債務整理にも“テックの力”を 「紙文化から脱却」 広がるDX化の可能性

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郵送やFAXでのやり取りが中心だった債務整理業務が、DX化により大幅な効率化が期待されています(c)Getty Images
借金問題の解決策の一つである債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)は、借金に悩む多くの人たちによって活用されています。しかし、債務整理の現場では、郵送やFAX、電話といったアナログなやり取りが主流で、膨大な書類の送受信や確認作業が弁護士・司法書士、金融機関双方に重い負担となっています。 こうしたアナログな債務整理の業務をテックの力で効率化しようという動きが出始めています。かつて法律事務所で債務整理業務に従事していた経験を持つライターが、債務整理のDX化について取材しました。

目 次

1. 債務整理支援のデジタルプラットフォームが登場

2. Agent HubによるDX化のポイント

3. DX化による債務者への恩恵

4. 債務整理業務に広がるDX化の波

5. テックがもたらす債務整理の未来
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1. 債務整理支援のデジタルプラットフォームが登場

弁護士や司法書士が債務者(お金を借りた人)から債務整理の依頼を受けると、消費者金融や銀行などの債権者(お金を貸した側)に対し、依頼を受任した旨を書類で通知しています。この「受任通知」と呼ばれる書類によって、債務者への直接的な催促が停止され、以降のやりとりは専門家を通して行われるようになります。

ただ、法律事務所と債権者である金融機関とのやりとりは、電話やFAX、郵送といった方法で行われており、現場では膨大な書類の郵送や確認作業負担が発生しています。書面の送付先やFAX番号の誤りといったヒューマンエラーが、業務効率を著しく低下させています。

従来の債務整理手続きの流れを図解。金融機関とのやり取りは紙の文章でのやり取りが基本となる(株式会社アイティフォー提供)
従来の債務整理手続きの流れを図解。金融機関とのやり取りは紙の文章でのやり取りが基本となる(株式会社アイティフォー提供)

このアナログな状況を変えようと、2025年1月に債務整理業務の効率化を支援するプラットフォーム「Agent Hub(エージェント・ハブ)」がリリースされました。開発したのは、独立系SIerである株式会社アイティフォーです。

「Agent Hub」では、受任通知や債権届、取引履歴などの両者のやり取りをオンライン上で一元化し、進捗や履歴を可視化できる仕組みになっています。

「債務整理のやり取りはいまだに紙やFAXが中心で、案件の進行状況を、法律事務所と債権者で共有するのに時間と労力がかかっていました。Agent Hubはこうしたアナログなプロセスをデジタル化し、書類提出の標準化や情報共有を可能にします」

「Agent Hub」の開発に携わった事業推進部部長の榎本顕介さんは、そう説明します。

法律事務所側が受任内容をデータとして登録すると、登録済みの金融機関に自動で通知が送られます。金融機関は債権届や取引履歴をプラットフォーム上にアップロードできます。「郵送日数や仕分け作業の負担が減るだけでなく、事務作業の自動化によりヒューマンエラーの防止になります」と榎本さん。

案件ごとの対応方針やステータスは画面上で確認でき、未対応案件の見落とし防止や事務処理の透明性向上につながります。やり取りは案件単位で履歴管理され、あとからの確認や証跡の確保も容易になるといいます。

Agent Hub導入後の債務整理手続きの流れを図解。金融機関とのやり取りはデジタルでのやり取りが基本となる(株式会社アイティフォー提供)
Agent Hub導入後の債務整理手続きの流れを図解。金融機関とのやり取りはデジタルでのやり取りが基本となる(株式会社アイティフォー提供)

2. Agent HubによるDX化のポイント

「Agent Hub」は、紙やFAXに依存してきた債務整理のやり取りをオンライン化し、現場の非効率やリスクを複数の機能で解消するために開発されました。榎本さんによると、これらの機能は「実際に法律事務所から寄せられた課題や要望を反映したもの」だといいます。

【手続きの遅延・誤送付のリスク削減】
関連書類をAgent Hub内で送受信できるため、郵送やFAX特有の到着遅れや誤送付のリスクを減らします。「とくに複数の債権者への同時送付や、短期間での大量処理が必要な場面で効果を発揮します」と榎本さん。

【情報の一元管理と迅速な検索】
受任通知や債権届などの関連書類は、Agent Hubを通じてPDF形式などで電子的にやり取りされます。これにより、案件ごとに必要な情報をまとめて確認しやすくなり、業務の整理や処理スピードが向上します。

また、やり取りされた書類を事務所内の管理システムと連携させることで、過去の取引履歴などの検索も容易になり、対応の正確性と効率が大きく高まることが期待されます。

【担当者間の連携強化】
進捗状況や対応方針をリアルタイムで共有できるため、引き継ぎの際に情報が食い違うリスクを減らせます。とくに複数の担当者が関わる大型案件や、債権者が多い案件では、この共有機能が業務の正確性を大きく高めます。

さらに、メッセージ機能を活用すれば、確認事項や補足説明を案件単位で残すことができ、やり取りの履歴が自動的に蓄積されます。これにより、過去の経緯をあとから振り返ることが容易になり、新任担当者へのスムーズな引き継ぎも可能です。

【作業負担の軽減と精度向上】
書類形式や送付方法を標準化することで、仕分けや確認にかかる手間を大幅に削減できます。「これまで単純作業に費やしていた時間を、法的判断や和解交渉などの専門的業務に充てられるようになり、業務全体の質の向上につながります」と榎本さんは言います。

3. DX化による債務者への恩恵

債務整理のDX化は、弁護士・司法書士や金融機関の業務効率を高めるだけでなく、最終的には債務者にも多くの恩恵をもたらします。

「オンラインでの書類提出や進捗共有が可能になることで、郵送やFAXに伴う時間的ロスが大幅に減り、受任通知の送付から債権者との交渉開始までの期間が短縮されます。これにより、解決までの道のりが早まり、債務者が抱える精神的負担を軽減できます」と、榎本さんはDX化による債務者への恩恵について話します。

さらに、事務作業の負担軽減によって、弁護士や司法書士は法的判断や交渉戦略の検討といった専門業務により多くの時間を割けるようになります。結果として、債務者の状況や希望に合わせたきめ細かな提案やサポートを受けやすくなり、選択できる解決策の幅も広がります。

このように、債務整理のDX化は業務の裏側だけでなく、債務者が安心して手続きを進められる環境づくりにもつながる可能性があります。

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4. 債務整理業務に広がるDX化の波

債務整理の分野では、「Agent Hub」のようなプラットフォーム以外にも、さまざまな形でデジタル化の取り組みが広がっています。近年は、法律事務所や司法書士事務所でオンライン相談や電子契約を取り入れ、手続きの利便性を高める動きが目立ちます。

たとえば、LINEやWebフォームを活用したAIチャットボットにより、債務整理の相談に24時間自動で応答するサービスが登場しています。利用者はスマートフォンから状況を入力するだけで、基本的なアドバイスや面談予約につなげることができ、より気軽に相談を始められる環境が整いつつあります。

また、法制度全体としても、民事裁判手続のIT化が進展しています。改正民事訴訟法により、インターネットを使った申立てや資料の電子提出、送達のオンライン化などが可能になる仕組みが整備されました。破産・再生といった倒産手続を含む民事手続についても、今後はインターネットを活用して効率化を進める方向性が示されています。将来的には、任意整理を含むすべての債務整理手続きでIT化の流れが広がっていくことが期待されています。

このように、債務整理の現場では相談受付から契約、裁判手続きに至るまで、各工程でDX化の波が確実に広がっています。今後はこれらの個別サービスが相互に連携し、よりシームレスで利用者に優しい債務整理プロセスが構築されていくことが期待されます。

5. テックがもたらす債務整理の未来

「Agent Hubは現在、受任通知から債権届の受領までを主な対象としていますが、今後は機能をさらに拡張し、債務整理のそれぞれのプロセスをより密接に連携させる方向を目指しています。交渉や契約、裁判所への申立てなど、これまで別々に行われてきた作業を一つのプラットフォーム上で扱えるようになれば、事務作業の負担軽減や情報の一元管理が一層進みます」と榎本さん。

「Agent Hub」のようなプラットフォームと裁判所とのオンライン連携が実現すれば、自己破産や個人再生といった法的手続きのデジタル化が進み、弁護士・司法書士は業務フローを簡略化できるでしょう。

さらに、AIとの連携により、案件の優先度や進行状況を自動判定し、各プロセスでの最適な処理を提案できる可能性もあります。これにより、人の判断が必要な業務と自動化できる業務が明確になり、業務効率の向上とサービス品質の維持を同時に実現できます。

こうしたプラットフォームの普及によって書類形式や手続きの流れが統一され、情報共有の基盤が確立すれば、債務整理業務の質とスピードは飛躍的に向上し、業界全体の水準を大きく引き上げる未来が見えてきます。

テクノロジーの活用は、単なる業務改善にとどまらず、債務者がより安心して解決まで進められる仕組みづくりへと発展していくと考えられます。

(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)

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この記事を書いた人

千葉 大隆(行政書士資格保有・編集者・ライター)

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行政書士資格保有・編集者・ライター
1988年東京都生まれ。大学在学中から司法試験を志し、予備試験短答式試験に合格。行政書士・宅地建物取引士の資格を有し、大手法律事務所でパラリーガルとして勤務していた。「わかりにくい法律を、もっと身近に」をモットーに、相続・不動産・借金問題など多様な法律分野の執筆・編集に携わる。専門的な正確性と、読みやすく親しみやすい表現を両立させることを心がけている。多趣味で、最近は家族と過ごすキャンプ時間を何より楽しみにしている。
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