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1. 任意整理後のクレジットカード更新は難しい?
任意整理の対象としたか否かにかかわらず、任意整理後はしばらくクレジットカードを更新できなくなります。
1-1. 任意整理とは
「任意整理」とは、借金やクレジットカード料金などの債務(=お金を支払う義務)の負担を軽減する手続きです。銀行やカード会社などの債権者(=お金を請求する権利を持つ人)と交渉して、利息や遅延損害金のカット、支払い期間の延長などを認めてもらいます。
任意整理は裁判所を通さずに行うため、比較的簡単な手続きで行うことができます。財産も処分されないため、生活への影響もそれほど大きくありません。
1-2. 個人信用情報機関とは?|任意整理について記録される内容と期間
借金やクレジットカード料金などを任意整理すると、個人信用情報機関にその情報が記録されます。
具体的には、該当する債務について「異動」と表示され、債権者が任意整理の通知を受けた旨やその日付などが記録されます。任意整理に関する情報は、その債務を完済してから5年が経過するまで残ります。
1-3. 任意整理によってカードが利用停止・更新不可となる理由
クレジットカード料金を任意整理するためカード会社に連絡をした場合、そのクレジットカードは速やかに利用停止となり、更新もできなくなります。また、消費者金融からの借り入れを任意整理した場合や、別のクレジットカードの料金を任意整理した場合など、任意整理の対象としていないクレジットカードも近いうちに利用停止となり、更新できなくなります。
任意整理によってクレジットカードが利用停止・更新不可となるのは、今後料金を支払ってもらえるかが分からない、信用できないとカード会社に判断されるためです。
カード会社は、クレジットカードの利用者を信用できるかどうか確認するため、定期的に個人信用情報機関のデータベースをチェックしています。更新時の審査に当たっても、個人信用情報機関のデータベースがチェックされます。
前述のとおり、任意整理をするとその情報が個人信用情報機関に登録されます。任意整理をしたということは、債務を契約どおり支払えなかったことを意味するので、その情報は信用にマイナスの影響を与えます。そのため、カード会社が任意整理の情報を確認すると、利用停止・更新不可の措置をとられてしまいます。
2. 任意整理後にクレジットカードを更新できた事例はある?
個人信用情報機関に任意整理の異動情報が登録されている間に、クレジットカードを更新できたという事例は、筆者は把握していません。カード会社によって対応が異なる可能性はあるものの、基本的にはクレジットカードを更新できなくなると理解しておきましょう。
3. 任意整理をするとクレジットカードはいつ使えなくなる?
任意整理によってクレジットカードが使えなくなるタイミングは、任意整理の対象としたか否かによって異なります。
カードの種類 | 使えなくなるタイミング |
|---|---|
任意整理をしたクレジットカード | カード会社に弁護士の受任通知が到達した後すぐ |
その他のクレジットカード | 途上与信が行われたタイミング |
3-1. 任意整理をしたクレジットカード|受任通知の到着後、すぐに使えなくなる
任意整理をしたクレジットカードは、カード会社に弁護士の受任通知が到達した後、すぐに使えなくなります。特にメインで使っているクレジットカードについて任意整理をする場合は、使えなくなっても困らないように備えておきましょう。
3-2. その他のクレジットカード|途上与信が行われた際に使えなくなる
任意整理の対象としなかったクレジットカードは、借金や別のクレジットカードなどについて任意整理の受任通知を送付したあと、ある程度の期間を経てから使えなくなります。
銀行やカード会社などに任意整理の受任通知が届くと、速やかに個人信用情報機関へ任意整理の異動情報が登録されます。しかし、任意整理の対象としていないカード会社が、その情報をすぐに確認するとは限りません。利用者と他社の間で任意整理が行われたことをカード会社が知るのは、「途上与信」が行われるタイミングです。
「途上与信」とは、カード会社が契約しているクレジットカードの利用者について、定期的に信用状況をチェックすることをいいます。途上与信において任意整理の異動情報が確認されたなど、信用に問題があることが分かった場合には、カード会社は利用者との契約を強制的に解除します。
途上与信が行われる頻度は公表されていませんが、おおむね3~6カ月に1回程度行うカード会社が多いようです。
4. 任意整理後にカードを更新できない場合の代替案と生活設計のポイント
任意整理をしたことが原因でクレジットカードを強制的に解約され、更新もできなくなった場合は、今まで利用していたカードが使えなくなって困るかもしれません。以下の方法によって解決を図りましょう。
4-1. クレジットカード以外の決済方法を利用する
任意整理をするとクレジットカードは使えなくなりますが、前払い式の決済手段や、利用額がその場で引き落とされる決済手段は利用できます。
たとえば、デビットカードやプリペイドカード、チャージ式のQRコード決済などが利用可能です。買い物などの際には、これらの決済手段の利用を検討しましょう。
4-2. ETCパーソナルカードを作成する
クレジットカードの解約によってETCカードが使えなくなった場合でも、ETCパーソナルカードは作ることができます。
ETCパーソナルカードとは、有料道路の支払いにのみ利用できるETCカードです。クレジットカードを持っていなくても、デポジット(保証金)を預ければETCパーソナルカードの発行を受けられます。
任意整理後も車を運転する必要がある人は、ETCパーソナルカードの作成を検討しましょう。
4-3. 公的支援を利用する
今まで使っていたクレジットカードが使えなくなり、生活費の捻出が難しくなった場合には、公的支援の利用を検討しましょう。
生活に困っている人が利用できる公的支援としては、以下の例が挙げられます。利用要件に当てはまるかどうか、申請を受け付けている窓口に相談してみましょう。
公的支援の名称 | 概要 | 申請窓口 |
|---|---|---|
生活福祉資金貸付制度 | 低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯向けの貸付制度 | 自治体の社会福祉協議会 |
臨時特例つなぎ資金貸付制度 | 失業などによって住居を失い、 生活の維持が困難になっている人向けの貸付制度。 生活保護や貸付制度の申請中に利用できることがある | 自治体の社会福祉協議会 |
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度 | 母子家庭・父子家庭・寡婦を対象とする貸付制度 | 自治体の福祉事務所 |
雇用保険の基本手当 | 失業者を対象とする給付 | 住所等を管轄するハローワーク (公共職業安定所) |
生活保護 | 自力で十分な収入を得られず、 親族からの援助も受けられない人のための給付 | 自治体の福祉事務所 |
住宅確保給付金 | 失業者などが住居を確保するための給付 | 自治体の生活困窮者自立相談支援機関 |
4-4. 信用情報が回復するまで待つ
個人信用情報機関から任意整理の異動情報が消えれば、再びクレジットカードを作れるようになります。
任意整理の異動情報が消えるのは、対象とした債務の完済日から5年が経過したあとです。クレジットカードが作成できるようになる時期が遅れないように、予定どおりにきちんと支払いましょう。
5. クレジットカードの解約を気にして、借金問題の解決を先延ばしにすることのリスク
クレジットカードが解約されるのを嫌って、任意整理などの債務整理をせず借金問題の解決を先延ばしにすることはお勧めできません。遅延損害金が積み重なって完済が困難になったり、訴訟を起こされたりするなど、状況がさらに深刻化します。
借金問題を抱えているなら、早期に債務整理へ取り組むべきです。早い段階から行動すれば、解決方法の選択肢が広がり、希望に沿った解決を実現しやすくなります。クレジットカードが使えなくなるとしても、できるだけ早く債務整理を完了することにより、再びクレジットカードを作れるようになる時期が早まります。
特に任意整理は、借金の額が膨れ上がってからでは手遅れになるケースが多いです。任意整理を希望しているなら、速やかに弁護士や司法書士にご相談ください。
6. 借金の返済が厳しいときに任意整理をするメリット
借金の返済が厳しいと感じている人が任意整理を行うことには、主に以下のメリットがあります。
6-1. 督促が止まり、精神的に楽になる
弁護士や司法書士に任意整理を依頼すると、銀行や消費者金融などの債権者に対して受任通知を送付してもらえます。
受任通知は、任意整理などの債務整理を受任したことを伝え、対応の窓口を弁護士や司法書士に一本化するための書面です。受任通知が届くと、債権者からの連絡は弁護士または司法書士に対して行われるようになり、債務者本人に対する督促は止まります。
頻繁に債権者からの取り立てを受けて辛い思いをしているなら、弁護士や司法書士に依頼すれば精神的に楽になるでしょう。
6-2. 返済を止めることができ、月々の収支が改善される
弁護士や司法書士の受任通知が届いたあとは、債権者に対する返済も一時的に止めることができます。借金の返済に追われて生活が苦しくなっているなら、月々の収支が改善され、資金繰りに余裕が生まれます。
6-3. 借金滞納による差し押さえを回避できる
借金の返済を滞納していると、債権者が支払督促の申立てや訴訟の提起を行い、最終的には強制執行によって財産を差し押さえられるおそれがあります。預貯金や給与を差し押さえられると、生活に大きな影響が出てしまいます。
しかし、任意整理の交渉が行われている間は、債権者が支払督促の申立てや訴訟の提起をする可能性は低いと思われます。そのため、財産の差し押さえも避けることができます。
債権者が法的措置に踏み切る前に、早い段階から任意整理の交渉を始めましょう。
6-4. 無理のない水準まで返済額を減らせる
任意整理が成功すると、利息や遅延損害金のカットや減額、返済期間の延長などが認められます。月々の返済額が多すぎて生活費が圧迫されていても、任意整理をすれば無理のない水準まで返済額を減らすことができ、生活が楽になります。
7. 任意整理をしたいなら弁護士や司法書士に相談を
任意整理については、弁護士や司法書士が相談を受け付けています。借金の返済負担を減らすために任意整理を考えているなら、弁護士や司法書士に相談しましょう。
実際に依頼すれば、任意整理に関する債権者との交渉を任せることができます。月々の収支の状況を踏まえて、無理のない額まで返済負担を減らせるように交渉してもらえます。自分で債権者と交渉する必要がなくなるので、労力やストレスが軽減されることも大きなメリットです。
借金問題が深刻化すると、任意整理は難しくなり、自己破産などを選択せざるを得なくなるかもしれません。任意整理を希望するなら、早い段階で弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
8. 任意整理とクレジットカードの更新に関するQ&A
Q. 債務整理中にクレジットカードの更新はできる?
債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)を行っている間は、クレジットカードを更新することはできません。個人信用情報機関に異動情報が登録され、カード会社の更新審査に落ちてしまうためです。
クレジットカードの更新ができない状態は、異動情報が抹消されるまで続きます(完済後5年、または個人再生・自己破産の手続き開始から7年が経過するまで)。
Q. 任意整理の和解後も、クレジットカードは作れない?
任意整理の和解が成立したあとも、個人信用情報機関に異動情報が登録されている間は、クレジットカードを作ることができません。異動情報が抹消されるのは、任意整理をした債務の完済日から5年後です。
Q. 任意整理をすると、全てのカードが使えなくなる?
任意整理をすると、全てのカード会社が閲覧できる個人信用情報機関のデータベースに異動情報が登録されます。そのため、基本的には全てのクレジットカードが使えなくなります。
Q. 更新のないクレジットカードはある?
クレジットカードには、セキュリティ対策や信用情報のアップデートなどの観点から、必ず有効期限が設定されています。したがって、更新のないクレジットカードはありません。
Q. 未使用のクレジットカードなら、任意整理後に更新できる?
使用しているか否かにかかわらず、個人信用情報機関に任意整理の異動情報が登録されている間は、クレジットカードを更新することはできません。
Q. 任意整理前にクレジットカードの更新をしておくのはアリ?
任意整理を始める前であれば、利用中のクレジットカードの有効期限が迫ると自動的に更新されますが、任意整理を始めたことをカード会社が把握した段階で強制的に解約されます。
解約のタイミングは、任意整理をしたクレジットカードは受任通知の到達時、それ以外のクレジットカードは数カ月に1回程度の途上与信が行われた時です。
Q. 任意整理をすると、会社名義の社用クレジットカードはどうなる?
契約者が勤務先の会社であるクレジットカードは、実際に利用している従業員が任意整理を行っても、解約されることはありません。
会社名義の社用クレジットカードの料金は会社が支払義務を負うため、従業員の信用状況を考慮する必要はないからです。
9. まとめ 任意整理をすると基本的にクレジットカードの更新はできません
任意整理をすると、クレジットカードは強制的に解約され、更新もできなくなります。再びクレジットカードが作れるようになるのは、任意整理をした債務の完済日から5年後です。
メインの決済手段としてクレジットカードを利用していた場合は、別の決済方法に切り替える必要があります。たとえばデビットカードや、プリペイド式のQRコード決済などの利用を検討しましょう。
ただし、クレジットカードが使えなくなることを恐れて、任意整理などの債務整理を行うことなく、借金問題を放置するのは禁物です。遅延損害金が積み重なり、最終的には財産を差し押さえられるなど、状況がますます悪化します。
早期に対応を始めれば、スムーズに借金問題を解決できる可能性が高まります。借金の返済が苦しくなっている人は、速やかに弁護士や司法書士にご相談ください。
(記事は2025年11月1日時点の情報に基づいています)
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