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1. 不動産の競売を回避できるタイミング
不動産の競売は、法律上は買受人(裁判所から不動産を購入することを許可された人)が代金を納付するまで取り下げられる余地があります。
ただし、開札(入札結果の確認)後に最高価買受申出人(買受人)が決まると、取り下げてもらうにはその買受人などの同意が必要になるため、実務上現実的ではありません。。そのため、競売を確実に回避、または取り下げてもらいたい場合は、できるだけ早く、遅くとも開札前までに債権者との調整や売却などを進めることが重要です。
1-1. 競売開始決定通知が届いた後に競売を回避する方法
住宅ローンやその他の借金の滞納が続いていると、債権者がその滞納分を回収する目的で、裁判所に競売を申し立てる可能性があります。裁判所が債権者の申立てが適法であると判断し受理すると、正式に競売手続きが開始され、その旨を滞納者に伝える「競売開始決定通知」が送付されます。
裁判所から届く「競売開始決定通知」は、手続きが始まったことを知らせる連絡であり、不動産の売却が決定したことを示すわけではありません。
この通知が届いたタイミングであれば、債権者に競売を取り下げてもらったり、住宅ローン特則を利用した個人再生とともに「競売手続きの中止命令」の申立てを行ったりすることで、競売を回避できる可能性が残っています。
最終的な回避のリミットは、入札が開始するまでとなります。入札までの期間は、「競売開始決定通知」が届いてから4カ月~6カ月程度であることが多いです。債権者との交渉が難航したり、個人再生などの手続きにも時間がかかったりします。まだ4カ月ある、と考えるのではなく、回避を希望する場合はすぐに弁護士に相談するなど、直ちに対応することが大切です。
【債権者と交渉し競売を取り下げてもらう】
競売を取り下げられるのは、原則として申立てをした債権者です。競売を取り下げてもらうには、債権者と交渉して「競売を取り下げてもよい」と納得してもらうことが重要です。
ただし、開札で最高価買受申出人(競売物件を購入する第一候補)が決まった後は、原則として最高価買受申出人または買受人に加え、次順位買受申出人がいる場合はその同意も必要になります。そもそも開札日を迎えた時点で、取り下げのために債権者と交渉する時間は残り少なくなっています。
以上のことから、競売開始から時間が経つほど取り下げは難しくなると言えます。競売を回避したい場合は、できるだけ競売が始まる前から、すでに開始されている場合は競売開始決定通知が届いた段階から早めに動くことが大切です。
とくに、競売が開始されていない段階であれば、返済条件の変更や通常売却など、開始後より多くの選択肢を検討できます。
【自己破産や個人再生について】
住宅ローンを滞納して抵当権(借金が返済できない場合の担保となるように、債権者が不動産に設定する権利)を行使されている場合、自己破産しても原則として競売は止まりません。抵当権は破産手続きによらず行使できるため、競売手続きはそのまま継続するからです。
一方、抵当権ではなく裁判の判決などに基づいて申し立てられた競売は、破産手続開始決定によって原則として進められなくなります。ただし、競売が止まったとしても破産手続きの中で不動産は結局処分される可能性が高いでしょう。
個人再生の場合も、申し立てただけでは競売を止められません。ただし、後述する住宅ローン特則を利用する場合は、裁判所に申し立てることで競売手続きを中止してもらえる可能性があります。
1-2. 買受人が代金を納付すると原則として競売を取り下げてもらうことは不可能
開札後、裁判所から買受人として認められた人が代金を納付すると、競売を取り下げてもらうことは原則としてできなくなります。所有権移転登記は代金納付後に行われますが、所有権自体は代金の納付が完了した時点で買受人に移るためです。
つまり、代金が支払われた時点で元所有者は所有権を失い、原則として買受人へ不動産を明け渡す必要があります。その後は、買受人と引っ越し時期や残置物の処分方法などについて交渉しながら、退去の準備を進めます。
売却後も立ち退かない場合は、買受人から引渡命令を申し立てられ、命令後も明け渡さなければ強制執行によって退去を求められることになります。
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2. 競売を回避する5つの具体策
現在の返済状況や収入・資産、自宅を残したいかどうかによって、取れる競売の回避方法は異なります。競売手続きが進んでいる場合は時間にも限りがあるため、自分に合う方法をできるだけ早く検討することが大切です。
2-1. 資金を確保できるなら滞納分の解消や一括返済を行う
返済に必要な資金を確保できるなら、滞納分を解消したり、請求されている金額を一括返済したりすることで、競売を回避できる可能性があります。
滞納分の解消や一括返済ができそうな場合は、債権者である金融機関や保証会社に、支払える根拠や支払時期をすぐに連絡しましょう。
一括返済を求められる前の段階であれば、滞納分を解消することで通常の返済へ戻せる可能性があります。不要な資産の売却や、親族からの援助などで対応できないか検討してみましょう。
ただし、すでに一括返済を求められている場合は請求額が高額になりやすく、たとえ親族が援助に前向きでもすぐに準備するのは困難な金額であることも多いでしょう。
2-2. 債権者と返済条件の変更を相談する
債権者と話し合って返済条件を変更し、毎月の支払いやボーナス払いの負担を軽減できれば、自宅などを手放さずに返済を続けられる可能性があります。
債権者が競売を申し立てる目的は、不動産を売却して未返済分を回収することです。そのため、債権者が「条件を変更すれば返済を続けられる」と判断すれば、競売に進まず返済を継続できる可能性があります。
返済条件の変更を相談する際には、以下の状況・事情を整理しておき、債権者と共有できるようにしておきましょう。
返済が苦しくなった理由と、その状況が一時的なものか
復職や転職、家族の就職などによって今後の収支改善が見込めるか
他の借金を含め、現在どの程度の返済負担があるか
返済期間の延長やボーナス払いの変更など、どのような条件変更を希望するか
債権者と返済条件の相談は、競売手続きや一括返済請求、代位弁済(保証会社などが代わりに借金を返済すること)の手続きに入る前に行うのがよいでしょう。
代位弁済や競売開始まで進むと、通常の返済条件変更ではなく、競売の取り下げや不動産の処分についての調整が中心になります。返済条件の変更で競売を回避したい場合は、住宅ローンなどの返済が厳しくなった時点で、早めに債権者へ相談することが大切です。
2-3. 住宅ローン特則を利用した個人再生を申し立てる
住宅ローン以外の借金を減らせば住宅ローンの返済を続けられる場合は、自宅の競売を回避する方法として住宅ローン特則を利用した個人再生を検討できます。
個人再生を行うと、裁判所の手続きを通じてカードローンや消費者金融からの借り入れなどの借金を一定の基準まで減額し、残りを原則3年間、事情がある場合は最長5年間で分割返済します。
しかし、個人再生を申し立てても、住宅ローンの債権者が持つ抵当権の行使は原則として制限されません。そのままでは債権者が抵当権を行使して、自宅を競売にかける可能性が残ります。
そこで住宅ローン特則を利用すれば、個人再生による減額対象から住宅ローンを外した上で、他の借金を減額できます。
住宅ローン特則とは、民事再生法に基づき、住宅ローンの支払いが苦しくなった人が自宅を手放さずに生活を立て直せるように設けられた制度です。
住宅ローン自体は原則として減額せず返済を続けるため、債権者にとっても競売で自宅を売却して回収する必要性が低くなります。
すでに競売が始まっている場合でも、住宅ローン特則を利用できる見込みがあれば、裁判所への申立てによって競売手続きの中止を命じてもらえる可能性があります。
しかし、個人再生の審査には数カ月を要するのが一般的です。その間に落札されては意味がないため、個人再生の申立てとあわせて、競売を中止してもらう「競売手続きの中止命令」を裁判所に申し立てます。
「競売手続きの中止命令」が認められれば、通常3カ月から4カ月程度の期間、競売手続きが止まるため、その間に個人再生の手続きを進めます。
ただし、個人再生を行うと信用情報に一定期間影響が残り(いわゆるブラックリストに載ると言われる状態)、新たなローンやクレジットカードの審査に影響する可能性があります。
2-4. 通常売却して完済する
売却代金やその不足分を自己資金などを利用して住宅ローンを完済できる場合は、競売にかけられる前に不動産を通常売却する方法があります。
例えば、住宅ローンの残額が2000万円で、自宅が2500万円程度で売却できる見込みがある場合は、債権者と抵当権抹消について特別な条件交渉をすることなく、通常売却を進められます。
売却代金だけでは足りない場合でも、預貯金などの自己資金で不足分を補えれば通常売却が可能です。
通常売却は、競売よりも高値がつきやすい上に、抵当権抹消や返済条件といった特別な交渉をする手間が省けるのがメリットです。不動産を残すことにこだわりがない場合は、競売に進む前に通常売却を検討するのがよいでしょう。
ただし、一般的な不動産仲介では買主探しから契約・決済までに時間がかかる場合があり、動き始めるのが遅いと先に競売手続きが進んでしまうおそれがあります。
また、不動産自体の状態や需要によっては、通常売却でも住宅ローンを上回る売却代金にはならないことも想定されます。
通常売却は、すでに始まった競売を止める方法というより、競売が始まる前から早めに準備をして回避する方法です。競売開始後でも競売より先に売却・完済を終えられる場合は取り下げてもらえる可能性はありますが、取り下げ手続きや交渉時間を考えると難しくなると言えます。
2-5. 任意売却して売却代金を返済に充てる
任意売却とは、売却代金だけでは住宅ローンを完済できない場合でも、債権者と話し合った上で不動産を売却する方法です。
通常、住宅ローンが残る不動産を売却するには、決済時にローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。
一方で任意売却では、売却代金だけでは住宅ローンを完済できない場合でも、債権者や抵当権者などの関係者と売却価格や返済額などを調整し、抵当権抹消への同意を得た上で、一般市場で不動産を売却します。
任意売却は、競売を回避する際の代表的な方法の1つです。すでに競売が始まっている場合でも、債権者から任意売却の同意を得て競売を取り下げてもらった経験は筆者にもあり、他の不動産会社・弁護士事務所でも確認できます。
債権者に任意売却をお願いする際に、債権者の説得材料となり得る例をいくつか紹介します。
不動産会社の査定書や近隣の成約事例などを提示し、競売より高値で売却できる見込みを具体的に示す
購入希望者を確保して買付証明書などを提示し、「同意があれば9月15日までに決済できる」など具体的な売却スケジュールを示す
売却価格から仲介手数料などの費用を差し引き、債権者へいくら返済できるのかを明確にしておく
なお、任意売却後に残る借金については引き続き返済が必要です。
3. 競売の回避に向けて確認・相談すべきこと
競売を回避するための具体策を実行に移すには、自分の置かれた状況の確認や、適切な相手への相談が重要です。競売の回避に向けて、確認・相談すべきことを解説します。
3-1. 届いた通知から競売の進行段階と期限を確認する
手元に届いた借金に関する通知を確認し、競売手続きがどこまで進んでいるかを把握しましょう。同じ住宅ローンの滞納でも、返済条件を相談できる段階と、すでに競売開始決定が出ている段階では取れる方法が異なります。
例えば、住宅ローンを滞納した場合は、一般的に以下のような通知が届きます。
住宅ローンの滞納で | 進行段階の目安 |
|---|---|
督促状 | 滞納の初期段階で、滞納分の解消や返済条件変更を相談しやすい |
催告書 | 一括返済請求などへ進むおそれが高く、債権者への早急な相談が必要になる |
期限の利益の喪失・ | 分割払いで返済する権利を失っており、 |
代位弁済通知 | 保証会社が代わりに借金を支払っている段階で、 |
競売開始決定通知 | 競売手続きが始まっており、放置すると入札・売却に向けて手続きが進んでいく |
期間入札の | 入札期間や開札日が決まり、実際の入札が近づいているため、 |
各通知には、支払いや権利喪失の期限や、その後に債権者が取る対応内容が記載されています。書類の意味が分からないからといって放置せず、すぐに債権者や専門家に相談してください。
3-2. 借金・収入・自宅の査定額を正確に確認する
現在の借金や収入・支出、自宅の査定額を整理しておきます。これらの情報があいまいなままでは、自宅を残して返済を続けられるのか、売却したほうがよいのか適切に判断できません。
例えば、通常売却や任意売却を検討する場合は、不動産会社に査定を依頼します。査定結果を入手して住宅ローンの残額や自己資金などと比較し、通常売却と任意売却のどちらになりそうかを確認しましょう。
任意売却の場合、取得した査定額は、債権者へ売却価格の見込みを示す際の根拠資料にもなります。
不動産を売却せずに競売を回避する場合は、返済条件の変更後や個人再生後に、住宅ローンなどを継続して返済できるかも確認しましょう。
3-3. 回避方法に応じて不動産会社や弁護士へ相談する
競売の進行状況や借金、自宅の査定額などを確認したら、選択する回避方法に応じた相手へ相談します。
例えば、任意売却を検討する際は、任意売却の実績を持つ不動産会社に査定や仲介を依頼するのがよいでしょう。債権者への査定結果の提出、抵当権抹消に必要な書類・手続きの確認、競売の日程を踏まえた売却スケジュールの管理など、通常売却にはない実務対応が必要になるためです。
また、個人再生の住宅ローン特則の利用、競売手続きへの対応、住宅ローン以外の借金の整理といった法律上の問題は、弁護士への相談を検討します。
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4. 競売を回避した後の返済への対応
任意売却で競売を回避した後も借金が残った場合は、債権者と今後の返済方法について話し合います。現在の収入や生活費などを踏まえて、返済可能な金額や支払い方法について相談しましょう。
個人再生の住宅ローン特則を利用した場合は、裁判所に認可された再生計画に基づいて返済を続けます。
一括返済や通常売却によって住宅ローンを完済した場合は、その住宅ローンについて以後の返済はありません。滞納分の解消や返済条件の変更によって競売を回避した場合は、従来または変更後の条件に従って住宅ローンを返済します。
4-1. 再び返済が難しくなった場合
任意売却後の返済や、返済条件の変更・個人再生による返済を続けている途中で、さらなる収入減少や病気などによって支払いが難しくなることもあります。その場合は、債権者や弁護士へ相談し、返済条件の変更や再生計画の変更などが可能か確認しましょう。
それでも返済を続けるのが難しい場合は、自己破産などの債務整理を検討する必要があります。
自己破産をして免責が認められれば、原則として借金の支払義務が免除されます。しかし、自宅が原則として処分対象になるほか、信用情報にも影響します。そのため、弁護士に相談した上で慎重に検討することが大切です。
5. 競売の回避についてよくある質問
Q. 親族への贈与や名義変更をすれば競売を回避できますか?
親族へ不動産を贈与したり名義を変更したりしても、原則として競売は回避できません。
例えば、住宅ローンの抵当権が付いた自宅は別名義にしても抵当権が消えるわけではないため、債権者は競売手続きを進められます。また、住宅ローン以外の借金についても、債権者からの回収を免れる目的で親族へ財産を移した場合は、詐害行為取消請求によって行為自体が取り消される可能性があります。
Q. 競売を取り下げてもらうにはいくら支払う必要がありますか?
競売を取り下げてもらう場合に必要な金額に、一律の基準はありません。
住宅ローンを一括返済する場合は、住宅ローンの残額に加えて、遅延損害金や競売手続きにかかった費用などの支払いを求められる可能性があります。必要な金額は債権者や進行状況によって異なるため、債権者へ確認しましょう。
Q. 親族に自宅を落札してもらえば住み続けられますか?
親族が競売に参加して自宅を落札し、その後も居住を認めてもらえれば、住み続けることは可能です。親族であることだけを理由に、入札が禁止されるわけではありません。一方、お金を借りた債務者本人は、自分の競売物件について買受けの申出をすることができません(民事執行法第68条)。
ただし、親族が必ず落札できるとは限らない上に、自宅の所有権も親族へ移ります。また、その後に親族から自宅を著しく低い価格で買い戻すと、時価と売買価格との差額について贈与税がかかる可能性もあるため注意が必要です。
また、そのまま住み続ける方法としては、「リースバック」という方法もあります。リースバックとは、自宅を売却した後に買主へ家賃を支払い、賃貸住宅として住み続ける方法です。
賃貸物件となるため、家賃の支払いが発生するのはもちろん、売却後に完済できなかった場合はローンの返済もしなければなりません。そのため、家賃や契約期間などの条件を確認し、「今後も無理なく住み続けられるか」「いつまで利用するのか」などを踏まえて、利用するかどうかを判断することが大切です。
6. まとめ|競売を回避するには専門家への早めの相談が大切
不動産の競売は、買受人が代金を納付すると所有権が買受人に移るため、取り下げてもらう事はできません。
よって、法律上は所有権が移る前、つまり買受人が代金を裁判所に納付する前まで取り下げてもらえる余地があります。しかし開札後の取り下げには最高価買受申出人などの同意が必要になるため、実務上は非常に困難です。
そのため、競売が開始される前に手を打つ必要があります。滞納分の解消や返済条件の変更、住宅ローン特則を利用した個人再生、通常売却、任意売却などの中から、自分の返済状況や収入・資産、自宅を残したいかどうかに合った方法で競売を回避することを検討しましょう。
ただし、競売手続きが進むほど、利用できる回避方法は限られていきます。競売や滞納に関する通知が届いた場合は放置せず、現在の借金や収入、自宅の査定額などを整理した上で、任意売却なら不動産会社、個人再生や借金の整理なら弁護士など、状況に合った相手へ早めに相談することが大切です。
(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています)
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