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1. 過払い金の時効とは
過払い金とは、法律で定められた上限利率を超えて支払った利息のことです。過払い金は、借入先に対して返還を求めることができます。過払い金には時効があり、最後の取引から10年が経過すると、原則として消滅時効により請求できなくなります。
ただし、時効は自動的に成立するものではなく、貸金業者などの債権者(お金を貸した側)が「時効の援用」をすることで効力が生じます。
過払い金が発生している可能性が高いのは、2010年以前に高金利で借り入れをしていた人です。2025年現在、すでに時効が成立しているケースも多いため、取引が続いている人など、時効が成立していない可能性がある場合は、早めに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
2. 過払い金の時効が成立する条件
過払い金の時効が成立する条件について解説します。
2-1. 借金を完済してから10年
過払い金の請求には「消滅時効」があります。先ほども触れた通り、完済から10年が経つと、原則として請求できなくなります。ただし、時効は自動的に成立するわけではなく、貸金業者が「時効を援用します」と意思表示したときに初めて効力が発生します。
時効のカウントが始まる「起算日」は、一般的には「最後に借金を返済した日」とされます。その日から10年以内に請求すれば問題ありませんが、10年を過ぎて相手方が時効を援用すると、請求できなくなります。
2-2. 過払い金を請求できると知ったときから5年
2020年4月の法改正により、完済から10年以内でも時効が成立する可能性があります。具体的には「過払い金を請求できると知った日」から5年が経過している場合です。
たとえば、取引履歴を取り寄せて初めて過払い金の存在に気づいた場合、その日から5年以内に請求しないと権利を失うおそれがあります。この決まりは、2020年4月以降に完済したケースに適用されます。
3. 過払い金を請求する手順
過払い金を請求する手順を紹介します。正確な引き直し計算や交渉、訴訟の判断には専門的な知識が必要です。スムーズに進めたい場合は、弁護士や司法書士に依頼するのが安心です。
3-1. 取引履歴を取得する
まず、どのくらいの過払い金が発生しているかを調べるために、貸金業者から取引履歴を取り寄せます。履歴には、借入日・返済日・金額・利息などが記載されています。保存期間は最終返済日から10年とされており、それを過ぎたものは破棄されてしまう可能性もあります。
3-2. 過払い金の引き直し計算をする
送られてきた取引履歴をもとに、利息制限法の利率に引き直しをして、払い過ぎた利息分を計算します。債務整理や過払い金返還請求の依頼を受けている弁護士事務所や司法書士事務所には、引き直し計算用のソフトがあるので、それに入力して正確に算出していきます。
3-3. 過払金返還請求書を作成し送付する
過払い金が発生していた場合は、貸金業者宛に返還請求書を作成して送付します。あわせて、引き直し計算書も同封します。請求書には契約番号、請求額、振込口座などを記載します。
3-4. 貸金業者と交渉する
過払い金の請求書を送っても、すぐに請求額が振り込まれることはまずありません。通常は貸金業者から連絡があり、返還額や支払時期についての提案があります。このとき、弁護士や司法書士は依頼者の希望にできるだけ沿った内容となるよう、条件を調整しながら返還交渉を行っていきます。
3-5. 交渉がまとまらない場合は裁判を起こす
交渉で納得のいく返還額が提示されない場合は、裁判を検討します。裁判では、訴状を提出し、第1回目の期日(出頭日)で主張や証拠を整理します。その後、数回の期日を経て判決が出るか、途中で和解が成立するケースもあります。弁護士や司法書士が代理人となる場合は、本人が裁判所に行く必要はありません。
3-6. 過払い金が返還される
交渉か裁判で話がまとまると、指定の口座に過払い金が振り込まれます。振り込まれるまでの期間は貸金業者によりそれぞれ異なりますが、話がまとまってからおよそ1〜6カ月後というケースが多いようです。
4. 過払い金の時効が迫っている場合の対処法
時効が迫っているときは、特定の手続きをすることで、時効の進行を一時ストップしたり、延長したりすることができます。ここでは、過払い金の時効が迫っている場合の対処法を紹介します。
4-1. 過払金返還請求書を送付する
内容証明郵便などで、こちらから過払金返還請求書を送付することにより、時効の完成が一時的に猶予されます。ただし、過払金返還請求書を送るためには、履歴を取り寄せて引き直し計算をしておく必要があり、それに要する時間も考慮しておかなくてはなりません。
4-2. 過払い金返還訴訟を裁判所に申し立てる
過払い金の返還請求書を送ったことで時効が猶予されるのは6カ月間だけです。期間内に裁判所へ過払い金返還訴訟を起こすことで、時効の進行を完全に止めることができます。さらに判決が出ると、時効が更新(リセット)され、新たに10年間の請求期限が発生します。


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5. 時効が過ぎても過払い金を請求できるケース
完済から10年が経過していても、過払い金の請求ができるケースがあります。ここでは、代表的な2パターンについて説明します。
5-1. 借り入れと返済を繰り返している場合
同じ貸金業者から借りて返すという取引を何度も繰り返している場合、それぞれの契約が別の取引であっても、全体として「一連の取引」と判断されることがあります。この場合、時効は最初の借り入れではなく、最後の取引日から10年とカウントされる可能性があります。
一連の取引と認められるかどうかのポイントは以下を参考にしてください。
契約番号や会員番号が同じかどうか
借り入れと完済の間の空白期間がどのくらいあるか
各取引の条件(利率や契約内容など)が似ているかどうか
これらの条件を満たす場合は、一連の取引とみなされる可能性があります。
5-2. 貸金業者が不法行為をしていた場合
貸金業者が違法な取立てなどの、不法行為をしていた場合は、時効が成立しないケースもあります。たとえば、不法行為に該当する可能性がある行為としては以下のようなものがあります。
脅迫的な言動や暴力を用いた取り立て
法的根拠がない請求を故意に行った
深夜・早朝(午後9時~午前8時)に電話や訪問を繰り返した
大人数(3人以上)で訪問して威圧した
取引履歴を改ざんしたり、開示を拒否したりした
これらのような行為があった場合は、「不法行為による損害賠償請求」として扱われ、通常とは別の時効が適用されます。「損害を知ったときから3年、または行為から20年」が時効となるため、10年以上経過していても、過払い金を請求できる可能性があります。
6. 過払い金を弁護士や司法書士に相談するメリット
過払い金が発生している可能性があるなら、できるだけ早めに弁護士や司法書士に相談するのがおすすめです。専門家に依頼すれば、取引履歴の取り寄せや引き直し計算を正確に行い、過払い金の有無や金額を判断してもらえます。
また、貸金業者ごとの対応に詳しいため、依頼者の希望を踏まえた最適な解決方法を提案してくれます。自分で手続きすることも可能ですが、十分な知識や交渉力がないと納得のいく結果を得るのは難しいのが現実です。
過払い金については初回無料で相談できる専門家事務所も多いです。過払い金請求で損をしないためにも、過払い金の対応は弁護士や司法書士に任せるのがおすすめです。
7. 過払い金の時効でよくある質問
Q. 過払い金は何年前まで遡って請求できる?
過払い金を請求できるのは、原則として完済から10年以内です。ただし、2020年4月以降の完済分は「請求できると知った日から5年」で時効が成立する可能性もあります。
Q. 過払い金は10年以上経つと請求できなくなる?
基本的には完済から10年で時効が成立します。ただし、同じ業者で借り入れと返済を繰り返していた場合や、貸金業者に不法行為があった場合は最後の取引日から10年以上経過していても請求できる可能性があります。
Q. クレジットカードの過払い金の時効は何年?
キャッシング分に関しては、完済または最後の返済から10年で時効となります。なお、ショッピング枠での利用分は、法的に「借り入れ」ではなく「立替払い」のような扱いになるため、過払い金は発生しません。
Q. 2010年6月以前の全てのカードローンやキャッシングに過払い金が発生してる?
2010年6月以前は、多くの消費者金融や信販会社で利息制限法を超える利率で貸し付けていました。よって、過払い金が発生している可能性が高いといえますが、すべてが利息制限法を超えていたとは言い切れません。
Q. 過払い金請求の訴訟をしても取り返せないケースはある?
時効が成立していたり、貸金業者がすでに倒産していたりする場合には、たとえ過払い金があっても返還を受けられない可能性があります。
Q. 過払い金請求のデメリットは?
過払い金を債務(借金の残債)と相殺した結果、残債務の額が上回っていた場合には、信用情報に影響が生じます。完済後に過払い金請求をする場合には、信用情報に影響はありません。
また、過払い金請求をした会社のカードは、以後使用できなくなったり、新規の契約ができなくなったりする可能性があります。
8. まとめ 過払い金の時効や請求は専門家に相談する
過払い金は、通常は最後の取引から10年で時効となり、請求できなくなります。ただし、借り入れと完済を繰り返している場合などは「一連の取引」と判断され、時効を迎えていないと判断されるケースもあります。
弁護士や司法書士に相談することで、過払い金の正確な計算や、過払い金の有無が判断できます。これから時効を迎える可能性がある人は、そうなる前に余裕を持って専門家に相談することをおすすめします。
(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)


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