債務名義とは? 取得されたらどうなる? 強制執行に至る流れを解説

更新日: / 公開日:
債務名義とは、借金などの債務を法的に回収するために必要となる「裁判所のお墨付き」とも言える公的な文書です (c)Getty Images
借金返済の延滞が続くと、銀行や消費者金融などの債権者から訴えを起こされる可能性が高くなります。結果、裁判で敗訴し、途方に暮れてしまうケースも少なくありません。 裁判所から届いた文書の「債務名義」という言葉を目にすれば、これから何が起こるのか不安が募ってしまう人が多いはずです。債務名義とは、借金を返済できていない債務者から強制的に財産を差し押さえるなど、法的な手段をもって債務を回収するための「お墨付き」のような公文書です。裁判での敗訴判決は、この債務名義の一つとなります。 債務名義を取得した銀行や消費者金融は、あなたの財産に対して「強制執行」という強力な手段を行使できるようになります。そのまま放置していると、預貯金や給与、不動産など、大切な財産が差し押さえられてしまう可能性があります。 債務名義とは具体的にどのようなものなのか、この公的文書が取得されたあと、最終的に強制執行に至るまでの具体的な流れ、強制執行の回避策と対処法について、弁護士が詳しく解説します。

目 次

1. 債務名義とは?

2. 債務名義があるとどうなる? 債権者が取得したがる理由

2-1. 給与

2-2. 預金口座

2-3. 不動産

2-4. 動産類

3. 債務名義に記載されている内容は?

4. 債務名義の種類

4-1. 確定判決

4-2. 仮執行の宣言を付した判決

4-3. 仮執行の宣言を付した支払督促

4-4. 執行証書

4-5. 確定判決と同一の効力を有するもの

5. 債務名義を取得されるまでの流れ

5-1. 【STEP1】借金の督促を受ける

5-2. 【STEP2】法的手続きの予告

5-3. 【STEP3】法的措置への移行

6. 強制執行の流れ

7. 債務名義の時効

8. 債務名義を取られている場合の強制執行の回避策と対処法

8-1. 債務名義の存在や内容を争う

8-2. 債権者と交渉する

8-3. 債務整理を行う

8-4. 弁護士に相談する

9. 債務名義についてよくある質問

10. まとめ 債務名義が取得された場合は早めに弁護士に相談を
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1. 債務名義とは?

債務名義とは、債務者(お金を借りた側)に対して強制執行を行うために必要な公的な文書です。

借金などの債務を負っている債務者が銀行や消費者金融などの債権者からの返済要求に応じない場合、債権者が裁判などの法的な手続きを経て取得します。債務名義の取得は、債権者にとって強力な権利を行使するための第一歩であり、債務者にとっては財産を差し押さえられるリスクが高まります。

2. 債務名義があるとどうなる? 債権者が取得したがる理由

債務名義を取得することで、債権者は裁判所を通じて、給与、預金口座、不動産、動産など債務者のあらゆる財産を差し押さえ、お金を支払う義務を強制的に果たさせることが可能となります。

つまり、借金返済の実行を法的に強制できるわけで、債権者が債務名義を取得したがるのは、このような強力な法的効力があるためです。

債務名義を取得されたあとに差し押さえの対象となるのは、主に次の4つです。

2-1. 給与


給与の差し押さえは、債務者の勤務先に対して債務者への給与支払いを停止させ、その一部を債権者に直接支払うよう命じる手続きです。これにより、債務者の毎月の収入から継続的に債務が回収されることになります。勤務先に裁判所から連絡が来てしまうため、債務者にとっては精神的な負担が大きい差し押さえ方法の一つです。

債務者の生活を保護するため、給与の全額が差し押さえられるわけではありません。原則として、税金や社会保険料などを控除したあとの手取り額の4分の1までが差し押さえの対象とされます。ただし、手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超える部分が全額差し押さえの対象となるなど、例外があります。

2-2. 預金口座


預金口座の差し押さえは、債務者が金融機関に保有している預金を取り上げる手続きです。債権者は、債務者が口座を開設している金融機関名と支店名を特定し、裁判所に差し押さえを申し立てます。差押命令が金融機関に到達した時点の預金残高が、差し押さえの対象となります。

給与とは異なり、預金の場合は原則として残高の全額が差し押さえの対象となり、債務額に満たない場合はその時点の残高がすべて差し押さえられてしまいます

その後に入金されたお金は原則として差し押さえの対象には含まれないものの、先に差し押さえられた預金額が支払うべき返済額の総額に満たない場合は、債権者が同じ口座の預金を再度差し押さえることも可能です。口座が凍結されるわけではないため、差し押さえ後も入金や出金は可能ですが、差し押さえられた金額分は引き出せなくなります。

2-3. 不動産


不動産の差し押さえでは、債務者が所有する土地や建物などが対象となります。不動産は高額になりやすく、債権回収の可能性が高いため、銀行などの債権者にとっては有力な差し押さえ対象となります。

債務名義にもとづき裁判所に申立てを行うことで、不動産が差し押さえられます。登記簿に差押登記がされると、債務者がその不動産を自由に売却したり処分したりすることができなくなります

その後、裁判所により競売手続きが進められ、落札者に売却されます。売却代金から競売費用などが差し引かれたあと、残金が債権者に配当され、借金の弁済に充てられます。

住宅ローンを滞納すると、債権者である銀行などは抵当権を実行して不動産を差し押さえます。マイホームなどが競売により売却されてしまうため、注意が必要です。

2-4. 動産類


動産類とは、不動産以外の財産全般を指し、具体的には現金、自動車、貴金属、骨董品、家電製品、家具、株式、商品券などが含まれます。一方、生活に必要な最低限の家財道具など、差し押さえが禁止されている動産があり、そのような物は高価なものでなければ差し押さえの対象とはなりません。

動産の差し押さえは、強制執行の実務を担当する執行官が債務者の自宅や事業所などを訪問し、価値のある動産を選定して差し押さえるかたちで行われます。差し押さえられた動産は、競売にかけられ現金化され、その売却代金が借金の弁済に充てられます。

不動産や預金口座の差し押さえと比べて、手続きが複雑であり手間もかかる点や、債務者の財産状況が外部から把握しにくく隠匿されやすいという点があるため、動産類が差し押さえの対象となるケースは少ないです。

一方で、債務者にとっては自宅や事務所などを訪問されるという心理的圧迫が大きく、債権者側からすれば任意の支払いを促す効果が期待できるという面もあります。

3. 債務名義に記載されている内容は?

債務名義には確定判決のほかさまざまな種類があり、その記載内容は債務名義の種類によって多少異なりますが、以下のような情報が共通して含まれています。

まず、債権者と債務者の氏名または名称、住所が記載され、誰が誰に対して請求権を持っているのかが特定されます。これにより、執行の対象となる当事者が明確になります。

次に、「請求の趣旨」と呼ばれる給付の内容が記載されます。たとえば「被告は原告に対し金〇〇円を支払うように」といった金銭の支払いを命じる内容が典型的なものですが、不動産の引き渡しや明け渡しなど、さまざまな給付義務が具体的に示されます。この部分が強制執行で実現されるべき内容となります。

さらに、執行力があることの宣言が重要です。判決であれば「この判決は仮に執行することができる」といった仮執行宣言が付される場合や、公証人役場で作成される公正証書であれば「債務者はただちに強制執行に服する旨を認諾する」といった執行認諾文言が記載されます。これらの文言によって、債務名義が強制執行を行うための根拠となることが示されます。

加えて、債務名義の種類と作成機関、事件番号なども記載されます。たとえば、「◯◯地方裁判所令和◯◯年(ワ)第◯◯号事件の執行力のある判決正本」のように、その債務名義がどのような手続きを経て、どの公的機関によって作成されたものかが明記されます。

4. 債務名義の種類

債務名義と一言で言ってもさまざまな種類があり、具体的には民事執行法第22条で定められています。ここでは、代表的な債務名義の5種類とその特徴について詳しく解説します。

4-1. 確定判決


確定判決とは、裁判所が下した判決に対し控訴や上告などの不服申立てが期間経過などによりできなくなり、その内容が法的に確定したものを指します。確定判決は最も典型的な債務名義の一つであり、民事執行法第22条第1号で定められています。

具体的には、「被告は原告に対し金〇〇円を支払うように」といった金銭の支払いを命じる「給付判決」が債務名義となります。この確定判決があれば、債権者は別途裁判を起こすことなく、ただちに強制執行の手続きを申し立てることができます。判決が確定するまでには一定の期間を要するものの、一度確定すればその内容は強力な法的拘束力を持ちます。

4-2. 仮執行の宣言を付した判決


仮執行の宣言を付した判決とは、裁判所が下した判決に「この判決は仮に執行することができる」という宣言が付されたものです。通常、判決は確定しなければ強制執行できないものの、この宣言が付されることで、確定前であってもただちに強制執行が可能となります。

仮執行宣言は債権者の早期の権利実現を図るための制度です。たとえば、債務者が支払いを遅らせるために不当に控訴するなど、判決確定まで時間を稼ごうとする場合に、債権者が不利益を被ることを防ぐ目的があります。

ただし、あくまで「仮」の執行であるため、のちに上級審で判決が覆された場合、債権者は強制執行によって得たものを債務者に返還する義務を負います。

4-3. 仮執行の宣言を付した支払督促


仮執行の宣言を付した支払督促とは、金銭などの請求について、債権者の申立てにもとづき裁判所書記官が債務者へ支払いを命じる督促手続において発行される債務名義を指します。通常の裁判と異なり、債務者の審尋(裁判官からの質問に答えること)を経ずに書面審査のみで行われるため、迅速な債権回収が実施されてしまいます。

債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てをしない場合、債権者の申立てによって仮執行の宣言が付されます。これにより、その督促に強制執行力が与えられ、債権者はただちに債務者の財産に対する差し押さえなどの強制執行が可能となります。

迅速性が特徴ですが、債務者からの異議申立てがあると通常訴訟に移行します。

4-4. 執行証書


執行証書とは、公証人が作成する公正証書のうち、金銭債務に関する合意について「債務者がただちに強制執行に服する」旨の「執行認諾文言」が記載されたものです。これは、裁判を経ることなく債務名義となるため、非常に迅速な強制執行の手続きが行われる点が大きな特徴です。

具体的には、金銭消費貸借契約などについて、当事者双方が公証役場に出向いて公正証書を作成し、その際に執行認諾文言を盛り込むことで、将来的に支払いが滞った場合に裁判所の判決を待たずに強制執行が可能となります。債権者にとっては迅速な債権回収の手段として非常に有効になる一方、債務者には不利となり得ます。

4-5. 確定判決と同一の効力を有するもの


「確定判決と同一の効力を有するもの」とは、確定判決と同じように強制執行の根拠となる公文書を指します。これらは、裁判上の手続きにおいて当事者間に和解が成立したり、特定の決定がなされたりした場合に作成されます。

具体的には、和解調書、調停調書、労働審判などが該当します。これらは、裁判所の関与のもとで作成されるため、確定判決と同様の強い法的拘束力を持ち、別途訴訟を起こす必要もなく強制執行手続に進みます。

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5. 債務名義を取得されるまでの流れ

借金の滞納が続くと、債権者は訴訟提起などの法的措置をとったうえで債務名義の取得をめざします。ここでは、督促から訴訟、そして強制執行へと至る一連の流れを解説します。

5-1. 【STEP1】借金の督促を受ける


借金の返済が滞ると、まずは貸金業者などの債権者からの督促が始まります。督促は電話やはがき、あるいは封書など、さまざまな方法で行われます。最初は「〇月〇日までに返済してください」といった穏やかな内容が多いものの、返済が遅れるにつれて督促はエスカレートしていきます。

これらの督促を無視し続けると、債権者は最終手段として裁判所を介した手続きに移行し、債務名義の取得をめざします。督促の段階で適切な対応をとることが、その後の事態の悪化を防ぐうえで非常に重要です。

5-2. 【STEP2】法的手続きの予告


借金の督促が続いても返済がない場合、債権者は次の段階として法的手続きの予告を行います。これは、単なる催促ではなく、「法的措置に移行します」という明確な意思表示です。

具体的には、内容証明郵便で「催告書」や「通知書」が送られてくることが多いでしょう。この書面には、債務額、最終期限、そして「期限までに支払いがなければ、訴訟や支払督促の申立てを行います」といった文言が記載されています。これにより、債権者が本気で法的手段に訴える構えであることが示されます。

この段階は、債務者にとって最後の猶予期間ともいえます。この予告を無視すると、実際に裁判所から訴状や支払督促といった通知が届き、事態はさらに深刻化します。法的手続きの予告を受け取った場合は放置せず、弁護士に相談するなど早急な対応を検討することが重要です。

5-3. 【STEP3】法的措置への移行


督促や法的手続きの予告にもかかわらず返済がない場合、債権者はいよいよ法的措置へ移行します。これは、債務名義を取得するための法的手続であり、主に以下のいずれかの方法がとられます。

【訴訟の提起】
訴訟の提起は最も一般的な手続きで、裁判所から訴状が届き、口頭弁論期日が指定されます。ここで債務者が裁判に出廷しない、もしくは出廷しても反論しなければ、債権者の主張が認められ、敗訴判決が下されます。

【支払督促の申立て】
支払督促の申立ては、裁判所書記官が債務者に支払いを命じる手続きです。債務者が異議を申し立てなければ仮執行宣言が付され、これも債務名義となります。訴訟に比べて手続きが簡略化されており、迅速に進む可能性があります。

【強制執行認諾文言付きの公正証書】
契約書に強制執行認諾文言を盛り込むかたちで公正証書を作成していれば、裁判手続きを経ずに直接執行証書(債務名義)として利用できます。

これらの法的措置は、債権者が強制執行を行うために不可欠なステップであり、債務者にとっては財産を差し押さえられる現実的なリスクが高まる段階です。

支払督促の流れを示した図。支払督促の申立てに対し、債務者が異議を申し立てなければ仮執行宣言が付され、債務名義となる
支払督促の流れを示した図。支払督促の申立てに対し、債務者が異議を申し立てなければ仮執行宣言が付され、債務名義となる

6. 強制執行の流れ

債務名義が取得されたあと、債権者が実際に強制執行を行うには、いくつかの手続きを踏む必要があります。まず、判決正本や公正証書などの取得した債務名義に執行文の付与を申し立てます。執行文は、その債務名義が強制執行を行うのに適格であることを、裁判所書記官や公証人が証明するものです。

次に、債務名義の正本と、それが債務者に送達されたことを証明する送達証明書を取得します。送達証明書は、債務者が自分の債務名義の内容を知らされていたことを法的に確認するための重要な書類です。

これらの準備が整ったら、債権者は強制執行の対象となる財産の種類に応じて、執行裁判所または執行官に対し、強制執行を申し立てます。たとえば、預金や給与の差し押さえであれば地方裁判所に、不動産の差し押さえであればその不動産の所在地を管轄する地方裁判所に、動産の差し押さえであれば動産の所在地を管轄する裁判所に所属する執行官に申立てを行います。

申立てが認められると、裁判所は差押命令を出したり、執行官が差し押さえを実施したりします。これにより、債務者の財産が差し押さえられ、競売や換価を経て、その売却代金が債権者に配当され、債務の弁済に充てられるという流れになります。

この一連の手続きは、債務者にとって非常に重大な影響を及ぼすため、適切に対応することが求められます。

7. 債務名義の時効

債務名義が一度取得されると、その債務名義にもとづく債権には原則として10年の消滅時効が適用されます(民法169条)。これは、判決や和解調書、調停調書、公正証書など、債務名義の種類を問わず適用されるのが原則です。一般的な貸金債権の消滅時効が5年であることと比較すると、債務名義を取得されることは債務者にとって不利であることがわかります。

この10年の時効期間は、債務名義が作成された時点から進行します。ただし、時効期間が満了する前に債権者が再度強制執行手続を行ったり、債務者が一部弁済を行うなどして債務の存在を承認したりすると時効が更新されてしまうため、再びゼロから時効期間が進行します。債務名義を取得された債務者は、債権者が定期的に時効更新措置を講じる可能性がある点に注意が必要です。

8. 債務名義を取られている場合の強制執行の回避策と対処法

債権者に債務名義を取得された場合、債務者が差し押さえを避けるにはどのような対処法があるでしょうか。主な回避策や対処法について詳しく解説します。

  • 債務名義の存在や内容を争う

  • 債権者と交渉する

  • 債務整理を行う

  • 弁護士に相談する

8-1. 債務名義の存在や内容を争う


債務名義がすでに取得されている場合、その存在や内容自体を争って強制執行を回避する方法はいくつか存在します。

ただし、これはあまり現実的な手段とは言えません。なぜなら、これらの方法はすでに裁判所が下した判断や、公証人によって作成された公的文書の内容を覆そうとするものであり、ほぼ例外的な場合しか認められないからです。

具体的には、債務名義が確定判決である場合、原則として判決が確定したあとに生じた事情しか主張できません。これを請求異議の訴えと言い、たとえばすでに全額返済した、相殺すべき債権があるなどといった状況が該当します。もっとも、判決内容自体の誤りを争うには、すでに控訴や上告の期間が過ぎているため、裁判のやり直しを求める再審請求のようなきわめて限定的な手段しか残されていません。

また、公正証書を債務名義としている場合は、たとえば詐欺や脅迫によって作成されたなど、その公正証書が法的に無効であることを主張する請求異議の訴えが考えられます。しかし、これもその立証は容易ではなく、通常は専門家である公証人が関与して作成された文書であるため、作成段階に不備があることを証明するのは困難です。

仮に執行文の付与自体に問題がある場合に、執行文付与に関する異議の訴えを提起することも考えられますが、これも執行文付与の形式的な要件に関するもので、債務名義の実体的な内容を争うものではありません。

これらの方法は、いずれも新たな訴訟提起や複雑な法的手続を伴い、時間も費用もかかります。その間に強制執行が進行するリスクも高く、強制執行を一時的に停止させるためには別途高額な担保金の提供を求められる場合もあります。そのため、債務名義それ自体を争うことは、緊急性や費用対効果の面から、一般的な解決策とは言いがたいのが実情です。

8-2. 債権者と交渉する


強制執行を回避するための現実的な対処法の一つが債権者との交渉です。債務名義を取得した債権者はいつでも強制執行に踏み切れる立場にあり、一方の債務者は非常に不利な状況に立たされます。しかし、強制執行には費用や手間がかかるため、債権者側も必ずしも強制執行を望んでいるわけではありません

このため、債務者から「一括での返済は難しいが、〇カ月で分割払いをする」「〇円であれば今すぐ支払える」など、具体的な返済計画を提示し、誠意をもって交渉することで、債権者がこれに応じて強制執行を一時停止したり、取り下げたりする可能性があります。交渉の際は、一部だけでも支払う意思を示すことや、現実的に可能な範囲での返済計画を具体的に提示することが重要です。ただし、交渉に応じるかどうかは債権者次第であり、必ずしも成功するとは限りません。

債権者との交渉には、専門的な知識や折衝力が必要とされるため、債務者自身での対応は難しいのが現状です。債権者との話し合いを弁護士などの専門家に依頼することで、より有利な条件での交渉や、債務整理を含めた解決策を探る道も開けます。強制執行を回避し、生活への影響を最小限に抑えるためには、早期に専門家へ相談や依頼をし、債権者との交渉を試みることが賢明な選択と言えるでしょう。

8-3. 債務整理を行う


債務整理の3種類を図解。それぞれにメリットとデメリットがある
債務整理の3種類を図解。それぞれにメリットとデメリットがある

債務名義をすでに取得されている状況で強制執行を回避するための最終的な手段として、借金の減額や免除、返済計画の見直しなどを行う債務整理があります。債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類がありますが、強制執行が目前に迫っている場合や、すでに開始されている場合には、自己破産が主な検討対象となります。

任意整理は裁判外での債権者との直接交渉であり、すでに債務名義がある場合、債権者が交渉に応じない可能性が高く、強制執行を止める法的拘束力もありません。

個人再生は裁判所を介して借金を大幅に減額する手続きです。手続きに時間がかかる面があるため、強制執行を一時停止させることはできても、根本的な解決には至らない場合があります。

一方で、自己破産は、裁判所に申立てを行い、免責が認められれば、原則としてすべての借金の支払い義務が免除される手続きです。自己破産の手続きが開始されると、すでに始まっている強制執行は停止または失効します

しかし、自己破産には大きなデメリットが伴います。持ち家や車など、一定以上の価値のある財産はほとんど処分され、債権者への弁済に充てられます。また、クレジットカードやローンに関する情報を扱う信用情報機関に自己破産情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト入り」し、数年間は新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなります。

8-4. 弁護士に相談する


債務名義を債権者に取得され、強制執行の危機に直面している場合、弁護士への相談が最も現実的かつ有効な対処法となります。弁護士に相談する最大のメリットは、自身の状況に応じた最適な解決策を提案してもらえる点です。

たとえば、債務整理が適切な場合はその手続きをとることができます。また、債権者との交渉の余地がある場合は、弁護士が代理人として債権者と交渉をしてくれる点も大きなメリットです。専門家である弁護士が交渉にあたることで、債権者も慎重に対応するため、分割払いの合意や債務整理への理解を示す可能性が高まります。

さらに、弁護士は法律の専門知識にもとづいて、債務名義の有効性や強制執行手続の違法性がないかなどを検討し、もし不備があればそれを指摘することも可能です。これにより、不当な強制執行から大切な財産を守る手助けをしてくれます。精神的な負担も軽減されるため、早期に弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることが事態の悪化を防ぐための賢明な一歩となります。

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9. 債務名義についてよくある質問

Q. 債務名義とはわかりやすく言うと何?


債務名義とは、わかりやすく言うと、「この人はあの人に、〇〇という義務がある」ということを、裁判所などの公的な機関が公式に認めた「お墨付き」の書類のことです。

この「お墨付き」がないと、たとえ借金があったとしても、勝手に相手の財産を差し押さえることはできません。この書類があることで、はじめて差し押さえなどの強制執行の手続きに進むことができます。

Q. 債務名義を取られたらどうなる?


債務名義を債権者に取られると、債権者は給与、預金、不動産などの財産を強制的に差し押さえることができるようになります。つまり、債務名義を取られると、財産を失うリスクが高まるということです。

Q. 債務名義はいつまで有効?


債務名義は、原則として10年間有効です。

通常の債権の時効が5年であることが多いのに対し、裁判などで正式に認められた債務名義は、その確定または作成された日から新たに10年間の時効期間が設定されます。

ただし、この10年の間に債権者が再度強制執行を申し立てたり、債務者が一部でも返済したりすると、時効期間はリセットされ、再び10年間有効になります。

Q. 債務名義と公正証書の違いは何?


債務名義は、強制執行を行うための「お墨付き」の書類全般を指す言葉です。

一方、公正証書は、法務大臣が任命した公証人が作成する公的な文書の一種です。公正証書のなかでも、特に金銭債務について「債務者がすぐに強制執行に応じる」という旨の「執行認諾文言」が記載されているものは、その公正証書自体が債務名義として機能します。

つまり、公正証書は債務名義の一種となり得ますが、すべての公正証書が債務名義になるわけではありません。執行認諾文言のある特定の公正証書が「執行証書」として債務名義になるという違いがあります。

Q. 債権者が債務を公正証書の形にすることのメリットは?


債権者にとって、債務、つまりお金を支払う義務を公正証書の形にすることの最大のメリットは、裁判を経ずに強制執行が可能になる点です。

通常の借金は、返済が滞るとまず裁判を起こして確定判決、つまり債務名義を得なければ、差し押さえなどの強制執行はできません。しかし、公正証書に「強制執行認諾文言」を入れておけば、万が一支払いが滞った際に、その公正証書自体が債務名義となるため、裁判なしでただちに強制執行の手続に進むことができます。

これは債権者にとって、時間や費用を大幅に節約でき、迅速な債権回収を可能にする非常に強力な手段となります。

Q. 公正証書には強制力がある? 守らなかった場合はどうなる?


公正証書に「強制執行認諾文言」が記載されていれば、その公正証書は債務名義となります。

この場合、借金を返していない債務者が約束を守らなかったときは、裁判を起こさなくても、すぐにその給与や預金、不動産などの財産を差し押さえる強制執行の手続きに進むことができます。 これにより債務者は財産を強制的に失うことになります。

ただし、公正証書にこの「強制執行認諾文言」がない場合は、単なる公的な契約書の扱いで、強制執行を行うためには別途裁判を起こして判決を得る必要があります。

10. まとめ 債務名義が取得された場合は早めに弁護士に相談を

債務名義が取得されると、債権者には強制執行によって給与や預金、不動産などを差し押さえ、強制的に債権を回収できる権利が与えられてしまいます。逆に言えば、債務名義が取得された債務者は給与、預金口座、不動産、動産などあらゆる財産が差し押さえられ、お金を支払う義務を強制的に果たさなければなりません。

ただし、債務名義が出されたということは、借金返済の延滞が続いているなど経済的に困窮しているはずで、金銭による返済は難しい状況と言えるでしょう。差し押さえを避けるためには、債権者と交渉する、債務整理を行うなどの手段が考えられますが、いずれも専門知識と高い経験値を持つ弁護士の存在が大きな助けとなります。

裁判所から届いた文書に「債務名義」の文字があった場合は、回避策や対処法について、早めに弁護士などの専門家に相談することが重要です。

(記事は2026年2月1日時点の情報にもとづいています)

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この記事を書いた人

幸谷泰造(弁護士)

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市ヶ谷東法律事務所 代表弁護士
東京弁護士会所属。登録番号47035。国内電機メーカーでの勤務を経て、弁護士へ転身。大手法律事務所で培った高度な企業法務の知見を活かし、現在はM&Aや知財紛争から個人の債務整理まで幅広く手がけている。特に債務整理においては、自身のYouTubeチャンネルを通じて「正しく、怖くない解決法」を発信し続けており、相談者と同じ目線に立った対話を大切にしている。慶應義塾大学や法政大学での講師も務める論理的な思考力と、メーカー出身者ならではの現場感覚を武器に、債務整理後の人生の「次の一歩」をともに考えるスタイルを大切にしている。
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