目 次


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1. 個人再生を申し立てると、官報に名前などが掲載される
「個人再生」は、借金問題を解決できる可能性がある手続きです。裁判所を通じて「再生計画」を定め、その内容に従って借金などの債務(お金を支払う義務)が減額されます。減額後の債務は、原則として3年間に分割して返済します。
個人再生を申し立てると、「官報」に氏名や住所などの個人情報が掲載されます。官報掲載は、個人再生の手続きを進めるうえで必須とされています。
1-1. 官報とは?
「官報」とは、法令や公示事項を掲載し、国民に周知することを目的とした国の公報です。行政機関の休日を除き、毎日午前8時30分に発行されます。官報に関する事務を所掌しているのは内閣府です。
官報には、新たに公布された法令や公務員の人事異動などのほか、個人再生や破産に関する裁判所の決定についての情報も掲載されています。
1-2. 個人再生の情報が官報に載るタイミングと回数
民事再生法では、個人再生に関する裁判所の決定の一部につき、官報への掲載による公告を義務付けています。また、再生債務者(個人再生を申し立てた人)などに対する決定書の送達に代えて、官報による公告が行われることもあります。
実務上、個人再生に関する官報公告は以下の3回行われています。
①再生手続開始の決定に伴う公告(民事再生法222条2項)
申立てを受けた裁判所が、個人再生の手続きを始めることを決定した際に1回目の官報公告が行われます。
②再生計画案を決議に付する旨の決定に伴う公告(同法230条4項)
再生債務者は、債務の減額などを定めた再生計画案を裁判所に提出します。同意しない債権者の数や議決権の額が一定水準に満たなければ、再生計画案が可決されます。裁判所が再生計画案を上記の決議に付する旨を決定した際に、2回目の官報公告が行われます。
なお、公務員や会社員などが利用できる「給与所得者等再生」の場合は、債権者の決議が行われず、その代わりに債権者に対する意見聴取が行われます。裁判所が意見聴取を行う旨を決定した際に、官報公告が行われます(同法240条2項)。
③再生計画認可の決定に伴う公告(同法174条4項、10条3項)
債権者によって再生計画案が可決された場合は、裁判所が民事再生法上の要件を満たしていることを確認したうえで、再生計画認可の決定を行います。認可決定が確定すると、再生計画の内容に従って債務が減額されます。裁判所が再生計画認可の決定を行った際に、3回目の官報公告が行われます。
個人再生以外の債務整理手続きのうち、自己破産では官報公告が2回行われます(破産手続開始の決定時と免責許可の決定時)。任意整理は裁判所を通さずに行うので、官報公告は行われません。
1-3. 官報に掲載される個人再生の情報
個人再生について官報に掲載される情報は、以下のとおりです。
【共通】
・事件番号
・債務者の住所
・債務者の氏名
・裁判所の決定がなされた日時
・決定をした裁判所の部署名
【再生手続開始の決定に伴う公告】
・再生手続開始の決定の主文
・再生債権の届出をすべき期間(債権届出期間)
・届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間(一般異議申述期間)
【再生計画案を決議に付する旨の決定に伴う公告】
・再生計画案を決議に付する旨
※ 小規模個人再生(通常の個人再生)の場合
【意見聴取を行う旨の決定に伴う公告】
・再生計画案を認可すべきかどうかについての届出再生債権者の意見を聴く旨
※ 給与所得者等再生の場合
【再生計画認可の決定に伴う公告】
・再生計画認可の決定の主文および理由の要旨
2. 個人再生の事実が官報に掲載されたら、周囲にバレる?
官報は誰でも閲覧できますが、実際に閲覧している人はほとんどいません。そのため、個人再生に関する情報が官報に掲載されても、親族や友人、勤務先の人などに知られる可能性は低いと思われます。
一部の業種では、官報を定期的に閲覧する人もわずかながら存在します。しかし、個人再生に関する情報を常にチェックしているという人はまずいません。ほかの項目を確認している際に、個人再生の情報がたまたま目に触れることはあり得ますが、その可能性はほとんどないと言ってよいでしょう。
3. 官報の閲覧方法
官報を閲覧する方法は、主に以下のとおりです。
3-1. 紙の官報を購入する
紙の官報は、官報サービスセンターで購入することができます。官報サービスセンターは全都道府県に設置されています。交付手数料は1部当たり140円です。
また、全国官報販売協同組合のウェブサイトから、紙の官報の定期送付を申し込むこともできます。
なお、2025年4月1日に施行された「官報の発行に関する法律」に基づき、現在では電子データの官報が正本とされています。紙で発行されている官報は、厳密には「官報に掲載された情報を記載した書面(官報掲載事項記載書面)」に当たります。
3-2. インターネット版官報を閲覧する
官報は、インターネット上でも閲覧することができます。内閣府のウェブサイトでは、官報を無料で閲覧できます。原則として発行から90日間は、官報全体を閲覧することができます。90日が経過すると、個人再生や破産などのプライバシーへの配慮が必要な記事は閲覧できなくなります。
また、内閣府承認の会員制有料サービスである「官報情報検索サービス」を利用すると、昭和22年5月3日以降の官報をすべて閲覧できます。日付やキーワードを指定した検索もできます。利用料金は月額2200円(税込み)です。
3-3. 図書館で閲覧する
国立図書館や市町村の図書館には、紙の官報が所蔵されているところや、インターネット版官報(官報情報検索サービス)を閲覧できるところがあります。官報を閲覧したい場合は、最寄りの図書館に問い合わせてみましょう。
4. インターネットで官報の名前検索はできる?
内閣府のウェブサイト上に掲載された無料で閲覧できる官報には、検索機能が備えられていないので、個人再生の債務者を名前で検索することはできません。
一方、有料の官報情報検索サービスには検索機能が備わっており、個人再生の債務者を名前で検索することができます。
ただし、官報情報検索サービスを契約しているのは、日常の業務で官報を確認する必要がある企業などが中心で、個人的に契約している人はほとんどいないと思われます。
基本的には、親族や友人、勤務先の人などがわざわざ官報情報検索サービスを利用して、自分の名前が官報に掲載されていないか確認する可能性は低いでしょう。


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5. 個人再生の情報が官報に掲載されるデメリット
個人再生に関する情報が官報に掲載されることには、以下のようなデメリットがあります。
5-1. 親族・友人・勤務先などにバレる可能性がある
親族・友人・勤務先の人などが官報を閲覧して、個人再生を申し立てたことを知る可能性もゼロではありません。しかし前述のとおり、官報を閲覧している人はほとんどいないので、その可能性は低いと思われます。
友人や勤務先の人には、自分から話さない限り、個人再生の事実を知られることはほぼないでしょう。家族については、裁判所からの郵便物など、官報以外の理由で個人再生の事実を知られる可能性の方が高いと考えられます。
5-2. 個人信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリスト入り)
「個人信用情報機関」とは、ローンやクレジットカードなどの審査に当たって、金融機関やカード会社などが参照する信用情報を収集している機関です。
個人信用情報機関の一つである「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」は、官報に掲載される個人再生や破産の情報を収集しています。個人再生や破産の情報がKSCのデータベースに登録されていると、ローンやクレジットカードの審査に落ちてしまいます。
個人再生や破産のように、信用に悪影響を与える情報(事故情報)が個人信用情報機関に登録された状態は、俗に「ブラックリスト入り」と呼ばれています。個人再生の情報が官報に掲載されれば、ブラックリスト入りは避けられません。
ただし、借金などの債務を延滞した場合も、その情報が個人信用情報機関に登録されてブラックリスト入りの状態となります。借金の返済が苦しく、近いうちに返済できなくなることが確実である場合には、個人再生によるブラックリスト入りのデメリットを過度に気にすべきではありません。
5-3. 官報公告費用がかかる
個人再生の手続きを進めるに当たり、官報公告は必須とされています。そのため、個人再生を申し立てる際には、裁判所に官報公告費用を予納する必要があります。
東京地裁の場合、個人再生の官報公告費用は合計1万3744円です。ただし、中目黒庁舎の出納窓口で現金納付する場合は1万4000円となります。
ほかの裁判所でも同程度の金額ですが、実際の金額は申立先の裁判所または弁護士に確認してください。
5-4. 闇金業者の営業を受ける可能性がある
貸金業法などの法令を守らず、違法にお金を貸す営業をしている業者を「闇金(ヤミ金)」といいます。闇金が、官報の情報から個人再生や自己破産をした人を探して、お金を借りないかと勧誘してくるケースもあります。銀行や消費者金融などからお金を借りられず、生活費に困っている人が多いため、闇金の誘いに乗りやすいと考えているからです。
闇金からお金を借りると、法外な高金利を請求される、暴力的な取り立てを受ける、犯罪行為を強要されるなどのトラブルに巻き込まれるおそれがあります。たとえお金に困っていても、絶対に闇金を利用してはなりません。
6. 官報に掲載されずに個人再生をする方法はある?
個人再生に関する官報公告は、民事再生法に基づいて義務付けられています。そのため、官報に掲載されることなく個人再生を申し立てることはできません。
しかし、官報を閲覧する人はほとんどいないので、官報への掲載によるデメリットを過度に気にすべきではありません。借金問題を抱えているなら、官報公告が行われる個人再生や自己破産も前向きに検討することをお勧めします。
どうしても官報への掲載を避けたいなら「任意整理」を検討しましょう。任意整理は、銀行や消費者金融などの債権者と交渉して、借金の減額や支払いスケジュールの変更などを認めてもらう手続きです。
個人再生や自己破産と異なり、任意整理に伴う官報公告は行われません。
7. 個人再生を弁護士に相談するメリット
借金の返済が苦しく、個人再生を検討しているなら、一度弁護士に相談してみましょう。
弁護士は、債務整理に関する相談を受け付けています。任意整理・個人再生・自己破産の選択肢を比較検討したうえで、自分の状況に適した手続きの種類や進め方を提案してもらえます。
正式に弁護士へ依頼すれば、債務整理の手続き全般を代行してもらえます。労力やストレスを軽減しながら、適切に手続きを進めてもらえるので安心です。
借金問題に悩んでいる人は、自分だけで抱え込まずに弁護士へご相談ください。
8. 個人再生と官報についてよくある質問
Q. 官報の情報はいつまで残る?
有料サービスである「官報情報検索サービス」には、昭和22年5月3日以降の官報がすべて掲載されています。今後掲載される官報情報も含めて、半永久的に閲覧できる状態が続きます。
Q. 官報は誰でも閲覧できる?
誰でも閲覧できます。紙の官報を購入する、インターネット上で閲覧する、図書館で閲覧するなどの方法があります。ただし、実際に官報を閲覧している人はほとんどいません。
Q. 個人再生による官報の掲載費用はいくら?
東京地裁の場合、個人再生の官報公告費用は合計1万3744円です。ただし、中目黒庁舎の出納窓口で現金納付する場合は1万4000円となります。ほかの裁判所でも同程度の金額です。官報公告費用は、個人再生の申立てを行う際に一括で納付する必要があります。
Q. 個人再生による官報掲載を拒否することや、掲載情報を削除することは可能?
個人再生の手続きにおいて、官報公告は必須とされています。そのため、官報への掲載を拒否することや、掲載された情報を削除してもらうことはできません。
9. まとめ 官報掲載は個人再生の大きなデメリットにはなりません
個人再生を申し立てると、3回にわたってその情報が官報に掲載されます。
しかし、官報を閲覧する人はほとんどいないため、親族・友人・勤務先の人などに官報から個人再生の情報を知られる可能性は低いです。官報掲載のデメリットを気にしすぎることなく、借金問題の解決を優先しましょう。
個人再生を検討しているなら、弁護士に相談することをお勧めします。個人再生を含めた幅広い選択肢の中から、適切な方法で債務整理を進めてもらえます。借金問題を根本的に解決したい人は、早い段階で弁護士にご相談ください。
(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)


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