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1. ギャンブルや浪費が原因の借金は自己破産できない?
ギャンブルや浪費が原因だと自己破産が認められない理由と、それでも認められる可能性がある点について説明します。
1-1. 免責不許可事由に当てはまるため、自己破産できない恐れがある
自己破産で借金を免除してもらうには、裁判所から免責の許可を受ける必要があります。ただし、破産者に問題行動があった場合は、免責が認められない可能性があります。たとえば、浪費やギャンブルで借金を重ねた場合は、原則として免責されません。
このような免責が認められない原因を「免責不許可事由」と呼びます。浪費やギャンブル以外にも、次のような行為が免責不許可事由に挙げられます。
財産を不当に安く処分して価値を減らした
親族など特定の債権者だけに返済した(偏頗弁済)
返済能力がないのにあるように装って借りた
虚偽の債権者一覧表を提出した
帳簿や財産書類を改ざんした
裁判所や管財人にウソの説明をした、説明を拒否した
過去7年以内に免責を受けたことがある
債権者(お金を貸した側)に損害を与えるような行為をすると、免責不許可事由に該当しやすくなります。
1-2. 裁判所の総合判断で破産が認められることもある
浪費やギャンブルなどが原因で借金を抱えた場合、原則として免責は許可されません。とはいえ、すべての場合で絶対に認められないわけではありません。破産に至った事情や、本人の反省、生活再建の努力などを裁判所が総合的に判断し、「裁量免責」として例外的に免責が許可されるケースもあります。
そのためには、浪費をやめるだけでなく、節約して家計を改善するなど、生活再建に取り組む姿勢を示すことが大切です。なお、裁量免責は法律上では例外的な措置とされていますが、実際には免責が完全に不許可になるケースはそれほど多くありません。したがって、浪費やギャンブルによる借金があるからといって、自己破産をあきらめる必要はありません。
2. 免責不許可事由に該当する浪費やギャンブルの具体例
裁判所から免責の許可が下りない恐れがある浪費やギャンブルの具体例を見てみましょう。
2-1. パチンコ・スロット・競馬・競艇など
もっとも典型的な浪費・ギャンブルの例です。近年では、競馬や競艇などもネットやアプリで簡単に楽しめるようになり、日常的に行っている人が増えています。
これらは、銀行口座からの引き落としやクレジットカード決済が多く、通帳や明細から利用状況が明らかになります。そのため、ギャンブルをしていた期間や頻度、掛け金の額が把握しやすく、借金にどのくらい影響しているかが判断されやすい傾向があります。
2-2. ホスト・キャバクラ・風俗
高額な飲食費やサービス料を伴う利用は、浪費と判断される可能性があります。特に一度の支払いが大きくなりがちなため、クレジットカード決済となっていることが多く、利用履歴から発覚します。
ただし、付き合いや接待で数回程度の利用であれば、浪費とは見なされないこともあります。問題となるのは、収入に見合わない継続的かつ高額な支出です。
2-3. 推し活
アイドルやグループの活動を応援するために、グッズを購入したり、遠方で行われるイベントに参加するために宿泊費や交通費をかけたり、アプリ内で課金するようないわゆる「推し活」についても、収入に似合わない範囲になってしまう場合には浪費行為と判断されます。
これらの支出についても、預金口座の履歴やクレジットカードの履歴などで判明することがあります。なお、グッズについては、価値によっては財産として取り扱う必要があるケースもあるため、その処分等については注意が必要です。
2-4. 投資やFX
株やFX、仮想通貨などへの投資も、無理な取引を繰り返して借金が膨らんだ場合には、浪費と見なされることがあります。特に、借金を元手に投資していたり、大きなリスクをとって一発逆転を狙ったようなケースでは注意が必要です。
どのくらいの損失が出たか、どれくらいの頻度で取引していたかといった点も、裁判所の判断に影響します。
3. 浪費やギャンブルで裁量免責が認められるかどうかの判断基準
浪費やギャンブルが免責不許可事由に該当する場合、裁量免責が得られるかどうかは次のような要素の総合判断によって決まります。
【借金全体に対する浪費やギャンブルの割合】
借金総額のうち、ギャンブル・浪費の割合が大きい場合には、裁判所から厳しく判断される可能性が高くなります。依存症が疑われる場合も同様です。
【浪費やギャンブルを辞められているかどうか、本人の反省状況等】
借金の原因となった浪費やギャンブルを現在も続けている場合、裁量免責が認められる可能性は低くなります。原因を断ち、反省の姿勢を示すことが大切です。
【過去に同じ理由により破産しているかどうか】
以前にも浪費やギャンブルを原因に自己破産していた場合、再度の破産に対する裁判所の判断は厳しくなります。特に、1度目の破産後すぐに浪費が再発しているような場合は、裁量免責を得るのは難しいと考えられます。
【破産手続きに真摯に協力したかどうか】
裁判所や破産管財人(裁判所側の弁護士)の調査に対して誠実に対応しないことは、それ自体が別の免責不許可事由に該当します。浪費に加えて複数の事由が重なると、裁量免責を得るのはさらに困難になります。
4. 浪費やギャンブルで裁量免責を認めてもらい、自己破産するためにすべきこと
免責不許可事由に該当している状態で、裁判所から免責を認めてもらうためにできることを紹介します。
4-1. 裁判所や管財人の業務にきちんと協力する
破産者は自己破産の手続きにおいて、裁判所や破産管財人の調査等に協力する義務を負っています。そのため、報告を求められた事項についてはきちんと説明を行うこと、その際に虚偽の説明をしないことが大切です。
4-2. 反省文を裁判所に提出する
借金をした経緯を振り返り、なぜ自己破産に至ってしまったのか、今後同じ状況にならないためにはどのような生活をしていけばよいのかなどについて反省文を作成することも有効です。
その際、浪費やギャンブルなどで多額の借金を負ってしまった経緯などについては、嘘をつくことなく正直に記載し、反省を生かして今後の生活再建を誓う形にするのが良いでしょう。
4-3. 浪費やギャンブルをやめるための治療を受ける
浪費やギャンブルに依存傾向がある場合、自力でやめるのが難しいこともあります。そのようなときは、専門機関で通院治療を受け、治療内容や経過を管財人や裁判所に報告することで、生活再建に向けた真摯な姿勢を示せます。
4-4. 生活再建のための努力をする
反省を踏まえたうえで、現在は借金に頼らず生活できている状況を証明することが重要です。定職に就いて収入を安定させ、支出を見直して節約するなど、堅実な生活を送っていることが示せれば、裁量免責が認められる可能性は高まります。


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5. 裁量免責が認められなかったときの対処法
すべてのケースで裁量免責が認められるわけではありません。もし裁判所に免責を認められなかった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
5-1. 即時抗告を行う
免責不許可の決定に不服がある場合は、高等裁判所に再審理を求める「即時抗告」という手続きを行うことができます。
ただし、一度下された判断を覆すのは容易ではなく、即時抗告が認められる例は多くありません。抗告を行う際は、地裁の判断に誤りがあったことを示すため、適切な証拠を提出する必要があります。
5-2. 他の債務整理(特に個人再生)を行う
免責が認められない場合、借金の返済義務は残るため、別の手段で借金問題を解決する必要があります。具体的には、任意整理と個人再生が考えられます。
【任意整理】
任意整理は、各債権者と返済条件の交渉を行い、返済計画に合意を得る手続きです。これから払う見込みの利息をカットできる可能性が高いですが、元本や発生済みの遅延損害金のカットは難しく、大幅な減額は期待できません。そのため、自己破産ができなかった場合の代替手段としては、あまり適していないケースもあります。弁護士や司法書士に相談した結果、任意整理を勧められた場合には検討するとよいでしょう。
【個人再生】
個人再生は、裁判所を通じて借金の総額を大幅に減額し、減額後の金額を再生計画に基づいて分割返済していく制度です。支払額が大きく減り、免責不許可事由があっても利用できる点が大きなメリットです。
そのため、自己破産で免責を得られなかった場合の有力な代替手段として選ばれることが多い制度です。
6. ギャンブルや浪費で借金がある場合に弁護士に相談や依頼をするメリット
ギャンブルや過度な浪費が原因で借金をしてしまった場合には、早めに弁護士に相談しましょう。ここでは、借金問題を弁護士に相談するメリットを紹介していきます。
6-1. 裁量免責の可能性を高めるためのサポートを受けられる
ギャンブルや浪費による借金は、原則として免責が認められませんが、状況によっては裁量免責が得られる可能性があります。その見込みはケースによるため、自己破産を選ぶべきか、個人再生に切り替えるべきかの判断には専門的な知識が必要です。
自己破産で裁量免責を目指す場合は、下記の点を裁判所に適切に伝える必要があります。
借金を作った経緯
浪費やギャンブルをやめた事実や証拠
家計の改善状況
弁護士からアドバイスをもらいながら進めることで、これらを効果的に示しやすくなります。
6-2. ほかの債務整理方法を含めてベストな方法を検討できる
裁量免責が難しいと判断された場合や、実際に免責が認められなかった場合には、他の債務整理手続きへの切り替えが必要です。
弁護士に相談すれば、任意整理や個人再生といった他の選択肢についても、メリット・デメリットを踏まえて提案してもらえるため、状況に応じた最適な対応が可能になります。
6-3. 生活改善のアドバイスを受けられる
弁護士に依頼すると、毎月家計簿を提出して、家計の指導を受けることになります。特に支出面に関しては、裁判所や管財人(裁判所側の弁護士)の視点を踏まえた具体的なアドバイスが得られます。
たとえば、携帯電話料金、娯楽費(外食、アプリ利用、ケーブルテレビなど)、たばこや酒代といった支出項目について、改善が求められるポイントを指摘してもらえるため、生活再建への実質的なサポートが受けられます。
7. 浪費やギャンブルでも破産が認められた体験談と認められなかった事例
浪費やギャンブルの借金で、裁量免責が認められた例と認められなかった例を紹介します。
7-1. 裁量免責が認められた事例
以下のような事情を抱える方でも、破産手続きに真摯に取り組んだ結果、裁量免責が認められた事例があります。
競馬や競輪で多額の借金を負った方
オンラインカジノや闇カジノで借金を作った方
バーやスナックに頻繁に通い、出費がかさんだ方
キャバクラ等で1カ月に100万円以上の支出をした方
いずれのケースでも、本人が正直に経緯を説明し、深く反省していること、そして破産手続きに誠実に対応していることが評価され、裁量免責が得られています。
7-2. 裁量免責をあきらめた事例
私の場合、裁量免責が得られないと判断して別の手続きを選択したケースは今のところありません。
ただし、浪費などによる免責不許可事由に加え、申立代理人や破産管財人に虚偽の説明をするなど、手続きへの非協力が問題となったケースでは、破産管財人として「免責不許可」の意見を述べたことがあります。
この件でも、手続きに真摯に協力していれば、裁量免責の可能性が十分にあったと考えられます。
8. 浪費やギャンブルでの自己破産に関するよくある質問
Q. 浪費やギャンブルで自己破産が通らない確率は?
日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によれば、免責不許可決定になった事案は全体の1%に満たないようです。
手続き選択の段階で自己破産を避けているケースもあるとは思いますが、浪費やギャンブルのみを理由として裁量免責が得られないケースは限りなく少ないと考えられます。
Q. 免責不許可事由に該当するのは何年前の行動まで?
どの時期までの浪費等を問題視するか、という法律上の規定はありません。一般的には、借金に影響を与えている期間、つまり破産申立前の数年間の行動が重視されるケースが多いと考えられます。
ただし、たとえ何年も前の行動であっても、それが自己破産の主な原因である場合には、調査の対象となることがあります。
Q. 浪費やギャンブルで作った借金がある場合、必ず管財事件になる?
免責不許可事由が疑われる場合、多くは管財事件として扱われます。ただし、浪費やギャンブルが借金の主な原因でない場合には、「同時廃止」で処理されるケースもあります。
たとえば、年に1~2回程度の宝くじ購入や、付き合いで数回競馬に行っただけなど、借金に大きな影響がない場合は、免責不許可事由に該当しないと判断される可能性があります。
Q. 浪費行為やギャンブルはなぜばれる?
破産申立ての準備段階で、クレジットカードの利用履歴などを確認することになります。また、銀行口座についても、直近の履歴を裁判所に提出することになるため、これらの履歴から判明することが多いです。
管財事件の場合、破産者宛ての郵便物は破産管財人のもとへ転送されるため、パチンコ店のDMなどが届いてしまい、追及の対象になることも時々あります。
Q. 浪費やギャンブルをしていないと嘘をついたらどうなる?
裁判所や管財人に嘘の説明をすると、それだけで免責不許可事由になります。手続きに誠実に向き合う姿勢が欠けると、裁量免責の可能性は大きく下がります。
Q. 浪費行為やギャンブルがやめられない場合はどうすればよい?
原因を改善できないままでは再発の懸念があるため、裁量免責は難しくなります。専門機関の治療を受け、その経過を伝えることが有効です。
9. まとめ 裁量免責を目指す場合は、専門家に相談するのがおすすめ
浪費やギャンブルによる借金は、免責不許可事由に該当します。免責不許可に該当している場合、そのままでは自己破産が認められません。裁判所や破産管財人に、反省や生活改善の努力などが伝わってはじめて、裁量免責が認められる可能性がでてきます。
しかし、反省していることをどうやって裁判所に伝えればいいかなど、具体的な方法はわからないことが多いはずです。適切な行動を取るためにも、弁護士に相談しながら進められるとよいでしょう。
(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)


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