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1. 連帯保証人とは?
連帯保証人とは、主債務者(お金を借りた本人)が、借金を返せなくなったり、返済が遅れたりしたときなどに、お金を借りた本人に代わって返済の義務を負う人です。
1-1. 連帯保証人が必要となるケース
連帯保証人は、債権者(お金を貸す側)のために要求されるものです。
お金を借りた本人からの支払いが滞った場合などに備えて、お金を貸す側は借りる人に対し、連帯保証人を用意するよう要請します。
たとえば、連帯保証人が必要となるのは主に次のような場合です。
家の賃貸借契約を締結するとき
事業用の資金を借り入れるとき(会社の借り入れに伴い、代表者が連帯保証人に)
連帯保証型の住宅ローンを組むとき
奨学金を借り入れるとき
入院するとき
老人ホームなどの施設に入所するとき
違法業者(いわゆるヤミ金)からお金を借りるとき
連帯保証人になるかどうかは、本人の自由な意思で決めることができるので、自分がなりたくなければなる必要はありません。しかし、その場合、お金を借りる人が契約を進めることができない事態に陥る可能性があります。
1-2. 連帯保証人になれる人、なれない人
連帯保証人は、貸したお金を回収できないといった事態を防ぐために設けられているため、十分な返済能力があることが必要です。そのため、お金を貸す側は連帯保証人になろうとする人に対して、返済能力があるか審査します。
審査されるのは次のような点です。
【収入】
職種や勤続年数、年収などから、継続して安定した収入があると判断されると、審査に通りやすくなります。反対に、無職者や資産に乏しい定年退職者は、連帯保証人になることは困難です。
【資産】
保有資産、特に預貯金などの流動資産が多い人は、返済能力に余裕があると判断され、審査に通りやすくなります。
【年齢】
高齢の人は連帯保証人になりにくく、若年の働き盛り世代ほど審査に通りやすい傾向があります。
【関係性】
賃貸借契約や奨学金などでは、2親等から3親等以内など、一定の親族関係にある人しか連帯保証人になれない場合があります。
【居住地】
日本国外に居住していると取り立てが困難なことが多いため、連帯保証人として認められにくくなります。同様に、何らかの理由で電話連絡が取れないような人も連帯保証人として認められることはほとんどありません。
【ほかの借金や滞納歴、債務整理歴】
ほかに借金が複数あったり、借金の金額が大きかったりすると、審査に通りにくくなります。また、過去に滞納歴があったり、破産などの債務整理を行った経歴があったりすると、審査が厳しくなる要因となります。
1-3. 連帯保証人が返済請求を受けるケース
連帯保証人が返済を求められるケースとしては、次のような場合があります。
【債務者が返済を滞納または拒否した】
お金を借りた本人の収入がなくなるなどの理由で返済が滞ったり、支払えなくなったりした場合です。
【債権者が債務者と連絡が取れなくなった】
お金を借りた本人がいわゆる夜逃げなどをして、貸した人が連絡を取れなくなってしまった場合です。
【債務者が契約に違反した】
反社会的勢力に属していることを隠して借り入れを行っていたことが発覚したなど、お金を借りる人が契約に違反していた場合です。
【債務者が死亡した】
お金を借りた本人が死亡した場合、通常はその人の相続人らが返済を請求されますが、それらの相続人が相続放棄をした場合などは、連帯保証人に返済が請求されます。
【債務者が債務整理した】
お金を借りた本人が破産などの債務整理をすると返済が期待できないため、連帯保証人に返済の請求が来ます。
1-4. 連帯債務の支払い拒否は原則できない
連帯保証人は、お金を借りた本人とほぼ同一の責任を負っており、連帯債務の支払いを逃れることはできません。
もとはといえば他人の借金なのに納得できないという人もいるかもしれませんが、連帯保証人になるということは、その他人の借金を肩代わりする可能性があるものなのです。
2. 連帯保証人になるのはリスクが大きい
私が弁護士として相談を受けたケースで、10年以上前に連帯保証人になった件で、お金を借りた本人が自己破産したため、残っている借金の全額を突然請求され、自分自身も自己破産を検討しているという人がいました。
この人は、連帯保証人として返済を請求されるまでは、多少のクレジットカードの利用程度しか負債と呼べるものはなく、普通の生活を送っていました。しかし、連帯保証人としての借金返済が重なったことで生活が苦しくなり、結局、自身も自己破産を選択することとなり、クレジットカードも失ってしまいました。
このように、連帯保証人はお金を借りた本人とほぼ同一の責任を負うため、借りた本人の返済が何らかの事情で滞ると、すぐに残った借金全額の支払いを要求されます。
多くの場合、借りた本人の支払いが順調なのか、借金がいくら残っているのかなどの情報が連帯保証人に知らされることはありません。そのため、連帯保証人は何の前触れもなく多額の借金返済を請求されることになります。場合によっては、連帯保証人の手元のお金で支払いきれないほどの請求を一括で受けることもあり、裁判や強制執行を受ける可能性もあります。
また、借金を肩代わりするという事態によって、借りた本人と連帯保証人との関係が悪化する可能性も否定できません。
連帯保証人になることは、自分が新しく借金をすることと同じ意味を持ちます。計画にない金額やタイミングでの支払いが必要になることもあるため、非常にリスクが大きいのです。
そのため、家族が家を借りるためにどうしても連帯保証人が必要になる場合など、自分がリスクを負っても仕方ないと言えるような場合以外は、連帯保証人になることには慎重であるべきです。


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3. 連帯保証人と通常の保証人の違いは?
連帯保証人と通常の保証人は名称は似ていますが、違う点があります。通常の保証人には「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」の3つが認められますが、連帯保証人にはこれらは認められません。
それぞれ、以下で説明します。
【催告の抗弁権】
保証人がお金を貸した側から支払いの請求を受けたときに、先にお金を借りた本人に対して請求するよう主張し、自分への請求を拒む権利です。
【検索の抗弁権】
保証人がお金を貸した側人から支払いの請求を受けたときに、借りた本人に財産があることや強制執行が容易であることを証明し、その財産から先に借金の回収をするよう主張し、自分への請求を拒む権利です。
【分別の利益】
保証人が複数いる場合に、支払うべき金額がその人数で分割される権利です。
たとえば、1000万円の借金をした人に、通常の保証人が2人いた場合、分別の利益が存在するため、それぞれの保証人が負う責任は1000万円÷2人=500万円が限度となります。一方、連帯保証人の場合は、連帯保証人が何人いたとしても責任が分割されることはなく、全員に1000万円の支払い責任があります。
このように、通常の保証人は「お金を借りた本人が支払いをしないときに補充的に責任を負う」という側面が強い一方、連帯保証人は、より借りた本人の責任に近い義務を負担しなければならず、お金を貸した側にとっては借りた本人と同等の義務を負っていると言えます。
保証人 | 連帯保証人 | |
---|---|---|
催告の抗弁権 | あり | なし |
検索の抗弁権 | あり | なし |
分別の利益 | あり | なし |
4. 債務者本人が債務整理をした場合、連帯保証人への影響は?
借金の額を減らしたり、支払いを猶予してもらったりして、借金を整理する方法を債務整理と言います。債務整理には、自己破産、民事再生、任意整理などがあります。
お金を借りた本人が自己破産や民事再生といった手続きをした場合、連帯保証人は借金全額を一括で支払うよう請求を受ける可能性があります。
お金を借りた本人は、破産申立てによって借金の返済義務がなくなったり、民事再生によって借金額が減ったりしますが、そうした債務整理の効力は借りている本人にしか及ばず、連帯保証人の借金が減ることはありません。
また、たとえば分割払いで返済する契約の借金だったとしても、借りた本人が債務整理をした場合、連帯保証人は一括で残りの借金を返済しなくてはいけなくなります。これは「期限の利益の喪失」と呼ばれ、分割払いの契約によってお金を借りた本人は一定の期限まで支払いが猶予される権利(期限の利益)がありますが、支払いの遅延や債務整理などの契約違反があった場合はその権利が失われ、一括での支払いが求められるようになるためです。
仮に一括での支払いが困難な場合、連帯保証人も、お金を貸した側と交渉し、長期の分割払いで返済できるよう交渉する任意整理を行う必要があります。
借りた本人が債務整理として、民事再生をして借金の一部を免除してもらっていた場合、お金を貸した側次第では、連帯保証人が支払う額をその免除された金額のみにしてもらえるよう交渉できる可能性もあります。ただし、いずれにしても支払いは多額になることがほとんどです。
分割払いになったとしても支払いきれない場合などは、やむを得ず連鎖的に連帯保証人も自己破産手続きを行わなければならない場合もあります。私が弁護士として担当した事案でも、このように連鎖的に連帯保証人が破産にいたったケースは数多くあります。
これに対して、お金を借りた本人が債務整理として任意整理を行った場合は、借金の総額は変わらず、返済も借りた本人が継続していくことが原則であるため、直ちに連帯保証人が請求を受ける可能性は少ないと言えます。
5. 連帯保証人をやめることはできる?
このように、連帯保証人になることには大きなリスクが伴いますが、もし自分が何らかの事情で連帯保証人になっていた場合、やめることはできるのでしょうか。
結論から言うと、連帯保証契約は、お金を貸した側と連帯保証人との間で結ばれているものであるため、原則として連帯保証人の意向だけでやめることはできません。
例外は、自分が知らない間に連帯保証人になっていた場合(無権代理)や、連帯保証契約を締ぶプロセスに、詐欺、強迫、錯誤など何らかの問題があった場合、極度額の定めがない場合など、民法が定める取消原因や無効原因があるケースです。
こういった取消原因や無効原因がない場合、お金を貸した側との合意がなければ連帯保証人をやめることはできません。どうしてもやめたければ、十分な返済能力を持つ人を代わりの連帯保証人として立てることを要求される場合もあります。
6. 連帯保証人になって困っている人が弁護士に相談するメリット
連帯保証に関して悩みがある場合は、一度弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談することには、次のようなメリットがあります。
連帯保証人になるべきかどうか、リスクをふまえた冷静なアドバイスをもらえる
意に沿わず連帯保証人になっている場合に、どのように対処すべきか相談できる
連帯保証人として自分の経済力を超えた額の支払いを請求されているときに、再出発のための手続きを模索できる
私が弁護士として相談を受けたなかに、住宅ローンを借り入れていた夫と、その連帯保証人になっていた妻との間で離婚紛争が生じたケースがありました。このケースでは、離婚したにもかかわらず、妻は連帯保証人をやめることができなかったため、住宅を売却して借金額を減らし、短期間で夫に完済してもらうことで解決しました。
また、事業に関する借金の事例もあります。会社が借り入れを行うときは、代表者が連帯保証人となることを求められることが多いため、会社の破産に伴って代表者も個人として債務整理をしなければならないケースが少なくありません。しかし、弁護士に相談するとそのデメリットを最小限に抑えられる可能性があります。
私が代理人となっていた事例でも、会社は破産したものの、会社の連帯保証人であった代表者は経営者保証ガイドラインという私的整理の準則を利用することで、破産することなく、借金全額を免除され、手元には破産手続きをした場合以上の財産を残すことができました。
このような再出発に向けた手続きを模索するためにも、ぜひ弁護士に一度ご相談ください。


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7. 2020年施行 民法改正による連帯保証の変更点
2020年4月に施行された改正民法で、連帯保証契約に関する制度が変更されました。改正の目的は、保証人のリスクを明確化し、負担を軽くすることです。
主な改正は次のとおりです。
7-1. 事業用資金の保証をする場合、公証人による意思確認が必要
事業用の借金について保証契約をするには、公証役場の公証人が保証人の意思を確認することが必要になりました(一定の関係者は例外あり)。この意思確認が行われていない場合、契約は無効です。保証人が想定外のリスクを負担することを回避するための改正です。
7-2. 個人根保証契約は上限額の定めが必要
根保証契約(ねほしょうけいやく)とは、将来発生する可能性があり金額が一定でない不特定の借金などについても、上限額(極度額)の範囲内で、保証人として支払い義務を負うという契約です。
たとえば、家を借りるときの個人の連帯保証人は、滞納家賃や退去時の費用、損害賠償の支払いなど賃貸借に関するすべての支払い義務を負っており、これは個人根保証にあたります。
こうした個人根保証について、改正後は極度額を定めておかなければ、契約は無効になります。保証人が負うべきリスクの上限をあらかじめ明確にしておくためです。
7-3. 契約締結時の情報提供義務
事業に関する借金の保証契約締結時には、お金を借りる本人が保証人となる人に対して、財産や収支の状況、ほかの借金の有無、金額、借金返済や売買契約の支払い状況などの情報を提供しなければならなくなりました。
借りる人が必要な情報提供を怠ったり、虚偽の情報を提供したりした場合などは、保証人は保証契約を取り消せる場合があります。
7-4. 期限の利益喪失時の通知義務
期限の利益とは分割払いの約束のことで、期限の利益の喪失とは、分割払いが遅れた場合など契約違反があったときに、お金を借りた本人が一括で返済する義務を負うことです。
借りた本人が期限の利益を喪失した場合、貸した側はそれを知った時点から2カ月以内に、連帯保証人に対してそのことを通知しなければならなくなりました。貸した側がこの通知をしなかったときは、保証人は一定の範囲の遅延損害金は支払う必要はありません。
8. 連帯保証人に関してよくある質問
Q. 連帯保証人になるメリットはある?
連帯保証人自身には、連帯保証人になるメリットはありません。連帯保証人になる意味は、お金を借りる本人が借り入れの審査などを通過しやすくなるということだけです。
連帯保証人になるリスクが大きいことはすでに述べたとおりなので、親しい家族のためにどうしても必要な場合や、仮にお金を借りた本人の返済が滞って自分に請求が来ても許容できるような場合しか、連帯保証人にはなるべきではありません。
Q. 知らない間に連帯保証人にされていたらどうなる?
自分が連帯保証人になることを承諾していなければ、自分の名前で契約されていたとしても、無権代理となり無効です。したがって、原則としてこの場合は連帯保証人にはなりません。
ただし、自分が承諾していなくても、委任状を渡してしまっていたなど、形式的には連帯保証人になることを承諾していると思われてもおかしくないような場合は、例外的に連帯保証人としての責任を負う可能性があります。そのため、知らない間に連帯保証人になっていた場合は、弁護士に相談のうえで、対応方針を決めていくことが望まれます。
Q. 連帯保証人となっていた親が死亡した場合、連帯保証債務は相続される?
誰かの連帯保証人になっていた親が死亡した場合は、連帯保証債務は配偶者や子などの相続人に相続されます。なお、連帯保証債務が根保証(極度額を定めてその範囲内で一定の債務を保証するもの)だった場合、連帯保証人が死亡した時点での額が保証すべき債務の元本として確定します。
Q. 夫(妻)の連帯保証人になっていたものの離婚した場合、連帯保証人をやめられる?
離婚したからといって、連帯保証人をやめられるわけではありません。連帯保証人をやめるためには、お金を貸している人と合意する必要があります。貸している側にとっては、連帯保証人がいなくなるとその分回収できないリスクが高くなるため、離婚したからといって契約解消に合意してもらえるわけではありません。
夫婦間で連帯保証人になっている場合は離婚する際、不動産の売却などで借金額を減らしたり、借り換えをして連帯保証人から外してもらったりするなどの整理をすることが大切です。
Q. 家を借りるときは、保証会社と連帯保証人のどちらがいい?
連帯保証人になってくれる人がいない場合や、誰にも連帯保証人を頼みたくない場合に、代わりに保証人になってくれるのが保証会社です。連帯保証人に迷惑がかからないという利点がある半面、保証会社の利用には手数料がかかり、利用する際には審査も必要になります。
どちらがいいのかは、連帯保証人を頼める人がいるかという点と、手数料負担の程度を総合的に考慮して決めるべきです。
なお、賃貸物件によっては保証会社と連帯保証人の両方が必要となる場合もあるため注意してください。
Q. 連帯保証人になっているかどうかを調べる方法は?
もし自分が連帯保証人になっているのであれば、契約書に署名しているはずです。そのため、まずは契約書を確認してください。
また、連帯保証契約はお金を貸している人との間で締結するものなので、貸している人に確認するという手段もあります。
もし手がかりがない場合には、信用情報開示請求を行う方法もあります。信用情報機関は、借り入れをしたときなどにその情報が登録される機関です。株式会社シー・アイ・シー(CIC)、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)などがあり、これらの機関に自分の信用情報を照会することで、自分が連帯保証人になっているかどうかがわかります。
9. まとめ 連帯保証人にならざるを得ない場合も、十分にリスクの検討を
連帯保証人になることは、自分が新しく借金をすることとほぼ同じ意味を持ち、大きなリスクがあります。民法改正によって保証人のリスクや負担は軽減されたとはいえ、連帯保証人自身にとっては連帯保証人になることにメリットはなく、どうしても必要な場合以外はなるべきではありません。
ただし、大切な家族のために必要な場合や自身が代表を務める事業での借り入れなど、どうしても連帯保証人にならざるを得ないこともあります。その際は、連帯保証人のリスクについて十分考えたうえで、サインするかどうか決めてください。
連帯保証に関して悩んだら、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年4月1日時点の情報に基づいています)


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