目 次


朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す
債務整理に強い
弁護士・司法書士を探す
1. 債務の承認とは
借金には時効があり、一定の期間が経過すると、返済の義務をなくすことができます。ただし、時効を迎えても自動的に借金がなくなることはなく、銀行や消費者金融などの債権者(お金を貸してくれた側)に対して時効を主張する必要があります。これを、時効の援用といいます。
また、時効を迎えていたとしても、債務の承認という行為をしてしまった場合には、時効期間が更新され、時効の完成が遠のいてしまうので、注意が必要です。
債務の承認とは、債務者(お金を借りた人)が債権者に対して、借金の存在を認めることをいいます。例えば、返済の意思があることを記載した書面を送る行為や、相手から返済を迫られた際に「もう少し待ってほしい」と伝える行為などが、債務の承認に該当します。
債務の承認は、口頭、書面、メール、LINEなどでも成立します。借金の存在を認識していることを示す行為は、すべて債務の承認となります。
2. 債務の承認をするとどうなる?
2-1. 時効が更新され、時効期間がリセットされる
借金の消滅時効期間は、原則として5年です。この時効期間は、債権者が権利を行使できる時(通常は最後の返済期日)から開始します。しかし、債務の承認をすると、その時点で時効が更新され、再び5年が経過しないと、時効が完成しません。
例えば、2024年10月1日にAさんから100万円を借りたとします。約束した返済日は、2025年3月31日です。この場合、消滅時効期間は原則として5年なので、2030年の4月1日に時効が完成します。
しかし、2027年5月31日に、借金を返済するとAさんに伝えたとします(債務の承認)。そうすると、債務の承認をした翌日から再びカウントが始まり、時効の完成は2032年4月1日です。このように、債務の承認には、時効を更新し、時効期間をリセットする効力があります。
2-2. 時効後の債務の承認でも時効が更新される
時効期間が過ぎた後に債務の承認をした場合でも、その時点で時効が更新されることになります。債務の承認をすると、お金を借りた本人が時効の利益を放棄したとみなされます。時効が過ぎた後に返済を促された場合、借金の存在を認めると、時効の援用ができなくなるので注意が必要です。
3. 債務の承認の具体例
債務の承認は、以下のような行為が該当します。
3-1. 電話などで減額や支払い猶予を求める
電話などで借金の返済を促された際、「全額は返済できそうにないので、〇〇円に減額してください」「支払うつもりはありますが、もう少し待ってください」と支払いの減額や猶予を求めた場合には、債務の承認とみなされてしまいます。
口頭で伝えれば証拠が残らず、後でなかったことにできると思う人もいるかもしれませんが、債権者は電話を録音している可能性もあります。
3-2. 借金の一部を返済する
借金の一部を返済することは、債務の承認にあたります。一部でも返済すると、借金があると認めたことになるからです。
例えば、100万円の借金があり、その一部である10万円を返済したとします。この場合、残りの90万円については、時効期間がリセットされます。なお、利息だけ返済した場合も、同様に債務の承認にあたります。
3-3. 借金を認める書面に署名捺印をする
債権者から求められて、借金を認める書面に署名捺印をすることも債務の承認に該当します。このような書面のことを債務承認書と言うことがあります。
3-4. メールやLINEなどで債務を認める
メールやLINEなどで「借金の返済ですが、もう少し時間をください」などと借金の存在を認めるような文面を送った場合も、債務の承認に該当します。メールやLINEで気軽に送った文面でも、債務の承認は成立するので注意が必要です。


弁護士・司法書士をお探しなら
朝日新聞社運営「債務整理のとびら」
4. 債務の承認以外で時効が更新されるケース
債務の承認以外にも、以下のような行為で時効は更新されます。
4-1. 催告書が送られてきた
債権者から支払いを求める書面(催告書)が届いた場合には、その後6カ月間が経過するまで、時効は完成しません。債権者は、時効の完成を阻止するために、このような書面を送ってくることがあります。この6カ月間の間に、債権者が民事訴訟を起こした場合には、さらに時効が更新されることになります。
なお、催告(さいこく)と催促(さいそく)は似た言葉ですが、催告はお金を借りた人に支払いの請求をすることです。一方、催促は支払いを促したり、急かしたりする行為を指します。催促は単なるお願いなので、催告と違って法的な効果はありません。
4-2. 裁判に訴えられたり、判決が下されたりした
民事裁判で借金の請求をされた場合には、その裁判が終了するまでの間、時効の完成が一時的に先延ばしされます。そして、裁判で判決が下された場合には、その時点から新しく時効のカウントがスタートします。
4-3. 財産の差し押さえを受けた
借金を滞納していると、財産を差し押さえられることがあります。これを強制執行といいます。強制執行が行われると、時効は更新され、手続きが終了した時点から再び時効のカウントが始まります。
債権者が強制執行を途中で取り下げた場合には、時効の更新の効果は生じません。ただし、強制執行の手続き期間中、および取り下げ後6カ月間は時効の完成が猶予(一時的な先延ばし)されます。
5. 債務の承認に関するよくある質問
Q. 債務の承認は電話などの口頭でも成立する?
債務の承認は特定の方法で行うことは求められないので、電話などの口頭でも成立します。電話の際には、相手が録音していることも想定しておきましょう。
Q. 借金は時効完成まで払わずに逃げ切れる?
時効完成まで借金を払わずに逃げ切るのは、現実的には難しいでしょう。消費者金融や銀行からの借金であれば、相手は時効期間を把握しているはずです。時効が完成する前に、財産の差し押さえなどの手続きを行う可能性は高いでしょう。
Q. 借り入れ先から電話が来た場合に債務の承認をせずに話を終わらせる方法は?
借り入れ先から電話があった場合でも、借金の存在について言及しなければ、債務の承認をせずに話を終わらせることができます。例えば、「確認して折り返します。」「弁護士に相談しているので、改めてご連絡します。」などと伝えて、電話をすぐに切ることが考えられます。相手の話に付き合わず、伝えるべきことを端的に話すようにしましょう。
6. まとめ 時効の援用は弁護士・司法書士に依頼するのがおすすめ
債務の承認とは、借金の存在を認めることを指し、返済の意思を示したり、一部を返済したりなどの行為が該当します。債務の承認は、口頭、書面、メールやLINEなど、形式を問わず成立します。債務の承認をしてしまうと、借金の時効は更新されてしまうので、注意が必要です。
時効を迎えた借金を時効援用したい場合は、弁護士や司法書士に相談しましょう。時効の援用を含め、借金問題を解決するためのアドバイスが得られます。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)


朝日新聞社運営「債務整理のとびら」で
債務整理に強い弁護士・司法書士を探す