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1. 過払い金請求とは
テレビCMやSNSの広告でよく見かける過払い金ですが、そもそもどのようなお金なのでしょうか。まずは、過払い金の仕組みについて確認していきます。
1-1. 過払い金=利息制限法の上限を超える貸し付けのこと
貸し付けに関しては、「利息制限法」で利率の上限が定められており、借入金額に応じて年15~20%までとされています。一方で、かつては「出資法」により年29.2%までの利率は刑事罰の対象となっていなかったため、利息制限法は超えるものの、出資法は超えない範囲での金利が適用されるケースもありました。
この「利息制限法」と「出資法」の利率の差を「グレーゾーン金利」と呼んでいましたが、現在では貸金業法の改正により出資法の上限は撤廃され、利息制限法に基づいた利率が適用されるようになりました。
結果、利息制限法を超えて支払っていた分については、「過払い金」として取り戻せる可能性が出てきました。これを貸金業者に対して請求する手続きが「過払い金請求」です。
1-2. 過払い金は返還を求めることができる
これまでの取引履歴から過払い金が発生していることが確認できた場合、債務者(借りた人)はその返還を貸金業者に求めることができます。まずは裁判外で示談交渉を行う方法が一般的です。
交渉がまとまらない場合は、裁判手続きを通して過払い金の返還を求めることも可能です。なお、専門的な計算や手続きが必要になるため、過払い金の請求を考えている人は、弁護士や認定司法書士に相談することをおすすめします。
1-3. 過払い金は10年で時効を迎える
過払い金の返還請求には「消滅時効」があり、最後に取引(返済や借り入れ)を行った日から10年が経過すると、原則として過払い金を請求できなくなります。
時効が迫っている場合、相手方に内容証明郵便などで請求の意思を示せば、いったん時効の進行を止めることが可能です。ただし、その後6カ月以内に裁判などの正式な手続きを取らなければ、再び時効が進行し、請求権は失われます。
過払い金を取り戻したいと考えている場合は、最後の取引時期を早めに確認し、時効にかからないうちに対応することが大切です。
2. 過払い金請求のメリット
過払い金請求には、金銭的な回復だけでなく将来の負担を軽くする効果もあります。主なメリットは以下のとおりです。
2-1. 払いすぎたお金が戻ってくる
法律に基づいて、これまでに払いすぎていた利息を取り戻すことができます。ケースによっては数十万円単位の返還が認められることもあり、生活の立て直しや他の借金の返済資金にあてることも可能です。結果的に、経済的な負担を軽くする効果が期待できます。
2-2. 借金が減る・ゼロになる
現在借金の返済中であっても、過去に支払った返済の中に過払い金があれば、その金額を借金の残額と相殺することができます。その結果、借金が減るだけでなく、状況によっては借金がゼロになることもあります。
3. 過払い金請求のデメリット
過払い金が発生しているのであれば積極的に返還を求めるべきですが、返還請求をするデメリットもしっかり把握しておきましょう。
3-1. 過払い金全額を返還してもらえないケースがある
過払い金は返還を請求できますが、貸金業者の経営状況や交渉の結果によっては、返還される額が大きく減額されることがあります。特に、裁判をせずに示談で解決する場合、業者側から大幅な減額を求められるケースも少なくありません。満額返還されるのはむしろ例外的といえるでしょう。
3-2. 過払い金請求後はその業者を利用できなくなる
過払い金請求を行うと、原則としてその貸金業者との取引は今後できなくなります。また、同じグループのクレジットカードや関連サービスにも影響が出る可能性があります。たとえば以下のような関連があります。
消費者金融 | 系列 | グループ会社のクレジット |
|---|---|---|
アコム | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 三菱UFJカード MUFGカード NICOSカード など |
プロミス | SMBCグループ | 三井住友カード SMBCモビット など |
レイク | SBI新生銀行グループ | アプラスカード |
たとえば、アコムに過払い金の返還を求めた場合、グループ会社である三菱UFJカードが利用できなくなる可能性があります。この表以外にも関連会社は多数あるため、お互いへの影響を事前に確認しておくことが重要です。
3-3. 借金が上回ると信用情報機関に事故情報として登録される
発生した過払い金で残りの借金を相殺したものの、借金の一部が残ってしまうことがあります。この場合「債務整理をした」と見なされ、信用情報に事故情報が登録されることがあります。信用情報に記録が残ると、完済後も一定期間はローンやクレジットカードの審査に通らなくなる、保証人になれないなどの影響があります。
3-4. 弁護士や認定司法書士に依頼するとお金がかかる
弁護士や認定司法書士に依頼する場合、成功報酬や事務手数料などの費用が発生します。着手金を無料としている事務所もありますが、回収できる過払い金が少額またはゼロであれば、費用倒れになる可能性もあるため注意が必要です。
4. 過払い金請求のやり方・流れ
過払い金請求の具体的な方法や流れを解説します。
4-1. 取引履歴を入手する
まずは、過払い金の調査対象となる貸金業者に対し、これまでの返済記録である「取引履歴」の開示請求をします。取引履歴は返還請求の根拠となる資料であり、将来的に訴訟を行う場合には重要な証拠にもなります。
4-2. 引き直し計算をする
取引履歴が届いたら、利息制限法の上限利率(年15〜20%)に従って再計算を行います。この「引き直し計算」によって、払いすぎた利息の有無や金額が明らかになります。
4-3. 請求書を送付する
引き直し計算の結果に基づき作成した返還請求書と計算書を、貸金業者へ送付します。送付方法は普通郵便でも構いませんが、内容証明郵便で送ると、請求した事実を証拠として残すことができ、後のトラブルに備えられます。
4-4. 交渉か裁判で返還してもらう
請求後は、貸金業者の対応を見て、話し合い(示談)による解決を目指すか、訴訟に進むかを判断します。示談交渉の方が早く解決する傾向にありますが、返還金額は裁判に比べて大幅に減額されるケースが多い点に注意が必要です。
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5. 過払い金請求を行う際の注意点
リスクを回避し最大限の過払い金を取り戻すためにも、以下の注意点を意識しておきましょう。
5-1. 過払い金が発生していないケースがある
すべての借り入れに過払い金が発生しているわけではありません。貸金業法の改正以降、多くの業者は利息制限法の範囲内で貸付を行っています。そのため、改正貸金業法が施行された2010年6月18日以降の取引では、過払い金が生じていない可能性が高くなります。
また、古い取引であっても、利息制限法の範囲内の金利であれば過払い金は発生しません。取引の期間や金利をあらかじめ確認しておきましょう。
5-2. 時効が完成している可能性がある
最後の返済や借り入れから10年が経過していると、過払い金請求の権利は「消滅時効」により失われます。対象期間に過払いがあったとしても、すでに時効が完成していれば返還を受けることはできません。
5-3. クレジットカードはキャッシング枠のみ請求可能
クレジットカードのうち、過払い金の対象になるのはキャッシング利用分だけです。ショッピング利用分は「立替払い」に該当し、借金として扱われないため、過払い金は発生しません。
5-4. 請求前にクレジットカードを作っておく
完済後の請求であれば、信用情報に傷がつくことは基本的にありません。ただし、返済中に請求し、過払い金を差し引いても借金が残ってしまう場合は、債務整理と同じ扱いとなり、信用情報に事故情報が記録されます。今後クレジットカードを使う予定がある場合は、事前に作っておくのが安心です。
5-5. 引き直し計算は自分でやると間違いやすい
インターネット上には利息制限法に基づく引き直し計算ソフトもあり、自分で取引履歴を取り寄せて計算することも可能です。ただし、正確な計算や法的に適切な請求書の作成には専門知識が必要です。計算ミスや手続きの不備があると返還額が減るおそれもあるため、確実に手続きを進めたい場合は、弁護士や司法書士に依頼するのがおすすめです。
5-6. 自力の交渉だと返還額が少なくなりやすい
自分で貸金業者と交渉することも不可能ではありませんが、専門的知識なしに交渉をすると返還額が少なくなってしまうおそれがあります。「分断の有無」や「一連計算」の主張など、法的な論点を主張された際に適切に反論できないと、本来請求できるはずの金額を認めてもらえません。
また、誤った計算をもとに請求した場合、トラブルや不利な結果につながる可能性もあります。交渉相手は過払い金の対応に慣れている担当者なので、対等な立場で交渉を進めたいのであれば、自身も専門家に依頼して対応してもらうことをおすすめします。
6. 過払い金請求を弁護士や認定司法書士に依頼するメリット
弁護士や認定司法書士に過払い金請求を依頼すると報酬がかかりますが、その一方でどのぐらいのメリットがあるのかを解説します。
6-1. 時間や労力を省ける
自分で手続きを進める場合、取引履歴の取り寄せや引き直し計算、請求書類の作成など、すべてを自力で行う必要があります。弁護士や認定司法書士に依頼すれば、手続きの大部分を任せることができ、正確かつスムーズに進めてもらえます。
6-2. 家族にばれずに手続きできる
弁護士や司法書士に依頼すれば、貸金業者とのやり取りや郵送物の対応を事務所が代理で行ってくれるため、家族に知られずに手続きを進めやすくなります。
ただし、自宅で電話対応をする際には会話内容から気づかれる可能性もあるため、連絡の時間や方法について事前に配慮をお願いしておくと安心です。
6-3. 過払い金をより多く取り返せる
弁護士や司法書士は、それぞれの貸金業者の対応傾向を把握しているため、過払い金をできるだけ多く取り戻すための交渉や判断が可能です。裁判に進むべきかどうかといった判断も含め、状況に応じて最適な対応をしてくれます。
6-4. デメリットを踏まえて適切なアドバイスをくれる
過払い金があっても、満額が返還されないケースや、請求後に信用情報へ影響が出る場合もあります。弁護士や司法書士に相談すれば、メリットとデメリットのバランスを踏まえたうえで最適なアドバイスがもらえます。
7. 過払い金請求のデメリットに関するよくある質問
Q. 過払い金請求をするとカードが使えなくなる?
過払い金請求をした会社や、その関連会社のクレジットカードは利用停止となる可能性があります。ただし、まったく関係のない他社のカードには通常影響しません。
Q. 取り返した過払い金は課税の対象になる?
過払い金の返還は、新たに収入が入ってくるわけではなく、これまでに払い過ぎた利息分のお金が返ってくるだけなので、所得とはみなされず、課税対象にはなりません。
ただし、過払い金に利息を付けて返還してもらう場合には、この利息部分については一時所得とみなされ、課税対象となる可能性があります。
Q. 消費者金融に過払い金請求をしたらもうお金は借りられない?
過払い金請求をした会社からは以後、借り入れはできない可能性が高いです。他社からの借り入れについては、信用情報に影響が出なければ問題ないでしょう。
Q. 過払い金請求をしたら家族に影響はある?
本人名義の契約であれば、家族に直接の影響はありません。ただし、本人の名義から作った家族カードは利用できなくなる可能性があります。
Q. 過払い金請求ができるという法律事務所のCMが多いのはなぜ?
貸金業法の改正により、出資法の上限金利が引き下げられ、利息制限法を超える「グレーゾーン金利」が違法になりました。その結果、過去に高金利で借り入れていた人の多くに「過払い金」が発生し、請求のニーズが一気に高まりました。
これを受けて、当時は多くの弁護士事務所や司法書士事務所がテレビCMや広告を通じて積極的に依頼者を募集しました。過払い金が発生しているかどうかは債務整理の手続きでもチェックできるため、借金問題に悩みを抱えている人であれば一度相談してみるのもよいでしょう。
8. まとめ 過払い金請求は弁護士や司法書士に相談するのがおすすめ
過払い金とは、利息制限法の上限を超えて支払った利息分のことであり、請求すれば払いすぎた分は取り戻せる可能性があります。借金が減る・ゼロになるなどのメリットがある一方、信用情報への影響や、今後その業者が使えなくなるといったデメリットもあります。
過払い金が本当に発生しているかを確認するには、弁護士や司法書士に依頼して引き直し計算をしてもらうのが確実です。最後の取引から10年が経過すると時効により請求できなくなるため、早めに対応するのがおすすめです。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
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