目 次


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1. 自己破産すると官報に名前が掲載される
自己破産をすると、例外なく官報に名前や住所が掲載されます。
具体的には、破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回、官報に名前や住所、その他破産に関する情報が掲載されます。破産者の個人情報が掲載されることは法律で定められた手続きの一環であり、自己破産をする以上は官報への掲載は避けられません。
官報に破産者の個人情報を掲載する目的は、債権者(主にお金を貸した人など)を念頭に破産手続きが始まったことを公に知らせ、希望する債権者が手続きに参加できるようにするためです。
とはいえ、官報を見て破産手続きに参加してくる債権者は、そこまで多くないのが実際のところです。形式的にでも「破産手続きに参加する機会を与える」ということに意味があるのです。
2. 官報とは?
「官報」とは、国(内閣府)が発行している機関紙です。法律・政令・条約や大臣などの人事異動、叙位・叙勲・褒章、競争入札に関する事項、その他の公にすることが必要な様々な事実について、広く国民に公に示して周知することを目的としています。
自己破産に関する情報も、法律で公告することが義務付けられている「裁判所公告」の一つとして官報に掲載されます。
官報は、明治16年(1883年)7月2日に創刊されて以来、国の公報として発行され続けてきたもので、新聞紙のような形で発行され続けてきました。 令和7年(2025年)4月1日からは電子化され、これにより官報発行サイトに電子データの形で掲載されることになったため、新聞紙のような形で官報の正本が販売されるということはなくなりました。
3. 自己破産で官報に載る情報の内容は?
自己破産をした場合に官報に掲載される情報には、次のようなものがあります。
事件番号
破産者の住所
破産者の氏名
決定の年月日時
主文(決定の内容)
理由の要旨
免責意見申述期間
免責審尋期日
裁判所名
【破産手続開始決定時の掲載例(同時廃止事件の場合)】
令和◯年(フ)第◯◯号
〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号〔住所〕
債務者 〇〇〇〇〔氏名〕
1 決定年月日時 令和◯年◯月◯日午前◯時
2 主文 債務者について破産手続を開始する。本件破産手続を廃止する。
3 理由の要旨 破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する。
4 免責意見申述期間 令和◯年◯月◯日まで
〇〇地方裁判所〇部
債権者が個人を特定できるように、破産者の氏名だけでなく住所まで掲載されます。
4. 自己破産で官報に載る期間とタイミングは?
自己破産では、破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回、官報に氏名や住所が掲載されます。
「破産手続開始決定」とは、自己破産を申し立てた人について支払不能であることを認め、破産手続きを開始するとした裁判所の判断のことです。
「免責許可決定」とは、残っている債務を原則として全て免除することを許すという裁判所の判断のことです。破産手続きを開始したものの免責許可が得られないケースも中には存在するため、それぞれのタイミングでこの2つが別々に判断されます。
実際に官報に氏名等の情報が掲載されるのは「破産手続開始決定時」と「免責許可決定時」の2日分の官報のみで、それ以上の期間にわたって情報が掲載され続けることはありません。
ただし、過去に紙媒体で発行された官報のバックナンバー上の情報としては、事実上残り続けるということになります。


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5. 官報を閲覧する方法
官報を閲覧する方法は、次のいずれかの方法に限定されます。
5-1. インターネットで閲覧する
行政機関の休日を除き、毎日午前8時30分に官報発行サイトに官報のデータが掲載されます。このデータが官報の正本として扱われます。
発行から原則90日間は、誰でもこのサイトにアクセスすることで官報のデータを閲覧・ダウンロードできます。一方で90日経過後は、プライバシーへの配慮が必要な一部の事項については閲覧できなくなります。この「プライバシーへの配慮が必要な一部の事項」には、破産者の氏名や住所などの情報も含まれます。
5-2. 掲示場等で閲覧する
国立印刷局本局(東京都港区)の敷地内に設置された掲示場に、官報の電子データと同じ内容を記載した書面が掲示されます。これを直接見に行くことでも官報の内容を確認することができます。
5-3. 官報サービスセンターを通じて書面の交付を受ける
官報が発行されてから90日間は、官報サービスセンターを通じて官報に掲載された情報を記載した書面の交付を受けることができます。書面の交付には、手数料や配送料がかかります。
官報サービスセンターとは従来の官報販売所のことで、基本的には各都道府県に1か所(東京は2か所)の合計48か所にしかありません。なお、官報サービスセンターの一覧はこちらから確認できます。
5-4. 図書館で閲覧する
電子化される前に発行された紙媒体の官報については、バックナンバーを図書館で閲覧できることがあります。図書館ごとにいつまでの官報を閲覧できるかは異なり、おおむね数か月分から数年分まで遡った官報であれば閲覧できます。
5-5. 官報情報検索サービスで閲覧する
官報情報検索サービスとは、会員制の有料サービスで、お金を払って会員になれば昭和22年5月3日分以降の官報を閲覧できます。ただし、破産者の氏名や住所などのプライバシーに関する情報までは検索できません。
6. 官報で自己破産者の名前検索はできる?
官報で自己破産者の名前検索をすることはできません。
昭和22年以降の過去分を含めて、有料の官報情報検索サービスを使ってもキーワード検索で自己破産者の氏名や住所などを検索することはできなくなっています。
官報で破産した人の情報を知るためには、官報のデータを直接見るしかありません。
7. 官報に掲載されると周囲の人にバレる?
官報に掲載されたからといって、そこから周囲の人に破産したことがバレることはほとんどありません。官報を日常的に確認している一般人は多くないからです。
また、仮に官報を見たとしても掲載されている内容は多岐に渡るので、偶然知っている人が破産したと分かる情報が目に入るということはほとんどないでしょう。
もっとも、金融業や不動産業など特定の業種の人については、業務の一環として定期的に官報を閲覧している可能性はあります。
いずれにしても、破産者の情報だけを日常的に閲覧している人はほとんどいないと考えてよいでしょう。
7-1. インターネットでの検索はできない
インターネット上の官報データで、破産者の氏名や住所などプライバシーに関する情報を検索することはできません。そのため、名前検索などにより周囲の人に自己破産の事実がバレるということはありません。
7-2. 「破産者マップ」等の非公式サイトに掲載される可能性はある
「破産者マップ」とは、民間人が作った非公式のサイトで、官報に掲載された氏名・住所の情報をマップの形に集めてデータベースにしたものです。
「破産者マップ」については、政府の個人情報保護委員会が個人情報保護法に違反しているとして刑事告発し 、2025年7月現在では閉鎖されています。
破産者の情報をデータベースにした類似のサービスは、破産者マップと同様に違法の疑いが強く、新たに作られたとしてもいずれ閉鎖に追い込まれる可能性があるといえます。
とはいえ、このような民間の違法性の強いデータベースなども含めれば、インターネット上で破産者の個人情報を検索できないと言い切ることは難しいのが実情です。
ただし、官報の電子化により、過去分に遡って破産者の氏名や住所が検索できなくなっています。閲覧期間が90日間に限られたことも考慮すると、「破産者マップ」のような網羅的にデータを集めた違法性の高いウェブサイトを作ることは、現実的に難しくなっていると言えるでしょう。
8. 自己破産で官報に掲載されるデメリット
自己破産の際に官報に掲載されることのデメリットを説明します。
8-1. 周囲の人にバレるリスクがある
可能性は極めて低いものの、官報などを通じて周囲の人に破産の事実が知られてしまう可能性は絶対にゼロとは言い切れません。官報は一般人でも入手できるため、たまたま官報を見たタイミングで知り合いの名前が目に入ってしまうケースもあるからです。
8-2. 手続き費用がかかる
破産手続きでは、官報に公告するための費用を負担しなければなりません。これは、手続きの一環として必ず必要となる国に納める手数料です。官報公告費は裁判所によって異なりますが、1万円~2万円程度が相場となります。
8-3. ブラックリストに掲載されるリスクがある
信用情報機関のなかには、官報に掲載された情報を参照して事故情報を登録するところもあります。たとえば、銀行や信用金庫などが加盟する「全国銀行個人信用情報センター」では、官報に公告された破産手続開始決定に関する情報を登録しています。
実際には、官報に公告されたことがきっかけでブラックリスト入りすることはほとんどありません。それよりもっと前の段階で、長期間の延滞や債務整理の手続きを開始した時点で「ブラックリスト入り」しているケースがほとんどです。
8-4. 闇金業者に目をつけられる可能性がある
闇金業者の中には、官報を閲覧した上でそこに載っている破産者の情報を頼りにお金を貸す相手を探しているところもあります。
破産手続きを開始してから闇金業者からの連絡が来ても、絶対に応じないようにしましょう。一度でも闇金業者からお金を借りてしまうと、法外な金利を要求されたり、違法な取り立てを受けたりするおそれがあって危険です。
9. 官報に掲載されずに債務整理するには?
債務整理であれば全て官報に掲載されるというわけではありません。
自己破産と個人再生は裁判所を通じた手続きであるため、法律に従って官報に掲載されます。一方で、任意整理は債権者と任意の話し合いで借金を減額してもらう手続きなので、官報に掲載されることはありません。官報に載ることを避けたいのであれば、任意整理での借金問題解決をめざすとよいでしょう。
ただ、裁判所を通さない任意整理であっても、信用情報機関に事故情報が登録されることには注意してください。
10. 自己破産について弁護士に相談するメリット
自己破産について弁護士に相談すれば、その時々の状況に応じて最適な方針をアドバイスしてくれるので、借金問題を抱えている方にとって大きな救いになることも多いです。また、依頼すれば手間のかかる自己破産の手続きを代わりに進めてもらえるため、借金問題を根本的に解決できるという大きなメリットがあります。
自己破産をすれば官報に氏名や住所などが掲載されますが、それにより周囲に自己破産の事実が知られるリスクは非常に小さいです。弁護士に相談すれば、官報に氏名などの個人情報が掲載されることに関して正確な情報を教えてもらえるので、手続きへの不安を取り除けるという利点もあります。
自己破産について弁護士に相談するメリットは大きく、抱えている借金問題をきれいに解決できることにもつながります。初回無料相談を実施している事務所も多いので、借金問題に悩んでいるのであれば、ためらわずに弁護士に相談してみましょう。


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11. 官報と自己破産についてよくある質問
Q. 自己破産した人を調べる方法はある?
インターネット上の官報データ上に破産者として氏名・住所等が公開されている期間中に、直接その官報データを閲覧するしかありません。氏名検索もできないことから、自己破産した特定の個人を一般人が検索するのは難しいと言えるでしょう。
Q. 自己破産の官報は何年残る?
過去に紙媒体で発行された官報は図書館などに保存されているため、資料としてはいつまでも残ります。もっとも、古くなればなるほど何らかの理由で欠落していることもあり、閲覧される可能性は低くなるでしょう。
また、官報の電子化以降は、破産者に関する情報はプライバシーに配慮した情報として公開されるのが90日間に限られます。そのため、現在では官報に載った破産者の氏名や住所などの情報は「90日間に限り残る」ということになります。
Q. 官報と破産者名簿の違いは?
「破産者名簿」とは、自己破産に際して市区町村役場が作成・管理する破産者に関する名簿のことです。これは役所の内部的なデータベースであり、一般の人が見ることはできません。
この点で、広く事実を公告することを目的としている「官報」とは異なります。
12. まとめ 官報掲載を気にするより早めに借金問題の解決を
「自己破産をすると官報に氏名・住所が載る」と聞くと、驚いてしまうかもしれません。しかし実際には、官報を見ることで自己破産したことが周囲の人に知られる可能性は非常に低いです。
特に官報の電子化以降は、プライバシーに配慮する必要のある情報の公開期間が90日間と非常に短く設定されています。また、有料サービスを使っても過去分も含めて破産者の氏名・住所等は検索できなくなっていることから、官報から破産者の個人情報がバレるケースはほとんどないと言えるでしょう。
そうだとすると、このような非常に低い可能性を心配して借金問題を抱え続けるほうが精神的につらいのではないでしょうか。弁護士などの専門家に相談すれば、官報で自己破産の事実が周囲の人に知られてしまうかもしれないという不安も含めて、正確な情報を教えてくれます。また、手間のかかる自己破産手続きの手助けをしてくれます。
借金問題に悩んでいるならば、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。
(記事は2025年8月1日時点の情報に基づいています)


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