会社が潰れたら従業員はどうなる? 法人破産の給料や退職金を解説

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会社が破産した場合、経営者は従業員に対してどう対応すべきなのでしょうか(c)Getty Images
会社が破産する場合、事業停止を行うとともに、従業員を解雇します。従業員を解雇する場合、企業側は解雇日の30日以上前に解雇する旨を予告するか、予告をしない場合は30日分の平均賃金に相当する「解雇予告手当」を従業員に支払う必要があります。 実務上は業務停止当日に従業員に即時解雇を伝えるとともに、未払賃金や解雇予告手当を支払う運用が一般的ですが、会社の資金繰り次第では解雇予告手当が支払えない状況もあり得ます。 解雇された従業員が未払い賃金を抱えている場合は、独立行政法人労働者健康安全機構による「未払賃金立替制度」を利用できるものの、立替払いされるのは給与の一部であり、支払いまでに相当な時間もかかります。 従業員保護の観点から考えると、経営者が破産を考えている場合は、労働債権を支払える余裕があるうちに破産手続きを開始できるよう、弁護士への早めの相談がお勧めです。 法人が破産した場合の解雇手続きや未払賃金の取り扱いなど、従業員に関する対応について、弁護士が解説します。

目 次

1. 法人破産すると従業員は解雇される

2. 法人破産手続きの流れ

3. 法人破産における解雇手続き

3-1. 通知の時期

3-2. 解雇予告

4. 未払賃金や退職金の取扱い

4-1. 未払賃金

4-2. 退職金

4-3. 解雇予告手当

5. 未払賃金立替払制度とは

6. 法人破産による解雇で必要となる保険や税金などの手続き

6-1. 雇用保険

6-2. 社会保険

6-3. 住民税

6-4. 源泉徴収票の交付

7. 会社が潰れる場合、従業員説明会で説明すべきことは?

8. 法人破産について弁護士へ相談するメリット

9. 会社が潰れた場合に関してよくある質問

10. まとめ 法人破産を考えている経営者は弁護士に相談を
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1. 法人破産すると従業員は解雇される

法人の負債がかさみ、債務超過や支払い不能に陥って破産申立てをする場合、基本的には最初に事業停止を行います。例外はあるものの、以降は事業を継続しないため、従業員を雇用し続ける必要性はなくなります。破産申立てに向けては会社の財産を保全する必要がある一方、雇用契約を継続したままでは未払賃金が増えるため、事業停止後なるべく早期に従業員を解雇するのが一般的です。

この場合は会社都合での解雇となり、会社はハローワークから従業員の「離職票」を発行してもらい、それを従業員に交付します。従業員はこの「離職票」をハローワークに提出し、所定の手続きをすれば、失業手当を受給できるようになります

なお、破産申立ての準備のための事業停止による解雇は、不当解雇とはなりません。

2. 法人破産手続きの流れ

法人破産手続きは、主に以下のような流れで進めていきます。

法人破産の流れを図解。会社が従業員を解雇する場合、解雇日の30日以上前に解雇する旨を予告するか、その予告をしないときは30日分の平均賃金を従業員に支払う必要がある。
法人破産の流れを図解。会社が従業員を解雇する場合、解雇日の30日以上前に解雇する旨を予告するか、その予告をしないときは30日分の平均賃金を従業員に支払う必要がある。

法人破産では、事業停止後、従業員の解雇を含む労務関係の整理のみならず、受任通知の送付をはじめとする金融機関など債権者への対応、事業用賃借物件の処理、財産保全、売掛金の回収などを行います。その後、自己破産の申立書類を作成し、会社本店の所在地の地方裁判所に自己破産の申立てをします。

裁判所は、債務超過に陥っているかなど、法律上の要件を確認したうえで破産手続開始決定を行います。

破産手続開始決定の際、裁判所によって破産管財人の弁護士が選任され、破産管財人がすべての財産の管理処分権を持つようになります。破産管財人は、会社が持つ不動産や預貯金、株式などの財産を現金化する「換価処分」の手続きなどをしたうえで、債権者集会において業務の状況を債権者に報告します。

債権者に支払える財産が確保できた場合には、債権額に応じて平等に分配(配当)を行い、法人破産の手続きは終了します。終了後、法人は消滅するのが原則で、破産手続開始決定から終了までの期間は6カ月から1年程度が平均的です。

3. 法人破産における解雇手続き

法人破産における解雇手続きがどのように進むかについて説明します。

3-1. 通知の時期


破産の申立てを行う際には、事業停止を行うとともに弁護士や司法書士に債務整理を依頼し、依頼された弁護士や司法書士が「受任通知」を発送して事業停止した旨を債権者に知らせます。「受任通知」は、弁護士や司法書士などの専門家が代理人に選任された旨を通知する法的文書です。対外的にはこの日が事業停止日となり、一般的には「Xデー」と呼ばれます。

従業員に対しては、事業停止や解雇になる旨をなるべく早めに伝えることで、次の仕事への準備期間をより長く確保できるでしょう。しかし、Xデーより前に従業員を通じて事業停止する見込みである旨が拡散されると、取引先に混乱をもたらしたり、ほかの債権者より多く債権を回収するために弁護士の介入前に会社の財産を奪い取ろうとする債権者が現れたりする可能性があります。

そのため、実務的にはXデー当日に従業員に集まってもらい、会社代表者と弁護士から事業停止と当日付で解雇する旨を従業員に伝えるケースが多いです。

3-2. 解雇予告


会社が従業員を解雇する場合、解雇日の30日以上前に解雇する旨を予告するか、その予告をしないときは30日分の平均賃金に相当する「解雇予告手当」を従業員に支払う必要があります。実務上は、Xデー当日に従業員に「本日をもって解雇する」と言い渡すとともに、未払賃金と解雇予告手当を支払う運用が多いです。

もっとも、会社の資金繰りによっては、解雇予告手当が支払えない状況もあり得ます。解雇予告手当が支払われずに即時解雇がなされた場合、判例は「即時解雇は無効であるが、通知後に30日の期間が経過すれば通常解雇の効力が生ずる」としています。

一方で、事業停止による即時解雇の場合、従事すべき事業が停止しているため、あえて解雇の効力を争うケースは基本的にありません。解雇予告手当が支払われずに行われた即時解雇についても、有効なものとして破産手続きが進められます。

4. 未払賃金や退職金の取扱い

賃金や退職金の未払いが生じた場合は、債権の種類によって弁済できる優先順位が決まっています。優先順位は以下になります。

  1. 財団債権

  2. 優先的破産債権

  3. 破産債権

  4. 劣後的破産債権

【財団債権】
財団債権とは、破産手続きによらないで破産財団から随時弁済を受けられる債権を言います。主なものとしては、破産管財人の報酬や公租公課、未払賃金の一部があります。

【優先的破産債権】
優先的破産債権とは、破産手続き内で破産債権より優先的に弁済を受けられる債権を言います。主なものとしては、解雇予告手当や財団債権にならない未払賃金、退職金があります。

【破産債権】
破産債権とは、財団債権、優先的破産債権、劣後的破産債権に含まれない、破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権を指します。主なものとしては、貸金返還請求権や売掛金請求権があります。

【劣後的破産債権】
劣後的破産債権とは、破産債権よりも後回しでしか弁済を受けられない債権を指します。主なものとしては、破産手続開始後の利息請求権や、破産手続開始後の不履行による損害賠償または違約金の請求権があります。

各種の労働債権が上記4種類のどれに該当するのか、詳しく見ていきます。

4-1. 未払賃金


破産手続開始前3カ月間の給料については財団債権、それ以前の給料については優先的破産債権となります。

4-2. 退職金


退職金のうち、退職前3カ月間の給料に相当する額は財団債権となります。このときの「給料」には賞与も含まれます。財団債権にならなかった部分については、優先的破産債権となります。

4-3. 解雇予告手当


即時解雇の際に解雇予告手当が支払われなかった場合、未払の解雇予告手当は優先的破産債権になります。

ここで注意したいのは、最も優先度の高い財団債権に該当する労働債権は、破産手続開始決定前3カ月間の給料と、退職前3カ月間の給料に相当する額の退職金に限られる点です。従業員の給料を支払えないまま破産すると、労働債権が全額弁済できない可能性があります。従業員保護の観点からすれば、会社経営者は、労働債権を支払える余裕があるうちに弁護士に相談するのが望ましいと言えます。

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5. 未払賃金立替払制度とは

未払賃金立替払制度とは、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づく制度で、給料や退職金が支払われないまま退職した従業員に対し、独立行政法人労働者健康安全機構が、事業主に代わって一部の給与を立替払いするものです。

この制度では、退職日の6カ月前から立替払請求日までに支払期日が到来している未払賃金が2万円以上ある従業員に対し、未払い賃金の総額の8割が支払われます。ただし、立替払いされる賃金に解雇予告手当は含まれず、未払賃金の総額には退職時の年齢によって以下のように上限が定められています。

【退職日の年齢と立替払いの限度額】

退職日の年齢

未払賃金総額の限度額

立替払いの限度額(※限度額の8割)

30歳未満

110万円

88万円

30歳~44歳

220万円

176万円

45歳以上

370万円

296万円

実際に立替払いを請求できるのは破産手続開始後であり、労働者健康安全機構による審査もあるため、事業停止から支払までに相当な期間がかかる点には注意が必要です。

未払賃金がある状態で事業停止せざるを得ない場合、雇い主は従業員を解雇する際に未払賃金立替払制度について説明する必要があります。

6. 法人破産による解雇で必要となる保険や税金などの手続き

従業員関係においては、ほかにも以下の手続きを踏む必要があります。

6-1. 雇用保険


事業者は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出する必要があります。その後、ハローワークから発行された離職票を従業員に交付します。従業員は、離職票をハローワークに提出すると失業手当を受け取れるようになります。

なお、破産による解雇の場合、解雇理由を記載する欄は「会社都合」としてください。会社都合の退職であれば、従業員は失業手当を早期かつ有利に受給できます。

6-2. 社会保険


従業員は、解雇によって健康保険と厚生年金保険の被保険者資格を失います。解雇時に会社の健康保険証はすべて回収し、従業員が使えないようにします。従業員の家族の保険証も忘れずに回収します。

また、年金事務所に対して「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」と「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出します。

従業員としては、解雇後の社会保険について次の選択肢が考えられます。

  1. 国民健康保険に切り替える

  2. 社会保険の任意継続を行う

  3. 家族が加入している健康保険の被扶養者になる

6-3. 住民税


特別徴収により給料から差し引いている従業員の住民税は、事業停止後に従業員自らが市区町村に納付する普通徴収に切り替える必要があります。各市区町村に「給与所得者異動届」を提出します。

6-4. 源泉徴収票の交付


従業員が確定申告をする場合や、再就職先で年末調整をする場合、破産する会社の源泉徴収票が必要になります。そのため、解雇と同時、または解雇後すみやかに、源泉徴収票を従業員に交付できるようにします。

7. 会社が潰れる場合、従業員説明会で説明すべきことは?

会社が倒産する事実を従業員に伝える際には、最初に破産に至った経緯を説明し、従業員に対する謝罪や感謝の言葉を述べます。従業員からすれば、その時点で支払われていない給料や退職金がもらえるのかが一番気になっているはずです。未払賃金と解雇予告手当を支払える場合は、説明の前にあらかじめ金額を計算し、明細を作成するとともに現金で用意しておきます

そして、従業員への解雇の説明の場で支払うようにします。もし未払賃金や解雇予告手当を支払えない場合は、支払のめどについて説明をします。雇用保険や社会保険の手続きについてもこの場で説明します。

従業員は突然のことで驚くケースが多いため、説明内容を簡単にまとめた文書を用意し、説明時に配布しておくのが望ましいです。説明会に出席できない従業員に対しては、郵送して説明する方法もあります。

8. 法人破産について弁護士へ相談するメリット

法人破産は、債権者対応、従業員対応、事業用賃借物件の明け渡し、売掛金の回収など、事業停止という緊急事態下において、特殊な対応を行う必要があります。特に従業員対応については、いつ従業員に伝えるか、いつ解雇をするかなど、資金繰りとも関連して難しい判断を迫られます。また、従業員から非難を受ける可能性もあります。

弁護士に依頼すれば、従業員対応について適切なアドバイスを受けながら、法人破産の申立てができます説明会で従業員からの追及があったとしても、弁護士が適切に対応してくれます

そもそも、法人破産は個人破産と比べて関係者が多く、手続きが複雑になります。経営者が自分で破産を申し立てるのはほぼ不可能と言えます。早期に弁護士に相談すれば、従業員にも影響の少ない法人破産の申立てができます。

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9. 会社が潰れた場合に関してよくある質問

Q. 会社が潰れた場合、従業員はどうすればいい?


会社から交付される離職票をハローワークに提出すれば、失業手当の給付を受けられます。また、未払賃金や退職金の一部については、破産手続開始後に未払賃金立替払制度によって立替払いを受けられます。

Q. 法人破産したら自己都合退職ではなく会社都合退職になる?


法人破産の場合は、会社都合退職になります。会社から離職票の交付を受け、ハローワークに提出すれば、早期かつ有利に失業手当を受給できます。

Q. 会社をたたむと、残ったお金は誰のものになる?


破産法上の優先順位に従い、債権額に応じて債権者に分配されます。具体的な優先順位は以下のとおりです。

①財団債権
②優先的破産債権
③破産債権
④劣後的破産債権

Q. 会社が潰れたら失業保険でいくらもらえる?


具体的な金額や受給期間は年齢や勤務期間によって異なるものの、給与の5割から8割程度になるのが一般的です。詳しい計算方法については最寄りのハローワークで確認することができます。

Q. 会社が潰れても退職金はもらえる? 離職票はどうなる? 残っている有給休暇は?


退職金については、退職前3カ月間の給料に相当する額が「財団債権」となり、財団債権にならなかった部分は「優先的破産債権」となります。そのため、通常の貸金債権などよりは優先的に支払われます。

会社が財団債権すら支払えない状況では、退職金の支払いは受けられません。ただし、その場合でも、破産手続開始後に未払賃金立替払制度を利用すれば、未払賃金および退職金の一部の立替払いを受けられます。

離職票は、破産した会社から交付されます。詳しくは、法人破産を受任した弁護士に問い合わせてください。未消化分の有給については、原則として消滅します。

Q. 法人破産するのに解雇に応じない従業員がいたらどうなる?


事業を続けられない以上、最終的には従業員全員を解雇せざるを得ません。

法人破産時に解雇予告手当を支払わずに解雇したとしても、解雇は有効とみなされますので、会社としては従業員の意思にかかわらず、有効に解雇されたものと取り扱われます。

10. まとめ 法人破産を考えている経営者は弁護士に相談を

法人が破産申立てをし、従業員を解雇する場合は、解雇日の30日以上前に解雇する旨を予告するか、予告をしない場合は30日分の平均賃金を従業員に支払う必要があります。実務上は、事業停止をして弁護士が「受任通知」を発送し、債権者に事業停止した旨を伝えた当日に従業員に解雇を通達し、未払賃金と解雇予告手当を支払う運用が一般的です。

ただし、会社の資金繰りによっては、解雇予告手当を支払えないまま破産する場合もあります。賃金や退職金などの労働債権を全額弁済できないケースもあり得るため、従業員保護の観点からすれば、労働債権を支払える余裕があるうちに弁護士に相談する必要があります。

また、法人破産では、従業員関係で対応しなければならない事項が数多くあります。弁護士に早期に相談や依頼をすれば、従業員への影響を少しでも抑えられるように、適切なアドバイスを受けながら破産申立てを進められるでしょう。

法人破産を考えている経営者は、弁護士への早めの相談をお勧めします。

(記事は2026年4月1日時点の情報にもとづいています)

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この記事を書いた人

近江創(弁護士)

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弁護士法人親和法律事務所 大阪事務所 弁護士
秋田県出身。大阪弁護士会所属。登録番号65171。京都大学法学部、京都大学法科大学院卒業。個人・法人の自己破産申立てなどの債務整理事件や一般民事事件、消費者事件に注力している。債務整理の際は、依頼者の現状を把握したうえで、どうすれば真の生活再建をめざせるかについて、一緒に考えることを大事にしている。趣味は国内旅行、御朱印巡り。
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