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1. 任意整理後に携帯電話端末(スマートフォン)を分割払いで購入できる?
「任意整理」とは、債権者(支払いを請求する権利がある人)と交渉して、債務(お金を支払う義務)を軽減してもらう手続きです。借金やクレジットカード料金などの支払いが難しくなった場合は、任意整理が解決策の一つとなります。
ただし、任意整理をすると「ブラックリスト入り」するので、原則として、スマートフォンなどの携帯電話端末を分割払いで購入することはできなくなります。
1-1. 「ブラックリスト入り」=事故情報の登録|分割購入は原則できなくなる
「ブラックリスト入り」とは、個人信用情報機関に事故情報(異動情報)が登録されることの俗称です。「事故情報」とは、個人の信用にマイナスの影響を及ぼす情報です。
支払いの延滞や、任意整理を含む債務整理などが事故情報に該当します。借金やクレジットカード料金などについて任意整理をすると、ブラックリスト入りの状態になります。ブラックリスト入りすると、携帯電話端末の分割払いでの購入ができなくなります。
分割払いで携帯端末を購入する場合、顧客と販売店が売買契約を締結する一方で、携帯会社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど)が「個別信用購入あっせん」を行います。「個別信用購入あっせん」とは、商品の代金を立て替えた後、買主に分割払いで返済してもらうことをいいます。
携帯会社が個別信用購入あっせんを行う際には、原則として個人信用情報機関に登録された信用情報をチェックします。任意整理の事故情報が登録されていると返済能力を疑われ、審査に落ちてしまいます。その結果、携帯電話端末を分割払いで購入することができなくなります。
なお、ブラックリスト入りによって、携帯電話端末の分割払いだけではなく、以下のこともできなくなります。
ローンを借りられなくなる
クレジットカードを利用できなくなる
信販会社などを通じて、商品を分割払いで購入できなくなる
他人の債務の保証人になれなくなる
保証会社による保証が必要な賃貸物件を借りられなくなる
1-2. 任意整理によるブラックリスト入りの期間
任意整理の情報が個人信用情報機関に登録されるのは、任意整理をした債務がまだ残っている間と、完済した後5年間です。
したがって、任意整理をした債務を完済してから5年が経過するまでは、原則としてスマートフォンなどを分割払いで購入することができません。
2. 任意整理後に携帯電話端末を分割払いで購入できるケース
任意整理をした後に「どうしてもスマートフォンなどの携帯電話端末を分割払いで購入したい」という場合があるかもしれません。以下のようなケースであれば、スマートフォンなどを分割払いで購入できる可能性があります。
2-1. 端末代金が10万円以下である場合
スマートフォンなどの代金が10万円以下である場合は、携帯会社が個別信用購入あっせんを行う際、信用情報の審査を簡略化できるものとされています(少額店頭販売品)。
この場合、個人信用情報機関に任意整理の事故情報が登録されていても、スマートフォンなどを分割払いで購入できる可能性があります。
ただし、携帯料金を延滞している場合は、10万円以下の端末でも分割払いで購入することはできません。
2-2. 任意整理をした債務の完済後5年が経過した場合
任意整理をした債務を完済してから5年が経過すると、個人信用情報機関から任意整理の事故情報が抹消されます。その結果、再びスマートフォンなどを分割払いで購入できるようになります。
なお、事故情報が消えたかどうかは、個人信用情報機関に対して信用情報開示を請求すると確認できます。信用情報開示請求の手続きは、各個人信用情報機関のウェブサイトで案内されています。
2-3. 家族名義で購入する場合
任意整理をしたことで事故情報が登録されていても、家族名義であればスマートフォンなどを分割払いで購入することも可能です。
回線契約中の携帯電話端末の譲渡には原則として携帯会社の事前承諾が必要ですが、親族または同一生計者に対する譲渡については、携帯会社の事前承諾は不要です(携帯電話不正利用防止法7条1項)。
もし家族に携帯電話を購入してもらうなら、端末代金や回線料金は誰が負担するのかなどを明確に決めておきましょう。
3. 任意整理後も現在の携帯電話端末は使い続けられる?
任意整理をすると、現在使っているスマートフォンなどが使えなくなるのではないかと心配になるかもしれません。任意整理後における使用中のスマートフォンの取り扱いは、以下のとおりです。
3-1. 携帯料金を任意整理の対象に含める場合|強制解約される可能性が高い
携帯料金を滞納したり、任意整理によって減額を認めてもらった場合は、携帯会社によって回線契約が解除される可能性が高いと思われます。
約束どおり支払いができなかったことが契約解除事由に該当するほか、今後も支払いが滞るおそれがあると判断されるためです。
3-2. 携帯料金以外の債務だけを任意整理する場合|延滞していなければ引き続き使用できる
任意整理の対象とする債務は、自分で選ぶことができます。携帯料金を任意整理の対象から外し、別の債務だけを任意整理することも可能です。
この場合、任意整理が理由で携帯電話の回線契約を解除されることはありません。任意整理によって個人信用情報機関に事故情報が登録されますが、携帯電話の回線契約には影響を及ぼしません。
ただし携帯料金を延滞している場合は、任意整理の対象から外しても、延滞を理由に回線契約が解除されるおそれがあるのでご注意ください。
3-3. 携帯契約が強制解約されても、滞納を解消すれば他社との契約はできる
任意整理や延滞を理由に携帯電話の回線契約が強制解約されてしまっても、滞納を解消すれば、他社と新たに回線契約を締結することはできます。
ただし、携帯料金の滞納を解消していない間は、不払者情報が一般社団法人電気通信事業者協会に登録されています。各携帯会社は、新規契約の審査を行う際に不払者情報を確認しているため、携帯料金の滞納があると契約を断られる可能性が高いです。
3-4. 携帯契約が強制解約されても、端末自体は回収されない
任意整理や延滞によって携帯電話の回線契約が解約されても、スマートフォンなどの端末自体が回収されることはありません。電話やキャリアメールなどは使えなくなりますが、Wi-Fiによるインターネット接続や、アプリのインストール・利用などは引き続き行うことができます。


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4. 携帯電話端末の分割払い購入ができないときの対処法
任意整理をしたために、スマートフォンなどの携帯電話端末を分割払いで購入できない場合は、以下の方法などによって対処しましょう。
4-1. 一括払いで購入する
分割払いでの購入はできなくても、スマートフォンなどを一括払いで購入することはできます。特に型落ちの端末などは安価で販売されているケースが多いので、無理なく一括払いで購入できる端末を探しましょう。
4-2. 10万円以下の端末を選ぶ
価格が10万円以下の端末については、分割払いに関する審査が簡略化されるため、任意整理をしたあとでも分割払いで購入できることがあります。10万円以下の端末を見つけて、販売店に相談してみましょう。
4-3. 家族に購入してもらう
自分では分割払いで購入することができなくても、延滞や債務整理をしたことがない家族に頼んで、代わりにスマートフォンなどを購入してもらうことは可能です。その場合は、購入代金などの取り扱いをきちんと決めておきましょう。
4-4. スマホのレンタルサービスを利用する
自分でスマートフォンを購入することが難しい場合は、レンタルサービスを利用することも選択肢の一つです。インターネット上で「スマホ レンタル」などと検索すれば、レンタルサービスを提供している民間事業者がヒットします。
5. 任意整理中の携帯電話の使用に関する注意点
借金などについて任意整理を始めたら、携帯料金を滞納せずきちんと支払うように努めましょう。
借金問題が解決しても、携帯料金を滞納していると、また新たな問題が発生してしまいます。最終的には財産を差し押さえられることになりかねないので、携帯料金はきちんと支払うことが大切です。
また、任意整理を始めると、数カ月以内には現在使っているクレジットカードが使えなくなります。携帯料金をクレジットカード払いにしている場合は、支払方法を変更しておきましょう。
6. 任意整理による携帯電話への影響について、弁護士に相談するメリット
任意整理をすることにより、携帯電話の使用に生じる影響が心配な場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
6-1. 携帯電話への影響について、事前に確認や対策ができる
携帯電話の使用について生じる影響は、任意整理の進め方によってある程度コントロールすることができます。弁護士に相談すれば、任意整理による影響を具体的に想定したうえで、「携帯電話を使い続けたい」などの希望を実現するための対策についてアドバイスを受けられます。
6-2. 携帯料金の負担を踏まえて、現実的な返済計画を立てられる
任意整理に成功すると、対象の債務について減額や支払いスケジュールの変更が認められます。とはいえ、債務を支払い続ける必要がある点は、任意整理を行う前と変わりません。再び延滞しないように、収支を見直すなどして現実的な返済計画を立てる必要があります。
弁護士に相談すれば、収支の洗い出しや固定費の削減などについて、アドバイスやサポートを受けることができます。弁護士による客観的な視点からのアドバイスを踏まえて検討すれば、無理のない返済計画を立てられるでしょう。
6-3. 任意整理に必要な手続きを全面的に任せられる
正式に弁護士へ依頼すれば、任意整理に必要な手続きを任せることができます。
債権者との交渉を弁護士に任せれば、ノウハウを活かして債権者を説得してもらえます。自分で対応する場合に比べて、労力やストレスが軽減されることも大きなメリットです。
7. 任意整理と携帯電話端末の分割払い購入に関してよくある質問
Q. 任意整理中にスマホの分割払いに通ったという話を聞いたのですが、本当ですか?
具体的な事情が分からないので何とも言えませんが、価格が10万円以下のスマートフォンであれば、任意整理中でも分割払いの審査に通る可能性があります。そのほか、家族に分割払いで購入してもらうケースも見られます。
Q. 任意整理後、格安SIMだと契約しやすいですか?
回線契約に関する審査の基準は事業者によって異なるので、格安SIMなら通りやすいと一概に言うことはできません。
あくまでも一般論ですが、現在携帯料金を滞納していなければ、過去に延滞や債務整理をしたことがない事業者と回線契約を締結することはできます。
Q. 家族名義で携帯電話を契約しても問題ない?
親族または同一生計者の名義で携帯電話を契約してもらい、自分が使うことは法律上許容されています。
Q. 任意整理中に携帯料金を滞納するとどうなる?
訴訟などを経たあと、財産を差し押さえられるおそれがあります。任意整理した携帯料金を滞納した場合は、減額前の金額を請求されることもあります。
Q. 任意整理前にスマホを分割払いで購入しても問題ない?
基本的に問題ありませんが、すでに借金などの債務を延滞している場合は、分割払いの審査に落ちてしまうことがあります。
Q. 任意整理後、携帯会社の「社内ブラック」となる期間はどのくらい?
「社内ブラック」とは、携帯会社に不良顧客と認識された状態です。過去に延滞や債務整理をしたことがあると社内ブラックとなり、個人信用情報機関に事故情報が登録されているか否かにかかわらず、回線契約を断られてしまう可能性が高くなります。
社内ブラックの期間は各携帯会社の方針によるので、外部の人には分かりません。数年程度で解消される可能性もありますが、半永久的に社内ブラックが続く可能性もあります。
基本的には、過去に延滞や債務整理をしたことがある携帯会社とは契約できないと考えて、別の携帯会社に契約を申し込みましょう。
8. まとめ 任意整理の進め方によっては携帯の分割購入も可能です
任意整理をすると、対象の債務を完済してから5年が経過するまでは、原則としてスマートフォンなどの端末を分割払いで購入できなくなります。また、任意整理の進め方によっては回線契約が解除されるケースもあるので注意が必要です。
任意整理による携帯電話の使用に生じる影響が心配なら、弁護士に相談しましょう。債務整理後の生活を見据えたうえで、よりよい借金問題の解決方法を提案してもらえます。
「債務整理のとびら」には、債務整理を取り扱う弁護士が多数掲載されています。借金問題や携帯料金の滞納などに悩んでいる人は、ぜひご利用ください。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)


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