目 次


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1. ギャンブルでつくった借金は債務整理できる?
債務整理には大きく3つの種類があり、手続きによっては、ギャンブルが原因による借金でも債務整理が可能です。
1-1. 任意整理と個人再生は可能
債務整理のうち、手続きを裁判所外で行うものに「任意整理」があります。
任意整理とは、借金について債権者(お金を貸した側)との間で交渉し、返済の負担を軽くする手続きです。将来発生する利息をカットしたり、3年から5年かけて分割で支払うことを約束したりしたうえで、和解契約に従って借金を返済します。任意整理では、交渉の際に借り入れの理由は問われないため、ギャンブルでつくった借金であっても利用が可能です。
他方、裁判所が関与する債務整理手続きの一つに、借金の一部を返済していく「個人再生」があります。
個人再生とは、裁判所に借金を大幅に圧縮してもらったうえで、残った借金を原則3年(特別な事情がある場合は5年)の間に返済していく手続きです。裁判所が関与する厳格な手続きですが、重視されるのは返済計画を実行できるかどうかであって、基本的に借り入れの理由までは考慮されません。そのため、ギャンブルでつくった借金であっても利用できます。
1-2. 自己破産では免責不許可事由に当たる|ただし裁量免責が認められる可能性あり
裁判所が関与する債務整理のうち、すべての借金の返済義務を免除(免責)してもらう手続きを「自己破産」と言います。
自己破産は、個人再生と違い、すべての借金の返済をしなくてよくなるという強力な効果があるため、法律で免責が許されない場合も規定しています(免責不許可事由)。そのなかの一つに、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」が挙げられています。つまり、ギャンブルによって借金をつくった場合、自己破産での免責は原則として認められません。
しかし、ギャンブルが原因だからといって免責が一切認められないわけではありません。事情によっては裁判所の裁量で免責が認められる場合もあります。たとえば、反省の姿勢が見られる場合や、生活の再建に向けて懸命に取り組んでおり、二度とギャンブルをしないと判断できるような場合です。
筆者の弁護士としての実務上、ギャンブルによって借金がふくらんでしまったケースを非常に多く見ていますが、十分に反省し、手続きに協力的な姿勢をみせれば、裁判所から免責許可が出るケースも多いです。
2. ギャンブルによる借金問題の実態は?
2024年10月に、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターが実施した「令和5年度 依存症に関する調査研究事業『ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査』報告書」が公表されました。
この報告書によると、過去1年間にギャンブル経験がある人のうち、全体の89.8%がギャンブルのために借金をしたことがあると回答していました。借金額の平均は約653万円、中央値は400万円です。ここ1年で最も多くお金を使ったギャンブルは、多い順に、パチンコ、パチスロ、競馬、競輪、競艇でした。
また、ギャンブル依存群以外の依存群も含めると、これまでに任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理を利用した割合も全体の35.6%でした。回答にはギャンブル問題を抱える人が多く含まれることを考慮すると、ギャンブルによって借金の返済が立ちゆかなくなるケースが多いという実態がわかります。
3. ギャンブル依存症による借金地獄から抜け出した事例
弁護士である筆者が手がけた事案のうち、ギャンブル依存から実際に抜け出すことができた事例をご紹介します。
30代男性のAさんは、ストレスからパチンコを毎日打つようになり、気づけば400万円以上の借金を抱え、返済のためにさらに借金を重ねる「自転車操業」状態に陥っていました。返済するための借金もできなくなったため、弁護士に相談し、自己破産をすることになりました。
実は、Aさんは、弁護士に自己破産の依頼をしてからも、家族にパチンコの借金や破産をすることを隠していました。Aさんは、しばらくの間、パチンコをやめていました。しかし、しばらくするとパチンコをしたいという欲求が強くなり、衝動を抑えることが難しくなってきたため、正直に筆者に相談してきたのです。
筆者は「パチンコに使うお金が手元になければパチンコ屋に行こうという考えも起こらないはずだから、金銭の管理を家族にしてもらったらどうか」と提案しました。Aさんは、家族へ事実を打ち明けることをためらっていましたが、思い切って家族に話をしたのでした。
家族は、Aさんがパチンコにのめり込んでいたことをうすうす気づいていたようであり、金銭管理を快く引き受けてくれました。このほか、パチンコ屋がある駅を利用しない、パチンコの映像や動画も見ないなど、徹底的に日常生活からパチンコを除外した結果、無事に破産手続きで免責が認められるに至りました。
ギャンブル依存には程度があり、すべての人が上記の方法でうまくいくとは限りません。しかし、一人で依存を抜け出すことは困難であり、弁護士や家族、友人など味方になってくれる人とともにギャンブルを断ち切る工夫をすることが重要です。
4. ギャンブルの借金はいくらまでなら返済できる?
ギャンブルで借金をつくってしまった場合、「いくらまでなら自力で返済できるか」と考える人もいるかもしれません。
理屈としては、自身の収入や資産から返済できる金額を算定することは可能です。しかし、「まだ大丈夫」と思って借り入れを続けているうちに、気づけば支払えないほど借金がふくらんでしまうケースは少なくありません。
これは、「ギャンブルでつくった借金はギャンブルで勝って取り返そう」と思ってしまう心理がはたらき、今まで以上にギャンブルにのめり込んで冷静な判断ができなくなってしまうためです。また、借金には高額な利息が発生するため、時間が経過するだけで借金が大きな金額になってしまうことも原因の一つです。
借金の返済が苦しいと少しでも感じたら、早めに債務整理などの法的手続きを検討しましょう。


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5. ギャンブルのために借金をした人の末路|返せないとどうなる?
ギャンブルによる借金を返せないままでいると、次のような深刻な事態に陥る可能性があります。
遅延損害金が発生して、返済額が増える
ブラックリスト入りする
一括返済を請求される
支払督促を申し立てられる/訴訟を提起される/財産を差し押さえられる
そのほかの影響
5-1. 遅延損害金が発生して、返済額が増える
借金の返済期日に遅れると、支払い遅延による損害を賠償するための遅延損害金が発生し続けます。
特にキャッシングの遅延損害金の利率は年20%が上限とされており、通常の利息より高いのが一般的です。この高額な損害金が増え続けた結果、返済しても借金が減らないという状況に陥ってしまいます。
5-2. ブラックリスト入りする
借金の返済を滞納した場合、金融機関が加盟する信用情報機関に滞納の事実が登録されます。いわゆる「ブラックリスト入り」です。
信用情報機関の情報は、加盟する金融機関が閲覧し、ローンやクレジットカード契約時の審査などに利用します。そのため、ブラックリスト入りしたことでローンの審査が通らなかったり、クレジットカードの更新が拒否されたりする可能性があります。
5-3. 一括返済を請求される
貸金契約には、返済が滞った場合に借金の残額を一括請求できるという約束が入るケースが多いです。一括返済を求められるタイミングは業者によっても異なりますが、一般的には滞納が2カ月から3カ月程度続いた場合に、一括返済を要求されることがあります。
5-4. 支払督促を申し立てられる/訴訟を提起される/財産を差し押さえられる
支払いがなければ、金融機関などの債権者は法的手段として、支払督促や裁判手続きを申し立てます。支払督促の申立てに異議を述べなかったり、裁判で敗訴したりすれば、預金や給与などの財産を差し押さえられるおそれがあります。
借金を家族に秘密にしていた場合、裁判の訴状が自宅に届いたことによって、借金の事実が発覚してしまうケースもあります。
5-5. そのほかの影響
借金の額が大きくなると、常に借金の問題が頭に浮かんでしまい、日常生活にも影響が出ます。金銭をめぐって周囲の人とトラブルになり信頼を失ったり、家族との関係もうまくいかなくなったりすることで、自殺を考えるまで落ち込んでしまう人も少なくありません。
6. ギャンブルによる借金依存症(借金癖)を治す(直す)方法は?
借金依存を断ち切るには、原因であるギャンブルとの関係を断ち切らなければなりません。一人で依存症を解決することは難しいため、周囲を頼る必要があります。専門のカウンセリングや精神科での治療、自助グループへの参加も有効です。
また、貸付自粛制度といって、日本貸金業協会や全国銀行協会に対して、自らに対する貸付を自粛するよう申告する制度があります。これを利用すれば、自ら借金ができない状況にすることも可能です。
7. ギャンブルによる借金問題を解決するため、弁護士や司法書士に相談するメリット
弁護士や司法書士に相談することで、債務整理手続きを正確かつ迅速に進められます。具体的な状況に基づき、どの債務整理の手続きを取るべきかは弁護士、司法書士でなければ判断できません。弁護士や司法書士に相談すれば、自分の状況に合った債務整理手続きについて適切にアドバイスしてもらえるでしょう。上述のように、基本的にギャンブルが理由の借金では免責が認められにくい自己破産であっても、弁護士が入ることで裁判所から免責許可を受けられるようになる例も多数あり、専門家へ相談や依頼をしたかどうかで結果が大きく変わるということが考えられます。
また、貸金業者の取り立てに悩んでいる場合、弁護士または司法書士が受任通知を送付すれば取り立ては止まります。督促の連絡がなくなることは、精神的にも大きなメリットだと言えます。
さらに、ギャンブルが原因の借金で自己破産をする場合、管財事件といって裁判所が選任した管財人による財産調査を受けるケースが多いです。この手続きでは、弁護士が代理人である場合に限り裁判所に納める予納金が少額となるなど、弁護士に依頼することのメリットも存在します。
ギャンブルによる借金問題は、解決までのストレスが大きいものです。経験豊富な弁護士や司法書士のアドバイスに従って手続きを進めることで、孤独にならず手続きを進められます。ただし、弁護士と司法書士では対応可能な業務範囲が異なります。司法書士(認定司法書士)は1社あたり140万円以下の任意整理と、個人再生と自己破産の書類作成を取り扱うという点で、制限があります。特にギャンブルなどが理由で自己破産で免責が認められるかわからないといった場合には、なるべく認められるための対策を含めて弁護士に相談したほうがスムーズと言えるでしょう。
8. ギャンブルと借金に関してよくある質問
Q. ギャンブルによる借金は家族にバレずに債務整理できる?
弁護士や司法書士には守秘義務があるため、家族に知られずに相談することは可能です。
債務整理のうち、任意整理については裁判所が関与しない手続きであるため、家族に知られずに手続きを完了できる可能性が高いです。
これに対し、自己破産や個人再生の場合、提出書類のなかには家族の協力が必要なものもあることから、途中で家族に知られてしまう可能性があります。
Q. ギャンブルの借金が100万円を超えた場合、債務整理をせずに完済することは可能?
100万円を超える借金を自力で完済できるかどうかは、具体的な収入や支出、資産の状況によって異なります。
ただし、ギャンブルが原因で借金がふくらんだことを考えると、仮に今回返済ができたとしても、根本を変えない限りまた同じ状態に陥ってしまう危険があります。
「今ある借金だけ返せればいい」と考えるのではなく、ギャンブルとの接し方を見直すことをお勧めします。
Q. 旦那がギャンブルでつくった借金は肩代わりすべき? それとも離婚すべき?
法的には、借金を肩代わりする義務もなければ離婚する必要もありません。
ただし、ギャンブル癖が抜けきらず、これ以上信頼できないと思った場合は離婚を検討するのも一つの選択肢でしょう。
Q. ギャンブルにはまって借金癖が抜けない人の特徴は?
ギャンブルにはまる原因は人それぞれですが、共通するのは、最初に勝った(勝ってしまった)経験があるということです。
ギャンブルに一度勝ってしまうと、その記憶が強く残ってしまい、負けたとしても「次は勝てる」と思い、またギャンブルを続けてしまいます。真面目か不真面目かといった本人の気質の問題ではなく、ギャンブルにはまってしまい、抜け出せなくなる事態は誰にでも起こり得るものだと考えます。
Q. ギャンブル依存症の相談先は?
依存症を取り扱う病院やクリニック、精神保健福祉センターなどの公的な相談機関のほか、日本貸金業協会などの業界団体、GA日本インフォメーションセンターなどの自助グループが挙げられます。
9. まとめ ギャンブルでできた借金の返済が難しくなった場合は、弁護士や司法書士に相談を
ギャンブルによって借金を抱えてしまった場合、絶望的な気持ちになるものです。
しかし、借金を放置していると督促を受けたり、生活が立ちゆかなくなったりするなどの事態を招きます。返済が困難になった場合には、債務整理によって借金の負担を減らせます。ギャンブルが原因の借金であっても任意整理と個人再生はできるほか、状況によっては自己破産もできます。
弁護士に相談すれば、自分に合った債務整理手続きのほか、自己破産の免責が認められやすくなる観点についてアドバイスしてもらえます。債務整理を通じて借金問題を整理しつつ、依存症の治療や生活の再建に向けた努力をすれば、再起を図ることは十分に可能です。
一人で悩むことなく、早めに弁護士または司法書士に相談してみてください。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)


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