個人間の借金問題で警察は動く? 罪になる要件と対処法

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個人間の借金で基本的に警察は動きませんが、犯罪性がある場合は別です(c)Getty Images
個人間の借金トラブルが起きたとき、「警察に相談すれば解決できる」と考えている人も多いですが、実際にはそう簡単ではありません。借金を返さない行為は原則として民事上(当事者同士)の問題であり、警察が介入することはほとんどありません。 ただし、最初から返すつもりがなかったり、うそをついてお金を借りたりした場合など、詐欺罪などの刑事事件に発展するケースでは警察が動く可能性があります。警察が介入するケースとしないケースの違い、詐欺罪が成立する条件、トラブル時の正しい対応方法を弁護士が解説します。

目 次

1. 警察は個人間の借金トラブルに介入する?

1-1. 借金を返さないだけでは犯罪にならず警察は動かない

1-2. 「詐欺罪」が成立しそうな場合のみ警察が動くことがある

2. 個人間の借金が詐欺罪になるのはどんなとき?|詐欺罪の成立要件

2-1. うそをついてお金を借りた(欺罔)

2-2. うそを信じて相手が誤解した(錯誤)

2-3. 騙された結果、お金が渡った(財産の交付・利益の移転)

3. 個人間の借金で警察が動くケースとは?

3-1. 最初から返すつもりがなかった場合

3-2. 借入時から借金を時効で踏み倒すつもりだった場合

3-3. うその情報でお金を借りた場合

3-4. うそをついて支払い条件を変更してもらった場合

3-5. 暴力などで返済を拒否した場合

3-6. 借りていないとうそをついた場合

4. 個人間の借金で詐欺罪に問われた場合の影響は?

4-1. 詐欺罪が成立した場合

4-2. 詐欺罪が成立しなかった場合

5. 個人間の借金で合意書や和解書に盛り込むべき内容

6. 個人間の借金トラブルを弁護士に依頼した場合の費用相場

7. 個人間の借金トラブルを弁護士に相談するメリット

8. 個人間の借金に関するよくある質問

9. まとめ 個人間の借金問題は早めに専門家へ相談を
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1. 警察は個人間の借金トラブルに介入する?

個人間の借金トラブルに警察が介入するケースとしないケースについて説明します。

1-1. 借金を返さないだけでは犯罪にならず警察は動かない


警察は原則として、民事上の紛争には介入しません。このことを一般に、民事不介入の原則といいます。借金を返さないことは、借金の返済という民事上の義務を果たさない(債務不履行)という民事上の紛争にすぎないので、それ自体は犯罪にはなりません。そのため、原則として、警察に被害届の提出や告訴をすることはできません

相談程度であれば警察も応じてくれる可能性はありますが、上記のとおり、借金を返済しないこと自体は犯罪ではありませんので、警察が動いてくれる可能性はほとんどないでしょう。

1-2. 「詐欺罪」が成立しそうな場合のみ警察が動くことがある


警察は原則として民事トラブルには介入しませんが、刑法などに違反する刑事事件には対応します。借金を返さないだけでは犯罪ではありませんが、最初から返す意思がないままうそをついてお金を借りた場合は「詐欺罪(刑法246条)」にあたる可能性があります。このような場合は刑事事件となり、警察が動くこともあります。

2. 個人間の借金が詐欺罪になるのはどんなとき?|詐欺罪の成立要件

個人間の借金が詐欺罪に該当する際の3つの要件について説明します。

2-1. うそをついてお金を借りた(欺罔)


まずは、欺罔行為(ぎもうこうい)、すなわち、財産の交付や利益の移転の判断をするために重要な事項を偽ることが認められる必要があります。

相手がお金を返済できる能力を有しているのかということは、お金を貸すか否かの判断のために重要な事項となります。そのため、無職で収入がないにもかかわらず「働いている」とうそをつくなど、意図的に事実と異なる説明をしているような場合には、財産の交付の判断をするために重要な事項を偽っているといえ、欺罔行為に該当します。

2-2. うそを信じて相手が誤解した(錯誤)


次に、欺罔行為によって相手が錯誤(さくご)に陥ったことが必要です。ここでいう錯誤とは、相手が事実を誤って信じてしまうことを指します。たとえば、無職で収入がないにもかかわらず「安定した職がある」とうそをつき、貸し手がそれを信じてお金を貸した場合、貸し手は錯誤に陥ったことになります。また、欺罔行為があっても、相手が信じず誤解しなかった場合には詐欺未遂罪が成立します。

逆に、借り手が特にうそをついていないのに、貸し手が勝手に誤解してお金を貸したような場合、基本的には欺罔行為に基づく錯誤とはいえません。ただし、貸し手がすでに誤解している状況を利用して借りたような場合には、欺罔行為に基づく錯誤が認められます。

2-3. 騙された結果、お金が渡った(財産の交付・利益の移転)


最後に、うそを信じて誤解した結果として、実際にお金や財産を渡してしまったことが必要です。たとえば、「来月には必ず返す」などのうそを信じ、相手を信用してお金を渡した場合、その行為が処分行為(財産の交付・利益の移転)にあたります

つまり、欺罔行為によって錯誤し、その結果としてお金を渡したとき、詐欺罪が成立することになります。

3. 個人間の借金で警察が動くケースとは?

詐欺罪が成立する疑いがあれば警察は動きます。ここでは、警察が動く具体的なケースについて説明します。

3-1. 最初から返すつもりがなかった場合


返済能力がないのにお金を借りたり、借りた直後から一度も返済せず連絡を絶ったりした場合は、最初から返す意思がなかったと判断される可能性があります。こうしたケースでは詐欺罪が成立し、警察が動くこともあります。ただし、返済意思の有無は借り手の内心の問題であるため、借入時の発言やメッセージ、行動など、最初から返す意思がなかったことを示す証拠が必要です。

3-2. 借入時から借金を時効で踏み倒すつもりだった場合


借金は返済期限から5年で消滅時効にかかります。最初から「時効を待って逃げ切ろう」と考えて借りていた場合、返済意思の欠如として詐欺罪にあたる可能性があります。ただし、これも借り手の内心の問題であるため、会話の記録やメッセージなど、時効を狙っていたことを示す証拠がなければ立件は難しいでしょう。

3-3. うその情報でお金を借りた場合


収入・資産・保証人の有無などを偽ってお金を借りた場合は、欺罔行為にあたり、詐欺罪が成立する可能性があります。また、相手がすでに誤解している状況を利用して借りた場合も同様です。ただし、実際の収入や資産が虚偽であることを裏付ける証拠がなければ、詐欺として立件するのは困難です。

3-4. うそをついて支払い条件を変更してもらった場合


「収入が減った」「病気で働けない」など、虚偽の理由で返済猶予や減額を求めた場合にも詐欺罪が成立する可能性があります。このような場合も、実際にその理由がうそであったとわかる証拠が必要です。

3-5. 暴力などで返済を拒否した場合


借り手が貸し手に暴力を加えて、返済を猶予したり、返済を免除したりした場合には、恐喝罪が成立する可能性があり、警察が動く可能性があります。この場合、けがの診断書や患部の写真、暴力を受けた前後における当事者のSNS等のやりとりの内容等が証拠として重要になります。

3-6. 借りていないとうそをついた場合


実際には借金しているのに「借りていない」と主張し、虚偽の合意書を作成させた場合も詐欺罪が成立する可能性があります。お金を貸した事実を示す振込記録やメッセージ、借り手が借り入れを認めていた記録など、実際の貸借関係を証明する証拠が重要となります。

4. 個人間の借金で詐欺罪に問われた場合の影響は?

仮に個人間の借金で詐欺罪に問われた場合、どうなるのでしょうか?その影響について説明します。

4-1. 詐欺罪が成立した場合


詐欺罪が成立した場合、10年以下の拘禁刑に処される可能性があります。実際にお金を受け取っていなくても、うそをついて相手をだまそうとした時点で、詐欺未遂罪として処罰されることもあります。

ただし、借金を返済するなどの被害回復を行った場合は、ケースによっては刑事事件として扱われないこともあります。仮に起訴された場合でも、被害弁済の事実は量刑を軽くする有利な事情として考慮される可能性があります。

4-2. 詐欺罪が成立しなかった場合


詐欺罪が成立しなかったとしても、借金の返済義務がなくなるわけではありません。返済を怠ると、貸し手から民事訴訟を起こされ、財産や給料を差し押さえられる可能性があります

特に勤務先を知られている場合、給与の一部が差し押さえられ、会社にトラブルが知られてしまうこともあります。ただし、借金の合意書を公正証書で作成していない限り、いきなり差し押さえを受けることはなく、原則として裁判(民事訴訟)を経てから手続きが行われます

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5. 個人間の借金で合意書や和解書に盛り込むべき内容

たとえば、以下のような内容を盛り込むことが考えられます。

【返済総額】
借金の金額をめぐって紛争になることが多いため、返済総額は必ず盛り込みましょう。

【支払条件】
一括払いなのか分割払いなのか、支払期限はいつなのかを盛り込む必要があります。分割払いの場合には、1回あたりの支払でいくら返済するのかも盛り込むことになります。

【期限の利益喪失】
分割払いの場合、すぐに全額を返済しなくてもよいということになります。このような利益を「期限の利益」といいます。「定められた期限内に返済を行わない場合には期限の利益を喪失し、借金残額全てを直ちに一括で返済しなければならない」という旨の条項が盛り込まれるのが一般的です。

【遅延損害金】
定められた期限内に返済できない場合、元金に加えて一定の割合の遅延損害金を支払わなければならないとする条項を盛り込むことも多いです。

【裁判所の管轄】
返済が行われず、民事訴訟に発展した場合には、どこの裁判所に訴えを起こすかが重要です。裁判対応を自分で行うにせよ、弁護士に依頼するにせよ、自宅や事務所の近くの裁判所で手続きを進められた方が負担を減らせます。そのため、合意書の中で「専属的合意管轄裁判所」を定めておくことが有効です。

6. 個人間の借金トラブルを弁護士に依頼した場合の費用相場

弁護士に相談・依頼した場合には、相談料、着手金、成功報酬、及び預かり金などの費用が発生します。以下で解説していきます。

【相談料】
弁護士に依頼する前に、まずはトラブルについて弁護士に相談することになります。この相談にあたっての相談料の相場は、30分あたり5000円(税別)程度が相場です。ただし、相談料については初回無料などとなっている場合もあります。

【着手金】
弁護士に事件を依頼した場合に、弁護士が事務処理に着手する時点で発生する報酬です。借金の総額や回収の困難性などの事情によりますが、借金の回収を依頼する場合、着手金は10万から30万円(税別)程度が相場です。なお、着手金については、成功報酬と異なり、交渉、民事訴訟、差し押さえの各段階で別途発生するのが通常なので、注意が必要です。

【成功報酬】
借金の回収を依頼する場合、実際に回収することができた金額に応じて、成功報酬の金額が変わります。具体的な成功報酬の金額は、弁護士によって様々ですが、次のような算定式を用いて計算することが多いです。

  • 経済的利益の額が300万円以下の部分について、同利益の16%

  • 経済的利益の額が300万円を超え3000万円以下の部分につき、同利益の10%

  • 経済的利益の額が3000万円を超え3億円以下の部分につき、同利益の6%

  • 経済的利益の額が3億円を超える部分につき、同利益の4%

経済的利益とは、借金の回収の場面においては、実際に回収することができた金額を指します。例えば借金を500万円回収できた場合で成功報酬を計算してみます。

  • 300万円以下の部分:300万円 × 16% = 48万円

  • 300万円以上3000万円以下の部分:200万円×10%=20万円

  • 合計:48万円+20万円=68万円

回収できた500万円のうち、68万円(税別)が弁護士への成功報酬の目安となります。

【預かり金】
弁護士が手続きを進める際には、郵送料や印紙代などの実費がかかります。そのため、あらかじめ一定の金額を預かり金として受け取り、そこから実費を支払い、手続き終了後に余った分を返金するのが一般的です。

預かり金の金額は、依頼内容や手続きの段階(交渉・訴訟・差し押さえなど)によって異なりますが、おおむね1万から10万円程度が目安です。

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7. 個人間の借金トラブルを弁護士に相談するメリット

以下、借り手側と貸し手側に分けてメリットを紹介します。

【借り手側のメリット】
・刑事事件化するリスクについて見通しを示してもらえる
・任意整理・個人再生・自己破産など債務整理のうち採りうる選択肢を示してもらえる
・家計再生プランについて助言してもらえる
・和解条項の内容を提案してもらえる

【貸し手側のメリット】
・刑事事件として立件してもらえる可能性について見通しを示してもらえる
・民事訴訟を提起した場合の勝訴の見込みを示してもらえる
・借り手への通知・交渉・合意書作成などの対応をしてもらえる
・調停・訴訟・強制執行等の法的手続きについて助言してもらえる
・借り手の所在調査や財産調査の現実的な可否・限界などを助言してもらえる

8. 個人間の借金に関するよくある質問

Q. 個人間の借金でも遅延損害金は請求できる?


個人間の借金でも遅延損害金を請求することはできます。契約書や借用書などに明記されていれば、原則としてその内容での請求が可能です。

ただし、借金額に対して以下の年利を超えると利息制限法4条に違反し、超過部分について無効となります。

・10万円未満の場合:年29.2%
・10万円以上100万円未満の場合:年26.28%
・100万円以上の場合:年21.9%

他方で、契約書や借用書などに遅延損害金について明記されていない場合、法定利率(年3%)が適用されるので、年3%の割合での遅延損害金を請求することができます。

Q. 個人間の借金を返せないで詐欺罪に問われるのは何円以上から?


何円以上からという基準はなく、被害額に関係なく詐欺罪は成立する可能性はあります。ただし、金額が大きければ大きいほど立件されやすい傾向にあります。また、被害額だけでなく、手口の巧妙性などにより立件の可能性は変わります。

Q. 友人に100万円を貸したら贈与税がかかる?


基本的に贈与税はかかりません。ただし、返済されないであろうことを分かった上で貸しているような場合などは、実質的には贈与であると判断される可能性があります。年間110万円を超える贈与があった場合、基礎控除を超えて贈与税の課税対象となります。

Q. 個人間で金貸しをすると法律違反になる?


利息を取る場合、反復継続的に行うと貸金業を営んでいると判断される可能性があります。貸金業を行うためには、国または都道府県の登録をしなければならず、登録なしに貸金業を行うと、10年以下の拘禁刑若しくは3000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

Q. 借用書がなければ返済しなくていい?


口頭でも契約は成立するため、証拠がなくても返済義務はあります。ただし、民事訴訟において貸金返還請求が認められるためには、証拠が必要です。LINEやメール、振込履歴・メモ・録音などの記録が、その内容によっては証拠になる可能性があります。

Q. 個人間の借金の時効は何年?


借金は、返済期限から5年が過ぎると時効になるのが基本です。ただし、貸した人が「返してほしい」と連絡(催告)すると、その後6カ月間は時効の完成が猶予されます。

また、借りた人が「返済する意思がある」と認めた場合は、その時点から再び5年間、時効までの期間がリセットされて数え直しになります。

Q. 知人に貸したお金を返してもらう方法を警察に相談できる? 借金トラブルは警察に相談すれば解決してくれる?


警察には、民事不介入の原則があるため、詐欺や恐喝などの刑事事件でなければ、原則として介入しません。借金を返さない相手に返済を求めるのであれば、交渉、民事訴訟、差し押さえ等の対応が必要となります。

9. まとめ 個人間の借金問題は早めに専門家へ相談を

個人間の借金トラブルでは、借り手が返済しないだけでは警察は介入できず、基本的には民事の問題として扱われます。しかし、最初から返す意思がなかったり、虚偽の情報でお金を借りた場合は詐欺罪として刑事事件化する可能性があります。

「貸したお金を返して欲しい側」も「借りたお金を返せなくて困っている側」も弁護士に現状を相談すれば、最適なアドバイスをもらうことができます。

(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

中野博和(弁護士)

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弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所 弁護士
中央大学法学部、中央大学大学院法務研究科修了。企業法務から債務整理、相続等の一般民事事件まで幅広く取り扱っている。労働問題では、労働者側・使用者側を問わずに対応しており、労使双方の立場での経験を活かして、事案の解決を図っている。趣味はゴルフ。東京弁護士会所属。登録番号57889。
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