目 次
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1. 自己破産の書類は自分で集められる?
「自分で書類を集めて、手続きできるのではないか」と考えている人もいるかもしれませんが、専門家のアドバイスなしに手続きを進めようとするのはおすすめできません。
個々人の具体的な状況や、申立先の裁判所によっても必要書類は異なります。また、書類の取得順序を間違えることで期限が切れて使えなくなってしまうものもあります。保険の解約返戻金など「ないことを証明する書類」が必要になることもあり、書類集めが難しく感じられることもあるでしょう。
自己破産のために必要な書類を、専門家の手助けなく自分だけで過不足なく集めることは実際には非常に難しいです。専門家のサポートを受けたほうがよいと言えます。
2. 自己破産で弁護士が準備する必要書類
自己破産では、自分で準備する書類だけでなく弁護士が準備する書類もあります。もっとも、必要な情報は自己破産を申し立てる本人が所有していることも多いため、弁護士が準備する書類であっても本人の協力が欠かせません。
2-1. 申立書
申立書とは、自己破産の手続きを裁判所に申し込むための書類です。申立書はどこかで発行してもらうものではなく、弁護士が作成します。申立書に具体的に何を記載しなければならないかは法律で定められており、次のような事項を記載します。
申立人や債務者の氏名・住所
申立ての趣旨
破産手続き開始の原因となる事実・債務者の収入・支出の状況
破産の原因となる事実が生じた経緯
他の法的手続の有無
申立人・代理人の連絡先
裁判所ごとに自己破産の申立書の書式が用意されているため、自己破産を申し立てる裁判所の書式に従って記載していくことで、必要事項に漏れがないように申立書を作成できるようになっています。
2-2. 陳述書
陳述書とは、自己破産に関する個別の事情を説明するための書類です。陳述書には、主に次のようなことなどを記載します。
借金をした理由
借金が大きくなってしまった理由
自己破産に至った理由
今後どのように生活を立て直していくかの見込み
これらの事情は、個々人によって大きく異なるため、事情を裁判所にうまく伝えられるように陳述書を作成することが重要です。
基本的には、自己破産を申し立てる本人にこれらの大まかな内容を作成してもらったうえで、弁護士が本人からさらに詳しく事情を聞き取りながら、陳述書の形に完成させていく流れで作成します。
2-3. 債権者一覧表
債権者一覧表は、借入先すべてをまとめた表です。債権者の名称・住所、債権の金額などを一覧表の形にして弁護士が作成します。
参考:債権者一覧表の見本|裁判所
債権者一覧表には、銀行や消費者金融を記載するほか、友人や親族などから借金をしている場合にはそれらの個人も記載します。債権者一覧表に債権者の漏れがあった場合、その債権者に対する借金は免除されません。作成する際は漏れがないかを十分に注意することが必要です。
2-4. 財産目録
財産目録とは、自己破産を申し立てる本人が有している財産についてまとめて記載する書類です。財産目録には、次のような財産を含め全ての財産を記載します。
現金
預貯金
不動産
自動車
財産目録は、自己破産を申し立てる本人が用意した資料に基づいて、弁護士が作成します。意図的に財産を記載しないでいると、財産隠しの疑いで免責不許可事由に該当するおそれがあります。
3. 自己破産で自分が準備する必要書類や資料
自己破産では、弁護士が作成する書類とは別に、自分で準備すべき書類や資料も数多くあります。提出先の裁判所や申立人の状況によって必要な内容は異なりますが、主な書類を紹介します。
3-1. 本人確認資料
本人確認資料として住民票と戸籍謄本が必要です。住民票は、世帯全員の記載があり、本籍地が省略されていないものが必要です。また、マイナンバーの記載は省略されている必要があります。
住民票や戸籍謄本は、住んでいる市区町村役場で取得することができます。なお、住民票や戸籍謄本は、自己破産の申立てから3カ月以内のものでなければなりません。
3-2. 職業や収入に関する資料
職業や収入に関する資料として、次のものなどを用意します。
家計表
給与明細
源泉徴収票(または納税証明書・非課税証明書)
各種給付の証明書
同居家族の収入証明
家計表は、自己破産の申立直前2カ月分をまとめた「家計簿」のような書類で、自分で作成します。
参考:家計収支表の見本|裁判所
給与明細は申立前の2〜3カ月分を準備し、勤務先に発行してもらいます。あわせて、源泉徴収票も勤務先から受け取って提出します。源泉徴収票の代わりに、納税証明書や非課税証明書を提出する場合もあり、その際は市区町村役場で発行してもらいます。
3-3. 退職金に関する資料
退職金に関する資料としては、次のものなどがあります。
退職金見込額証明書
退職金がないことの証明書
退職金支給規程または就業規則
退職金見込額証明書は、退職金の支給が見込まれるケースで準備する書類です。これに対し、退職金の支給が見込まれないケースでは、退職金がないことの証明書を準備します。
これらの証明書の交付を受けることができない場合には、退職金支給規程または就業規則を用意することでも、手続きを進めることはできます。
3-4. 今の住居に関する資料
賃貸で家を借りている場合には、賃貸借契約書を準備します。これは、賃料や敷金・保証金などの有無を確認するためのものです。賃貸借契約書は契約時に受け取っているはずですが、見つからない場合は賃貸管理会社や大家などに問い合わせて、契約書のコピーをもらえないか頼んでみましょう。
持ち家の場合には、不動産の登記事項証明書(法務局で入手)や固定資産評価証明書(市区町村役場で入手)を準備します。ローン残高がある場合にはローン残高証明書(借り入れをしている金融機関から入手)も準備します。
書類名 | 入手先 | 備考・補足 |
|---|---|---|
賃貸借契約書 | 自宅/管理会社 | 賃貸住宅に住んでいる場合のみ必要 |
不動産登記事項証明書 | 法務局 | 持ち家の場合に提出。名義・抵当権などを確認 |
固定資産評価証明書 | 市区町村役所 | 【持ち家】所有不動産の評価額を証明 |
ローン残高証明書 | 金融機関 | 【持ち家】住宅ローン等の残債がある場合に取得 |
3-5. 資産に関する資料
資産に関する資料には、次のようなものがあります。カッコ内は入手先です。入手先の記載がない場合は通常自分で持っているはずのものです。
固定資産評価証明書(市区町村役場)
不動産の査定書(不動産業者等)
遺産分割協議書
車検証
車・バイクの査定書(自動車業者等)
生命保険の解約返戻金試算書(保険会社)
有価証券・ゴルフ会員権の証書
債権・貸金・慰謝料・養育費等に関する書面
売掛金一覧表
過去1〜2年分の預貯金通帳のコピー
過去1〜2年分の株やFXの取引明細
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4. 自己破産で人によっては必要になる書類
全ての人ではなく、立場によって提出が必要な書類もあります。例えば、自営業者、生活保護受給者、同居人がいる人などは、提出する書類が増えることがあります。
【生活保護受給者・年金受給者】
生活保護受給者や年金受給者は、次の書類を準備します。
生活保護受給証明書(市区町村役場で再発行可能)
年金受給証明書(社会保険事務所などで再発行可能)
各種扶助の受給証明書(各扶助の担当窓口で再発行可能)
【個人事業主】
自営業やフリーランスなどの個人事業主は、次の書類を準備します。
確定申告書(3期分)
総勘定元帳
決算書または貸借対照表・損益計算書
これらは、事業に関する収支を明らかにするために必要となるものです。通常は確定申告の書類を保管しているはずなので、自己破産のために新しく書類を作る必要があることはありません。
【同居人がいる場合】
同居人がいるケースでは、同居人について次の書類が必要となります。
所得証明書
給与明細
(同居人が年金受給者の場合)年金の入金がわかる書類
(同居人が無職の場合)非課税証明書
(同居人が生活保護受給者である場合)生活保護受給証明書
このように、同居人の協力を得なければならず、同居人に自己破産をすることを隠したまま手続きを進めることは基本的には困難です。
5. 法テラスを利用する場合の必要書類
自己破産の際に法テラスという公的機関を利用すれば、無料相談ができたり弁護士費用等を立て替えてもらえたりします。法テラスを利用するには審査があるので、そのために必要な書類を集める必要があります。ここでは、提出が求められる主な書類を紹介します。
5-1. 本人と同居家族の人数を確認する資料
本人と同居家族の人数を確認する資料として、住民票が必要です。この住民票は申し込みから3カ月以内に発行されたもので、かつ、本籍、筆頭者、続柄、世帯全員の記載があるものが必要です。
5-2. 収入・資産に関する資料
申込者の収入状況に応じて、以下の書類が求められます。
【給与所得者】
・給与明細(直近2カ月分)および賞与明細(最新)
・源泉徴収票(最新のもの)
・課税証明書または非課税証明書(最新のもの)
【自営業者】
・確定申告書の写し(直近1年分)※ e-Tax利用の場合は受信通知も必要
・課税証明書
【年金受給者】
・年金振込通知書
・年金支払通知書
・年金証書(いずれも直近のもの)
【無職の人】
・非課税証明書
・雇用保険受給者証
・離職票
・解雇通知
【生活保護受給者】
・生活保護受給証明書(発行から3カ月以内のもの)
・生活保護(開始・変更)決定書
・生活保護受給者証
5-3. その他の資料
その他、資産を確認するための資料として資力申告書を提出します。不動産を有している場合には、固定資産評価証明書や不動産登記事項証明書が必要となることもあります。また、債務一覧表も提出する必要があります。
6. 自己破産の必要書類を揃える際のポイント
多岐にわたる自己破産の必要書類をスムーズに集めるためのポイントを紹介します。
6-1. 管轄裁判所の必要書類をリストアップしておく
申立先の裁判所ごとに提出が求められる書類が少しずつ異なることがあるので、最初に自分のケースでの必要書類をリストアップして一覧にまとめておくと効率的です。このようにすれば、抜け漏れを防ぐこともでき、どのような書類が必要なのかが一目見てわかります。
6-2. 有効期限のない書類から集める
書類によっては有効期限が設定されているものもあります。有効期限が設定されている書類を先に集めてしまうと、他の書類を後で集めているうちに有効期限を迎えて使えなくなってしまうリスクがあります。まずは有効期限がない書類から集めるようにしましょう。
6-3. 退職金見込額証明書が必要な理由を考えておく
退職金見込額証明書は勤務先の会社に発行してもらう書類ですが、会社から「何に使うのか」と理由を聞かれることが多いです。素直に「自己破産のため」と答えても何か不利益があるわけではありませんが、自己破産をすることを勤務先に知られたくない場合もあるでしょう。そのような場合は、退職金見込額証明書が必要な理由を弁護士と事前に相談しておくと安心です。
6-4. コピーが切れないように印刷する
書類のコピーを用意する際には、書類の重要な部分が途切れたり欠けたりしてしまわないように注意が必要です。重要な部分が欠けてしまうと再提出の必要が生じることにもなります。丁寧にコピーをするよう心がけましょう。
7. 自己破産の必要書類について弁護士に相談するメリット
自己破産に必要な書類の種類や取得の順番は、申立先の裁判所によって少しずつ異なります。弁護士に相談すれば、自分のケースに合わせてどのように進めればよいか、的確なアドバイスを受けることができます。
また、住民票や戸籍謄本など、一部の書類は弁護士が本人に代わって取得できる場合があります。代理での取得を任せることで、役所での手続きを省き、書類収集の負担を軽減できます。
さらに、弁護士に依頼すれば、必要書類の準備だけでなく、申立書の作成や裁判所とのやり取りまで一括してサポートを受けることができます。
8. 自己破産の必要書類に関するよくある質問
Q. 自己破産で必要な書類収集を弁護士に全て任せることができる?
自分の手元にある書類などについては、自分で用意しなければなりません。全ての書類収集を任せて自分は全く何もしないということはできません。
Q. 自己破産の必要書類がそろわないとどうなる?
提出書類が不足していると申立てを受け付けてもらえず、審査が進まないため、正確かつ完全にそろえる必要があります。
Q. 自己破産で通帳のコピーは何年分必要になる?
場合によって異なりますが、基本的には申立日からさかのぼって2年分のコピーが求められることが多いです。
Q. 自己破産では配偶者や同居家族に関する資料も必要?
同居の家族がいる場合には、その方に関する資料も必要です。世帯での収入を調べるのに必要な「給与明細」などが代表的です。
Q. 自己破産の家計簿は何カ月分必要になる?
基本的には申立前2カ月分の家計簿が必要です。
Q. 無職の場合、収入に関する必要書類はない?
無職でも収入を証明する書類は必要です。直近1年分の所得証明書(非課税証明書)を市区町村役場で取得して提出します。
9. まとめ 自己破産の必要書類は弁護士のアドバイスを受けて集めるのが得策
自己破産の手続きでは、多くの書類を正確にそろえる必要があります。必要書類は個人の状況や裁判所によって異なり、取得順序や記載内容にも注意が求められます。中には「存在しないこと」を証明しなければならない書類もあり、自力での対応は困難な場面も少なくありません。
書類収集の段階でつまずかないためにも、まずは弁護士に相談し、正しいやり方で手続きを進めることが大切です。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
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