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1. 公務員でも自己破産はできる?
公務員でも、借金の返済が苦しくなって「支払不能」の状態になった場合は、自己破産をすることが可能です。
1-1. 自己破産とは
「自己破産」とは、借金などの債務(お金を支払う義務)を免責してもらう手続きです。借金などの債務の支払いができなくなった場合は、裁判所に自己破産を申し立てることができます。生活に必要な最低限のものを除いて、財産は処分されますが、最終的に借金などの債務が免除されます。
借金などがゼロになって支払いの必要がなくなることで、収支が大幅に改善され、生活を根本から立て直すことができます。
1-2. 公務員でも、支払不能であれば自己破産できる
自己破産は、「支払不能」の状態であれば誰でも申立てが可能です。ここでいう「支払不能」とは、支払い期限を迎えた債務の大半を支払えない状態が続いていることを意味します。
自己破産を申し立てる人の職業は問われません。公務員であっても、「支払不能」であれば自己破産を申し立てることができます。
2. 自己破産をすると、公務員を続けられない?
自己破産をすると、破産手続開始の決定から免責許可決定が確定するまでの間、一部の職業に就くことが制限されます(資格制限)。公務員は一部の例外を除いて、この資格制限の対象外です。
たとえば、各省庁や自治体の職員、国公立学校の教員や職員、独立行政法人の職員などは、資格制限の対象にはならないため、自己破産後も同じ仕事を続けられます。
3. 公務員が自己破産をするとバレる?
自己破産をする際には、職場や家族に知られたくないと不安を抱く人も多いでしょう。ここでは、公務員の自己破産が周囲に知られる可能性について解説します。
3-1. 資格制限の対象でなければ、職場に報告する義務はない
資格制限の対象となる職業に就いていない限り、自己破産を職場に報告する義務はありません。職場の人に知られたくない場合は、たとえ何かを聞かれても、答える必要はありません。
3-2. 官報に掲載されるが、知人が閲覧する可能性は低い
自己破産の手続き開始や免責許可については、政府が発行する機関紙である「官報」に掲載されます。官報は誰でも閲覧できますが、日常的に官報をチェックしている人はほとんどいません。また、自己破産をした人の氏名などで官報の内容を検索することもできません。そのため、官報から自己破産の事実が職場に知られる可能性は低いといえます。
3-3. 共済や互助会を通じて、職場の人にバレることがある
公務員が共済や互助会に加入し、掛金を拠出している場合、その積立金や解約返戻金が破産手続きによって処分の対象となることがあります。
この場合、裁判所によって選任された「破産管財人」が共済や互助会の窓口に連絡をして解約を申請するため、窓口の担当者に自己破産の事実が知られることになります。
ただし、窓口の担当者が職場内で自己破産の事実を言いふらすことは考えにくいです。また、共済や互助会の窓口が職場内に設置されていない場合は、特に心配する必要はありません。
3-4. 家族には協力してもらうことが望ましい
自己破産の申立てに当たっては、同居する家族も合わせた家計全体の収支状況を裁判所に報告する必要があります。また、破産手続きにより財産が処分されることがあり、家族の生活にも影響が及ぶ可能性があります。
そのため、手続きを行うに当たっては、家族の協力を得ることが望ましく、自己破産に至った経緯も含めて、正直に説明することをおすすめします。
4. 公務員が自己破産をしたことが職場にバレたら、懲戒処分を受ける?
公務員が自己破産の事実を職場に知られたとしても、それだけを理由に懲戒処分を受けることはありません。ただし、資格制限の対象となる職業に就いている場合は、退職を余儀なくされます。
4-1. 自己破産は懲戒事由に当たらない
国家公務員の懲戒事由は人事院規則やその指針、地方公務員の懲戒事由は各自治体の条例などによって定められています。自己破産は、国家公務員および地方公務員ともに懲戒事由に該当しないため、自己破産を理由に懲戒処分を受けることはありません。
4-2. 資格制限の対象となる場合は、退職を余儀なくされる
自己破産そのものは公務員の懲戒事由に当たりませんが、就いている職業や役職が資格制限の対象である場合には、退職せざるを得ません。たとえば、以下のような役職に該当する場合です。
・各種公的機関(日本銀行、商工会、商工会議所など)の役員
・各種公的委員会(公正取引委員会、労働保険審査会、社会保険審査会、教育委員会など)の委員長・委員
一方で、資格制限の対象外である公務員については、自己破産をしても退職する必要はありません。


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5. 公務員が自己破産を考えるときの注意点
借金などの支払いが苦しくなり、自己破産を検討している公務員は、以下の点に注意する必要があります。
5-1. 退職金見込額が破産財団に組み入れられる
自己破産をする際、公務員は破産申立ての時点で退職したと仮定した退職金見込額の一部が破産手続きによる処分の対象となります。
たとえば東京地裁の運用では、退職金見込額の8分の1が破産財団(破産手続きによって処分される財産)に含まれます。仮に破産申立ての時点で退職金見込額が400万円であれば、50万円を破産管財人に支払わなければなりません。
破産財団に組み入れるお金は、破産手続きによって処分されない手元の現金(99万円以下)や、家族からの援助などで賄う必要があります。勤続年数が長く退職金見込額が高額な場合、その分破産管財人に支払うお金も増えるため、注意が必要です。
なお、退職金見込額については、職場に証明書を発行してもらい、裁判所または破産管財人に提出します。発行を依頼する際に、自己破産の事実を伝える必要はありません。
5-2. 任意整理や個人再生も検討すべき
自己破産をすると、一定額以上の財産が処分の対象になります。財産を手元に残したい場合は、「任意整理」や「個人再生」も検討しましょう。
【任意整理】
任意整理とは、銀行や消費者金融などの債権者と直接交渉し、借金などの負担を軽減してもらう手続きです。債権者の同意が得られれば、利息や遅延損害金のカット、支払いスケジュールの変更などが可能になります。
任意整理の主なメリットとデメリットは、以下のとおりです。借金などの額が比較的少ない場合に適しています。
【任意整理のメリット】
・手続きが比較的簡単
・所要期間が短い
・費用が少なく済む
・月々の支払額を減らせる
・対象の債務を選べるため、保証人に迷惑をかけずに済む
・家族に知られにくい
【任意整理のデメリット】
・元本の減額は認められにくい
・債権者の同意が必須
【個人再生】
個人再生とは、裁判所を通じて借金を大幅に減額してもらう手続きです。債権者の決議と裁判所の認可を得た「再生計画」に従って、減額した債務を原則3年間で分割して支払います。
最大で借金が10分の1まで減額されることもあり、公務員のように安定収入がある人に適しています。特に、債務が100万円を大きく超えており、住宅などの財産を手放したくない場合に有効です。
【個人再生のメリット】
・元本を大幅に減額できる可能性がある
・担保権が付いていない財産は処分されない
・住宅ローンが残っている家の処分を回避できる制度がある
・一部の債権者が反対しても、減額が認められることがある
【個人再生のデメリット】
・安定した収入がないと利用できない
・最低でも100万円は債務を支払う必要がある
・保証人に対する請求が行われる
6. 自己破産を検討している公務員が弁護士に相談するメリット
公務員が自己破産を検討している場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士は、自己破産に関する適切なアドバイスやサポートを行います。自己破産について弁護士に相談する主なメリットは、以下のとおりです。
自己破産すべきかどうかを、メリットとデメリットを比較して適切に判断できる
自己破産の手続き全般を代行してもらえる
公務員特有の注意点について具体的なアドバイスを受けられる
借金の取り立てを止め、生活を再建できる
早めに弁護士に相談することで、借金問題の解決が大きく近づきます。借金の返済に悩む公務員の人は、なるべく早く弁護士へ相談するとよいでしょう。
7. 公務員の自己破産に関してよくある質問
Q. 公務員であることや、退職金があることを隠して自己破産できる?
公務員であることや退職金を隠して自己破産をすることはできません。破産申立ての書類には、職業や退職金見込額などを正確に記載しなければなりません。裁判所や破産管財人からの質問にも、事実に基づいて回答する必要があります。虚偽の記載や説明をすると、自己破産による免責が認められない「免責不許可事由」や刑事罰の対象となります。
また、公務員であることを隠しても、破産管財人は、預貯金通帳に記載された給与の支払元などから、職業を簡単に調べることができます。退職金見込額も、勤務先への照会によって確認されてしまいます。
Q. 自己破産をしたことがある人は、公務員になれない?
自己破産をした人でも、原則として公務員になることは可能です。公務員のほとんどは資格制限の対象外とされています。
例外的に、各種公的機関の役員や各種公的委員会の委員長・委員などになることは制限されますが、「復権」すれば再び就任できるようになります。「復権」は、免責許可決定が確定した時などに自動的に認められます。
Q. 借金問題や債務整理について、勤務先の役所に知られたくないときはどうすればいい?
資格制限の対象になる役職でない限り、借金や債務整理のことを勤務先の役所に報告する必要はありません。
ただし、共済や互助会に加入して掛金を拠出している場合、破産管財人から窓口担当者に解約の連絡が入ることがあります。知られるリスクを避けたい場合は、任意整理や個人再生など他の手続きを検討しましょう。
Q. 自己破産をすると、月々の給料やボーナスはどうなる?
破産手続開始決定前の勤務に対応する給料やボーナスは、その一部が破産手続きの処分対象となることがあります。一方、破産手続開始の決定後の勤務に対応する給料やボーナスは処分されず、満額受け取れます。
8. まとめ 公務員でも自己破産はできるし基本的に懲戒処分を受けることはない
公務員でも、借金の返済が困難な状態であれば自己破産を申し立てることが可能です。ごく一部の例外を除いて、自己破産をしても公務員の仕事を続けられます。また、自己破産を理由にした懲戒処分を受けることもありません。
公務員が自己破産を検討している場合は、まず弁護士に相談するとよいでしょう。資格制限や財産の処分などのデメリットについても詳しく説明を受けられ、自己破産が適切かを判断してもらえます。
正式に依頼すれば、債務整理の手続き全般を代行してもらえるため、精神的な負担も軽減できます。返済に悩んでいる場合は、早めに弁護士への相談を検討してみてください。
(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)


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