自己破産しても海外旅行に行ける? 許可が必要なケースと注意点

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自己破産の手続き後は自由に海外旅行ができます(c)Getty Images
自己破産をすると「海外旅行に行けなくなるかも」などの理由で手続きをためらう人がいます。実際のところ、自己破産によって海外渡航が一律に禁止されることはありません。ただし、手続き中の旅行には注意が必要です。 特に管財事件では、裁判所の許可がないまま出国すると免責が認められないおそれがあります。勝手な行動を取らず、事前に弁護士に相談するのがおすすめです。 自己破産と海外旅行の関係、注意すべきリスク、許可申請の手順や弁護士に相談するメリットなどを弁護士が解説します。

目 次

1. 自己破産によって海外旅行は制限される?

1-1. 自己破産手続き前

1-2. 自己破産手続き中

1-3. 自己破産手続き後

2. 自己破産手続き中に海外旅行に行くリスクと注意点

2-1. クレジットカードが使えない

2-2. 無許可の旅行は破産が認められなくなるおそれがある

2-3. 裁判所・破産管財人の心証が悪くなる

2-4. 刑事罰を受けるおそれがある

2-5. 破産手続きが長期化する

3. 例外的に自己破産手続き中に海外渡航の許可が下りるケースと申請方法

4. 自己破産とパスポート・ビザの関係

4-1. 自己破産をすると所持しているパスポートは無効になる?

4-2. 自己破産の手続き中でもパスポートは取れる?

4-3. 自己破産でビザの発行や在留資格に影響はある?

5. 自己破産に関する疑問を弁護士に相談するメリット

6. 自己破産中の海外旅行に関してよくある質問

7. まとめ 破産手続きが終わるまで、海外旅行は基本的に難しい
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1. 自己破産によって海外旅行は制限される?

実際に、自己破産をすると海外旅行に行けなくなってしまうのか、タイミングごとに説明します。

自己破産前

海外旅行に制限はないものの、「自己破産前の浪費」と見なされると、破産手続きに影響がでるおそれ

自己破産中

・管財事件の場合:裁判所や破産管財人の許可が必要

・同時廃止事件の場合:海外旅行に制限はない

自己破産後

自由に海外に行けるようになる

1-1. 自己破産手続き前


自己破産を申し立てる前の段階では、海外旅行自体に法的な制限はありません。旅券法や破産法などに「破産予定者は渡航できない」という規定は存在しないため、自由に海外旅行ができます。

もっとも、申立て直前の海外旅行には注意が必要です。破産法252条1項4号は「浪費または賭博その他の射幸行為」を免責不許可事由として定めており、破産申立ての直前に高額な旅行を行うと「浪費」と判断され自己破産が認められなくなるおそれがあります。特に、ブランド品の大量購入や高級リゾートへの旅行などは、裁判所に「反省のない浪費」と受け取られかねません。

1-2. 自己破産手続き中


破産手続き中の渡航制限は、事件の種類によって異なります。簡単な手続きで進む「同時廃止事件」であれば、破産手続開始と同時に手続きが終了するため、すぐに海外旅行に行くことが可能です。

一方、手続きが複雑で時間のかかる「管財事件」では事情が異なります。裁判所や破産管財人が申立人の居場所を把握しておく必要があるため、無断で海外に出ることはできません。渡航には事前に裁判所の許可を得る必要があります。

自己破産手続き中の海外旅行の可否を示した図。同時廃止の場合、自由に海外に行くことができる
自己破産手続き中の海外旅行の可否を示した図。同時廃止の場合、自由に海外に行くことができる

許可申請では「渡航理由」「期間」「滞在先」「連絡手段」などを記載したうえで、管財人を経由して裁判所に提出します。業務上の出張や親族の葬儀など、やむを得ない理由であれば認められることもありますが、観光目的ではほぼ認められません。無断で出国すれば「無断渡航」として免責不許可のリスクが生じます。

1-3. 自己破産手続き後


破産手続きが終了し、免責が確定した後は、海外旅行の自由は完全に回復します。パスポートの失効や渡航制限は一切ありません。

ただし、自己破産によりクレジットカードは解約され、一定期間は新規発行が難しくなります。海外旅行ではカードが必要となる場面が多いため、プリペイドカードやデビットカードを利用するなどの代替手段を準備しておくとよいでしょう。

また、経済生活上の信用回復には時間がかかります。免責後しばらくは慎重な金銭管理を心がけ、「再出発にふさわしい行動」を積み重ねることが、本当の意味での自由な海外旅行につながります。

2. 自己破産手続き中に海外旅行に行くリスクと注意点

自己破産をしても「海外旅行の自由が完全に奪われるわけではない」という点は重要です。もっとも、破産手続き中に安易に海外へ渡航すると、下記のようなリスクがあります。ここでは代表的な注意点を整理します。

2-1. クレジットカードが使えない


近年はキャッシュレス化が進み、海外旅行ではクレジットカードを使用する機会が非常に多くなっています。しかし、自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録され、いわゆるブラックリストに掲載されます。これにより、原則として5~7年間は新たなクレジットカードを作ることができません

また、既存のカードも利用停止となるため、海外では現金を多めに持参する必要があります。デビットカードやプリペイドカードを使う方法もありますが、分割払いは選べません。旅行先で支払いに困るリスクを十分に考慮しましょう。

2-2. 無許可の旅行は破産が認められなくなるおそれがある


破産手続き中に裁判所の許可を得ずに海外へ行くことはできません。無断で渡航すれば、破産法違反とみなされる可能性があります。

たとえば、破産管財人が債務者(破産をする人)と連絡を取れない状態が続いた場合、破産手続きに対する誠実性が疑われ、免責が認められない可能性もあります。

2-3. 裁判所・破産管財人の心証が悪くなる


無断渡航は単なる形式的な違反ではなく、裁判所や破産管財人からの信頼を大きく損なう行為です。信用を失うと、免責不許可事由(破産法252条1項)に該当する可能性が高まり、借金が帳消しにならないおそれがあります。破産手続きは「誠実な協力」を前提としているため、わずかな不信行為でも厳しく判断されます。

2-4. 刑事罰を受けるおそれがある


もし破産者が財産を隠したり、国外に逃亡したりしたと判断されれば、刑事罰の対象となる可能性もあります。実際にはまれなケースですが、「手続きから逃れようとしている」と誤解される行為は厳禁です。

2-5. 破産手続きが長期化する


破産手続き中に無断で海外旅行に行った場合、管財人は「財産隠しの疑いがある」とみなすかもしれません。そうなると管財人は行動履歴や資産移動を徹底的に調査します。その結果、手続きが長期化することもあります。

裁判所は手続き全体の誠実性を重視しており、ルール違反が疑われる場合には、破産を認めるか慎重に判断します。そのため、免責が確定するまでは海外渡航を控えるのが無難です。

結論として、破産手続き中の軽率な旅行は、信用の喪失や免責不許可、刑事責任、手続きの長期化など、さまざまなリスクを伴います。海外旅行自体が法律で禁止されているわけではありませんが、「再出発のためには誠実な態度が求められる」という意識を忘れないことが大切です。

3. 例外的に自己破産手続き中に海外渡航の許可が下りるケースと申請方法

自己破産手続き中は原則として海外渡航が制限されますが、裁判所が「やむを得ない事情」と認める場合には、例外的に許可が下りることがあります。ただし、この「許可」がなされるケースは極めて限定的です。

【業務上の出張で代わりがいない場合】
業務上の出張で代わりがいない場合は、許可が出る代表例です。会社経営者や専門技術者など、本人が不在になると業務が停止するような事情があるときは、必要書類を整えれば許可が出る可能性があります。

【親族の葬儀や危篤・医療目的など】
親族の葬儀や危篤といった緊急事態も、社会通念上やむを得ない理由として認められる場合があります。さらに、医療目的、すなわち海外での治療や手術が必要で、日本では受けられない事情があるときもこれに該当します。

一方で、レジャーや観光目的の渡航が認められることは極めて困難でしょう。裁判所が「緊急性・必要性」を重視していることがうかがえます。

申請にあたっては、管財人を通じて「渡航理由」「期間」「滞在先」「連絡手段」を明記したうえで、関連資料(招待状・診断書・勤務証明など)を添付し、裁判所に提出します。審査には日数がかかるため、出発直前の申請は認められにくい点に注意が必要です。

管財事件で許可が出るのは、信頼関係が築かれ、破産手続きへの協力姿勢が十分に認められている場合に限られます。したがって、申請前から誠実な対応を続けることが、最終的な判断を左右します。

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4. 自己破産とパスポート・ビザの関係

自己破産によるパスポートやビザへの影響を紹介します。

4-1. 自己破産をすると所持しているパスポートは無効になる?


自己破産をしたからといって、所持しているパスポートが無効になることはありません。旅券法や破産法のいずれにも、破産者の旅券を無効とする規定は存在しません。したがって、破産後も有効期間内であればそのまま使用できますし、更新や再発行の手続きにも支障はありません。

4-2. 自己破産の手続き中でもパスポートは取れる?


破産手続き中であっても、パスポートの申請や取得自体は可能です。申請書類に破産手続き中であることを記載する義務もなく、旅券事務所がそれを照会することもありません。そのため、手続き中であることが理由で発行が拒否されることはありません。

もっとも、パスポートを取得できたとしても、それを使って実際に海外へ行けるかは別問題です。管財事件では、前章で述べたとおり裁判所の許可が必要であり、理由が不十分なままパスポートを取得すると、管財人から「旅行を企図しているのではないか」と疑念を持たれるおそれがあります。特に、仕事や医療などの必要性がないまま取得すると、管財人や裁判所の心証を悪化させる可能性がある点に注意が必要です。

4-3. 自己破産でビザの発行や在留資格に影響はある?


自己破産をしても、原則としてビザの発給や在留資格の取得・更新には影響しません。破産手続きは個人の経済的再生を目的とする制度であり、犯罪行為や公序良俗に反する行為と評価されるものではないためです。

ただし、自己破産をしたのが外国人で、日本の法務大臣に対して永住権を申請する場合には注意が必要です。入管法上、永住許可には「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」という要件が定められており、自己破産によって一定期間はこれを満たさないと判断される可能性があります。

したがって、破産後しばらくの間は、安定した収入や納税実績を積み重ねたうえで申請することが望ましいでしょう。

5. 自己破産に関する疑問を弁護士に相談するメリット

自己破産は法律上の手続きであり、正確な理解と慎重な対応が求められます。弁護士に相談する最大のメリットは、破産手続のルールやリスクを正確に把握できる点にあります。特に、破産手続中の行動が免責不許可事由にあたるかどうかは、一般の人には判断が難しい場合が多く、弁護士のアドバイスが不可欠です。

また、裁判所への許可申請や説明資料の作成も、弁護士を通じて行えばスムーズに進められます。弁護士が破産管財人との調整を担うことで、手続きの停滞や誤解による不利益を防ぐことができます。

加えて、裁判所の運用が地域ごとに異なる可能性もあるため、その傾向を熟知した弁護士に依頼することは実務上も大きな利点です。

自己判断での行動はトラブルの原因になりがちです。破産手続きに関して不安や疑問がある場合は、早い段階で弁護士に相談することで、より確実かつ安全な再出発が可能になります。

6. 自己破産中の海外旅行に関してよくある質問

Q. 自己破産手続き中に海外移住はできる?


原則としてできません。裁判所の許可なく居所を離れることは禁止されているからです。海外移住は一時的な旅行よりも長期的な居住を意味するため、許可が下りる可能性は極めて低いといえます。破産手続きがすべて終了し、免責許可が確定した後であれば、法的制限なく移住することが可能です。

Q. 自己破産手続き中に国内旅行に行っても問題ない?


裁判所の許可を得れば問題ありません。ただし、破産管財人が申立人の所在を把握できるようにしておくことが重要です。旅行中に連絡が取れない状態が続くと、手続きへの不誠実な対応とみなされるおそれがあります。数日の旅行であっても、事前に管財人へ連絡し、日程と連絡手段を伝えておくのが安全です。

Q. 自己破産手続き中、1泊2日で高級温泉旅館などに行くことは免責不許可のリスクがある?


リスクがあります。破産法252条1項4号は「浪費」を免責不許可事由として定めています。高額な宿泊やぜいたくな飲食を伴う旅行は、必要経費ではなく浪費と評価される可能性があり、節度ある支出であっても、不要不急な旅行は避けた方が無難でしょう。

Q. 自己破産したらパスポートは失効してしまう?


失効しません。自己破産を理由に旅券が無効化されることはなく、更新や再発行も可能です。ただし、上述したとおり、破産手続き中に無断で渡航することはできないので注意が必要です。

Q. 自己破産しても、クレジットカードに付帯した海外旅行傷害保険は使える?


自己破産をすると、通常はクレジットカード自体が強制解約となるため、付帯していた海外旅行傷害保険も同時に失効します。海外旅行を計画する場合は、別途、現金払いの旅行保険や損保会社の短期保険の利用を検討しましょう。

Q. 自己破産をしたとき、クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険に入れる?


破産後5~7年間は新規のクレジットカードを作れないため、カード付帯保険への加入はできません。信用情報機関の記録が削除されるまでは、カード会社による審査を通過するのが難しいのが現状です。海外旅行を予定している場合は、銀行口座と連動したデビットカードや、保険会社が提供する単独の海外旅行保険を利用することを検討しましょう。

7. まとめ 破産手続きが終わるまで、海外旅行は基本的に難しい

自己破産をしても、海外旅行が一律に禁止されるわけではありません。ただし、手続き中の渡航には裁判所の許可が必要で、無断で出国すると免責が認められないなどのリスクがあります。

特に管財事件では誠実な対応が求められるため、安易な判断や行動は避けるべきです。事情がある場合は、弁護士に相談して許可の可否や手続きの流れを確認することで、安心して再出発への一歩を踏み出せます。

(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

林孝匡(弁護士)

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PLeX法律事務所 弁護士
PLeX法律事務所の弁護士。大阪弁護士会所属。登録番号43736。債務整理を10年ほど手がけたあと、情報発信専門の弁護士に転向。世にあふれている法律情報を分かりやすくかみ砕くことに注力。弁護士ドットコム・マイナビ・DIME・弁護士JPなど多数のWEBメディアでコンテンツを連載中。YouTubeでも裁判解説をスタート(チャンネル名:裁判LABO)
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