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1. 時効の援用とは
時効の援用とは、時効の完成により利益を得る者が、時効が完成したことを主張する行為を指します。時効には2種類あり、一つは時効により新たに権利を得る取得時効、もう一つは時効により義務を消滅させられる消滅時効です。
借金の返済義務を消滅させる場合に、主張するのは消滅時効になります。消滅時効の援用をするためには、まず借金の弁済期(支払うべき時期)などから一定の期間が経過している必要があります。
この一定の期間は、借入先が金融機関である場合は通常5年です。裁判所で判決が出されている場合には、判決の確定日から10年となります。なお、借金の一部を返済した場合には、時効が中断(更新)するため注意が必要です。
消滅時効の効力は自動的に生じるものではありません。消滅時効の援用(内容証明通知等による借入先への意思表示)を行う必要があります。
2. 時効の援用手続きにかかる費用と内訳
消滅時効の援用手続きにかかる費用には以下のものが挙げられます。
2-1. 内容証明郵便の費用
内容証明郵便とは、どんな内容の通知書が誰から誰に送られたかを郵便局が記録し、証明してくれるサービスです。消滅時効の援用をする場合には、この内容証明郵便で債権者(お金を貸した側)に送付をしておけば、後日、消滅時効の援用があったか否かが争いになった場合に証明できるようになります。
そのため、一般的には消滅時効の援用は内容証明郵便で行われることが多いです。郵便局の窓口を通して内容証明郵便を送付する場合の送付費用はおおよそ1400円前後です(参考:内容証明 | 日本郵便株式会社)。なお、弁護士等の専門家が内容証明通知を送付する場合には電子内容証明郵便を用いて送付することが多く、この場合はおおよそ1600円前後の送付費用がかかります。
基本料金 | 110円 (50g以内) |
---|---|
一般書留の 加算料金 | 480円 |
内容証明の 加算料金 | 480円 (2枚目以降は290円増) |
配達証明の 加算料金 | 350円 |
合計 | 1420円 |
2-2. 信用情報機関の開示手数料
信用情報機関とは、ローンやクレジットの利用履歴を管理し、金融会社にこれらの情報を提供する機能をもった組織です。金融会社からお金を借りる際の審査では、どの程度の借金があるか、過去に延滞履歴はないか、などを信用情報機関を通じて確認しています。
この信用情報機関には、CIC、JICC、JBA(KSC)の3つがあります。金融会社によって、どの信用情報機関に加盟しているかは異なります。
消滅時効の援用ができるのか不明な場合は、信用情報機関から自分の信用情報を取り寄せることも有効です。どこから借り入れをしているか、延滞日がいつかなどの情報が把握できるため、消滅時効の援用を行えそうな金融会社にあたりをつけることができます。
もっとも、消滅時効の援用を検討するケースでは、長期間、督促がなかった金融会社から10数年ぶりに突然届いた支払督促状がきっかけとなるケースも多いです。このような場合には、信用情報機関に信用情報を取り寄せる必要性は特段ありません。
信用情報機関に、自分の信用情報の開示請求をするにあたっての費用は、一つの信用情報機関につき、おおよそ500円~1800円程度です。
CIC | インターネット開示:500円 郵送開示:1500円 |
---|---|
JICC | インターネット開示:1000円 郵送開示:1300円 |
JBA(KSC) | インターネット開示:1,000円 郵送開示:1,679円~1,800円 |
2-3. 司法書士や弁護士ら専門家への依頼費用
時効の援用手続きは、専門家に依頼するのが一般的です。各専門家によって、依頼できる内容や費用には違いがあります。まずは専門家ごとに依頼できる業務の概要を示します。
【行政書士】
内容証明通知の文案の作成および本人名義での通知書の貸金業者などへの送付
※行政書士は依頼者の代理人として通知を送付できないため、内容証明通知の送り主は依頼者本人となります。
【司法書士】
内容証明通知の代理人としての作成および貸金業者などへの送付
※司法書士は借金の元本額が140万円以下の場合に、依頼者の代理人として内容証明通知の送付や貸金業者などとの交渉が行えます。
【弁護士】
内容証明通知の代理人としての作成および貸金業者などへの送付
※弁護士は借金の元本額が140万円を超える場合でも、依頼者の代理人として内容証明通知の送付や貸金業者などとの交渉が行えます。
3. 時効の援用を専門家に依頼する際の費用
消滅時効の援用を依頼した場合の専門家ごとの費用相場を記載します。なお、下記の費用は内容証明通知を金融会社等に送り、スムーズに消滅時効の援用が成立するケースを想定したものです。
行政書士 | 司法書士 | 弁護士 | |
---|---|---|---|
費用相場 | 1~3万円程度 | 5~8万円 | 5万円~ |
代理人になれるか | ✕ | 〇 (借金が 140万円以下の場合) | 〇 |
内容証明の送付 送付を含む) | 〇 | 〇 | 〇 |
金融会社との 交渉 | ✕ | 〇 (借金が 140万円以下の場合) | 〇 |
裁判の対応 | ✕ | 〇 (借金が 140万円以下の場合) | 〇 |
依頼費用は個々の事務所ごとに決められているため、依頼する特定の専門家に費用については事前によく確認することが大切です。なお、相手方が消滅時効の成立を争って訴訟を起こした場合の対応費用は別途となることが通常です。
3-1. 行政書士:1~3万円
行政書士に依頼する場合の費用相場は、おおよそ1~3万円程度です。基本的には、依頼できる範囲が限られるほど費用は安いため、3業種の中では行政書士の費用が最も低額になる傾向があります。ただし、行政書士が行える業務は書類作成のみで、貸金業者など債権者との交渉などはできません。
3-2. 司法書士:5~8万円
司法書士に依頼する場合の費用相場は、おおよそ5~8万円程度です。司法書士は借金の元本が140万円以内に限って代理人となることができます。代理人を立てた場合は、債権者との交渉などをすべて任せることができます。
3-3. 弁護士:5万円~|成果報酬が別途加算される場合も
弁護士に依頼する場合の費用相場も、おおよそ5~8万円程度です。中には、左記の費用に加えて、成功報酬金として、消滅した借金額の10%程度が加算される場合もあります。報酬体系については、依頼前によく確認しておきましょう。弁護士は、借金の元本が140万円以上の場合も代理人となれます。
4. 時効の援用手続きを安く抑える方法
4-1. 自分で手続きする
自分で時効援用の手続きをするのが、費用的には最も安く済みますが、リスクもあります。
自分で消滅時効の援用を行う場合には、インターネットでやり方を調べたり、後述の無料相談を利用して助言を受ける方法などが考えられます。
4-2. 複数の事務所を比較して安いところを選ぶ
同じ専門家であっても、事務所によって費用は大きく異なります。そのため、複数の事務所から見積もりを取って比較し、リーズナブルな事務所に依頼することで費用を抑えられます。
4-3. 追加の報酬が発生しない事務所を選ぶ
事務所によっては別途成功報酬金の支払いが必要となる料金体系の事務所もあります。一般的には、成功報酬金が加わると専門家の依頼費用が高額となる傾向があるため、こうした追加の報酬が発生しない事務所を選ぶことで費用を抑えることができます。
4-4. 法テラスの民事法律扶助を利用する
収入や資産などの一定の要件を満たす場合には、法テラスの民事法律扶助を利用して、専門家の依頼費用を比較的低額に抑えることができます。ただし、法テラスで依頼できる専門家は司法書士または弁護士となり、行政書士は含まれません。
法テラスでかかる費用としては、債権者1社の場合には、おおよそ4万3000円ほどです(令和7年2月現在)。なお、依頼できるのは法テラスと契約をしている弁護士か司法書士のみとなります。


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5. 時効の援用を自分で行うリスク
消滅時効の援用を自分で行う際は、以下のリスクが考えられます。
5-1. 時効成立前に手続きをしてしまい、時効が成立しない
消滅時効の援用を主張するには、一定期間の経過が必要です。しかし、自分で手続きをすると、この要件を満たしていないのに、通知を債権者に送ってしまうことがあります。場合によっては、このような通知を受領したことがきっかけで、債権者が時効を成立させないように対策を取ってくることもないとは言えません。
5-2. 時効援用通知書に不備が生じやすい
消滅時効の通知を送る際は、どの債務についての通知なのかを特定し、「一定期間が経過したため、消滅時効を援用する」と正しく記載する必要があります。
そのため、自分で通知書を作成する場合には、これらの法律的な要素を適切に含んでいなかったり、表現に不正確な記載があったりなどの不備が生じることも考えられます。不備の内容によっては消滅時効の援用の効果に疑義が生じることも考えられます。
5-3. 債権者からの反論への対抗が難しい
消滅時効の援用通知を債権者に送付できたとしても、事案によっては債権者から消滅時効が成立しないと反論される可能性もあります。
専門家が代理人になっている場合は、こうした反論が法的に妥当か否かを判断し、適切な対応を取れる可能性が高いと言えます。しかし、自分で対応する場合には、法的に適切な対応や反論などを行うのが難しいでしょう。
5-4. 債務を承認してしまい、時効起算日がリセットされる
債権者と連絡を取り合う際に、一定の行為をすると消滅時効の援用ができなくなる恐れがあります。例えば、借金の一部を返済するなどの行為(債務の承認)です。このような場合には、消滅時効の期間が、一からやり直しになってしまう可能性があるので注意が必要です。
6. 費用がかかっても時効の援用を専門家に依頼すべき理由
費用がかかっても専門家に依頼するメリットには以下のようなものが挙げられます。
6-1. 手続きのミスを防げる
専門家であれば、消滅時効の援用ができるか否かの判断や、適切な内容証明の送付などを正しく行うことができます。手続き上でミスが発生すると、時効援用ができない可能性もあるため、専門家に依頼するのが安心です。
6-2. 債権者との交渉やトラブル対応がスムーズ
時効援用の手続きでは、債権者と交渉が必要になることもあります。しかし、司法書士または弁護士に依頼する場合には、代理人として債権者と直接やり取りしてくれるため、依頼者自身が債権者と関わる煩わしさから解放される点もメリットといえます。
6-3. 時間や手間を省くことができる
自分で手続きを行う場合には、法律の知識や書面の作成方法などを文献やインターネットの情報から得るなどの労力が必要となります。専門家は時効援用に関する知識や経験をすでに持っているため、スムーズに手続きを進めていくことができます。
6-4. 債権者に訴えられても対応できる
消滅時効の援用の主張に対し、債権者がこれを争い、裁判を起こしてくる可能性もあります。このような場合には、弁護士または司法書士であれば依頼者の代理人として裁判に対応することが可能です。なお、司法書士が対応できる訴訟は簡易裁判所での訴訟に限ります。
ただし、訴訟対応が必要となる場合には、別途専門家への費用が発生するのが一般的です。専門家に依頼する際には、訴訟対応の費用についても確認しておきましょう。
7. 時効の援用の費用に関するよくある質問
Q. 時効の援用を依頼したいが費用が払えない場合はどうしたらいい?
法テラスの利用や、無料の法律相談窓口を活用して自分で手続きをする、などの対応が考えられます。
Q. 時効の援用について無料で相談できるところは?
消滅時効の援用手続きに関して無料で相談できるところとしては、法テラス、各自治体、弁護士会、司法書士会、行政書士会、国民生活センター、消費者センターが挙げられます。また、各専門家の事務所によっては、時効援用の相談を初回無料としているところもあります。
Q. 時効の援用手続きに失敗したらどうなる?
消滅時効の援用手続きに不備があった場合、法的に消滅時効の効力が生じないこととなります。手続きをやり直せば済むような不備であれば、あらためて専門家に依頼することや助言を受けるなどの対応を検討した方がよいでしょう。
一方で、消滅時効の援用に不備があったにとどまらず、時効の効力が生じる前に借金の一部を返済した場合などには、消滅時効の主張ができなくなります。こうした重大なミスを防ぐためにも、時効援用の手続きは専門家に依頼した方が安心です。
8. まとめ 時効援用は費用がかかっても専門家に依頼した方がよい
一定の期間が経過している場合には、時効の援用を行うことで、借金を返済する義務がなくなります。しかし、手続きをするうえでは、いくつかの注意点があり、不備があると時効援用の効果を得られなくなる可能性もあります。
そのため、費用はかかりますが、時効援用の手続きは専門家に依頼するのが安心です。専門家によって、依頼できる業務範囲や費用が異なるため、自分の状況に合わせて適切な専門家に相談しましょう。
(記事は2025年4月1日時点の情報に基づいています)


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