむね7年程度はローンを組むことは難しいと考えられます。

5-2. 現金購入可


自動車ローンを組むことができなくても、現金で一括購入することは可能です。そのため、貯金をする、親族に援助してもらうなどしてまとまった現金を用意すれば、価格の安い中古車などを購入することは可能です。

5-3. 生活福祉資金貸付を活用する


自己破産をした場合であっても、地域の社会福祉協議会に相談して、生活福祉資金貸付を受けられる可能性があります。生活福祉資金貸付制度とは、失業や減収などで生活が困窮している場合に、生活費や一時的な資金の貸し付けを無利子または低金利で受けられる制度です。

ただし、利用には一定の条件があるため、必ず受けられるわけではありません。

5-4. カーシェアリングを活用する


会員登録して乗った分だけ使用料を支払うカーシェアリングであれば、ローンを組まなくても自動車を利用することが可能です。

ただし、カーシェアリングはサービスを利用できる地域が限られ、特に地方ではサービスの提供自体がない地域もあります。

6. 任意整理や個人再生なら、車を残せることがある

借金の返済が苦しい場合の債務整理には、自己破産のほかに、任意整理や個人再生という方法もあります。

裁判所を介さない任意整理の場合、自動車ローンは払い続けて、それ以外の債務だけを任意整理の対象とするという選択も可能です。その場合、自動車は手元に残すことができます

個人再生の場合、自己破産と違って借金が全額免除されるわけではありませんが、債務者の財産が処分されることはないので、自動車を手元に残すことができます。ただし、個人再生の場合、自動車ローンも再生債権として借金減額の対象になるため、自動車ローンが残っている場合には自動車を引き上げられてしまうことがほとんどです。

債務整理の概要。自己破産で車を残すことが難しい場合、任意整理や個人再生の方法もある
債務整理の概要。自己破産で車を残すことが難しい場合、任意整理や個人再生の方法もある

7. 自己破産後に車を残したい場合、弁護士に相談するメリット

自己破産をしたあとも車を手元に残したい場合、自動車を家族に買い取ってもらえないか、あるいは自由財産として認めてもらうために裁判所に説明ができないか、そもそも自己破産以外の方法で債務整理ができないか、などを検討する必要があります。

しかし、こうした判断をすべて自分でするのは、大変です。債務整理の経験が豊富な弁護士に相談すれば、適切なアドバイスがもらえるでしょう。

特に、自由財産として認められるかといった問題は裁判所によって扱いが異なる場合もあるため、自己破産の申立てをする裁判所がある地域の弁護士に相談したほうがよいでしょう。

8. 自己破産と車に関してよくある質問

Q. 自己破産すると車の免許は失効する?


自己破産をしても自動車の運転免許が失効することはありません。

Q. 車の時価を調べる方法は?


中古車販売業者、日本自動車査定協会、自動車ディーラーなどに査定を依頼すると、おおよその時価がわかります。依頼先によっては、査定に費用がかかることもあります。

Q. 10年落ちの車であれば、自己破産しても残せる?


新車として登録されてから10年以上経過している車の場合、一般的に価格が低いことが多いため、手元に残すことができる可能性があります。ただし、高級車や人気車種の場合は年数にかかわらず価格が高いこともあり、手元に残すことは難しくなります。

Q. 田舎で車がないと困るときは、自己破産しても車を残せる?


生活に支障が出るからといって必ずしも手元に残せるとは限りません。具体的にどのような支障が生じるのか、自動車の価格はどの程度なのかなどを裁判所が総合的に判断したうえで、手元に残すことが認められる場合もあります。

Q. 自己破産前に廃車にしたらどうなる?


自動車の価格や廃車にした理由、時期によっては、廃車によって自己破産前に破産者の財産を不当に減少させたとして、免責不許可事由になることがあります。

自己破産の申立て前に自動車を廃車にしたい場合は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 夫が自己破産したら、妻の車はどうなる?


夫が自己破産をしても、妻の自動車が処分されることは原則としてありません。

9. まとめ 自己破産後に車を手元に残せるか不安な場合は弁護士に相談を

自己破産をする場合、ローンが残っている自動車はローン会社に引き上げられるため、手元に残すことは難しくなります。また、ローンが残っていない場合でも、自動車は破産財団に組み込まれて処分されてしまうことが原則です。

しかし、自動車の価値や事情によっては、自己破産しても自動車を手元に残すことができる可能性があります。自己破産をしたいものの自動車を手元に残すことができるか不安がある場合には、一度弁護士に相談してみてください。

(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

後藤田環(弁護士)

後藤田環(弁護士)

竹村法律事務所 弁護士
札幌弁護士会所属、登録番号5342010。自己破産、個人再生、任意整理など債務整理の事件を取り扱っている。自己破産については申立てのほか、過去に破産管財人に選任された経験もある。個人にとって債務整理は生活全体に関わる問題であるため、債務整理を通じて生活全体をよりよくしてほしいという思いを持っている。相談時は話しやすい雰囲気づくりを心がけている。
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