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1. 夜逃げとは?借金問題を解決できる?
「夜逃げ」とは、借金の取り立てや返済から逃れるために、貸主に黙って引っ越すことをいいます。
夜逃げをすると、しばらくは貸主からの督促が届かなくなります。そのため「借金を踏み倒せた」「逃げ切った」と錯覚するかもしれません。しかし、夜逃げをしても借金の返済義務はなくなりません。
いずれは住所を特定されて督促が再開したり、強制執行で財産を差し押さえられたりするおそれがあります。夜逃げでは、借金問題の根本的な解決はできません。
2. 夜逃げをしても、借金から逃げ切るのは難しい理由
夜逃げをしても、以下の理由により、借金の返済から逃げ切ることは難しいです。
2-1. 住民票を移すと、住所を調べられる
夜逃げをする際に住民票を移すと、その情報が市区町村に登録されます。
具体的には、転出元の住民票が除かれて「除票(除住民票)」となり、転入先で新しく住民票が作られます。また、住所の履歴が記載されている戸籍の附票(住民票の異動履歴を記録したもの)にも、住所を移した事実が記録されます。
借金の返済が延滞となっている場合、銀行や消費者金融などの貸主は債権回収のために、市区町村に申請してお金を借りた人の住民票の写しや戸籍の附票を取得できます。また、貸主が弁護士に債権回収を依頼した場合は、弁護士が職務上請求によって、住民票の写しや戸籍の附票を取得するケースもあります。その結果、住む場所を変えたとしても、現住所を知られてしまいます。
2-2. 住所が知られていなくても、裁判で敗訴することがある
住民票を移さずにいれば、現住所を知られずに済むかもしれません。
しかし、貸主がお金を借りた人の現住所を把握していなくても、最終的には「公示送達」という方法によって、裁判所に訴訟を提起できます。訴訟で貸主の主張が認められれば、裁判所はお金を借りた人に対して返済を命ずる判決を言い渡します。
2-3. 預貯金口座が調べられて、差し押さえられることがある
お金を借りた人の敗訴の判決が確定すれば、貸主は強制執行の申し立てができるようになります。強制執行の手続きでは、財産が差し押さえられて、強制的に借金の返済に充てられます。
借金の返済用口座を貸主に伝えている場合、その口座は確実に差し押さえの対象となるでしょう。また、貸主が知らない預貯金口座についても、「弁護士会照会」や「第三者からの情報取得手続」によって調べられる可能性があります。
【弁護士会照会】
依頼を受けた弁護士が、所属弁護士会を通じてお金を借りた人の預貯金口座の全店照会を行う
【第三者からの情報取得手続】
裁判所が銀行などの金融機関に対して、お金を借りた人の預貯金口座に関する情報の提供を命ずる
預貯金口座が差し押さえられると、生活費に充てるつもりだったお金が突然なくなり、日常生活に大きな影響が出てしまいます。
3. 夜逃げをした人の末路|リスクやデメリットは?
夜逃げをすると、さまざまなリスクやデメリットを負います。夜逃げによって生じる主なリスクやデメリットは、以下のとおりです。
3-1. 住民票を移せず、生活に支障が出る
貸主に住所を辿られないように、住民票を夜逃げ前の住所から移さずにいると、住民票の写しによって現住所を証明することができません。
特に身分証明が必要なサービスを受ける際には、住民票を移していないことが大きな障害となり、健康保険や年金の手続きができないなど、生活に支障が出てしまうおそれがあります。
3-2. 身を隠すことが大きなストレスになる
貸主から身を隠して逃げ続けることは、それ自体が大きなストレスになってしまいます。心身のバランスに影響が出て、体調を崩してしまうかもしれません。
3-3. 遅延損害金が増え続ける
借金の返済が期日に遅れると、返済が遅れたことに対するペナルティとして、1日ごとに遅延損害金が発生します。消費者金融からの借金については、遅延損害金の利率が年20%程度に設定されていることが多いです。
たとえば、100万円の返済を1年間滞納すると、20万円の遅延損害金が発生します。遅延損害金は、未払いの元本や利息に追加して支払わなければなりません。遅延損害金が膨らむと、借金の返済はますます難しくなります。
3-4. 財産が差し押さえられる
夜逃げをして借金の返済をせずにいると、貸主は裁判所に訴訟を提起する可能性があります。貸主がお金を借りた人の現住所を知らなくても、「公示送達」という方法によって訴訟を提起できます。
訴訟で貸主側の主張が認められると、裁判所は返済を命ずる判決を言い渡します。お金を借りた人の敗訴の判決が確定すると、貸主は裁判所に対して強制執行の申し立てができます。
強制執行の手続きでは、財産が差し押さえられます。預貯金や給与などが差し押さえられると、生活費が足りなくなるおそれがあるので注意が必要です。
3-5. 保証人に迷惑がかかる
返済していない借金に保証人が付いている場合、貸主は保証人に対して一括返済を請求します。突然多額の一括返済を請求されることになれば、大きな迷惑となります。
3-6. ブラックリスト入りする
銀行や消費者金融などの返済を2カ月から3カ月以上滞納すると、延滞の事実が個人信用情報機関に登録されます。借金の延滞など、個人の信用に悪影響を及ぼす情報を「事故情報(異動情報)」といいます。
個人信用情報機関に事故情報が登録されている状態は、俗に「ブラックリスト入り」と呼ばれています。ブラックリストの状態では、ローンやクレジットカードなどを利用できません。少なくとも5年間はブラックリスト入りの状態となるので、日常生活において不便な状態が続きます。
3-7. 詐欺罪に問われることもある
最初から返済するつもりがないのにお金を借り、夜逃げをすると「詐欺罪」に問われるおそれがあります(刑法246条1項)。また、貸主に対して嘘をついて返済を免れた場合も、詐欺罪によって処罰される可能性があります(同条2項)。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」です。特に借入額が多い場合は、初犯でも実刑判決を受けるおそれがあるので十分ご注意ください。
3-8. 離婚を請求される
配偶者を置いて単身で夜逃げをして行方をくらますと、離婚を請求されるおそれがあります。
3年以上生死不明の状態になると、訴訟で強制的に離婚が認められます。そのほかにも、夜逃げによって夫婦関係が破綻したと裁判所が判断して、訴訟による離婚が認められる可能性もあります。
3-9. 失踪宣告を申し立てられる
夜逃げによって生死不明の状態が7年以上続くと、親族などの利害関係人に失踪宣告を申し立てられる可能性があります(民法30条1項)。
家庭裁判所による失踪宣告が確定すると、生死不明となってから7年間が経過した時点で死亡したものとみなされます(民法31条)。失踪宣告の取消しを家庭裁判所に対して請求することはできますが、婚姻関係が消滅する、相続が発生するなどの影響が生じます。


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4. 夜逃げすることなく、借金問題を解決する方法
夜逃げをしなくても、「債務整理」によって借金問題は解決できます。主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。
4-1. 任意整理
任意整理は、銀行や消費者金融などの貸主と交渉して、借金の負担を軽減してもらう手続きです。貸主の同意が得られれば、利息のカットや返済スケジュールの変更などが認められます。
任意整理は裁判所を通さないので、手続きが比較的簡単です。財産が処分されない、対象とする借金を選べるなどのメリットもあります。ただし、元本の減額は認められにくいので、多額の借金を負っている場合には不向きです。
以下のような状況にある場合は、任意整理が有力な選択肢となります。
安定した収入がある
借金の総額が比較的少ない
債権者が1、2社程度
保証人に迷惑をかけたくない
財産を処分されたくない
簡単な手続きで借金の負担を軽減したい など
4-2. 個人再生
個人再生は、裁判所を通じて借金の負担を軽減してもらう手続きです。債権者(お金を貸した側)の決議と裁判所の認可を経た再生計画に基づいて借金を減額した後、原則として3年間で分割返済します。
個人再生では元本の減額が認められるほか、住宅ローンが残った自宅の処分を回避できる制度が設けられています。ただし、安定した収入が必須であるため、無職の人や定職に就いていない人は利用できません。また、減額後も最低100万円は返済が必要です。以下のような人は、個人再生が有力な選択肢となります。
安定した収入がある
借金の総額が100万円を大幅に超えている
住宅ローンが残っている自宅がある など
4-3. 自己破産
自己破産は、裁判所を通じて借金をゼロにする手続きです。財産を処分して貸主などの債権者に配当した後、残った借金全額が免除されます。
安定した収入が求められる他の手続きとは異なり、自己破産は無職や定職に就いていない人でも利用できます。借金がゼロになるので、生活を根本的に立て直すことが可能です。財産は原則として処分されますが、99万円以下の現金や生活に必要な財産などは処分されません。以下のような状況にある人は、自己破産が有力な選択肢となります。
借金が多すぎる
無職または定職に就いていない
高価な財産や、処分されたら困る財産がほとんどない など
5. 夜逃げしようと思い詰めているときの相談先
借金の返済が苦しい場合には、夜逃げをする前に以下の窓口へ相談しましょう。
5-1. 市区町村の法律相談
市区町村役場では、弁護士による法律相談会を開催していることがあります。市区町村役場の法律相談会は、住民であれば無料で利用可能です。
借金問題についても、弁護士から解決策をアドバイスしてもらえます。ただし、相談する弁護士を自分で選ぶことはできない点には注意が必要です。
5-2. 法テラス
法テラスは、市民と法専門家の距離を縮めるために設立された公的機関です。収入と資産が一定水準以下の人は、法テラスの無料相談と立替払い制度を利用できます。
借金問題についても、1回当たり30分の無料相談を3回まで利用できるほか、弁護士費用を法テラスに立て替えてもらえます。
ただし、法テラスの窓口では弁護士を選ぶことができません。自分で選びたいときは、法テラスの契約弁護士を探して、その弁護士を通じて法テラスの利用を申し込みましょう。
5-3. 【おすすめ】法律事務所(弁護士事務所)
弁護士が開設している法律事務所では、借金問題に関する相談ができます。無料相談を受け付けている弁護士も多く、債務整理の依頼もスムーズに行うことが可能です。
法律事務所へ直接相談すれば、債務整理の経験が豊かな弁護士を自分で選べます。複数の法律事務所の無料相談を利用して比較することもできます。「債務整理のとびら」には、債務整理の相談を受け付けている弁護士が多数登録されているので、活用するとよいでしょう。
6. 夜逃げに関してよくある質問
Q. 夜逃げは違法?捕まる?
借金を返済しないことは、債務不履行(さいむふりこう)という違法行為です。債務不履行を起こすと、元本や利息に加えて遅延損害金を支払うというペナルティを負います。
債務不履行だけでは、原則として犯罪に当たらず逮捕はされません。ただし、最初から返済するつもりがないのにお金を借りた場合や、貸主を騙して返済を免れた場合は詐欺罪に当たり、逮捕されるおそれがあります。
Q. 夜逃げをする主な理由は?
借金の返済が苦しいものの、解決策を知らないために夜逃げをしてしまうと思われます。適切な方法で債務整理を行えば借金問題は解決できるので、夜逃げをする前に弁護士への相談を検討してください。
Q. 夜逃げをすれば、時効で借金から逃げ切れる?
貸主が訴訟を提起すれば、借金の時効の完成が猶予されます。貸主はお金を借りた人の住所を知らなくても、公示送達によって訴訟を提起できるので、時効によって借金から逃げ切るのは難しいと思われます。
Q. 夜逃げをした後の生活はどうなる?
住民票を移さないと生活に支障が出ることがあるほか、貸主から逃げ回ることが大きなストレスになるおそれがあります。ストレスの大きい夜逃げ生活を選ぶのではなく、債務整理によって借金問題の根本的な解決を図りましょう。
Q. 夜逃げと自己破産、リスクが高いのはどっち?
借金が残る夜逃げの方がリスクが高いです。自己破産は、高価な財産が処分されるなどのデメリットがありますが、借金がゼロになるという大きなメリットがあります。99万円以下の現金や生活に必要な財産は処分されないので、持ち家などどうしても残したい財産がない場合にはデメリットを気にしなくてよいケースも多いです。
Q. 自己破産は誰でもできる?
支払い期限が来ているのに返済できない「支払不能」状態が続いているのであれば、誰でも自己破産を申し立てることができます。職業などは問われません。
借金を作った原因が浪費やギャンブルなどの場合は免責不許可事由(自己破産を認められない事情)に当たりますが、裁判所の裁量によって免責が認められるケースが多いです。
7. まとめ 夜逃げではなく債務整理で借金問題の解決を図る
借金の返済を逃れるために夜逃げをしても、借金問題は解決できません。日常生活において不便が生じるほか、訴訟や強制執行などのリスクも残るので、夜逃げはおすすめできません。
借金問題を根本的に解決するには、適切な方法で債務整理を行うことが大切です。信頼できる弁護士のサポートを受けながら、早い段階から債務整理を行いましょう。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)


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