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1. 自己破産は司法書士に依頼できる?
自己破産の申し立ては、弁護士だけでなく司法書士に依頼することも可能です。ただし、弁護士と司法書士とでは、法律上対応できる業務の範囲に違いがあります。とくに司法書士の場合、裁判所に提出する書類の作成は可能でも、債権者(貸した側)との交渉や代理人としての出廷などはできません。
それぞれに依頼するメリットやデメリットを正確に把握し、自分に合った専門家に依頼することが重要です。
2. 自己破産における司法書士と弁護士の業務範囲の違い
司法書士と弁護士では、自己破産の手続きにおいて対応できる業務の範囲に違いがあります。書類の作成や法律相談はどちらも可能ですが、代理人としての行動や裁判所での対応など、弁護士にしかできない場面もあります。
ここでは、具体的な業務範囲の違いを項目ごとに整理して解説します。
2-1. 取り扱える金額の範囲
弁護士は、扱える金額に制限がなく、すべての自己破産手続きに対応可能です。これに対し、司法書士が代理人として債権者と交渉を行えるのは、1社あたりの債務額が140万円以下の場合に限られます。この業務は「簡裁訴訟代理等関係業務」と呼ばれ、法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」のみが行えます。
ただし、自己破産の書類作成は、認定の有無にかかわらずすべての司法書士が対応可能です。自己破産のように、裁判所へ提出する書類の作成を依頼する「書類作成業務」は、債務額に関係なく受任できます。司法書士は申立人の名義で書類を整え、裁判所への提出をサポートします。
弁護士は代理人として手続き全体を引き受けるため、費用は司法書士より高くなる傾向があります。その分、対応できる業務の幅も広く、トラブル発生時の対応力にも違いがあります。
2-2. 債権者からの取り立て
自己破産を進める際には、まず債権者に対して「受任通知」を送付することで、取り立てを止めるのが一般的です。弁護士が送る受任通知には法的な効力があり、通知を受けた債権者は債務者への直接の取り立てを止める義務があります。
一方、司法書士が関与する場合、140万円を超える債務には代理権がないため、理論上は、通知を送っても効力が及ばない可能性もあります。認定司法書士であっても、取り扱える範囲を超える債務に関する交渉はできません。
ただし、実務上は、自己破産の準備を進めている段階であれば、債権者が積極的に取り立てを行うことは少ないと考えられています。
2-3. 書類作成の代理人
弁護士も司法書士も、自己破産に必要な申立書や添付書類の作成を行えます。ただし、その立場には違いがあります。
弁護士は代理人として依頼者に代わり裁判所へ申立てを行い、手続きを一括して進めます。一方、司法書士は代理人ではなく、あくまで申立人本人の名義で書類を整えるサポート役です。法律に不慣れな人でも手続きが円滑に進むよう、形式や内容のチェック、必要書類の案内などを担います。
2-4. 裁判所への申し立て
弁護士が代理人として申し立てを行う場合、裁判所とのやり取りもすべて弁護士が対応します。
司法書士は、裁判所提出書類の作成と提出はできるものの、代理人ではないため、申立人本人の名義で申し立てる形となります。とはいえ、裁判所の運用によっては、書類の提出を本人の代わりに裁判所に持参する形をとることができるケースもあります。
また、裁判所からの通知や書類の送達についても、司法書士を送達先として指定すれば、本人の自宅に郵送物が届かないようにする対応が可能です。ただし、対応できる範囲は、各裁判所の運用により異なる場合があります。
2-5. 裁判所への同行・出廷
自己破産では、免責審尋や債権者集会といった、裁判所への出頭が求められる場面があります。弁護士が代理人であれば、本人の代わりに出席し、手続きを進めることができます。
司法書士に依頼した場合は、代理人としての出席ができないため、本人が出廷する必要があります。ただ、司法書士が裁判所へ同行し、事前に審尋での流れや注意点についてアドバイスを行うなど、間接的なサポートは受けられます。
2-6. 法的アドバイスやトラブル対応
司法書士と弁護士のいずれも、法律に関する一般的な相談には対応可能です。自己破産の申立手続きや、書類の書き方に関するアドバイスを受けることもできます。
しかし、訴訟や差し押さえなどのトラブルが発生した場合には、代理人として交渉や手続きを進められるのは弁護士のみです。債権者とのトラブルに発展している場合には、はじめから弁護士に依頼しておく方が安心といえるでしょう。
3. 自己破産における司法書士と弁護士の費用の違い
自己破産を専門家に依頼する場合、費用は依頼先や案件の内容によって幅があります。報酬額は法律で定められているわけではなく、事務所ごとに異なるため、事前の確認が重要です。
3-1. 司法書士:20万円~30万円
司法書士に自己破産を依頼した場合の費用相場は、おおむね20万円から30万円です。あくまで書類作成業務としての受任となるため、弁護士と比べて比較的安価に設定されていることが多く、費用を抑えたい人にとってはメリットになります。
ただし、申立書類の作成以外に、資料の収集や追加の書類作成が必要になる場合は、別途費用が発生することもあります。また、支払い方法や分割払いに応じているかどうかも、事務所によって異なります。依頼前に、見積書や報酬規程などで詳細を確認しておくとよいでしょう。
3-2. 弁護士:40万円~60万円
弁護士に依頼する場合、費用相場は40万円から60万円程度が一般的です。弁護士は自己破産の代理人として手続きを一括して進めることができるため、司法書士よりも報酬は高くなる傾向があります。
費用の中には、債権者との交渉や裁判所対応、同席出廷なども含まれることが多く、対応範囲が広い分、トータルでの安心感があります。ただし、財産の内容や債務の状況によっては、着手金や成功報酬の名目で追加費用がかかることもあるため注意が必要です。
なお、費用が心配な人は、法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、一定の条件のもとで費用の立て替えや一般的な報酬額よりも低い報酬で依頼できる可能性があります。
4. 自己破産を司法書士に依頼するメリット
自己破産は、専門家の力を借りることで手続きがスムーズに進みます。とくに書類作成を専門とする司法書士に依頼することには、いくつかのメリットがあります。ここでは、代表的な3つの利点を紹介します。
4-1. 費用が比較的安い
司法書士は、弁護士と違って裁判所への提出や審尋の代理ができない分、費用が抑えられる傾向にあります。自己破産の費用に不安を感じている人にとっては、負担の少ない選択肢といえるでしょう。
ただし、費用の安さだけで判断せず、自分のケースで司法書士が対応可能かどうかも見極めることが大切です。
4-2. 書類作成に強い
自己破産の申立書類は、形式・記載内容ともに複雑です。自力で書類をそろえるには、時間も労力もかかります。司法書士はこうした書類作成を専門としており、必要書類の準備や記載方法に関するアドバイスが得られるため、手続きのミスを防ぎやすくなります。
本人申立てで提出内容に不備があると、裁判所からの差し戻しや手続きの長期化を招くおそれもあります。最初から司法書士に任せた方が、スムーズな進行につながる可能性が高いでしょう。
4-3. 同時廃止であれば十分対応可能
自己破産には「同時廃止事件」と「管財事件」があり、財産がほとんどないケースでは同時廃止となるのが一般的です。たとえば、住宅や車などの高額資産を持っておらず、退職金見込額や保険解約返戻金も少ない場合、複雑な調査や処分を伴わないため、司法書士による書類作成だけで十分対応可能です。
同時廃止事件は、裁判所での手続きも比較的簡潔に進むため、代理人を立てずに進める選択肢として司法書士が適している場合があります。
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5. 自己破産を司法書士に依頼するデメリット
司法書士に依頼することで費用面のメリットはありますが、対応できる業務に制限があるため、人によってはデメリットとなる場合もあります。ここでは、注意が必要な点を整理します。
5-1. 裁判所での手続きを本人が行う必要がある
司法書士は、自己破産の申立書類を作成することはできますが、裁判所とのやり取りにおいて代理人になることはできません。そのため、申立て後に裁判所から出頭を求められた場合には、本人がすべて対応する必要があります。
申立ての際に必要となる情報や手順については司法書士から助言を受けられますが、面談(審尋)などに本人だけで臨むことになる点は、精神的負担として感じる人もいるでしょう。
5-2. 管財事件だと予納金が高くなる
自己破産には「同時廃止」と「管財事件」という2種類の手続きがあります。財産が一定額以上ある場合や、収入や支出の状況に不透明な点がある場合には、管財事件として処理され、裁判所が破産管財人を選任します。
司法書士に依頼すると、一般的には申し立ては本人名義となるため、「少額管財」という制度を利用できず、通常の管財事件として扱われます。
たとえば、弁護士に依頼して少額管財として扱われれば予納金は20万円前後で済むこともありますが、通常管財事件になると予納金が50万円前後になる場合もあるため、かえって費用負担が重くなるリスクもあります。
5-3. 法的トラブルへの対応に限界がある
自己破産の準備中や申し立て後に、訴訟を起こされたり給与を差し押さえられたりすることがあります。こうした事態に対応するには、法的な交渉や裁判所での手続きが必要になりますが、司法書士には代理権がないため、対応が難しくなるケースもあります。
トラブルが発生した場合には、改めて弁護士に依頼し直す必要が出てくる可能性があるため、あらかじめ覚えておきましょう。
6. 自己破産は司法書士と弁護士のどちらに相談すべき?
自己破産を検討する際、司法書士と弁護士のどちらに依頼すべきか迷う人は多いかもしれません。依頼先を選ぶうえでは、費用面だけでなく、手続きの複雑さや本人の対応力なども考慮する必要があります。ここでは、司法書士と弁護士で依頼してもいいケースを整理しました。
6-1. 司法書士に依頼してもよいケース
次のような条件にあてはまる場合は、司法書士への依頼も検討できます。
自己破産の手続きが比較的単純で争いがない(=同時廃止事件)
裁判所への書類提出や出頭などを自分で対応できる自信がある
少しでも依頼費用を抑えたい
地元に信頼できる司法書士事務所がある
ただし、自己破産の途中で債権者とトラブルになった場合などは、別途弁護士に依頼し直す必要があり、その分費用が二重に発生するリスクがある点には注意が必要です。
6-2. 弁護士に依頼した方がよいケース
以下のような状況では、弁護士に依頼するのが適しています。
任意整理と迷っているが、1社でも債務額が140万円を超えている
財産や収入の状況が複雑で、管財事件になる可能性がある
裁判所とのやり取りをすべて代理で任せたい
債権者とのトラブルや強い交渉が予想される
書類準備や出廷などを自分で行うのが難しい
弁護士であれば、裁判所とのやりとりもすべて代理で対応できます。手続きがスムーズに進みやすく、精神的な負担も軽減されるでしょう。
7. 自己破産を依頼する司法書士や弁護士の探し方
自己破産を検討している人にとって、信頼できる司法書士や弁護士を見つけることは重要です。費用面だけでなく、対応力や相性なども比較しながら、自分に合った専門家を選ぶことが手続き成功のカギになります。
代表的な探し方として、次のような方法があります。
「地域名 × 自己破産 × 司法書士(または弁護士)」でインターネット検索する
「債務整理のとびら」などの専門ポータルサイトを活用する
日本司法書士会連合会・日本弁護士連合会の相談窓口を利用する
市区町村の無料法律相談会で話を聞いてみる
SNSや口コミサイトでの評価や実績を参考にする
まずは気軽に問い合わせたり、無料相談を受けたりして、話しやすさや対応の丁寧さを確認するのがおすすめです。
7-1. 自己破産の経験が豊富かどうか
法律の専門家といっても、分野によって得意・不得意があります。自己破産や債務整理の経験が豊富な事務所であれば、裁判所の運用や書類作成のポイントなどを把握しており、スムーズに対応してもらえる可能性が高まります。
7-2. 料金体系が明確かどうか
自己破産の費用は事務所によって異なり、追加費用が発生するケースもあります。依頼前には、基本料金だけでなく、どのような場合に追加料金がかかるのかまでしっかり確認しましょう。説明が明確で、質問にきちんと答えてくれるかもポイントです。
7-3. 必要書類の集め方についてアドバイスをもらえるか
自己破産では、住民票や給与明細、預金通帳のコピーなど、本人がそろえなければならない書類も多くあります。そのため、「どの書類が必要か」「どのタイミングで準備すればよいか」といった点まで丁寧にサポートしてくれる専門家を選ぶと、手続きのストレスを減らせます。
7-4. 親身になって対応してくれるかどうか
自己破産は生活を立て直すための重要な手続きです。半年以上かかることもあるため、長期間信頼してやり取りできる専門家を選ぶことが大切です。メールの返信が早いか、不安に対する説明がわかりやすいか、話しやすい雰囲気かどうかなども、実際に相談してみて判断するとよいでしょう。
8. 自己破産について司法書士や弁護士に依頼する場合の流れ
自己破産の手続きを司法書士や弁護士に依頼する場合、以下のような流れで進んでいきます。
【相談の予約をする】
まずは、ホームページや電話で相談したい事務所に連絡し、相談日時を予約します。司法書士会などが主催する無料相談会では、その場での依頼ができないこともあるため、正式な依頼方法を確認しておくと安心です。
【相談時の準備をする】
相談時には、これまでの借金の経緯や収入・支出の状況が説明できるよう、メモや家計簿などを用意しておくとスムーズです。具体的には、以下のものがあるとよいでしょう。
本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
借入先や借入額がわかる資料(督促状・取引明細・借用書など)
給与明細や源泉徴収票
家計の支出内容がわかるメモ
【委任契約を結ぶ】
相談後、依頼を決めたら正式に委任契約を結びます。身分証明書や認め印を持参しておけば、無料相談と同日に手続きを進められることもあります。
【必要書類をそろえる】
委任後は、専門家の指示にしたがって自己破産に必要な書類をそろえていきます。預金通帳のコピーや家計簿など、自分で取得・準備する書類も多いため、指示内容をよく確認して準備を進めましょう。
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9. 自己破産の弁護士と司法書士の違いに関するよくある質問
Q. 司法書士と弁護士、どちらに依頼しても結果は同じ?
自己破産が同時廃止事件として処理される場合は、提出書類が主な審査対象となるため、弁護士でも司法書士でも大きな違いは出にくいといえます。ただし、財産があるなど複雑なケースでは、破産管財人との対応や裁判所とのやり取りを代理人として任せられる弁護士のほうが、確実に手続きを進めやすくなります。
Q. 司法書士と弁護士で手続きのスピードに差はある?
案件の内容によって異なりますが、弁護士は申立人の代理人として裁判所とのやり取りをすべて代行できます。必要書類の提出や確認作業などがスムーズに進みやすく、結果的に手続き全体のスピードに差が出る場合もあります。
Q. 家族や職場に知られにくいのはどちらに依頼したとき?
どちらに依頼した場合でも、裁判所からの通知先を事務所宛にすることで、家族や職場に知られにくくする配慮は可能です。
Q. 法テラスは司法書士と弁護士のどちらにも使える?
法テラス(日本司法支援センター)の制度は、弁護士・司法書士のどちらでも利用可能です。ただし、法テラスと民事法律扶助契約を締結している専門家でなければ利用できないため、事前に確認することをおすすめします。とくに司法書士の場合、対応できる事務所が限られることがあります。
Q. 管財事件でも司法書士は対応してくれる?
管財事件であっても、司法書士が破産申立書類の作成を支援することは可能です。ただし、破産管財人との面談や、裁判所との調整を代理で行うことはできません。本人がすべて対応する必要があるため、代理人としての関与が求められる管財事件では、弁護士への依頼が適しているケースが多くなります。
10. まとめ 自分の状況に応じて専門家を選ぶことが再スタートへの第一歩
自己破産は、債務額や財産の状況、本人の事情によって必要な対応が異なります。比較的シンプルなケースでは司法書士への依頼でも問題なく進められる場合がありますが、裁判所とのやり取りや債権者との交渉が必要になる場面では、弁護士に任せた方が安心といえるでしょう。
どちらに依頼するか迷った場合には、まずは無料相談を活用し、専門家からのアドバイスを受けるのがおすすめです。司法書士と弁護士では対応できる範囲に明確な違いがあるので、自身の状況に合った依頼先を選ぶことが、再出発に向けた第一歩になります。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
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