自己破産の復権とは? 手続き・期間と確認方法を解説

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自己破産で復権すると、資格・職業制限がなくなります(c)Getty Images
自己破産をすると、社会的・経済的にさまざまな制限がかかります。そのうちの一つに、特定の職業に一定期間就けなくなるという制限があります。警備員や生命保険の外交員が代表例で、手続き中は仕事を行うことができません。 とはいえ、自己破産で半永久的に特定の職業に就けなくなるわけではなく、「復権」すれば資格・職業制限が解除されます。自己破産では免責許可決定が確定することにより復権しますが、ほかにも復権するタイミングは複数あります。 自己破産後の復権について、復権のタイミングや確認する方法、復権後の注意点などについて、弁護士が解説します。

目 次

1. 自己破産の復権とは?

1-1. 復権で解除になる制限

1-2. 復権の条件

2. 復権の種類と期間

2-1. 免責許可決定の確定

2-2. 破産手続廃止決定の確定

2-3. 再生計画認可の決定が確定

2-4. 破産手続開始決定から10年が経過

2-5. 破産者の申立て

3. 復権を確認する方法

4. 自己破産の復権についての注意点

4-1. 資格・職業制限の対象者以外は気にする必要がない

4-2. 信用情報と復権は関係がない

4-3. ほかの債務整理なら資格・職業制限を避けられる

5. 自己破産による制限や復権について弁護士に相談するメリット

6. 自己破産の復権についてよくある質問

7. まとめ 自己破産の復権について不安があるなら弁護士に相談を
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1. 自己破産の復権とは?

自己破産の「復権」とは、法律上「破産者」としての扱いがなされなくなることです。破産者として扱われなくなる結果、破産者に生じていたさまざまな制限が解除されます。

1-1. 復権で解除になる制限


復権をすることで解除される制限として最も大きなものが、資格・職業に対する制限です。

自己破産で制限される主な職業や資格。弁護士や司法書士などの士業、警備員、生命保険外交員、質屋営業の許可、貸金業の登録などは制限される
自己破産で制限される主な職業や資格。弁護士や司法書士などの士業、警備員、生命保険外交員、質屋営業の許可、貸金業の登録などは制限される

自己破産の申立てをしたあと、破産者である間はこれらの職業に就くことや許可・登録を受けることができません。復権をしたあとには、改めてその資格・職業に就くことができるようになります。

たとえば、警備員の仕事をしていた人が自己破産をする場合、状況によっては警備員の仕事を辞める必要があります。その後、復権を得たあとには警備員の仕事を再開できます。

なお、復権をしたとしても、信用情報機関への延滞・自己破産をしたという事故情報の登録(いわゆる「ブラックリスト入り」)が削除されるわけではありません事故情報は、自己破産の手続終了時からおおむね5年〜7年程度残り続けます

「復権をしたらもう事故情報のことも含めて全て元に戻った」と勘違いしている人がいますが、復権は、あくまでも破産者としての扱いがなくなることであり、信用情報機関に登録された事故情報の取り扱いとは無関係であることに注意しましょう。

1-2. 復権の条件


復権の条件などについては、破産法255条・256条に規定されています。一定の事由が発生することによって復権する「当然復権」と、破産者の申立てによって復権する「申立てによる復権」の2つのパターンがあります。

基本的には、ほとんどのケースで当然復権により復権します。そのため、復権のために改めて申立てをしなければならないということは少ないです。

2. 復権の種類と期間

復権の条件には、次のものがあります。

  • 免責許可決定が確定したとき

  • 破産手続廃止決定が確定したとき

  • 個人再生手続について再生計画認可決定が確定したとき

  • 破産手続が開始してから10年が経過したとき

  • 債務の全額を返済したうえで復権を申し立てたとき

これらのうち、最後のものが「申立てによる復権」、それ以外のものが「当然復権」と呼ばれます。具体的な内容と手続きにかかる期間を解説します。

2-1. 免責許可決定の確定


破産法255条1項1号に基づく復権です。自己破産の手続きが進み免責許可決定が確定すると、当然に復権します。自己破産では、ほとんどのケースでこの免責許可決定の確定によって復権します。当然復権のケースなので、復権のための申立てをする必要もありません

復権までにかかる期間は、同時廃止や管財事件など手続きの種類によって異なります。同時廃止事件では申立てから3カ月ほど、管財事件では半年から1年ほどです。

「同時廃止」とは、破産を申し立てた人が価値のある財産を十分に有しておらず、借金の理由などにも問題がなく、かつ免責不許可事由がないことが明らかな場合にとられる手続きです。同時廃止のケースでは破産管財人が選任されず、破産管財人による各種の調査が行われません。このため、比較的短い期間で免責許可決定を得ることができます。

「管財事件」とは、破産を申し立てた人がある程度たくさん価値のある財産を有していたり、ギャンブルや浪費のためにお金を借り入れたりしたなど、複雑な事案の場合にとられる手続きです。破産管財人による各種の調査がなされるため、同時廃止事件よりも免責許可決定までの期間が長くなります。

2-2. 破産手続廃止決定の確定


破産法255条1項2号に基づく復権です。債権者全員の同意により破産手続の廃止が確定すると、申立ての必要なく当然に復権します。破産せずに借金を完済できる目途が立ったときなどに用いられることがありますが、適用されるケースはほとんどありません。

2-3. 再生計画認可の決定が確定


破産法255条1項3号に基づく復権です。破産手続きから個人再生手続きに切り替えて、再生計画認可の決定がされたときがこのケースです。

破産手続きで免責不許可となってから個人再生に切り替える場合、個人再生の手続きを終えるまでにはおおむね1年~1年半ほどかかります。このケースでは、復権までにかかる時間が比較的長くなってしまいます。

2-4. 破産手続開始決定から10年が経過


破産法255条1項4号に基づく復権です。免責許可を得られなかったケースで、破産手続開始決定から10年が経過すると当然に復権します。この復権は、詐欺破産罪で有罪判決を受けていないことが前提条件となります。

詐欺破産罪とは、自己破産に際してその債権者を害する目的で財産を隠すなど、債権者の利益や平等を侵害するような行為を行った場合に成立する犯罪です。詐欺破産罪については破産法265条に定められています。

2-5. 破産者の申立て


破産法256条1項に基づく復権です。仮に免責許可決定が得られなかったようなケースでも、債務を全額弁済するなどして債務の全部について責任を免れたときには、復権を得ることができます。

この場合、裁判所は破産者の申立てによって復権の決定をしなければならないこととされています。復権を申し立ててから裁判所が復権の決定をするまでの期間は、おおむね半年弱〜半年程度が一つの目安です。

3. 復権を確認する方法

復権をしても、そのことが通知されるわけではありません。復権を得られているのかどうか知りたい場合には、自分で確認する必要があります。

復権が得られていることを確認するには、本籍地の市区町村役場で「身分証明書」という名称の公的書類を発行してもらうという方法があります。「身分証明書」とは、本籍のある市区町村が、次の3つを証明する公的書類のことです。

  • 禁治産や準禁治産の宣告の通知を受けていないこと

  • 後見の登記の通知を受けていないこと

  • 破産宣告・破産手続開始決定の通知を受けていないこと

破産者でないことがわかる身分証明書。「破産宣告・破産手続開始決定の通知を受けていないこと」に相当する記載により復権を確認できる
破産者でないことがわかる身分証明書。「破産宣告・破産手続開始決定の通知を受けていないこと」に相当する記載により復権を確認できる

このうち、身分証明書の中に「破産宣告・破産手続開始決定の通知を受けていないこと」に相当する記載があれば、復権を得られていることを確認できます

身分証明書は、本籍地の市区町村役場で1通300円程度の手数料を支払うことで発行してもらえます。

なお、「禁治産・準禁治産」は昔の法律に基づくもので、単独での契約締結などができる能力(行為能力)を制限する制度です。「後見」は現在の法律に基づくもので、同様に行為能力を制限する制度です。これらはいずれも自己破産とは関係ありません。

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4. 自己破産の復権についての注意点

自己破産の復権に関する注意点を解説します。

4-1. 資格・職業制限の対象者以外は気にする必要がない


復権で回復されるのは、基本的には資格・職業制限です。逆に、制限の対象となる資格や職業に就いていなければ気にする必要はありません。制限の対象は限られており、制限の対象となる職業に就いていながら破産をするという人は決して多くありません。

この制限の対象となる職業のことを「制限職種」と言います。実際のところ、破産者のほとんどは資格・職業制限の影響を受けることなく免責許可決定まで手続きが進むことになります。このため、復権について難しく考える必要はないと言えるでしょう。

4-2. 信用情報と復権は関係がない


信用情報と復権は全く関係がないため、復権しても信用情報が回復するわけではありません。混同しないように注意が必要です。

信用情報機関から事故情報が削除されるのは免責許可決定(復権)からおおむね5~7年程度かかるのが一般的です。復権したから直ちに信用情報が回復したと誤解しないようにしましょう。

4-3. ほかの債務整理なら資格・職業制限を避けられる


たとえば、現在警備員や保険の外交員、行政書士などの士業として働いている場合には、そのまま自己破産をすると、復権を得るまでそれらの仕事を続けられなくなってしまいます。

これらの制限を受ける職種についていながら債務整理をしたいが、資格・職業制限は避けたいというのであれば、任意整理や個人再生を検討してみましょう。任意整理や個人再生であれば、資格・職業制限はありません

自分の状況に合った債務整理の方針決定については、弁護士に相談しながら決めていくようにしましょう。

5. 自己破産による制限や復権について弁護士に相談するメリット

自己破産による制限や復権について不安に思っている場合には、弁護士に相談してみましょう。弁護士であれば、復権なども含めた破産手続についての正確な知識に基づいて的確なアドバイスをしてくれます。

また、弁護士は、自己破産のメリット・デメリットや自己破産による制限などのリスクも踏まえたうえで、より良い将来のためのアドバイスをしてくれます。

自己破産による制限を踏まえても自己破産をしたほうがよさそうであれば自己破産を勧めてくれますし、逆に自己破産以外の債務整理の方針のほうがよいと判断した場合にはそのことを教えてくれます。このように、弁護士は最適な債務整理の方針を提案してくれます。

6. 自己破産の復権についてよくある質問

Q. 自己破産から復権まで何年かかりますか?


同時廃止事件なら3カ月ほど、管財事件でも半年から1年ほどというのが目安です。破産手続きを開始してから何年もかかるケースはほとんどありません。

Q. 自己破産後いつからローンが組める?


ローンと復権は無関係です。ローンを組めるようになるには、信用情報機関の事故情報が削除されなければなりません。事故情報が削除されるまでには、破産手続が終了してからおおむね5~7年ほどかかります。

Q. 自己破産したあと社長になれる?


自己破産したあとでも社長(代表取締役)にはなれます。ただし現に社長(代表取締役)である場合には、破産によって取締役としての地位を失うため、改めて株主総会・取締役会での選任が必要となります。

なお、復権していなくても代表取締役になることは可能です。

Q. 資格・職業に関する法律に書いてある「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」とは?


自己破産を裁判所に申し立てて、破産手続開始決定がされているものの免責許可決定を得ていないなど、現時点では復権のための条件を満たしておらずまだ復権を得ていない者のことです。

典型的には、自己破産の手続中の者がこれに該当します。

Q. 資格や職業に関する制限を受けずに借金を減額したい場合は?


資格や職業に関する制限を受けるのは自己破産だけです。制限を受けずに借金を減額したいのであれば、任意整理や個人再生という方法を選ぶことでそれが可能となります。

7. まとめ 自己破産の復権について不安があるなら弁護士に相談を

自己破産の復権とは、自己破産を申し立てることによって一定の資格・職業に就けなくなる状態から、そのような制限がない状態へと戻ることです。

もっとも、自己破産をすると就けなくなる資格・職業のなかに一般の人にとって馴染みのあるものはそれほど多くなく、多くの人が復権を意識せずに自己破産手続きを終えることができます。

「自己破産をしたいけれど自分は就職が制限される職種に就いている」「どうしても復権のことが気になる」というのであれば、弁護士に相談してみるとよいでしょう。弁護士は、自己破産を含めた債務整理に関する正確な知識に基づいて、適切な方針をアドバイスしてくれます。必要に応じて自己破産ではなく任意整理や個人再生の方針を勧めてくれることもあります。

自己破産の復権のことで不安になったら、まずは弁護士に相談しましょう。

(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

岡島賢太(弁護士)

岡島賢太(弁護士)

秋葉原あやめ法律事務所 代表弁護士
第二東京弁護士会所属、登録番号61433。債務整理の分野では、主に個人を対象とした自己破産等の案件を積極的に取り扱っており、個人消費者の経済的な立ち直りをサポートしている。また、法律トラブルで困っている方に必要な情報をわかりやすく伝える一般向け法律解説記事の執筆を得意としており、専門家と一般の方との架け橋をつくり、つなぐことをめざしている。各分野の執筆記事多数。東京大学文学部卒業。
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